セカンドサイトアナリティカ<5028> AI プロダクトの月額使用料等のストック売上の拡大を志向

2022/04/08

データ分析コンサルティングとAI プロダクトを提供する情報サービス会社
AI プロダクトの月額使用料等のストック売上の拡大を志向

業種: 情報・通信業
アナリスト: 大間知 淳

◆ データ分析コンサルティングとAI プロダクトを提供している
セカンドサイトアナリティカ(以下、同社)は、データ分析に基づくコンサルティング(以下、アナリティクスコンサルティング事業)と、各種AI を搭載したパッケージソフトウェアをSaaS 形態等で提供するサービス(以下、AI プロダクト事業)を事業として展開する情報サービス会社である。

同社は、データアナリティクス・AI(機械学習)、データエンジニアリング、経営課題の解決を三位一体で対応しており、アナリティクス・AI に関する課題抽出、開発・導入、活用、運用のサービスをワンストップで提供している。大学の研究者等との交流を通じたアカデミックなアプローチや技術者の視点を重視し、アナリティクス・AI 分野の先端技術を積極的に導入する一方、ビジネス目線のアプローチにより、実践に即した課題解決支援策を提供していることが同社の特長となっている。

(1)アナリティクスコンサルティング事業
データに潜む重要なパターンの発見、解釈、分析により、顧客毎に異なる様々な課題の解決を支援するデータ分析コンサルティングがアナリティクスコンサルティング事業の主力サービスとなっている。そのほか、カスタムメイド対応によって、顧客のビジネス課題解決に向けた機械学習モデルの構築を支援している。

アナリティクスコンサルティング事業の売上高は、フロー売上であるコンサルティング料とモデル構築料、ストック売上であるモデルの利用ライセンス収入等によって構成されている。

同社はこれまで、AI領域の中でも、金融分野におけるテーブルデータ解析(事前与信、クロスセル、不正検知、ターゲティング、審査高度化、来店予測等)を中心にサービスを提供していた。今後は、金融分野の画像・動画・映像分析(顔照合、偽造ID判定等)や、流通・製造等の非金融分野における画像・動画・映像分析(ドローン映像解析、工事画像解析等)、時系列解析(価格予測、販売台数予測等)、自然言語解析(書籍解析)等にサービス提供領域を広げる方針を掲げている。

アナリティクスコンサルティング事業の主要顧客業種としては、ノンバンク・銀行・保険、決済サービス、建設・不動産、情報・通信が挙げられる。

(2)AIプロダクト事業
AIプロダクト事業では、アナリティクスコンサルティング事業で得られたノウハウを元にして、顧客の共通的な課題を解決するために、AIを活用した4種類の汎用製品(RED Engine、アナリティクス・プラットフォーム、SXスコア、SkyFox)を提供している。AIプロダクト事業の売上高は、フロー売上である初期導入収入とストック売上である保守・運用料等のサブスクリプション収入(月額使用料)等によって構成されている。

① RED Engine
RED Engineは、様々なアルゴリズムに対応する実践的なAI運用基盤であり、AIプロダクト事業売上高の5割弱を占める主力製品である。AIには、データから機械学習アルゴリズムに従ってモデルを構築する「学習」と、学習したモデルを用いて予測や推論を行う「適用」の2つのフェーズがあるが、RED Engineは適用を行うシステムである。同社のAI製品の中でも、最もカスタマイズ比率が高くなる傾向にあり、初期導入費用は1,200万円から、月額使用料は100万円からという設定である。

② アナリティクス・プラットフォーム
アナリティクス・プラットフォームは、全データ一元管理及び分析ツール適応プラットフォームであり、AIプロダクト売上高の2~3割を占めている。データを分析する上で重要となる、データの蓄積、加工、抽出の機能を提供しており、SQL注1によるデータの集計や、BI注2ツールを用いた可視化、レポート配信等に利用されている。RED Engineに次いでカスタマイズ比率が高くなる傾向にあり、初期導入費用は500万円から、月額使用料は50万円からとなる。RED EngineやSkyFoxとの連携も可能となっている。

③ SX スコア(SX Score)
SX スコア(SX Score)は、同社の独自モデルを用いたリスクやニーズのスコアリングサービスであり、AIプロダクト売上高の1割弱を占めている。あらかじめ用意されたオープンデータと匿名加工データを利用することで、顧客自ら情報を収集しなくても精度の高いスコアが算出できる特長がある。カスタマイズ比率はアナリティクス・プラットフォームよりも低い傾向にあり、初期導入費用は100 万円から、月額使用料は20 万円からという設定である。その他、照会数に応じた従量課金制度も設定されている。

④ SkyFox
SkyFox は、データアナリティクスの自動化ソフトであり、AI プロダクト売上高の約2 割を占めている。顧客自らが機械学習モデルを構築できる機能を持ち、中小企業から大企業まで、幅広い用途でAI を簡単に利用できる環境を提供している。カスタマイズ比率は最も低い傾向にあり、初期導入費用は10万円から、月額使用料は20 万円からに設定されている。

SkyFox は様々な用途に転用が可能である。同社は、人材採用の選考過程に使えるようにした製品である「SkyFoxHR」を21/3 期にリリースしており、今後も、SkyFox シリーズを様々なニーズに合わせて開発していく方針である。

AI プロダクト事業の主要顧客業種としては、決済サービス、銀行、ノンバンク、保険が挙げられており、現状では金融中心となっている。

同社は、アナリティクスコンサルティング事業を創業事業としているが、事業パートナーとのシナジーを通じてAI プロダクト事業の拡大に取り組んだ結果、AI プロダクト事業の事業基盤は既に確立されている。21/3 期における事業別の売上高構成比は、アナリティクスコンサルティングが66.9%、AI プロダクトが33.1%であった(図表1)。

