ABEJA(5574) 人と AI の協調により大企業のコア業務でのAIシステム導入で成長を目指す

2023/06/16

AI活用で顧客のDXを支援するデジタルプラットフォーム事業を展開
人とAIの協調により大企業のコア業務でのAIシステム導入で成長を目指す

業種:情報・通信業
アナリスト:鎌田良彦

◆ AI活用で顧客のDXを支援するデジタルプラットフォーム事業を展開
ABEJA(以下、同社)は、自社開発したABEJA Platform上に、顧客の業務プロセスのデータに基づき、ディープラーニング技術を活用したAIシステムを構築し、そのシステム運用までを一貫して提供することで、顧客のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を支援するデジタルプラットフォーム事業を行っている。

◆ ABEJA Platform
ABEJA Platformは、DXの実行に必要なデータ生成からデータ収集、データ加工、データ分析、AIモデリングまでのプロセスを提供し、継続的・安定的な運用を行うソフトウェア群で、GCP(Google Cloud Platform)やAWS(Amazon Web Services)等のクラウド上で運営されている。

ABEJA Platformは、①カメラやセンサー等から必要なデータをインプットするコネクトレイヤー、②インプットされたデータの計算処理機能であるコンピューティングレイヤー、③暗号化等のセキュリティを保つ加工を行うセキュリティレイヤー、④データ生成・収集、データ加工、AIモデリング、大規模言語モデル等、業務を行うソフトウェアを生成するための技術を格納するコアレイヤー、⑤汎用的なAIモデルを準備したBaaSレイヤーの5つのレイヤーからなる。

顧客企業は、AIシステム構築に必要なデータをABEJA Platformに蓄積することで、コンピューティングリソースやセキュリティを担保した環境下で、データ加工等を行い、当該データとBaaSレイヤーにあるAIモデルを組み合わせることで、属性推定システム、異常検知システム等といったAIシステムを一から立ち上げるより簡便に構築することができる。

22/8期のABEJA Platform関連の売上高比率は83.6%であった。その他は大企業向けのITコンサルティングの売上高等である。

◆ ビジネスモデル
同社は、デジタルプラットフォーム事業の単一セグメントであるが、売上高はトランスフォーメーション領域とオペレーション領域の2つからなる。22/8期ではトランスフォーメーション領域の売上高構成比が84%、オペレーション領域が16%であった(図表 1)。

① トランスフォーメーション領域
トランスフォーメーション領域の売上高は、ABEJA Platform関連では、DX推進に向けた全体戦略の策定等のコンサルティングや、ABEJA Platform上でのAIシステム構築、既存システムとのインテグレーション、DXを推進するデジタル人材育成や組織組成等からなる。コンサルティングの期間は3カ月程度、AIシステム構築の期間は3~6カ月程度となっている。

ABEJA Platform関連以外では上記の大企業向けITコンサルティングの売上高等も含まれる。契約形態は、都度契約のフロー型となっている。

② オペレーション領域
オペレーション領域の売上高は、AIシステム構築時や稼働後のABEJA Platformの利用料や、ABEJA Platform上で運営する小売事業者向けのサービスであるABEJA Insight for Retailの収入等からなる。オペレーション領域の契約形態は毎月利用料等を受け取るストック型となる。

ABEJA Insight for Retailは、店舗に設置したカメラ等の機器を通して消費者の動線分析や年代・性別の推定を行い、入店から購買に至る消費者行動をデータとして可視化・数値化することで、店舗の課題を客観的に把握し、運営の改善に繋げるためのSaaS型サービスである。23年2月時点で小売業中心に553店舗に提供している。

◆ 主要販売先
同社は、21年4月にSOMPOホールディングス(8630東証プライム)と資本業務提携契約を結び、SOMPOホールディングス子会社のSOMPOLight Vortexが同社の既存株主から発行済株式の21.96%を取得し、同社はSOMPOホールディングスの関連会社となった。上場後もSOMPOホールディングスの関連会社にとどまる見込みである。

SOMPOホールディングス向けの売上高は資本業務提携後の21/8期から本格化し、売上高比率は、21/8期から23/8期第2四半期累計期間では30%強から40%弱で推移している(図表 2)。

売上高の中身としては、国内損害保険の引受業務における工数削減のシステム構築や、介護事業では被介護者の属性・介護記録に基づいてAIが介護プログラムの提案を行う等、被介護者の自立を支援しケアマネジャーの負担を軽減するシステム構築、その他としては社員に対するDX人材研修等がある。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。