プライム・ストラテジー(5250) Webサイト統合運用案件獲得とハイパーオートメーション活用で成長を目指す

2023/02/24

Webサイトを高速・安全に稼働させる製品の開発とサイトの構築、保守・運用を行う
Webサイト統合運用案件獲得とハイパーオートメーション活用で成長を目指す

業種: 情報・通信業
アナリスト:鎌田 良彦

◆ Webサイトを高速化する製品の開発とサイトの構築、保守・運用を行う
プライム・ストラテジー(以下、同社)グループは、同社と子会社2社からなり、Webサイトのコンテンツ作成を行うWordPress等のCMS注1をクラウド上で高速かつ安全に稼働させる製品群の開発・販売と、それら製品群を用いたWebサイトの構築や保守・運用を行っている。主要な製品は以下の通りである。

1) KUSANAGI
KUSANAGI(クサナギ)は、Microsoft AzureやAmazon Web Services、Google Cloud Platform等のクラウドプラットフォーム上のサーバでWordPress等のCMSを高速かつ安全に稼働させるために、Linuxベースのオペレーティングシステム(OS)やオープンソースソフトウェア注2等を最適に調整したソフトウェアのパッケージである。
KUSANAGIを利用したCMS運用環境を、利用しない環境と比べると、キャッシュ注3使用時で約2,330倍、キャッシュ非使用時で約20倍の高速化を実現できる。KUSANAGIは、22年12月時点で国内外の28の主要クラウドプラットフォームで利用でき、34カ国251リージョン注4での利用が可能となっている。

2) WEXAL® Page Speed Technology®
KUSANAGIがサーバ上でCMS等のアプリケーションの実行速度を高速化するのに対し、WEXAL® Page Speed Technology®(ウェクサルページスピードテクノロジー)は、Webサイトを閲覧するスマートフォン等の端末へのテキストや画像の表示を最適化・高速化する製品である。

3) ONIMARU® David
ONIMARU® David(オニマルデイヴィッド)は、Webシステム・Webサイトのページを解析し最適な高速化戦略を自動で立案する、Webサイト最適化AIソフトウェアである。ONIMARU® Davidを使えばWEXAL® Page SpeedTechnology®による表示の高速化を、エンジニアが設定することなく、リアルタイムに自動的に最適化することができる。

4) KUSANAGI Stack
KUSANAGI Stack(クサナギスタック)は個別の製品ではなく、Webサイトを高速化するKUSANAGI、WEXAL® Page Speed Technology®、ONIMARU®Davidからなる同社製品群の総称である。

KUSANAGIの利用によるWebサイトの高速化は、サイト利用者には表示時間の短縮による使い勝手の良さを提供し、サイト運営者には、サイト表示が速くなることで離脱者を防ぎ、利用者がより多くのページを訪問することにつながり、アクセス集中時等、サーバ負荷が高い状況でも安定したサイト閲覧が可能になるメリットがある。また、Google等ではWebサイトを評価する指標として、高速化を取り入れており、WebサイトのSEO対策注5としても有効である。

◆ 事業モデル
同社の事業はKUSANAGI Stack事業の単一セグメントであるが、KUSANAGI製品群を用いたWebサイトの保守・運用サービスであるKUSANAGIマネージドサービス、クラウド上にKUSANAGIをベースにCMSアプリケーションを構築するクラウドインテグレーションサービス、KUSANAGIの有償ライセンス等のライセンス販売、の3つのサービスを提
供している(図表1)。KUSANAGIマネージドサービスとライセンス販売は、月額または年額によるサブスクリプション契約となっている。

22/11期の売上高構成比は、KUSANAGIマネージドサービスが64.7%、クラウドインテグレーションサービスが22.5%、ライセンス販売が12.7%である。また、サブスクリプション契約によるストック型ビジネスの売上高構成比は77.4%であった。

1) KUSANAGIマネージドサービス
KUSANAGIマネージドサービスは、法人顧客を対象にKUSANAGIをベースにWordPress等のCMSアプリケーションで構成されたWebサイトの保守・運用を月額課金で行うサービスである。Webサイトの監視、障害対応、ソフトウェアのアップデート、バックアップの取得等を行っている。料金体系は月間ページビュー(PV)に基づいたものとなっている(図表2)。

クラウドサーバ利用料と通信料込みのKUSANAGIマネージドサービスと、クラウドサーバ利用料と通信費は別途顧客が負担するKUSANAGIサポートサービスがあるが、殆どがKUSANAGIマネージドサービスの利用となっている。

KUSANAGIマネージドサービスの顧客数は、22年10月で113社、MRR注6は51百万円となっている。顧客単価のレンジは広いが、平均顧客単価は453千円/月である。顧客には各業界の大手企業やメディア企業が多い。

2) クラウドインテグレーションサービス
新規にクラウド上で顧客のWebサイトをKUSANAGIを利用して構築する案件や、顧客の既存のWebサイトをクラウド上でKUSANAGIを利用した環境に移行する案件等を行っている。また、KUSANAGIマネージドサービスを利用する顧客向けのWebサイト構築を行っている。

最近では、顧客が各部門やサービス毎に運用しているWebサイトを、セキュリティ確保とWebサイト管理の観点からKUSANAGI基盤を利用して統合するCMSプラットフォーム統合サービスの大型案件が増えている。

3) ライセンス販売
KUSANGIはフリーミアムモデル注7を採用しており、無償版と有償のBusiness Edition、Premium Editionがある。無償版は各クラウドプラットフォーム上で利用できる。Business EditionはベースとなるOSのサポート終了までのサービスサポートを保証し、Premium EditionはKUSANAGI Stackの利用ができる。無償版から有償版へのアップグレードは、同社のMarketplaceで行うことができる。KUSANAGIの有償版の価格体系は、CPUのコア数に応じた価格体系となっている(図表3)。

KUSANAGIはクラウド上の顧客専用サーバにOSからミドルウェア、CMSアプリケーションを含むパッケージとして構築するシステムであり、共用サーバを用いるレンタルサーバ事業者には提供していないが、ライセンス販売には、エックスサーバー(大阪市北区)等のレンタルサーバ事業者に対し、同社のKUSANAGIの高速化技術やブランド等の知的財産を有償でライセンス販売している分を含んでいる。

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資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。