AI プロダクトでは、定額の月額使用料を受領しており、ストック売上が時間の経過に伴い積み上がる構造にあるが、多額の初期導入収入(フロー売上)が計上された19/3 期に比べて20/3 期の売上高は減少しており、事業全体としてはある程度の変動性があることに注意が必要である。

同社の組織は、アナリティクスコンサルティング事業を担当するアナリティクス本部、AI プロダクト事業を担当するテクノロジー本部、管理本部によって構成されている。アナリティクス本部には主にコンサルタントと営業担当者が、テクノロジー本部には主に技術者と営業担当者が在籍しているが、各本部の人員数と各事業の売上高は必ずしも連動していない。

◆ 両事業でストック売上の拡大を目指している
同社は、持続的な事業成長をするためには、収益の基盤となるストックビジネスの強化が重要と認識している。

アナリティクスコンサルティング事業では、データ分析コンサルティングと機械学習モデル構築によって構成される、顧客個別対応型のフロー売上が売上高の中心となっている。同社は、同事業で集積された知見を応用して、汎用製品であるAI プロダクトを開発、販売し、AI プロダクト事業の中核収益である月額使用料等のストック売上を拡大させることを目指している。

また、アナリティクスコンサルティング事業において、同社が構築した機械学習モデルを有効に利用し続けるためには、複雑かつ高度な技術や知識が必要であり、多くの顧客で同社が継続的なメンテナンスや運用サポートを行っている。同社は、同事業においても、機械学習モデルの構築から派生するストック売上である、モデルの利用ライセンス収入の拡大を目指している。設立以来のストック売上とフロー売上高の推移は図表2 の通りである。

◆ 設立経緯
同社は、アクセンチュアの日本法人のコンサルタントであった加藤良太郎氏(現取締役会長)が12 年4 月に設立したグリフィン・ストラテジック・パートナーズ(以下、グリフィン社)を源流としている。アナリティクスコンサルティング事業を主要事業としていたグリフィン社には、アビームコンサルティングのコンサルタントであった髙山博和氏(現代表取締役社長)が13 年4 月に、日本総研ソリューションズ(現JSOL)等でシステム開発業務等を担当していた深谷直紀氏(現取締役副社長)が14 年4 月に各々入社した。

グリフィン社は、当時、新生銀行(8303 東証スタンダード)の消費者金融子会社である新生フィナンシャルと取引をしていたが、更なる事業の拡大を目指し、新生フィナンシャルとの合弁で、セカンドサイト(同社)を16 年6 月に設立した(21 年12 月にセカンドサイトアナリティカに商号を変更)。新生銀行の子会社である新生フィナンシャルは、銀行法により5%超の議決権保有が
制限されているため、同社への出資に当たり、無議決権種類株式である甲種類株式を取得した。22 年2 月28 日時点では、新生銀行が、甲種類株式492,000 株、普通株式114,000 株、合計606,000 株(発行済株式総数の20.2%)を保有する筆頭株主(20 年3 月に新生フィナンシャルから株式が移動)となっている。

◆ SBペイメントサービスと新生銀行に対する依存度が高い
同社の主要顧客としては、ソフトバンク(9434 東証プライム)の連結子会社であり、決済代行サービスを手掛けるSBペイメントサービス、新生銀行、新生銀行の子会社であるアプラス、エクシオグループ(1951 東証プライム)、エクシオグループの子会社であるアクレスコ等が挙げられる。SBペインメントサービスとエクシオグループは同社の資本業務提携先であり、22 年2 月28 日時点の同社に対する出資比率は、各々1.7%、11.3%である。過去の推移を見ると、SBペイメントサービス(アナリティクスコンサルティング事業及びAIプロダクト事業)と新生銀行(アナリティクスコンサルティング事業やSX Score等)への売上高の依存度は継続して高い水準となっている(図表3)。

その他、TIS(3626 東証プライム)、セブン銀行(8410 東証プライム)、ミロク情報サービス(9928 東証プライム)は資本業務提携先であり、MS&ADインシュアランスグループホールディングス(8725 東証プライム)の完全子会社である三井住友海上火災保険は業務提携先である。同社は、こうした資本業務提携先及び代理店をパートナー企業と呼んでいる。

21/3 期のアナリティクスコンサルティング事業の売上高は331 百万円であったが、このうち、200 百万円がパートナー企業との協業によるものであった。

◆ 労働集約型から知識集約型にビジネスモデルが移行
同社の売上原価の7割弱は自社の技術者に支払う人件費(労務費)であり、この点だけを見ると労働集約型のビジネスと言えなくもない。売上原価の他の科目としては、減価償却費、通信費(Amazon Web Servicesの利用料等)、賃借料等が挙げられる。

21/3期の売上総利益率は67.1%であり、ソフトウェア開発会社や、他のAI関連会社に比べて高い水準にある。これは、AIプロダクト事業の保守・運用収入だけでなく、アナリティクスコンサルティング事業においても、機械学習モデルの利用ライセンス収入を得ているため、人手をあまり掛けずに収益が得られる構造が確立されているためである。よって、同社のビジネスモデルは、設立6期目にして、既に労働集約型から知識集約型に移行していると言えよう。

販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、役員報酬、給料及び手当、株式報酬費用等の人件費関連と支払手数料が中心を占めている。21/3期においては、販管費率が57.6%と高い水準にとどまったため、営業利益率は9.5%にとどまっている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
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