令和アカウンティング・ホールディングス(296A)高水準の契約継続率に表れるクライアントからの高い信頼
仕訳入力などの単純作業にとどまらない戦略的な経理実務支援サービスを提供
高水準の契約継続率に表れるクライアントからの高い信頼
業種:サービス業
アナリスト:髙木伸行
◆ 経理に関するコンサルティングサービスを提供
令和アカウンティング・ホールディングス(以下、同社)グループは、同社と連結子会社6社で構成され、上場企業を始めとする大企業、投資法人や不動産ファンド、医療機関などのヘルスケア関連法人、地方公共団体といった組織的な対応や高い専門的知識などが必要とされる法人に対して経理に関するコンサルティングサービスを提供している。
同社のコンサルティング事業は「コンサルティング業務(Long)」と「コンサルティング業務(Short)」に分類される。コンサルティング業務(Long)は日々発生する取引を会計方針に基づき仕訳入力し決算書などを作成すること、それらの会計数値を経営管理に役立ててゆくという経理に関わる継続的なコンサルティングを指し、24/3期の売上高の83.2%を占める同社グループの主力業務である(図表1)。
コンサルティング業務(Short)は、コンサルティング業務(Long)の顧客との信頼関係からもたらされる副産物としての位置付けで、継続的に発生するものではないコンサルティング業務である。コンサルティング業務(Short)は24/3期の売上高の16.3%を占めた。その他の事業は経理実務に関わる教育・派遣・紹介事業である。
同社グループのクライアントは大企業グループが多く、専門的な知識や対応を求められる先が多い。クライアントグループ数は24/3期末で183グループに達している。また、24/3期の同社のクライアントグループごとの平均年間報酬は約21.8百万円であったが、取引額上位100グループの平均年間報酬は約37.6百万円、上位10グループは約187.6百万円となっている。このことから、多くのクライアントグループに対して業務範囲の拡大による報酬拡大の余地があると同社は考えている。
専門人材については、24年4月末現在で国内の同社グループ企業全体で、重複保有者があるが、公認会計士34名、会計士試験・短答式試験合格者11名、税理士有資格者8名、税理士科目合格者13名、米国公認会計士3名、日商簿記2級以上の合格者は200名超が所属している。また、ベトナム子会社には約70名在籍しているが、2割程度が会計士資格保有者である。
コンサルティング業務については、コンサルティング業務(Long)の契約継続率を重視している(図表2)。また、グループ全体の事業を推進してゆく上で人材確保を重要課題としている。多くの会計事務所が即戦力となる経験者の採用に偏る傾向が強いなか、同社は専門性を持った人材の確保を行うと同時に、人材の確保をより確実にするために新卒採用を増やし育成していくことも人材戦略の軸に据えている。
◆ コンサルティング業務(Long)
コンサルティング業務(Long)は日々企業で発生する経済取引を会計方針に基づき仕訳入力し、総勘定元帳、試算表そして決算書等を作成すること、それら会計数値を経営管理に役立てていくことといった一連の業務をすべて、あるいは一部を請け負っている。業務の性質から継続性が高いことからコンサルティング(Long)と名付けている。
同社のクライアント対応の体制は、大手のコンサルティング会社が専門分野や機能別に縦割の組織とし、それぞれの組織がクライアントのニーズに対応しているのに対して、クライアントごとに平均10人程度のチームが編成され、そのチームが顧客の全てのニーズに対応する形をとっている。クライアントからすると内情を良く知ったチームが常に担当してくれているという安心感や相談のし易さという利点がある。
コンサルティング業務(Long)の具体例としては以下のようなものが挙げられる。
①会計方針の策定、原始帳票より仕訳して伝票、総勘定元帳、試算表などを作成することに関するサポート及びアドバイザリー業務
②クライアントが作成した伝票、元帳、試算表などの確認業務及びアドバイザリー業務
③四半期決算業務、決算業務、連結決算業務及び各決算書の作成サポート、確認業務及びアドバイザリー業務
④有価証券報告書等の決算開示書類に係る作成サポート、確認業務及びアドバイザリー業務
ただし、単にクライアントで行われている業務を外注先として受けるのではなく、常に新たな取引発生に伴って会計処理を検討・提案することや、決算作業の効率化・早期化を図ることなどを前提としている点が単純な記帳代行とは一線を画している。クライアントのパートナーとして経理処理が最終的にもたらす影響を判断し、付加価値のある情報を利用できるようにする戦略の策定から実行支援までを一貫して行なう、カスタムメイドのサービスとなっている。
◆ コンサルティング業務(Short)
同社グループは業務の性質から継続的に発生するものではなく、一定期間での終了が想定されている単発的なコンサルティング業務をコンサルティング業務(Short)と定義している。経理に関わるデューデリジェンス、株式価値評価などのバリュエーション、IPO支援、会計に関わる各種意見書、M&A支援など幅広い案件を手掛けている。
経理実務に継続に関与しているなかから、経理実務に関連する様々な単発的なコンサルティング業務を追加受注している。同社グループのクライアントには大企業グループが多いことから、いずれかの組織や部署からの需要があることや、信頼関係が構築されていることから、単発的なコンサルティングではあるが比較的安定継続して受注することができている。
◆ その他の事業
教育事業としては、上場企業・大企業に勤務する経理担当者や管理職、経理部門以外の経営管理者、経理職を目指す学生をターゲットとした経理部プロフェッショナル・スクールを運営している。また、企業研修も行っている。
人材派遣紹介事業は、スクールや企業研修で育てた人材の活躍の場を広げることを目的としている。コンサルティングによるサポートに加えて、人材不足から人材の派遣や紹介を求めるクライアントも存在しており、人材派遣紹介はコンサルティングとの親和性も高い事業と言える。