豆蔵デジタルホールディングス(202A)MBOを経て事業の選択と集中を果たす

2024/07/02

顧客企業のデジタルシフトを実現し、デジタル競争力を高める
MBOを経て事業の選択と集中を果たす

業種:情報・通信業
アナリスト:髙木伸行

◆ 顧客企業の持続的なデジタル革新を支援
豆蔵デジタルホールディングス(以下、同社)グループは、同社及び連結子会社である豆蔵、コーワメックス、エヌティ・ソリューションズの計4社で構成されている。情報関連サービス事業を主たる業務としており、事業は「クラウドコンサルティング」、「AIコンサルティング」、「AIロボティクス・エンジニアリング」、「モビリティ・オートメーション」の4つのサービスに大別される(図表1、図表2)。また、全サービスを網羅する技術・ノウハウの教育・指導を行う教育サービスも提供している。

(1)クラウドコンサルティング
同サービスは、豆蔵及びエヌティ・ソリューションズが提供している。企業がデジタルビジネスを構築するためにはデータ蓄積・活用が前提となることから、オペレーション自体がデジタル化されていることが必要となる。既存システムのクラウド化や技術リソースの内製化などをまず行わなければならないという、デジタルビジネス実現の前段階にある企業が多いのが現状である。

クラウドコンサルティングでは、このような顧客企業に対してデジタル技術を活用して業務の効率化や生産性向上などを目的に社内業務や組織内の変革といった顧客企業内のDX(インターナルDX)を支援している。ITベンダーへシステムの構築・運用を任せるのではなく、顧客企業が自社のエンジニアにより内製化できるよう教育サービスの提供も含めて支援している。

豆蔵は、事業法人向け基幹システム刷新に向けて、IT人材の育成を含むIT内製化支援、クラウドネイティブアーキテクチャ注1の設計支援、DevOps注2導入支援やアジャイル開発注3支援などを行っている。

エヌティ・ソリューションズはERP事業に特化したコンサルティング会社でSAPやMicrosoft社のDynamics 365の導入を行い、企業の経営情報の見える化、DX化を支援している。

(2)AIコンサルティング
豆蔵が提供しているサービスで、クラウドコンサティングが顧客企業の業務について生産性や効率性の向上、並びにサービスや製品の開発に活用できるようにデータ収集・分析のプラットフォーム構築に関するサービスであるのに対して、AIコンサルティングは新しいデジタル技術を使った製品・サービスの開発や消費者に関するデータ分析に基づき消費者ニーズや需要予測につなげるという、いわゆる外部に向けた業務のDX(エクスターナルDX)に重点を置いている。

DXを推進している顧客企業に対してAI戦略の立案、AIやビッグデータを活用できるようにするためのグランドデザインの構築、データサイエンティストによるデータ分析、AIアルゴリズム構築と開発・運用、顧客企業の自前での運用に欠かせない人材育成などを行っている。

(3)AIロボティクス・エンジニアリング
豆蔵が提供しているサービスで、製造業を主要顧客としている。産業ロボットの開発支援サービス、自動車分野における上流工程のコンサルティング業務や研究開発支援を行っている。

各種のソフトウエアプロダクトをベースとして、AIやロボットなどの先端技術を活用したシステム構築についてのコンサルティングを行うだけではなく、ソフトウエアに加えて、メカニカル(機械)、エレクトロニクスといった知見を活かして試作開発まで行っている。

(4)モビリティ・オートメーション
自動車、船舶、航空機、ロボットなどを構成する各機能の設計開発を行っている。ソフトウエア、メカニカル、エレクトロニクス、AIといった保有する技術を活かして、デジタルシフトを実現するための産業用機械やモビリティ分野における開発・設計から生産まで、すべての工程において支援している。

同サービスの主要顧客はデンソー(6902東証プライム)の子会社で情報処理・制御システムのソフトウエア開発・設計を行うデンソーテクノである。デンソーテクノ向けの売上高の大半はモビリティ・オートメーションに関するもので、デンソーテクノへの依存度は低下しているものの、全社売上高の2割を超えて推移している(図表3)。

◆ MBOを経て選択と集中を進め事業を再構築
同社は06年に設立された豆蔵ホールディングスを前身としており、20年6月にMBOを目的に設立された会社の完全子会社となり、東京証券取引所の上場を廃止した。

顧客企業のニーズがDXに向かうなか、AI、クラウドサービスなどを組み合わせたDXを新たに長期的な視点で既存事業に取り入れて行かないと顧客基盤を失いかねないという危機感や優秀なエンジニアの確保に向けて先端技術領域への投資強化による魅力的な開発環境の整備、エンジニアの人数・受注工数だけに頼らないで売上の拡大が図れる質の高いビジネスへの展開など、既存事業を発展的に迅速且つ大胆に再構築しなければならないという考えに至った。

このような転換に向けては、短期的には業績の悪化につながるリスクがあり上場を続けたままでは、株価への悪影響を与え株主に不利益をあたえることが懸念されたため、MBOを実行することにより非上場化し、経営改革を実行した。

MBOを行った時点では豆蔵ホールディングス傘下に10社の子会社があったが、その後、一般的なSIerと異なり「DXコンサルティングに近いビジネスを行っている」、「製造業への基盤・知見を有している」という点においてシナジーの大きい、豆蔵、コーワメックス、エヌティ・ソリューションズの3社に絞り込み豆蔵デジタルホールディングスの傘下に置いた。これにより、人数に頼る労働集約的な要素の強かった「豆蔵ホールディングス」から知識集約的要素の強い事業・サービスに重点を置いた事業内容を持つ「豆蔵“デジタル”ホールディングス」へと生まれ変わった。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。