アルピコホールディングス(297A)インフラの提供と観光振興により世界に誇る山岳リゾート信州の価値創造を目指す

2025/01/06

流通、運輸、観光、不動産の各事業を長野県を中心に展開
インフラの提供と観光振興により世界に誇る山岳リゾート信州の価値創造を目指す

業種:小売業
アナリスト:髙木伸行

◆ 信州を中心に事業を展開
アルピコホールディングス(以下、同社)は、子会社10社及び関連会社1社を傘下に収める純粋持株会社として、企業グループの企画、管理、運営を行っている。同社グループは、長野県を中心に流通事業、運輸事業、観光事業、不動産事業、及びその他のサービス事業を展開しており、信州(長野県)の生活インフラを支えている(図表1)。

24/3期のセグメント別営業収益の構成比は流通事業が75.1%、運輸事業が12.2%、観光事業が11.2%、不動産事業が1.1%、その他のサービス事業が0.4%である(図表2)。利益面での貢献は営業収益の大きい流通事業が24/3期までは大きいが、25/3期に入り運輸事業が急速に貢献度を高めてきている。

同社の実質的な設立は筑摩鉄道(1932年に松本電気鉄道に商号を変更)として設立された1920年3月にまで遡る。07年12月に経営難に陥っていた松本電気鉄道及びグループ企業が、経営困難な状況にある企業を再建するための「私的整理に関するガイドライン」基づく事業再生計画を取引金融機関に提出した。08年3月に同計画が認定され、同年5月に松本電気鉄道が株式移転により、同社を設立した。

◆ 流通事業
流通事業では、11月末時点で子会社のデリシアが食品スーパー「デリシア」51店舗(フランチャイズ1店鋪を含む)と「業務スーパー・ユーパレット」9店舗の計60店舗を展開している。長野県内でドミナント展開しており、県内トップクラスの店舗網となっている(図表3)。

「デリシア」は、低価格路線からは一線を画し、付加価値を重視しているフォーマットである。また、51店舗の中にはデリシアの派生フォーマットとして、食材に加え新たな惣菜ブランド「DELiCiA SELECTION Meals(デリシアセレクションミールズ)」を取り扱う惣菜強化型のデリシア・ミールズ店舗が3店舗含まれている。一方、「業務スーパー・ユーパレット」は、生鮮品を含む大容量の業務用商品等を取り扱う、価格重視のフォーマットとなっている。

これらに加えて、11月末時点では移動スーパーの「とくし丸」を34台、宅配サービスの「デリシアネットスーパー」を18拠点、セルフ型無人決済店舗を1店舗展開しマルチチャネル化を進めている。移動スーパーの「とくし丸」はオイシックス・ラ・大地(3182東証プライム)の子会社である株式会社とくし丸のフランチャイジーである。

その他、モスフードサービス(8153東証プライム)のフランチャイジーとしてモスバーガー事業(4店舗)を、タリーズコーヒージャパン(東京都新宿区)のフランチャイジーとしてタリーズコーヒー事業(2店舗)を行っている。また、22年4月にマックドラッグを傘下に置き、調剤薬局など医薬品の販売事業を開始した。

◆ 運輸事業
運輸事業として、バス事業、鉄道事業、タクシー事業及び自動車整備事業を行っている。子会社であるアルピコ交通とアルピコタクシーが運輸事業を行っている。

(1)バス事業
高速バス事業は、長野県内外の都市間や都市と上高地、白馬などの観光地を結んでいる。路線別には松本、長野、白馬、諏訪、飯田の各地と東京の「バスタ新宿」を結ぶ新宿系統が高速バス事業の営業収益の4割を占めている。

観光路線バス事業は松本市内から、中部山岳国立公園内の上高地、乗鞍山頂を中心とする地域の輸送を行なっており、「松本(新島々)~上高地線」及び「松本・沢渡~上高地線」が観光路線の中での一番の収入源となっている。また、「長野~白馬線」の特急バスも人気の高い路線となっている。

以上の他、長野県内で運行する「一般路線バス事業」及び「貸切バス事業」を展開している。

(2)鉄道事業
鉄道事業の営業路線は、松本~新島々間(14.4キロ)の上高地線であり、同社の前身企業の創業以来、松本市西部の居住者や上高地、乗鞍高原方面への観光客などの輸送を行っている。

(3)タクシー事業
タクシー事業は、長野県内の松本地区、長野地区、諏訪地区、大北地区の4拠点で展開しており、需要拡大が見込めるインバウンド対応も重点的に行っている。

(4)自動車整備事業
自動車整備事業は、バス・タクシー等のグループ車両の整備の外、一般向け整備も行っている。

◆ 観光事業
長野県内で、ホテル・旅館事業、サービスエリア事業、旅行事業、レジャー場事業をアルピコ交通、アルピコホテルズ、アルピコ長野トラベル、アルピコリゾート&ライフが行っている。

(1)ホテル・旅館事業
松本市を中心にシティホテル、ビジネスホテル、温泉リゾートホテルの3タイプ、6施設、667室を運営している。国内利用客及びインバウンド利用客を幅広く受け入れている。

(2)サービスエリア事業
長野県内の高速道路上下線10カ所のサービスエリアのうち、中央自動車道の諏訪湖サービスエリア(上り線)、長野自動車道の梓川サービスエリア(上り線)と姨捨サービスエリア(上下線)の4カ所で運営している。

(3)旅行事業
グループ力を活かした豊富な旅行商品を取り揃えている。旅行事業を担うアルピコ長野トラベルは、前身の長野トラベルから50年の社歴を有している。

(4)レジャー事業
蓼科高原において、ゴルフ場やキャンプ場などの運営を行っている。「蓼科高原カントリークラブ」は全長10,318ヤード、27ホールのゴルフ場で、1963年に開場し60年を超える歴史がある。

◆ 不動産事業
不動産賃貸事業、別荘分譲地管理事業を行っており、アルピコ交通、アルピコリゾート&ライフ、アルピコ蓼科高原リゾートが担当している。

(1)不動産の賃貸事業
松本市、長野市、茅野市などの長野県内に約30件の賃貸不動産を保有しており、主に法人に対して賃貸し、賃料を得ている。

(2)別荘分譲地管理事業
蓼科高原及び八ヶ岳中央高原において、自社所有土地の売却、特別地方公共団体である財産区から賃借している土地の転貸、建築及びリフォーム、上水道の供給、温泉供給、別荘管理などを行っている。

◆ その他のサービス事業
アルピコ保険リースが長野県内の9つの営業所を通じて保険代理店事業などを行っている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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