クラダシ(5884) 業界の先駆者として市場拡大の恩恵を享受できるポジションにある
フードロス削減に貢献するソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」を運営
業界の先駆者として市場拡大の恩恵を享受できるポジションにある
業種:小売業
アナリスト:藤野敬太
◆ フードロス削減に貢献する「Kuradashi」を運営
クラダシ(以下、同社)は、ソーシャルグッドマーケット「Kuradashi(クラダシ)」を運営している。新品販売の商流である1次流通、中古品販売の商流である2次流通に対し、新品にも関わらずに流通過程で廃棄される商品の商流は1.5次流通と呼ばれる。フードロスが社会課題として浮上する中で、「Kuradashi」はフードロス削減のための1.5次流通の仕組みを提供している。
同社は「Kuradashi」運営事業の単一セグメントだが、売上高は、(1)フードロス商品のオンライン販売の「Kuradashi」、(2)フードロス商品の常設店舗での販売の「Kuradashi Hub」、(3)食品メーカー等を対象にECマーケティングサービスを提供する「Kuradashi Stores」の3つに区分されている。22/6期の売上高の89%を「Kuradashi」が、10%を「Kuradashi Hub」が占めており、フードロス商品の販売が大半を占めている。
◆ 「Kuradashi」は「三方よし」の仕組み
「Kuradashi」はフードロス商品のECサイトだが、フードロス商品の出品者と購入者とをマッチングさせる機能を持っている。
食品メーカー等の出品者(以下、パートナー企業)は、商慣行の関係で実際には賞味期限が切れていないのに廃棄せざるを得ない商品を抱えたり、こうした廃棄を見越して実際の販売見込み以上の量を生産せざるを得なかったりといった、フードロスに関する課題を抱えている。
パートナー企業は、廃棄予定品や売れ残り等のいわゆるフードロス商品を「Kuradashi」に出品すると、従来であれば負担しなければならない廃棄コストを利益に転換することができ、課題も解消することができる。さらに、フードロスを削減して環境に配慮する企業としての評価を高めることができる。こうしたメリットを求めて、パートナー企業は23年3月末時点で累計1,319社にまで増えている(図表1)。
一方、購入者(以下、会員)は、「Kuradashi」を通じて、新規品に比べて安価に購入することができるほか、社会に貢献をしている充足感が得られる。そうしたメリットがあるため、世帯当たり食料支出の多い40~50代を中心に、累計会員数は23年3月末時点で462,879人まで増えている(図表1)。
また、社会貢献という観点では、同社は売上金額の一部を社会貢献活動への支援金としている。支援金は、社会課題の解決に取り組む外部団体への寄付、または、同社が実施する社会貢献活動の費用に充当する「クラダシ基金」への積み立てに使われ、23年3月末時点の累計支援金額は1.0億円にのぼっている。
このように、「Kuradashi」の取引を通じて、パートナー企業、会員、社会全体のそれぞれにメリットがある「三方よし」の仕組みとなっている。
◆ 「Kuradashi」の収益構造
「Kuradashi」には、2つの取引形態がある。ひとつは在庫型で、同社が商品を買い取り、在庫リスクを同社がとり、発送業務も同社が行う。もうひとつはマーケットプレイス型で、サイトへの商品掲載を先に行い、注文があった場合に、パートナー企業が直接会員に発送する。
どちらも販売価格は同社が決定する。しかし、誰が会員に発送するかの違いにより、在庫型の仕入原価には会員への配送料は含まれず、マーケットプレイス型の仕入原価には会員への配送料が含まれる。そのため、売上総利益率は、在庫型の方が高くなる。一方、在庫型では、荷造運賃が販売費及び一般管理費(以下、販管費)に計上されるが、マーケットプレイス型では荷造運賃が不要である。これらより、原価と荷造運賃等を変動費として算出される限界利益率は、在庫型でもマーケットプレイス型でも同水準となる(図表2)。
在庫型とマーケットプレイス型とが併存しているため、同社では、限界利益率を重要なKPIとして重視している。限界利益率の算出に用いる売上高に「Kuradashi」以外の売上高が含まれることもあり、他の四半期に比べて低下する四半期があるが、およそ24~26%台で推移することが多い(図表3)。
「kuradashi」の需要側の動向は、月間ユニークユーザーとARPPU(Average Revenue per Paid Userの略、月間ユニークユーザー1人当たり平均購入金額)で把握できる。四半期別にみると、マス広告を実施した23/6期第2四半期に月間ユニークユーザーが急増している。一方、ARPPUは22/6期第2四半期以降緩やかながら上昇が続いている(図表4)。
「kuradashi」の供給側の動向は、アクティブパートナー企業数とアクティブパートナー1社当たり平均仕入高で把握できる。四半期別にみると、アクティブパートナー企業数は緩やかに増加しているが、アクティブパートナー1社当たり平均仕入高が23/6期に入ってから水準を切り上がって推移している(図表5)。
◆ 「Kuradashi」以外(1): 「Kuradashi Hub」
「Kuradashi Hub」では、ポップアップ店舗や常設店鋪といったオフライン店舗を展開している。常設店舗については、23年5月に同社初の常設店舗をたまプラーザテラスに開設した。オンラインの「Kuradashi」と合わせてオンライン・オフラインの接点強化によるシナジーを追求している。
◆ 「Kuradashi」以外(2): 「Kuradashi Stores」
「Kuradashi Stores」は、フードロス商品の処分に悩むパートナー企業向けのサービスである。「Kuradashi」のオンライン販売のノウハウをデータ化し、ブランディング支援、ECコンサルティング支援、マーケティング支援のサービスが提供されているが、全体の売上高への貢献は僅少である。