ハンモック(173A) クラウド型サービスの拡大とAI OCRによるデータ入力BPO業務で成長目指す

2024/04/19

PC等のIT資産管理ソフト、営業支援ツール、データ入力のOCRシステムを提供
クラウド型サービスの拡大とAI OCRによるデータ入力BPO業務で成長目指す

業種:情報・通信業
アナリスト:鎌田良彦

◆ 3つの事業領域でITを活用した製品・サービスを提供
ハンモック(以下、同社)は、ITを活用した製品・サービスの開発・販売を行っており、PC等のIT資産管理やセキュリティ対策を行うネットワークソリューション、名刺管理を始めとする営業支援ツール等を提供するセールスDXソリューション、AI OCR注1を用いデータ入力を効率化するAIデータエントリーソリューションの3つのソリューションを提供している。

23/3期の売上高構成比は、ネットワークソリューションが63.9%、セールスDXソリューションが24.1%、AIデータエントリーソリューションが11.9%を占めた。足元ではセールスDXソリューションの売上高構成比が上昇傾向にある(図表1)。

◆ ネットワークソリューション
ネットワークソリューションでは、企業のPCネットワーク等のIT資産管理、セキュリティ対策を行うソフトウェアを「AssetView(アセットビュー)」シリーズとして開発・販売している。AssetViewは、ソフトウェアライセンス管理、Windows Updateやアプリケーション配布といったIT資産管理機能、及びPC操作ログ管理、USB等のデバイス制御、ウイルス対策等のセキュリティ対策機能を備え、これらを1つのシステムで統合的に管理できる。

AssetViewシリーズには、オンプレミス型のAssetView、クラウド型としては、AssetViewの機能をそのままクラウド環境で利用できるAssetView CLOUD及び、UI注2等を刷新し、現在開発中で一部の機能がリリースされているAssetView Cloud+がある。何れのサービスも、単体機能ごとの利用が可能であり、顧客は必要な機能を組み合わせて利用することができる。

◆ セールスDX ソリューション
セールスDXソリューションでは、営業支援ツールの「ホットプロファイル」と、新規顧客開拓ツールの「ホットアプローチ」の2つをクラウド型サービスとして提供している。

1) ホットプロファイル
ホットプロファイルは、法人向け営業を支援するための名刺管理機能を始め、SFA注3/CRM注4機能を持っている。具体的には、名刺管理機能で取り込んだ名刺データに同社の企業データベースから企業の属性情報等を付与して顧客データベースを作成し、その顧客への営業履歴や、案件管理、顧客に関する最新ニュース等を時系列で一元管理することができる。名刺管理機能のみの利用といった単体機能の利用や必要な機能の組合せによる利用もできる。

2) ホットアプローチ
ホットアプローチは、新規顧客開拓に特化したMA注5ツールである。同社が独自に作成した480万社以上(24年1月末)の企業データベースからアプローチしたい企業リストを作成し、企業がWebサイト上で公開している問い合わせ窓口に自動で一斉にメッセージを送るフォーム営業等を行うことができる。

ホットアプローチはホットプロファイルのプラットフォーム上で提供できるため、2つのツールを組み合わせて利用することで、見込顧客の獲得、顧客への提案、契約締結、受注後の顧客管理といった法人営業のプロセスを網羅した営業支援を行うことができる。

◆ AIデータエントリーソリューション
AIデータエントリーソリューションでは、AI OCR技術を使って帳票類を読み取ってデータとして取り込む、データ入力業務効率化のソフトウェアを提供している。主力製品はオンプレミス型の「AnyForm OCR」とクラウド型の「WOZE(ウォーゼ)」の2つである。

1) AnyForm OCR
AnyForm OCRは同社が自社開発したAI OCRエンジンを搭載したオンプレミス型製品で、サーバーやPCにAnyForm OCRを導入して利用する。機能の異なる2つのOCRエンジンを搭載することで、読み取り結果が異なった場合に修正必要箇所として識別し、確認・修正作業に回す特許技術のWOCR(ダブルオーシーアール)を採用している。

量的に多く、OCRで読み込んだデータを会計システムに取り込んで利用する等の理由から、受注伝票等の処理に使われることが多い。

①OCRで読み込む項目の設定等を行うOCR帳票設計を顧客側でできるため、顧客の業務に合わせた利用が可能、②オンプレミス版であるためデータ漏洩のリスクが少ない等の特徴を持つ。

2) WOZE
WOZEはクラウド型であるため、製品のインストール作業が不要であり、OCR帳票設計も同社が行うため、導入時の顧客の作業負担が小さくてすむ。AnyForm OCRと同様にWOCRの技術を用いており、修正必要箇所の確認と対応は、同社と契約した在宅ワーカーが行う。顧客は帳票等の画像をWOZEにアップロードするのみであるため、データ入力関連業務の削減が図れる。AnyForm OCRに比べて、幅広い帳票への対応が可能となっている。

◆ 販売チャネルと収益構造
ネットワークソリューションでは、販売は直接販売の他、大塚商会(4768 東証プライム)等の販売代理店経由の販売、日立ソリューションズ(東京都品川区)への一部機能のOEM提供がある。オンプレミス型のAssetViewの主な収益は、製品販売及び保守・導入サポートに対する対価であり、クラウド型のAssetView CLOUDやAssetView Cloud+の主な収益は利用期間中に経常的に受け取る利用料(リカーリング収益)となる(図表2)。リカーリング収益から成るクラウド型の売上比率は、22/3期の15.2%から23/3期には24.9%に上昇している。

セールスDXソリューションでは、販売は直接販売の他、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ(東京都千代田区)、大塚商会、JBCC(東京都中央区)等へのOEM提供がある。OEM提供しているサービスを含め全てクラウド型であるため、収益は経常的に受け取るリカーリング収益となる。

AIデータエントリーソリューションでは、販売は直接販売の他、大塚商会等の販売代理店経由の販売がある。オンプレミス型のAnyForm OCRの主な収益は製品販売及び保守・導入サポートに対する対価であり、製品販売のスポット収益が中心である。クラウド型のWOZEは従量課金又は固定料金によるリカーリング収益である。足元ではオンプレミス型のAnyForm OCRからの収益が太宗を占める。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。