ココルポート(9346) 徹底的に「個別」と「支援」にこだわり、利用者の自立を促す福祉サービスを提供

2023/04/10

愚直に「The福祉」を追求し、障がい者の就労を支援
徹底的に「個別」と「支援」にこだわり、利用者の自立を促す福祉サービスを提供

業種: サービス業
アナリスト:髙木伸行

◆ 指定障害福祉サービス事業を展開
ココルポート(以下、同社)は12年1月に創業して以来、指定障害福祉サービスを提供している。

主たるサービスは、以下のとおりである。
1)障がいを持つ人がトレーニングを受け、働くために必要な知識やスキルを習得し、就職後も職場に定着できるようにする就労移行支援(図表1の①)
2)雇用された企業などで就労の継続を図るため、企業・事業所や関係機関との連絡調整、雇用に伴い生じる日常生活、または社会生活上の各問題に関する相談、指導・助言などを行う就労定着支援(同②)
3)障害福祉サービスの利用に関する相談に乗る指定計画相談支援(同③)
4)生活能力向上のための自立訓練(生活訓練)(同④)

売上高の大半は「就労移行支援・就労定着支援・指定計画相談支援サービス」で22/6期の売上高の88.5%を占めている(図表2)。残りは自立訓練(生活訓練)サービスによるものである。

◆ 就労移行支援、就労定着支援・指定計画相談支援サービス
1)就労移行支援
就労移行支援サービスとは障がいのある人に就労に向けたトレーニングを行い、働くために必要な知識やスキルを習得し、就職後も現場に定着できるサポートを行うサービスである。

通常週4日以上の通所から受け入れる就労移行支援事業者が一般的であるなか、同社は週2日程度の通所であっても、働く上で必要とされる働くことについての理解・生活習慣・作業遂行能力や対人関係スキルなどの基礎的能力の低い障がい者を幅広く受け入れている。この点が同社の就労移行支援サービスの特徴として挙げられる。23年1月末時点で就労移行支援事業所は66事業所を運営している。

また、一人ひとりの状況に応じた支援を行うことを意識しており、集団ではなく、「個別支援」を行うことを重視している。500を超えるプログラムを揃える一方で、プログラムへの参加を強制せず、利用者の意思を尊重し、個別のトレーニングを準備するなど柔軟に対応している。

同社は、本格的な定着支援が始まる入社6カ月までの間が職場定着に最も重要な期間と考え、入社後1カ月はほぼ毎週の面談を実施し、以降徐々に面談回数を減らしてゆきながら、入社後6カ月以降は次に述べる就労定着支援サービスに引き継いでいる。

2)就労定着支援サービス
就労定着支援サービスは改正障害者総合支援法に基づき18年4月から始まったサービスである。一般就労している障がいを持つ人が長く職場に定着できるよう支援するサービスで、同社は月1回以上の面談を行っている。就労してから6カ月経過後、就労3年6カ月までの間利用することができる。就労定着支援事業所は就労移行支援事業所に併設されており、23年1月末で53事業所を運営している。

3)指定計画相談支援サービス
23年1月末で5相談所を構えている。障がい福祉サービスの利用を行う際に必要なサービスの利用計画の作成・連絡調整等を行うサービス利用支援である。

◆ 自立訓練(生活訓練)サービス
障がいを持つ人が自立した日常生活や社会生活が送れるよう、生活の質の維持・向上のための訓練や助言などのサポートを行うサービスで20年4月より開始した。本人や家族にとって受け入れやすさを考え、「Cocorport College(ココルポートカレッジ)という名称の自立訓練(生活訓練)事業所で同サービスを提供している。23年1月末で23キャンパスを運営している。

自立訓練(生活訓練)サービス終了後は就労移行支援所に通所する人の増加につながるものと期待される。

◆ 首都圏での展開が中心だが、地方での展開も視野に
同社は東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県からなる首都圏を中心に66事業所を展開している。23年1月末では首都圏で54の就労移行支援事業所を展開している(図表3)。首都圏以外では愛知4事業所、大阪4事業所、兵庫2事業所、福岡2事業所を構えている。自立訓練(生活訓練)事業所は23事業所を展開しているが、首都圏が22事業所で残りの1事業所は大阪と、首都圏での展開が中心となっている。

同社の主な販売先として開示されている各県の国民健康保険団体連合会への販売高を見ると、都道府県別の売上高としては同社が本社を構える神奈川が一番大きく、これに埼玉、東京、千葉の順で続いており、首都圏での売上高が9割を超えている

出店については、ドミナント展開を基本としており、首都圏では積極的な出店方針を維持する意向である。愛知、関西(大阪、兵庫)、福岡といったエリアでは首都圏での展開で蓄積した出店ノウハウを基に今後ドミナンスを形成してゆく考えである。

◆ リクルート出身の3名の現経営陣の参画以降、事業が急拡大
代表取締役社長の佐原敦矢氏、取締役管理本部本部長の岩元勝志氏、総合支援事業本部本部長の長尾吉祐氏の3氏が業務執行を担っている。3名ともリクルート出身で佐原氏は17年1月に同社に入社した。佐原氏の声掛けで、岩元氏は18年1月、長尾氏は同じく7月に同社に参画した。

現体制が整った19/6期以降は、事業所展開が加速している。また、通所数(利用者数)も事業所数の拡大を追いかける形で急拡大している(図表4)。

また、19年10月には社名を現社名のココルポートに変更するとともに、「私たちは一人ひとりの可能性を信じ、自分らしさと笑顔あふれる社会を共創します。」という企業理念並びに全社員と半年程かけて議論して創り上げた「Cocorport11(ココルポートイレブン)」という行動指針も制定した。

◆ 事業・収益モデル
障がいを持つ人がサービスを利用し、利用者及び行政から報酬を受け取る事業モデルとなっている。利用料金は厚生労働省によって決められており、9割を行政が負担し、1割の利用料金を利用者が就労移行支援事業所支払うことになる。ただし、利用者は世帯所得に応じて月額負担上限額が設定されており、9割以上の利用者が無料で利用している。

就労移行支援の場合、利用者1人が1日利用して発生する基本報酬は468単位~1,128単位(約4,800円~12,600円)の7段階で、事業所ごとに毎年、過去2年間の就職定着率で評価され、4月1日からその報酬単価が適用される。

同社の販売相手先を見ると各県の国民健康保険団体連合会が名を連ねている。22/6期では同社売上高の99.2%が行政からのもので、当月利用分は、翌々月の15日に支払われる。残りの0.8%は利用者からのものである。

売上原価の主な費用としては、労務費(22/6期の売上高比47.3%)が大きく、続いて事業所などの地代家賃(同9.9%)、交通費や昼食代といった利用者研修費(同4.5%)、消耗品費(同3.7%)、支払手数料(同1.2%)が挙げられる。販売費及び一般管理費に関しては給料及び手当(同6.4%)、広告宣伝費(同2.5%)、役員報酬(同2.3%)が主な費用項目である。

>>続きはこちら(1,3MB)

一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

このページのトップへ