キッズスター(248A)ストック型で高い営業利益率を確保している

2024/10/07

子供向け社会体験アプリ「ごっこランド」等を提供
ストック型で高い営業利益率を確保している

業種:情報・通信業
アナリスト:大間知淳

◆ 子供向け社会体験アプリ「ごっこランド」等を提供
キッズスター(以下、同社)は、知育アプリの一種である子供向け社会体験アプリ「ごっこランド」や、企業の事業開発支援・受託開発を行う「サービスデザイン」等の周辺サービスを提供している。また、同社はくふうカンパニー(4376東証グロース)の連結子会社である。

同社は、サイバーエージェント(4751東証プライム)や、アイフリークモバイル(3845東証スタンダード)での勤務経験を持つ現代表取締役の平田全広氏らによって、14年10月に設立された。創業メンバーである松本健太郎取締役と、16年に取締役に就任した金城永典氏も、アイフリークモバイル出身者である。

◆ 設立からくふうカンパニーの傘下に入って上場に至った経緯
同社の主力サービスであるごっこランドは、アイフリークモバイルの知育アプリ事業部門にて、平田氏のアイデアを基に開発され、13年5月に配信が開始された。14年3月期のアイフリークホールディングスにおける知育アプリ事業部門の売上高は13百万円(売上高構成比1.0%)に過ぎず、損益も赤字であった。アイフリークホールディングスは、事業の選択と集中を進めるため、当時、新規事業に積極的だったクックパッド(2193東証スタンダード)が14年10月に100%出資して設立された同社に知育アプリ事業部門を譲渡した。

16年3月に、クックパッドにおいて創業者と当時の取締役兼代表執行役であった穐田誉輝氏の間で経営方針に関する対立が発生したこと等に伴い、同社は同年6月にMBOによってクックパッドから独立した。その後、穐田氏は18年10月にくふうカンパニー(旧くふうカンパニー、現くふう住まい)の取締役に就任した。

独立後、同社はIPOを目指していたが、21年1月に、IPOの目標を共有するくふうカンパニーの連結子会社となった。21年10月に、共同株式移転の方法により、ロコガイドとくふう中間持株会社(現くふう住まい)の完全親会社となるくふうカンパニー(新くふうカンパニー)が設立されると、穐田氏はくふうカンパニーの取締役兼代表執行役に就任した。22年1月に、同社株式は、くふう中間持株会社からくふうカンパニーに譲渡された。

上場時点で、同社の議決権は、穐田氏が議決権の過半数を所有しているくふうカンパニーによって34.7%、穐田氏自身によって28.0%が所有されている。くふうカンパニーと穐田氏は、くふうカンパニーが決定した内容と同一の内容の議決権行使が可能となる株主間協定書を締結しており、くふうカンパニーは同社の親会社に該当する。

現時点において、同社とくふうカンパニーの間に取引関係はなく、役員の兼務、従業員の派遣、出向及び受け入れ出向等の人的関係もない。細田正志取締役及び村田吉隆取締役監査等委員は、くふうカンパニーグループの出身者であるが、現時点で他社の役職を兼務していない。

◆ ごっこランドを中心としたサービス構成
同社はインターネットメディア事業の単一セグメントであるが、売上高をごっこランド&ジモトガイド、BtoCサービス、サービスデザイン、その他に区分している。23/12期におけるサービス別売上高比率は、ごっこランド&ジモトガイド81.70%、BtoCサービス4.05%、サービスデザイン13.30%、その他(広告収入等)0.95%、であった(図表1)。なお、ごっこランド&ジモトガイドの売上高の大部分はごっこランドによるものである。

① ごっこランド
ごっこランドは、主に3歳から10歳の子供達がスマートデバイス上で楽しみながら社会体験(ごっこ遊び)が可能になる知育アプリである。子供ユーザーの利用を無料とする一方で、企業・団体から出店料を受領している。子供達に対しては、楽しみながら出店企業等の職業を疑似体験するゲームを提供すると共に、親を含めて、企業ブランド、製品及び各自治体に関する理解を深め、ファンの創出につながっていくことが企業・団体に評価されている。

同社は、各企業・団体から、ごっこランドのデジタルコンテンツの開発とサービスの運営を請負うが、両者は相互関連性が高く、単独で顧客が便益を享受できないため、単一の履行義務に該当すると判断し、顧客とのサービス契約期間(最低2年)に亘り、契約に基づく報酬総額を按分して出店料として売上計上している。

また、同社は、23年8月に、ごっこランドの海外版である「Gokko World」の第1弾となるベトナムでの配信を開始した。日本で培ったごっこランドのビジネスモデルを基に、子供世代の人口増加と経済成長が見込まれるアジアを中心にGokko Worldを展開する方針である。24年6月末の累計ダウンロード数は78万件に達しており、24/12期末には120万件を超える見込みとなっている。一定規模のユーザー数を確保したため、24年6月からはベトナム版の法人営業を開始した。日系大手食品メーカーからは既に出店の合意を得ており、今後も日系企業と現地企業からの出店が見込まれている。

24年7月には、ごっこランドのリアル展開として、大規模ショッピングモールや商業施設におけるファミリー向けイベント「ごっこランドEXPO」の開催を開始した。ごっこランドEXPOでは、子供達が楽しみながら学べる企業協賛ワークショップの開催や、クイズラリー、フォトスポット等を提供している。1開催当たり、出展企業と開催施設から収益を得るビジネスモデルとなっている。

