FPパートナー<7388> 保険に留まらない包括的なFPサービスの提供を志向
「マネードクター」を全国展開する乗合保険代理店大手
保険に留まらない包括的なFPサービスの提供を志向
業種: 保険業
アナリスト: 藤野 敬太
◆ 乗合保険代理店「マネードクター」を全国展開
FPパートナー(以下、同社)は、生命保険を中心とした乗合保険代理店を全国展開する大手である。以前は「保険のビュッフェ」のブランドで展開していたが、保険だけでない包括的なファイナンシャルプランニング(FP)サービスの提供を志向して、19年に「マネードクター」へブランドを刷新した。
同社の事業セグメントは、保険代理業の単一セグメントだが、同社の売上高は、サービス別に生命保険代理店業、損害保険代理店業、その他の事業に分類される。21/11期において、生命保険代理店業が売上高の95.7%、損害保険代理店業が4.2%を占めた。また、売上高の相手先の上位3社は生命保険会社であり、3社合計で全体の売上高の過半を占めている(図表1)。
◆ 乗合保険代理店とは
保険代理店には、特定の保険会社の保険のみを取り扱う専属保険代理店と、複数の保険会社の商品を取り扱う乗合保険代理店の2種類がある。乗合保険代理店は、1カ所で複数の保険会社の保険商品を比較・検討できることを最大の利点としており、生命保険の加入チャネル別のシェアの上昇が続いている。
同社は、生命保険会社22社、損害保険会社10社の合計32社の商品を取り扱っている。
◆ 仕組み(1): 企業提携を中心とした見込み客の獲得
同社の見込み客開拓ルートには、企業提携、同社のサービスサイト等による自社集客、営業社員による自己開拓(既存顧客や見込み客からの紹介)があるが、主は企業提携である。22年5月末時点の提携企業は、通信会社、電力会社、クレジットカード会社等100社に上る。中にはauフィナンシャルパートナー(東京都千代田区)のように合弁会社を設立するケースもある。
◆ 仕組み(2): 提案に専念できる営業社員
企業提携を主体とした集客を行うことで、同社の営業社員は見込み客への商品・サービス提案に専念することができる。集客時点である程度、顕在化しているニーズに対する提案を行うことができるため、営業社員としては成約に結びつきやすく、その分営業社員の成長が早くなる仕組みとなっている。これは営業社員の定着にもつながり、営業社員の増加にも貢献している。
営業社員は21/11期末時点で1,858人まで増加している(図表2)。各年の新規契約数を期中平均営業社員数で除して求めた1営業社員当たり新規契約数は増員ペースによって増減するが、相対的に増員数が少なかった21/11期は98.0件と前期を上回った。
同社は各種研修等の営業社員の教育機会の創出にも積極的であり、その結果、21/11期末の営業社員の98.1%がFP関連の資格を取得している。また、全営業社員の30.9%がMDRT(生命保険を中心とした金融サービスの専門家が所属するグローバルな独立組織)の会員であり、この比率は国内の業界平均の推定値である0.8%をはるかに上回っている。
同社は21/11期末時点で全国47都道府県に111カ所の拠点を持ち、こうした営業社員が、全国に配属されている。なお、営業社員は地元採用・転勤なしを原則としている。
◆ 仕組み(3): 品質を高水準に維持するシステム
同社は、顧客、提携先企業、同社社員が安心できることを重視しており、そのために、業務品質を高水準に維持するための施策を展開している。研修の充実や全社員対象に毎月実施しているコンプライアンステストのほか、顧客管理システムや同社の独自開発のFPツールによるサービス提供を行っている。
◆ 保有契約数
こうした仕組みを通じて、同社の保有契約数は順調に増加してきており、21/11期には176,095件の新規契約を獲得し、期末の保有契約数は978,795件となった(図表3)。
◆ 収益構造
同社の収益は、主に保険の販売によって発生する手数料収入が中心である。主な収益源である生命保険の場合、生命保険の契約が成立すると、生命保険会社から販売手数料を得る。契約成立時に初年度手数料及び業務品質支援金(フロー型収益)が得られるほか、契約後複数年にわたって継続手数料(ストック型収益)が得られる。こうしたストック型収益が存在することで、同社の収益の安定性が確保されている。
なお、保険会社からの販売手数料のうち、企業提携を通じて得られた契約については、企業提携先の取り分を控除したものを同社の収益としている。費用としては営業社員への報酬が中心となる。営業社員への報酬は歩合給が中心であるが、一部固定報酬もあるため、売上高が増加するほど売上総利益率は上昇しやすい構造となっている。