ハルメクホールディングス(7119) 「ハルメク」の世界観に共鳴するユーザーの増加が最大の成長ドライバー

2023/03/29

定期購読誌「ハルメク」をベースにシニア女性向けに事業展開
「ハルメク」の世界観に共鳴するユーザーの増加が最大の成長ドライバー

業種: 小売業
アナリスト: 藤野敬太

◆ 50歳以上のシニア女性のニーズを満たす事業を展開
ハルメクホールディングス(以下、同社)は、50歳以上のシニア女性の満たされないニーズを満たすべく、情報コンテンツ、物販、コミュニティの3領域でサービスを展開している。

前身企業は1989年以降シニア女性向け定期購読誌の発行と通販事業を行っていたが、過大投資がたたって09年3月に民事再生を申請した。投資会社であるJ-STAR(東京都千代田区)の下で再建した後、ノーリツ鋼機(7744東証プライム)の傘下にあったが、20年8月に現代表取締役社長によるMBOで現在の体制となった。

同社グループは事業子会社5社と機能子会社1社で構成されており、事業は、定期購読誌「ハルメク」を中心に展開しているハルメク事業と、カタログ通販を行う全国通販事業の2つのセグメントに区分されている(図表1)。ハルメク事業の売上収益が全体の7割強を占めており、その構成比は上昇傾向にある。

◆ ハルメク事業
ハルメク事業は、シニア女性向けの生活全般の記事を掲載した定期購読誌「ハルメク」を中心とした情報コンテンツを軸に、通販やコミュニティの事業を展開している。

ハルメク事業の最大の特徴は、情報コンテンツ、通販、コミュニティの3つの事業が連動しながら展開されることである。特に、情報コンテンツを中核に据えていることで、「ハルメク」が演出する世界観に共鳴するユーザーの集客、利用継続、定着がしやすくなっている。

また、3つの事業を持つことで、収益源の多様化のほか、ユーザー単価の上昇につなげやすくなっている。ハルメク事業の売上高の内訳を見ると、通販の売上構成が最も大きく、7割弱を占めている(図表2)。

◆ ハルメク事業(1):情報コンテンツ
定期購読誌「ハルメク」がハルメク事業の情報コンテンツの中心であるが、購読料は年6,960円で、書店では販売されておらず、自宅等へ配送される定期購読のみで販売されている。18年以降購読者数を伸ばし続け、22年12月時点での購読者数は約50万人に達している(図表3)。「ハルメク」は女性誌の中では最大の購読者数を誇り、シニア・ミドル女性誌の分野における存在感は大きい。

また、シニア女性向けウェブサイトとして、「ハルメク365」を運営している。前身のコンテンツサービスである「ハルメクWEB」は、18年8月の開始以降、広告掲載料を収益源に無料記事を配信してきて、月間ページビュー数が641万回、MAU(Monthly Active Users)は278万に達するサイトに育った。22年8月に開始した「ハルメク365」は、「ハルメクWEB」を統合した上で、無料記事だけでなく、動画サービスや音声サービスを掲載し、サブスクサービスとして、月額課金方式でユーザーに提供するモデルとなっている。

◆ ハルメク事業(2):物販
物販は、「ハルメク」の購読者を中心とした顧客のニーズを反映させながら商品を開発し、販売している。中高価格帯の商品が多く、後述する低価格帯の商品が中心の全国通販事業とは棲み分けが出来ている。また、自社開発商品が多く、ハルメク事業の通販売上高の約7割が自社開発商品によるものである。

◆ ハルメク事業(3):コミュニティ
コミュニティは、情報コンテンツや物販と関連した体験や繋がりの機会を提供している。22/3期には、オンライン、オフライン合計で100本以上のイベントを開催し、サービスを開始した17年以降の延べ参加人数は約6.7万人である。

◆ ハルメク事業(4):その他(先行投資事業、新規事業)
情報コンテンツ、物販、コミュニティの3事業以外のその他には、先行投資事業、または新規事業が含まれている。

◆ 全国通販事業
全国通販事業は、新聞広告等で集客した消費者に通販カタログ「ことせ」を送付して通信販売を行う事業である。シニア女性を対象としているが、ハルメク事業が中高価格帯の商品を扱うのに対し、全国通販事業は低価格帯の商品を対象としており、棲み分けがなされている。

◆ ハルメク事業を中心にユーザー増加
同社は、定期購読誌「ハルメク」の購読者数の増加をベースにハルメク事業のユーザーを増やし、全社のユーザー増に貢献してきた。23/3期第3四半期末のユーザー数は、ハルメク事業89万人、全国通販事業38万人、合計127万人となった(図表4)。

なお、20/3期に全体のユーザー数が減少したのは、全国通販事業のユーザーの減少によるものである。これは業績悪化を受けて、カタログの配布を絞り込んだためであるが、22/3期には全国通販事業のユーザー数は増加に転じている。

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資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。