ASNOVA<9223> 海外も含めた拠点展開により仮設機材レンタルの拡大を目指す

2022/04/27

主として中小の足場施工会社へクサビ緊結式足場をレンタル
海外も含めた拠点展開により仮設機材レンタルの拡大を目指す

業種: サービス業
アナリスト: 髙木 伸行

◆ クサビ式足場のレンタルが主要事業
ASNOVA(以下、同社)はクサビ緊結式足場(以下、クサビ式足場)を主にレンタルする「仮設機材レンタル」、仮設機材を販売する「仮設機材販売」、足場架払工事の受注を行う「その他」の3つのサービスを展開している。21/3期の売上構成比は仮設機材レンタルが85.1%、仮設機材販売が11.7%、その他が3.2%である。

1)仮設機材レンタル
クサビ式足場(図表1)は組み合わせ方によって、狭い場所や複雑な形状の建物でも足場を組みやすく、ハンマーだけで簡単に設置できることから、他の足場よりも組み立てや解体作業に時間がかからない。また、重量が軽くコンパクトな規格が揃っていることから保管・運搬が容易であり、工期を短縮したり、費用を抑えたりすることができるというメリットもある。

高層建築には使用できない、組み立て時の作業音が大きいといったデメリットがあるが、戸建住宅や中低層マンション工事向けに広く普及している。このため、同社の顧客は、年商1億円から3億円の足場施工業者や地場の工務店が中心となっている。また、比較的少人数・小規模で足場施工業を始められることから、初期投資が軽減でき、工事の繁閑に応じて仮設機材の利用が可能で、管理費用も節約できる仮設機材レンタルに対するニーズは大きい。

顧客は増加基調にあり、1社当たりの売上高は100万円程度と小さいが、足元では2,200社超の足場施工業者、工務店、中堅ゼネコンと取引がある(図表2)。

2)仮設機材販売
同社は仮設機材の販売も行っている。顧客のニーズに応えることを目的に開始したサービスである。同社は、中古機材の販売を含めて、仮設機材販売を大きく伸ばすという計画はなく、あくまでも事業の中心は仮設機材レンタルとする方針である。

同社は、レンタル中の機材を顧客の要望により、返却を受けずにそのまま中古機材として販売し、20/3期までは特別利益に計上していた。21/3期からは、レンタル機材として購入してから6年以上経過した、償却済機材を中古機材として売却するという方針を定め、営業外収益として販売額を計上することにしている。20/3期には固定資産売却益121百万円が特別利益に、21/3期には足場資材売却益157百万円が営業外収益に計上されている。

3)その他
同社は顧客の現場で足場の架け払いを行う工事を受注している。受注後は外部業者に工事を委託している。

◆ ビジネスの中心はレンタル
同社は今後もビジネスの主軸を仮設機材レンタルに置いて事業を拡大してゆく方針である。

クサビ式足場への投資は、18/3期781百万円、19/3期1,036百万円、20/3期1,131百万円と拡大してきたが、21/3期は新型コロナウイルス感染症拡大の直撃を受け急速な需要の落ち込みがあったため、投資額は112百万円と前期の10分の1となった(図表3)。22/3期に入ってからは投資を再拡大しており、第3四半期累計の投資額は1,240百万円と、増加基調にあった20/3期通期の水準をすでに上回っている。

22/3期第3四半期末時点でのクサビ式足場の保有額(取得価額ベース)は9,028百万円と減価償却後の2,314百万円の4倍近い水準に達している。クサビ式足場は5年間で均等償却されているが、適切な品質管理により、製品寿命は10年から15年が一般的で、中には20年利用されているものもある。償却後の稼働により利益への貢献が見込める収益構造となっている。

売上高の8割以上は仮設機材レンタル占めている。また、レンタルの3割以上が長期レンタルであり、ストック型収益の部分をある程度持っている。ただし、レンタルという性格上、建設業界の繁閑に合わせて調整弁的な利用をされるため、景況感が悪化すると利用を抑えられ、好況が続くとある時点を境に急速に需要が拡大するという傾向があるものと思われる。

同社の費用構造を新型コロナウイルスの影響が小さかった20/3期について見てみると、賃貸資産の減価償却費が売上原価1,943百万円(売上原価率71.3%)の47.9%(売上比34.2%)を占めており、最大の費用項目となっている。この他は労務費が21.2%(同15.1%)、商品仕入が13.1%(同9.3%)を占めている。

売上高の19.9%に相当する販売費及び一般管理費(以下、販管費)内訳は販売費が28%、一般管理費が72%である。特別利益として、中古のクサビ式足場の売却益121 百万円が計上されているが、これは21/3 期以降は営業外収益として認識されている。また、23/3 期からは中古品の売却額を年間50 百万円以下に抑える考えである。

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