フォルシア(304A)SaaS型サービス「webコネクト」の顧客増を原動力に持続的な利益成長局面へ

2025/01/10

検索技術「Spook」を基盤に旅行・観光業界向けサービスを提供
SaaS型サービス「webコネクト」の顧客増を原動力に持続的な利益成長局面へ

業種:情報・通信業
アナリスト:村木雄一

◆ 検索技術「Spook」を基盤に旅行・観光業界向けサービスを提供
フォルシア(以下、同社)は、膨大かつ複雑なデータから必要な情報を迅速に抽出できる検索技術「Spook(スプーク)」を基盤に、システム開発やサービスなどを主に旅行・観光業界向けに提供する情報サービス会社である。

同社の事業はデジタルビジネスプラットフォーム事業の単一セグメントだが、売上高はサービスの種類別に、ソリューション型サービスとSaaS型サービスの2つに区分されている(図表1)。

◆ ソリューション型サービス
ソリューション型サービスは「Spook」を活用し、膨大かつ複雑なデータを高速かつ正確に処理することを通じ、顧客企業が個々に直面する課題を解決するサービスである。具体的には、日時や場所、部屋タイプなど利用者ごとに細かい条件がつくことが多い旅行会社の予約サイトや、膨大な製品規格や詳細な仕様の管理が必要となる専門商社のECサイトなど、複雑なデータを取り扱う顧客企業に対し、検索ソリューションを提供することで、顧客企業のサービス利用者の利便性を高めることを可能としている。

ソリューション型サービスの売上高は、①システム開発にかかる開発費、②システム稼働後の運用・保守費、③システム稼働後もSpookの技術・ノウハウを継続利用することについての対価(ロイヤリティ)によって構成されている。なお、Spookは、顧客企業自身が保有するサーバーやデータセンターに設置される、いわゆるオンプレミス型で提供され、大手情報サービス会社が構築する大規模システムの一部に組み込まれるケースが多い。

◆ SaaS型サービス
複数の顧客企業に共通する課題に対して、同社が汎用的な解決策を提供するサービスである。サービスはインターネット経由で提供され、顧客企業は利用に当たり自らサーバーを設置・管理する必要はない。現在、同社が提供しているのは、以下の2種類のサービスである。

(1)旅行・観光業界向け旅行商品販売プラットフォーム「webコネクト」
19年から販売を開始した「webコネクト」は、旅行・観光業界向けに開発された旅行商品販売プラットフォームである。webコネクトの主な機能は、①料金が変動するダイナミック・プライシング型商品におけるリアルタイムな料金計算と、②高速な一覧表示の2点を実現する検索機能にある。25/2期中間期の顧客数は22社である。

webコネクトはクラウド上で提供されていることに加え、独立して機能するように設計されているため、顧客企業が迅速に利用を始めることができる。また、顧客企業が既に活用しているシステムとのデータ連携などが必要な場合には、一定の追加開発(カスタマイズ)によって他の情報サービス会社が開発したシステムと接続することも可能である。その他、適宜カスタマイズを行うことにより、顧客企業は個々の独自性を反映させたサービスをエンドユーザー(生活者)に提供でき、同様のシステムを独自に開発する場合に比べて、導入コストを大幅に抑えられる。

webコネクトの基本的な契約期間は5年で、期間内の解約には違約金が発生する。月額費用は提供する機能に応じて設定され、60カ月間一定である(利用件数などに応じて変動することはない)。なお、顧客企業ごとの追加開発に伴う費用に関しては月額費用に含めず、開発の進行に応じて売上計上し、引渡後すみやかに代金回収を行っている(大規模案件では中間金を受け取ることもある)。

(2)データクレンジングツール「Masstery」
Masstery(マスタリー)はECサイト等を運用するに当たって必要となる商品データの整備統合などを自動的に行うツールで、Spookを導入した専門商社の取引先(メーカー、流通、小売)などをターゲットとしている。商品の仕様が複雑で、仕入先が多岐にわたるECサイト運営事業者にとって、商品フォーマットの整備やカテゴリ付与を効率的に行えることが導入のメリットとなる。

25/2期中間期の顧客数は10数社で、現状では売上への貢献度は限定的なものにとどまっている。

◆ 取引先業種と主要販売先
同社の取引先は、旅行・観光と、会員制サービス(業務の一環として宿泊施設などの予約サービスを行っている共済組合や福利厚生サービス会社など)が主体で、全体の85%に達する(図表2)。

24/2期における上位3社向けの売上高は37.0%であった。ただし、期によって開発案件の多寡や規模の大小が生じるため、上位顧客への売上依存度は変動する。なお、NTTデータグループ(9613東証プライム)傘下のNTTデータ向け売上は、大手旅行会社に向けてNTTデータが構築したシステムにサービスを提供した対価である(図表3)。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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