Liberaware(218A)ドローンで撮影した画像をもとにした3次元データの分析も手掛ける

2024/08/06

屋内狭小空間に特化した小型ドローンを製造
ドローンで撮影した画像をもとにした3次元データの分析も手掛ける

業種:精密機器
アナリスト:星匠

◆ 屋内狭小空間向け小型ドローンの製造とソリューションを提供
Liberaware(以下、同社)は、現代表取締役の閔弘圭氏によって16年8月に設立された。「誰もが安全な社会を作る」をミッションに掲げ、「見えないリスクを可視化する」というビジョンのもと、自社開発したドローンとドローンで撮影した画像・映像などの加工・処理・管理といったソフトウェアを融合させたソリューションを提供している。

同社のドローンは、施設や設備の狭小空間においても飛行できる小型ドローンで、設計から製造まで自社で手掛け、部品も国内メーカーと共同で開発している。現在は人により操縦されているが、GPS情報が得られない屋内の閉鎖空間(狭く・暗く・危険な空間が多い)において自律飛行が可能なドローンの開発を進めている。

主要顧客は、製鉄業、鉄道業、建設業、製造業、官公庁などの多くの点検施設・設備を有する企業、団体である。施設や設備を多く抱える企業は、点検にかかる日数、人員数、足場を組む費用などの負担が大きいが、同社のドローンを活用することで、点検の効率化が可能になる。また、ドローンで撮影した画像・映像をもとに、3次元データ化することで、時系列での分析が可能となり、施設や設備の劣化など異常を検知し、老朽化による事故を防ぐことが可能となる。

同社は、ドローンの製造・販売、及びドローンなどによるインフラ・プラントの調査・点検や測量に資するデータの提供を行う「ドローン事業」、ドローンなどにより取得したデータの画像処理技術により、映像や3次元データなどの異常検知に役立つ情報などをデジタル上に構築・提供する「デジタルツイン事業」、受託開発や技術力、ノウハウをベースに新ソリューションを開発する「ソリューション開発事業」の3事業を展開している。

(1)ドローン事業
ドローン事業では、調査・点検・測量などを目的としたドローン撮影画像の提供を行う点検ソリューション、ドローンの販売やレンタルなどのプロダクト提供サービスを展開している。

1)点検ソリューション
点検ソリューションとして、自社開発した屋内専用の小型ドローン「IBIS」を活用し、調査、点検、測量などを目的としたドローン撮影画像を提供している。「IBIS」は、製鉄業などの現場における綿密な実証実験のもとで開発された20cm四方程度の小型ドローンである。屋内の暗所・狭小空間、鉄粉の舞う環境や高温環境、及び危険かつ点検が困難な箇所を人に代わって、接近目視と同等の調査・点検を行えるという特徴を有している。

23/7期において、過年度より継続して利用している顧客への売上高割合は、70%を超えており、リカーリング性が高いビジネスモデルとなっている。

2)プロダクト提供サービス
プロダクト提供サービスでは、ドローンを顧客自身で操縦し、施設・設備の調査・点検・測量などに活用したい顧客に対して、同社の「IBIS」と必要備品一式の販売、レンタルサービス、修理サービスや講習会サービスを提供している。

23年6月に「IBIS」の次世代機「IBIS2」をリリースしたが、24年5月末時点で機体販売は28セット(レンタルバック取引注1に利用した機体販売6セットを含む)、レンタルセット数は33セットとなっている。

(2)デジタルツイン事業
デジタルツイン事業は、東日本旅客鉄道(9020東証プライム)の子会社2社と同社とで設立したCalTa(同社の出資比率は34.0%)が提供するインフラ事業者のDX実現に向けたデジタルツインソフトウェアサービスTRANCITYを用いたデータ処理・解析サービスや、TRANCITYプラットフォーム向けライセンスを提供している。

1)データ処理・解析サービス
データ処理・解析サービスは、「IBIS」で撮影した施設・設備などの動画データに加え、動画データ以外の周辺情報(例えば、ガス濃度、温度など、ドローンなどから取得した情報)を、デジタルツインのTRANCITYプラットフォーム上に構築するための3次元化・オルソ化注2などのデータ加工処理、3次元データの解析(経年変化解析や異常検知など)、BIM注3などのデジタル図面化を行っている。

「IBIS」による撮影データだけではなく、屋外用ドローンにより撮影した動画データやレーザースキャナによる3次元データを加工、解析するサービスも提供し、顧客が設備の維持管理や建設現場を管理するうえで必要となる様々な情報の一元管理を支援している。

2)TRANCITYプラットフォーム向けライセンス提供
同社は、CalTaのTRANCITYプラットフォームに、画像処理に関するソフトウェアLAPIS注4のライセンスを提供している。

主要顧客は、調査・点検・測量などを目的としてドローン撮影したデータを活用する鉄道会社や建設会社である。インフラ、設備の維持管理のためにデータを蓄積し、過去のデータと比較、分析するため、他社サービスに乗り換えにくく、継続的に利用されるという特徴を有する。

(3)ソリューション開発事業
ソリューション開発事業では、インフラ関連や建設関連の顧客と共同開発や受託開発によって、新たなソリューションを提供している。ドローンやデジタルツインプラットフォームの開発、ユーザー保有施設のデジタル管理ソフトウェアなど、同社の技術力とノウハウをもとにハードウェアからソフトウェアまで幅広いソリューションを開発している。

事例としては、日本製鉄(5401東証プライム)との高温環境対応ドローンの共同開発、東京電力グループとの高放射線環境下でのドローンの活用といった特殊環境特化型ドローンの共同開発などが挙げられる。また、ソリューション開発事業として、東日本旅客鉄道グループから受託した開発が、TRANCITYの開発の発端となっている。

◆ 関連会社であるCalTa向け売上高が約2割
同社は、CalTaがエンドユーザーから獲得した設備などの調査・点検業務や受託開発案件などの全部または一部の受託、TRANCITYの画像処理に係るライセンス供与や当該ソフトウェアの構築・アップデートを手掛けている。24年5月末時点でのライセンスの供与数は100件で、CalTa向け売上高は23/7期で2割程度を占めている(図表1)。

◆ 国土交通省のプロジェクトへの参画
同社は、ドローンに関する国土交通省のプロジェクトに参画しており、委託された研究や実証実験などの各プロジェクトにおいて発生した研究開発費用については、補助金として受け取っている。

取り組んでいる事業としては、「国土交通省 中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)」における研究開発テーマのひとつである「鉄道施設の維持管理の効率化・省力化に資する技術開発・実証」において採択された事業である「鉄道環境に対応したドローンを用いた鉄道点検ソリューションの構築」がある。コンソーシアムメンバーや協力会社と連携して事業を推進し、事業期間は28年3月までで、補助金の交付上限額は52億円となっている。

「建設施工・災害情報収集における高度化(省力化・自動化・脱炭素化)の技術開発・実証」のテーマにおいては、同社の「建設現場における施工管理の省力化・高度化技術の開発」が採択され、コンソーシアムメンバーや協力会社と連携して事業を推進する。補助金の交付上限額は4.7億円で、事業期間は26年6月までとなっている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。