テクニスコ(2962) 多彩な加工技術とその組み合わせで顧客ニーズに対応

2023/08/07

電子部品が発生する熱を放熱するヒートシンクや電子部品向けガラス製品を製造
多彩な加工技術とその組み合わせで顧客ニーズに対応

業種:金属製品
アナリスト:髙木伸行

◆ 産業機器や自動車向けにヒートシンク製品やガラス製品を製造・販売
テクニスコ(以下、同社)グループは、電子部品が発生する熱を吸収・放熱するヒートシンク製品、及び電子部品用ガラスに微細な形状加工や金属回路形成加工を施したガラス製品の製造・販売を行っている。

同社グループはヒートシンク製品及びガラス製品の製造・販売を行う同社、ガラス製品の製造・販売とヒートシンク製品の販売を行う中国のTECNISCO(SuZhou)、シルバーダイヤ製造及びヒートシンク製品の製造・販売を行うシンガポールのTECNISCO Advanced Materialsの連結対象子会社、並びに業績への影響が小さいため非連結対象のドイツのTECNISCO EUROPEで構成されている。

同社グループの売上高はヒートシンク製品、ガラス製品、その他に区分され、各々、22/6期の売上高の60.1%、22.2%、17.7%を占めている(図表1)。

また、海外売上高の比率が高く、22/6期では中国が41.5%、米国が15.7%、欧州が12.9%、そしてアジアが2.8%を占めている(図表2)。特に中国の拡大が顕著だが、レーザー機器メーカーであるWuhan Raycus Fiber Laser Technologiesへの売上高が急速に拡大し、中国での売上高に占める割合が21/6期の4割超から、22/6期には5割弱へ拡大したことが影響している。

(1) ヒートシンク製品
同社グループが扱うヒートシンク製品は電子部品が作動する際に発生する熱を吸収・放熱して、性能の低下や故障を防ぐための部品で、放熱板とも呼ばれる。同社グループは半導体レーザー注1、パワー半導体注2、MPU注3向けの高機能ヒートシンク製品を製造・販売している。

主な用途としては高出力半導体レーザー装置(溶接用、切断用、表面処理)などの産業機器向け、LiDAR注4センサー用レーザー機器などの自動車向け、医療機器や美容機器といったライフサイエンス向け、光・無線通信向けなどが挙げられる。

ヒートシンクのなかでも、同社グループは高機能ヒートシンクに注力している。一般的なヒートシンクの材料としては銅やアルミがあるが、これらの素材は、熱伝導は高いものの熱膨張が大きい。高い出力のレーザーを出す半導体素子は高熱となるため、銅やアルミを材料としたヒートシンクでは素子とヒートシンクの伸縮の差が大きく、素子を損傷してしまうことになる。

同社グループが得意とする高出力の半導体レーザー用のヒートシンクは、高い熱伝導を持つと同時に素子の熱膨張に近い素材である窒化アルミニウム(AlN)と銅(Cu)を複合構造としたCu/AlN/Cuや銅タングステン(CuW)を主な材料とした高機能製品である。これらの高機能ヒートシンク材料は複合材であるため、切削、切断、メッキ加工が難しくなる側面がある。

■ シルバーダイヤ
高出力レーザー用途の機器は、より高機能なヒートシンクが必要とされている。そのニーズに対応するため、非常に高い熱伝導を持つ銀とダイヤモンドの複合材料であるシルバーダイヤの製造に関する特許を持つオーストリアのPlansee(プランゼー)社と特許の使用許諾契約を16年12月に締結した。シンガポール子会社でシルバーダイヤを素材とした高機能ヒートシンク製品の製造及び開発を行っている。

シルバーダイヤ製品は、同社グループとしては初めて素材から手掛ける製品となる。化合物半導体(GaAs:ガリウム砒素、GaN:窒化ガリウム)と同程度の熱膨張係数で放熱効率を大幅に向上できるため、高出力化が求められる分野での利用が期待されている。

用途としては次世代高出力レーザー用サブマウント、データセンター、電気自動車や5G/6G通信の通信用デバイス、航空宇宙などの高成長が期待される分野が想定される。18年8月よりシルバーダイヤ製品のサンプル提供を開始しており、多くの顧客先でシルバーダイヤを利用した製品の量産に向けての取り組みが進んでいる。

(2) ガラス製品
同社グループの扱うガラス製品は光透過性、電気的絶縁性、気密性、耐薬品性などの特徴を持つ電子部品用ガラスに微細な形状加工や金属回路形成加工を行い、電子デバイスと組み合わせることで電子デバイスの機能性を向上する構成部品である。

各種センサー向け、モバイル機器向け、バイオ・医療向けなどの精密ガラス製品を提供している。ガラス貫通電極やガラス立体配線といった自動運転用のLiDARセンサーで活用されているガラス製品も提供している。

(3) その他
ヒートシンク製品、ガラス製品の他に、各種金属材料、シリコン材料、窒化アルミニウムや酸化アルミニウムなどのセラミック材料の加工製品を提供している。また、ガラスやセラミック加工用のダイヤモンドツールを提供している。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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