早稲田学習研究会(5869)大型の郊外型校舎の新規開設を継続して事業規模拡大を目指す

2024/01/05

群馬県、埼玉県を中心とした関東圏で集団指導塾「W早稲田ゼミ」などを展開
大型の郊外型校舎の新規開設を継続して事業規模拡大を目指す

業種:サービス業
アナリスト:佐々木加奈

◆ 集団指導塾などを運営する学習塾事業の単一セグメント
早稲田学習研究会(以下、同社)は、小・中学生を対象とした集団指導塾注1「W早稲田ゼミ」、高校生を対象とした集団指導塾「W早稲田ゼミハイスクール」、小・中学生及び高校生を対象とした個別指導塾注2「ファースト個別」を運営している。創業者で現代表取締役会長である吉原俊夫氏が個人事業として87年4月に群馬県太田市に早稲田家庭教師センターを開業し、88年4月に「W早稲田ゼミ」の1号校を開校、93年1月に同社を設立した。

23/3期の事業部門別の売上構成比は、ゼミ部門(「W早稲田ゼミ」の運営)が73.7%、ハイ部門(「W早稲田ゼミハイスクール」の運営)が18.8%、ファースト個別部門(「ファースト個別」の運営)が7.5%である(図表1)。

校舎(教室)の展開地域は群馬県、栃木県、埼玉県、東京都で、23年10月末の校舎(教室)数は「W早稲田ゼミ」35校、「W早稲田ゼミハイスクール」14校、「ファースト個別」10教室である(図表2)。

◆ ゼミ部門(「W早稲田ゼミ」の運営)
集団指導塾「W早稲田ゼミ」は、正社員を中心とした教師による質の高い授業ときめ細かなサポート体制により、小学生に対しては学力向上指導、中学生に対しては高校受験対策を行っている。「W早稲田ゼミ」の主な特徴は以下の通りである。

1)早い段階から5教科総合で指導を行い、内申点対策を徹底している
2)大型拠点では学力別に細分化したクラス分けを実施し、幅広い学力層の生徒を効率的に指導している
3)入試問題を徹底的に分析したオリジナル教材を作成している
4)数学の授業では原則、正社員教師1名とアシスタント2名の3名で1クラスを指導し、集団授業の効率と個別指導のきめ細やかな指導を両立している
5)生徒が理解できるまで無料補習を実施している(生徒1人当たりの年間平均無料補習時間は120時間)
6)担任制を採用し、担任教師は生徒一人一人に過去の合格者データに基づいた的確な進路指導を実施している
7)保護者会を実施して保護者と連携して生徒をフォローしている

◆ ハイ部門(「W早稲田ゼミハイスクール」の運営)
高校生を対象として大学受験対策を行う集団指導塾「W早稲田ゼミハイスクール」は、「W早稲田ゼミ」の卒塾者に対して高校準備講座を行うことなどで「W早稲田ゼミ」から継続して受講する例も多い。正社員を中心とした教師による質の高い授業や生徒の通学する高校に合わせた定期テスト対策の実施、蓄積したデータに基づいた進路指導などに特徴があり、難関大学を含めた多くの大学への合格者を出している。

◆ ファースト個別部門(「ファースト個別」の運営)
小学生、中学生、高校生を対象とした個別指導塾「ファースト個別」では、生徒1名を4名体制(指導に当たる正社員教師もしくは東大生を始めとした難関大生、教室長、副教室長、アシスタント教師)でサポートしている。生徒は授業日以外でも自習室を利用し、自習中に分からない点を教師に質問することが可能となっている。

◆ 集団指導塾及び個別指導塾の授業料などが収益
同社の収益は集団指導塾及び個別指導塾に通う生徒(保護者)が支払う授業料などである。「W早稲田ゼミ」、「W早稲田ゼミハイスクール」の入塾金(税込み)は小学生で5,500円、中学生で11,000円、高校生で22,000円、1カ月当たりの授業料(税込み)は小学生で1科目5,500円~6,600円、中学生で5科目19,800円~30,800円、高校生で1科目9,020円~である(図表3)。その他に教材費、利用に応じてオリジナルテスト(「学力診断ワセダ統一模試」等)の料金などが必要となる。

23/3期の事業部門別売上高を期中平均生徒数(ゼミ部門13,967名、ハイ部門2,626名、ファースト個別部門655名)で除して算出した生徒1名当たりの支払額(年間)の概算は、ゼミ部門322千円、ハイ部門438千円、ファースト個別部門698千円である。

同社の売上原価は、人件費、教材仕入に係る費用、賃借料や減価償却費、消耗品費など校舎(教室)で発生する経費である。23/3期は、人件費(給料及び手当、賞与、法定福利費を含む)が売上原価の70.0%を占めている。販売費及び一般管理費(以下、販管費)の主なものは広告宣伝費と管理部門に係る人件費で、販管費に占める割合は広告宣伝費が21.1%、給料手当が20.3%となっている。

◆ 大型の郊外型校舎を運営している点などが特徴
同社の特色及び強みとして、以下の点が挙げられる。
1)筆記試験や面接により厳選して採用した教師を2カ月~1年にわたる研修で育成し、質の高い指導ができる体制を構築していること
2)「県別、単元別、学校別、レベル別、時期別」などに細分化したオリジナル教材を提供し、生徒の学習理解をサポートしていること。また通常の教材に加え、オンライン学習システム「Wovie(ウービー)」を提供し、過去の授業をいつでも視聴できる仕組みを構築していること
3)送迎する保護者が利用できる駐車場を配備した大型の郊外型校舎を運営し、近隣だけではなく中長距離圏に居住する生徒も取り込んでいること。また、1拠点当たりの在籍生徒数が多いため、学力別クラス分けによる効率的な指導が可能となっていること(同社のゼミ部門の校舎は150~200坪規模の自社所有もしくは賃貸のビルが主体で、1校舎当たりの平均在籍生徒数は477名)

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資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。