イシン(143A)企業の自治体向けマーケティング支援の公民共創事業の顧客拡大で成長目指す

2024/03/27

3つの事業領域でメディア、ソリューション、プラットフォームを提供
企業の自治体向けマーケティング支援の公民共創事業の顧客拡大で成長目指す

業種:サービス業
アナリスト:鎌田良彦

◆ 3つの事業領域でメディア、ソリューション、プラットフォームを提供
イシン(以下、同社)グループは、同社と子会社3社、関連会社1社からなり、民間企業の自治体向けマーケティングを支援する「公民共創事業」、大企業のオープンイノベーションを支援する「グローバルイノベーション事業」、ベンチャー企業の採用支援等を行う「メディアPR事業」の3つの事業を展開している。

いずれの事業においても、顧客からの広告収入を得る「メディア」を起点に、顧客の課題を解決する「ソリューション」、サービスをシステムとして提供して利用料を得る「プラットフォーム」の3つのサービスを提供している。

24/3期第3四半期累計期間の売上高構成比は、公民共創事業が40.4%、グローバルイノベーション事業が27.7%、メディアPR事業が31.8%であった。同社が成長分野と位置付ける公民共創事業の売上高構成比が上昇している(図表1)。

上記の3事業以外に東南アジアやインドのベンチャーキャピタルファンドに投資する投資事業組合の運営を行っている。Ishin Global Fund I L.P.は投資事業組合であり、Ishin Global Fund I Limitedはその運営管理を行っており、共に同社の子会社となる。投資事業組合の運用資産と出資受入額が非支配株主持分として貸借対照表の純資産の部に計上され、運用損益が営業外損益で計上されるが、同社の最終的な損益への影響は、投資事業組合への出資比率2%分に留まる。

持分法適用関連会社のGMOベンチャー通信スタートアップ支援(同社出資比率20%)は、GMOインターネットグループ(9449東証プライム)との合弁会社で、ベンチャー企業への出資や経営アドバイス等を行っている。

◆ 公民共創事業
公民共創事業では、主に大手・中堅の民間企業を対象に、自治体向けのマーケティングを支援するサービスを提供している。

1) メディア:自治体通信
自治体通信は、自治体デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を中心に、様々な課題解決に取り組む自治体とその取り組みをサポートする民間企業を紹介する情報誌で、全国約1,780カ所の自治体に無料で毎号約34,800部(24年1月発刊時点)を配布している。23/3期には11回発行された。毎号20社程度の企業が紹介されており、一自治体での導入事例を紹介することにより、他の自治体での採用を促すことを目指している。収益は民間企業の紹介記事掲載による広告収入である。

2) ソリューション:テレマーケティング、ウェビナー等
ソリューションとしては、民間企業の自治体向けマーケティングの一環として、サービスの紹介等の架電業務の代行を行うテレマーケティング、自治体職員を対象としたオンラインイベントやセミナー等のウェビナー等がある。テレマーケティングでは、新規顧客の開拓で利用される場合が多く、ターゲットとする自治体の選定やトークスクリプトの作成を同社が支援している。テレマーケティングでは架電量に応じた対価を得ており、ウェビナーでは、企業からプランに応じた料金を徴収している。

3) プラットフォーム:BtoGプラットフォーム
BtoGプラットフォームは、企業の自治体向けWEBマーケティングを支援するサービスである。具体的には、同社が自治体職員向けに運営しているWEBメディア「情報通信Online」上に、①各企業専用のページを設置し、②自治体通信の記事掲載、③各企業のサービスカタログの設置、④企業のサービスリリースやセミナー開催の案内ができる。また、⑤自治体職員向けメールマガジンで各社のソリューション紹介、⑥自治体向けマーケティング施策について同社の社員と定期的に相談ができるカスタマーサクセスサービスも提供している。

同サービスの収益は企業からの月額利用料であり、①~③が利用できるライトプラン(月額3.5万円)、⑤までが利用できるスタンダードプラン(同10万円)、⑥までが利用できるプレミアムプラン(月額利用料は契約内容に応じて変動)の3つのプランを提供している。

◆ グローバルイノベーション事業
グローバルイノベーション事業では、日本の大手企業を顧客とし、国内外のスタートアップや成長産業の情報提供、ソリューションの提供により、大手企業のオープンイノベーションの推進を支援している。同事業は同社及び米国での現地スタートアップの調査や取材等を行う子会社のIshin USA, Inc.が担当している。

1) メディア:TECHBLITZ(テックブリッツ)
TECHBLITZは、国内外のスタートアップを取材し、ソリューションや技術の先進事例を紹介している。大手企業の担当者等が先進情報を収集するためのWEBメディアで、無料で閲覧できる。TECHBLITZは後述のBLITZPortal(ブリッツポータル)のWEBマーケティングツールとしての位置づけとなっている。

2) ソリューション:研修・イベントサービス
米国の大学の教授を講師としたグローバルイノベーション研修や、オープンイノベーションに特化したイベントの開催等を行っている。

3) プラットフォーム:BLITZ Portal
BLITZ Portalは日系大手企業を顧客とする、成長産業とスタートアップに特化した情報ポータルサイトで、国内外の成長産業やスタートアップ、技術の動向をレポートやデータベースとして提供している。データベースとしては、米国の大手スタートアップデータベース運営会社のCrunchbase, Inc.とライセンス契約を結び、Crunchbaseのデータの日本語版を搭載し、国内外で約305万社(23年11月末時点)の企業データを保有している。収益は顧客企業の利用者に付与するID数に応じた月額利用料である。

◆ メディアPR事業
メディアPR事業では、ベンチャー企業のブランディングと採用支援を行っている。

1) メディア:ベンチャー通信等の各種メディア、ベストベンチャー100
ベンチャー企業のブランディングと採用支援を行うメディアとしては、冊子版のベンチャー通信、WEBメディアのベンチャー通信Onlineがある。これらのメディアは主に新卒学生の採用のための記事広告を掲載するものである。現在はOnline版が中心となっている。ベンチャー通信は大学の就職課やベンチャー企業に配布される。これらメディアの収益は、記事広告掲載料である。

ベストベンチャー100は、ベンチャー企業向けのコミュニティ形成、ブランディング、採用支援を目的とした有料会員制サービスで、WEBメディア「ベストベンチャー100」への記事掲載や、カンファレンス、経営者交流会を開催している。収益は会員企業からの月額会費である。

2) ソリューション:大型イベント
成長企業に対してマーケティングをしたい企業の協賛を受け、ベンチャー企業の経営者を中心に集めた「ベストベンチャー100カンファレンス」を開催している。協賛企業には、自社サービスの紹介や経営者とのマッチングの機会等を提供している。

3) プラットフォーム:HIKOMA CLOUD(ヒコマクラウド)
HIKOMA CLOUDは企業のWEBサイトの採用ページ制作に特化したCMS注1で、プログラミングすることなしに、採用ページの制作ができる。そのほか、コンテンツの制作支援、求人広告の運用サポートも行っている。収益は、HIKOMA CLOUDの月額利用料及び求人広告の運用手数料等である。

>>続きはこちら(1,3MB)

一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

このページのトップへ