リンカーズ<5131> 21年7月期までの特需案件剥落でも黒字確保できるようになった点に注目
ものづくり企業の課題解決のためのマッチングプラットフォームを運営
21年7月期までの特需案件剥落でも黒字確保できるようになった点に注目
業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野 敬太
◆ ものづくり企業向けのマッチングプラットフォームを運営
リンカーズ(以下、同社)は、ものづくり企業の課題解決のためのマッチングプラットフォームを運営している。ものづくり企業の製品開発は一般的に、研究、開発、量産というプロセスを経るが、多くの場合、自社単独で完結することはなく、他社の技術の導入をはじめ、外部企業との協業が必要となる。同社は、ものづくりの中でも、見積りや要件定義を必要とする、秘匿性が高く、製品開発の鍵を握る中核的な製品や技術分野でのマッチングを実現している。同社が提供するマッチングプラットフォームを使うことで、ものづくり企業は、自社の製品開発に適した製品や技術を持つ協業先を探し当て、製品開発の成功確率を上げることが可能になる。
同社はビジネスマッチング事業の単一セグメントだが、売上高は、探索・マッチングサービス、リサーチサービス、その他サービスの3つのサービスに分類されている(図表1)。開発、量産のプロセスをカバーする探索・マッチングサービスが収益の柱だが、量産案件の有無で収益の振れ幅が大きい。研究のプロセスをカバーするリサーチサービスの収益は順調に拡大している。
◆ サービス体系
同社は、以下の通り、ものづくり企業の製品開発のプロセスごとにサービスを用意している。中心となるのは、開発プロセスをカバーする「Linkers Sourcing」である。
・研究プロセス: 「Linkers Research」
・開発プロセス: 「Linkers Sourcing」、「Linkers Marketing」
・量産プロセス: 「Linkers Trading」
上記サービスは同社自身が運営するサービスだが、加えて、地域金融機関や事業会社にプラットフォームシステムを提供する「Linkers for BANK」、「Linkers for Business」というサービスもある。
◆ 「Linkers Sourcing」
「Linkers Sourcing」は、技術課題を抱える企業のために、技術やノウハウを持つ中堅・中小企業を探索して引き合わせるマッチングサービスである。「Linkers Sourcing」で発注するのは400社超の大手企業である。
大手企業から探索依頼があると、同社は、発注企業が求める要件を定義し、受注候補企業の抽出と選定を行う。抽出と選定にあたっては、(1)これまで蓄積してきたマッチングデータを活用したAIマッチング、(2)22/7期末時点で18,931社の登録企業の自薦、(3)自治体や金融機関等に在籍する約1,100名の産業コーディネーターからの推薦という3つの探索方法が用いられ、受注候補企業のリストが作成される。受注候補企業の抽出・選定後、発注企業と受注候補企業の面談を通じて絞り込みが行われ、成約につなげていく。
同社の収益は、(1)探索開始で発生する基本利用料、(2)面談まで進んだ際に得られる成果報酬、(3)成約に至った際に得られる成果報酬から成る。成約に至った案件から得られる全収益の約半分が基本利用料であり、基本利用料でおおよその固定費を回収する収益モデルとなっている。従って、成約率が上がると「Linkers Sourcing」の利益率が上がることとなる。なお、21年2月から22年1月の期間における成約率は47.7%であった。
◆ 「Linkers Marketing」
「Linkers Marketing」は、技術やノウハウを持つ中堅・中小企業が大手企業に対して売り込みを行うためのサービスである。「Linkers Sourcing」のシステムを活用するマッチングサービスという点では同じだが、大手企業が起点となる「Linkers Sourcing」に対し、「Linkers Marketing」は技術やノウハウを持つ中堅・中小企業が起点となるという点が違いである。中堅・中小企業にとっては、過去、「Linkers Sourcing」及び「Linkers Marketing」を通じて発注実績がある597社(22/7期末時点、「Linkers Sourcing」で発注実績がある400社超の大手企業を含む)がマッチング候補先となる(図表2)。
「Linkers Marketing」については、(1)探索を開始した時に受け取る着手金、(2)面談に至った際に受け取る成果報酬が同社の収益となる。「Linkers Sourcing」とは異なり、成約時の成果報酬は発生しない。
「Linkers Sourcing」及び「Linkers Marketing」の探索件数は22/7 期で234 件となった(図表3)。
◆ 「Linkers Trading」
主に量産プロセスを支援する、最適な調達先、購買先を探索するサービスである。調達先や購買先は海外企業も候補となる。
「Linkers Trading」の場合、案件ごとに契約形態が異なる。20/7期及び21/7期に大きく収益貢献をした医療用ガウン案件の場合は、取引高に応じた手数料を計上したために高利益率案件となった。一方、23/7期に本格的な案件となるリサイクルアルミニウム案件では、アルミニウム素材の仕入・販売を計上することから、同社の売上高が膨らむのと同時に、仕入原価が発生するため、利益率としては低いものとなる。
◆ 「Linkers Research」
新規事業やR&Dのテーマ検討を行う際の技術ベンチマーク調査や研究・技術パートナー探索に資する調査を行い、レポートを提供するサービスである。200名超の外部リサーチャーのネットワークを構築しており、調査受注時には、外部リサーチャーが情報収集を、社内リサーチャーが技術情報の目利きと整理を行うという分業体制をとっている。
◆ 「Linkers for BANK」/ 「Linkers for Business」
「Linkers Sourcing」及び、「Linkers Marketing」は同社自身が運営するサービスだが、そのシステムを他社が使えるようにSaaS型サービスとして提供するのが、「Linkers for BANK」、「Linkers for Business」である。主に地域金融機関に提供するのが「Linkers for BANK」、コンサルティング会社等の事業会社向けに提供するのが「Linkers for Business」である(以下、両サービスを総称して「LFB」とする)。例えば地域金融機関の場合、「LFB」を利用することで、顧客同士の商談を創出することができ、顧客支援や新たな融資案件開拓につなげることができる。22/7期末の「LFB」の導入社数は29社(地域金融機関27社、事業会社2社)、22/7期の商談件数は47,517件であった(図表5)。
同社が得る収益は、(1)システム導入時の導入支援料、(2)月額利用料となる。
なお、同一の地域金融機関の顧客同士のマッチングの場合は、同社が手数料(成果報酬)を得ることはないが、異なる金融機関の顧客がマッチングした場合には、同社は手数料を受け取っている(同社では「広域連携サービス」と呼んでいる)。今のところ、「LFB」を通じたマッチングのほとんどが、同一の金融機関の顧客同士とのことだが、今後、異なる金融機関の顧客のマッチングを増やしていくことで、収益拡大を目指していく方針である。