② 地域体験ガイドブック「ジモトガイド」
ジモトガイドは、21年4月にごっこランド内の新設カテゴリーとして開始された、子供目線で見つけた地域の魅力を掲載したデジタルガイドブックを提供するサービスである。動画を再生するように、自動でナレーションが再生されてページ送りされる仕様で、まだ文字が読めない子供でも楽しめるサービスとなっている。当サービスは、地方自治体や地場の協賛企業から掲載料を受け取るビジネスモデルとなっている。

③ BtoCサービス
BtoCサービスは、同社が独自に企画、開発したユーザー課金型のサービスである。同社は、NTTドコモが13年11月から運営している総合知育サービス「dキッズ」に3種類の知育アプリを開発、提供している。収益の分配契約に基づき、ユニークユーザー数に応じた成果報酬をNTTドコモから受領している。現時点でBtoCサービスは、dキッズ向けだけであるが、子供の特性や長所を見出せるような、親世代ユーザー向けのサービスの提供を検討している。

④ 事業開発支援・受託開発「サービスデザイン」
サービスデザインは、同社が培ってきた子供向けアプリの企画・開発のノウハウ(企業のサービスのファンになってもらうためのノウハウ)を、顧客である企業に提供することで、デジタルを通じて、企業が持つコンテンツ資産の活用を一気通貫でサポートするサービスである。具体的には、各企業キャラクターのアプリ化、企業独自のアプリ展開、スマートデバイス向けコンテンツの受託開発等の開発支援、PoC注1支援を行っている。本サービスは、共同開発パートナーや顧客との間で開発支援契約を締結し、収益を得ている。

◆ 営業利益率が高く、財務体質も健全である
売上高の約8割を占めるごっこランドは、概ね6カ月間でデジタルコンテンツを開発し、サービス提供が開始されると、解約されない限り、固定料金である出店料を毎月、売上計上するビジネスモデルであるため、同社のビジネスモデルはストック型に該当する。

なお、23/12期末時点において、ごっこランドを中心とした残存履行義務に配分した取引価格は、1年以内が377百万円、1年超2年以内が224百万円、2年超3年以内が47百万円、3年超が3百万円であり、合計は653百万円に達している。

同社の売上原価は、開発部門の労務費、外注費、経費(フリーエンジニアに対する業務委託費等)を合計した当期総製造費用から他勘定振替高(ソフトウエア仮勘定として資産計上)を控除し、ソフトウエア償却費とその他原価(BtoCサービスに係るライセンス利用料や、全サービスに係るクラウドサービス利用料等)を加算して算出される。このうち、外注費やライセンス利用料以外は固定的な費用と推測される。23/12期において、各項目の売上高に対する比率は、労務費25.6%、外注費7.3%、経費5.5%、他勘定振替高15.6%、ソフトウエア償却費12.7%、その他原価2.5%であった。結果、原価率は37.9%、売上総利益率は62.1%であった。

一方、23/12期の販売費及び一般管理費(以下、販管費)は316百万円、販管費率は41.4%であった。内訳としては、人件費が148百万円(売上比19.4%)、広告宣伝費が32百万円(同4.2%)、支払報酬が26百万円(同3.5%)、販売手数料が24百万円(同3.2%)であり、ごっこランドの販売代理店に支払う販売手数料を除くと、固定的な費用が中心と推測される。

23/12期の営業利益率は、20.6%と高い水準であった。証券リサーチセンターでは、同社の限界利益率は8~9割程度と推測している。

23/12期末の自己資本比率は53.8%であり、さほど高くはないが、有利子負債はなく、財務体質は健全である。負債の中心は、負債純資産合計の32.2%を占める前受収益(248百万円)である。ごっこランドには、毎月払いと前払いの顧客が存在する。前受収益の多くは、2年以上の契約期間であるごっこランドの出店料を1年分以上の前払いで受け取ったものである。

資産サイドを見ると、23/12期末において、現金及び預金が497百万円と、総資産の64.4%を占めている。その他の資産の中では、アプリコンテンツ等である無形固定資産(156百万円、ソフトウエア及びソフトウエア仮勘定)や、売掛金及び契約資産(45百万円)、繰延税金資産(41百万円、減価償却超過額等)の金額が比較的大きいが、有形固定資産等の設備投資の負担は重くない。

◆ ごっこランドの出店数、累計ダウンロード数等を重視している
同社は、KPIとして、ごっこランドの出店数、累計ダウンロード数、プレイ回数を挙げている。KPIの推移は図表2の通りである。

13年5月のサービス開始後、累計ダウンロード数は、17/12期に200万件を突破し、24年6月末では677万件に達している。ユーザーのプレイ回数は、22/12期が2.3億回、23/12期が2.4億回であった。売上高の増加につながる企業・団体の出店数は、22/12期末に63店となり、24年6月末では78店に増加した。

同社には数多くの受賞歴がある。主な受賞としては、BabyTech Award Japan2019最優秀賞、第13回キッズデザイン大賞(19年)、22年度日本子育て支援大賞、東京都こどもスマイルムーブメント大賞 優秀賞(23年)、令和5年度青少年の体験活動推進企業表彰奨励賞等が挙げられる。

◆ 特定の顧客には依存していない
主力サービスであるごっこランドが月額固定の出店料を受領する料金体系であることと、出店数が約80に達していることから、特定の顧客には依存しないビジネスモデルとなっている。但し、23/12期においては、トヨタ自動車(7203 東証プライム)からサービスデザインの大型案件を獲得したため、トヨタ自動車向けが売上高の1割を上回った(図表3)。

ごっこランドの顧客としては、ライオン(4912 東証プライム)、白洋舎(9731 東証スタンダード)、ファイザー、ハーゲンダッツジャパン、Uber Eats Japan、アート引越センター等が挙げられる。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。