ギックス<9219> 既存顧客の深掘とノウハウ活用による効率化、DIプロダクトの拡販で成長目指す

2022/04/07

判断業務へのデータ活用で顧客の課題を解決するデータインフォームド事業を展開
既存顧客の深掘とノウハウ活用による効率化、DIプロダクトの拡販で成長目指す

業種: サービス業
アナリスト: 鎌田 良彦

◆ データ活用で顧客の課題を解決するデータインフォームド事業を展開
ギックス(以下、同社)は、顧客企業の経営課題解決、競争力強化のために、データを用いて物事を理解し判断する仕組みを構築する「データインフォームド(Data-Informed)事業」を行っている。データインフォームドとは、データを用いて考える思考態度であり、人間が日常の業務判断を行う際に、機械学習等のアナリティクスを通じて生み出されたデータを活用して判断(Data Informed Decision Making)することで、判断業務の高度化・効率化を目指すものである。

同社のセグメントは、Data-Informed事業の単一セグメントであるが、提供するサービスの特徴から、「個別課題解決」と「共通課題解決」に分けられる。個別課題解決は、個別企業の経営課題に対してデータを活用した判断のあり方を検討する「DIコンサルティング」と、その判断を継続的に行うために必要なデータ活用の仕組みを構築・運用する「DIプラットフォーム」の2つのサービスからなる。

共通課題解決は、DIコンサルティング、DIプラットフォームの個別プロジェクトから得られたノウハウやツールを活用し、より一般的な課題解決のためのソフトウェア・サービスである「DIプロダクト」としてサービスを提供している。

◆ DIコンサルティング
DIコンサルティングでは、顧客の日常業務での判断に関する課題を、関連する全件・全量・全粒度注1の大量のデータを機械学習等の方法論で分析することにより、計算可能な課題としてとらえ、人間がより高度で効率的な判断をするためにAI やアルゴリズムでどのようなデータを加工・提供すべきか を実際のデータを用いて検証し、解決策のプロトタイプを作成する。

◆ DI プラットフォーム
DI プラットフォームでは、DI コンサルティングで作成されたプロトタイプをもとに、顧客企業が日常の判断業務に用いることができるシステムを構築・運用する。顧客企業の各種システムに接続し、自動的にデータを取得する仕組みを設計し、人間の判断材料のための情報をタイムリーに提供するシステムを構築する。システム構築に際しては、システムを小さな単位に分け、計画、設計、実装、テストを繰り返すことで、成果を確認しながら柔軟に素早くシステムを構築できるアジャイル型アプローチを採用している。

◆ DI プロダクト
DI プロダクトでは、個別課題解決を提供するなかで培われた解法やアルゴリズム、ツール、ノウハウを活用して、社会一般に共通する課題への解決策をプロダクトとして提供している。主なDI プロダクトとしては、以下の2 つがある。

1) トチカチ
トチカチは、特定の500m×500m のエリアにおける人口動態をリアルタイムに提供するサービスである。NTT ドコモが提供する携帯電話の基地局電波を活用した「モバイル空間統計」と連携し、性別、年代別滞在人口情報と天気データやイベントデータ等と併せて一元表示できる。また、同社が作成する新型コロナウイルス感染症の影響がなかった場合のあるべきデータ(パラレルワールド値)と比較することもできる。自社や競合の施設周辺人口の把握や企画、イベントの効果検証、事業開発や出退店判断の材料等として利用される。料金は対象エリア数に基づく従量課金となっている。

2) マイグル
マイグルは、多店舗が入居する商業施設や観光エリアの飲食店や観光名所等の回遊を促進するスタンプラリーを、スマートフォン向けWeb アプリとして提供するサービスである。同サービスでは利用者が利用施設やサービスを選択して独自のスタンプシートを作成できる。参加者の購買履歴やアンケートデータに基づき個々人に合わせたスタンプシートをリコメンドする機能も持つ。参加者のスタンプラリー達成率引き上げと、参加状況等のリアルタイムでのデータ分析も可能になる。主要顧客は、商業施設や観光エリアの地方自治体、鉄道やバス等の公共交通事業者である。料金はスタンプラリーの規模や期間に応じたものとなっている。

◆ 主要顧客
同社の21/6 期の主要顧客である西日本旅客鉄道(9021 東証一部)、アサヒグループホールディングス(2502 東証一部)、三菱UFJ銀行の売上構成比は合計で62.3%だった。これら顧客からの売上高は、複数の部署から受注 したプロジェクトや、既存プロジェクトの機能追加、改善等による継続的な売 上となっている。

西日本旅客鉄道とは18 年に資本業務提携し、鉄道事業での分岐器(ポイント)の状態監視による施設のメンテナンスや軌道整備の最適化等、鉄道事業の生産性向上のプロジェクトを手掛けてきた。21 年4 月には資本業務提携契約を再締結し、グループのJR 西日本イノベーションズから追加出資を受けるとともに、西日本旅客鉄道が提供するMaaS 注2 アプリのWESTER にマイグルの機能を組み込む等、業務提携の領域をマーケティング領域に拡大した。また、OJT 型データインフォームド人員育成プログラムに基づき西日本旅客鉄道から出向者を受け入れている。

アサヒグループホールディングス向けには営業効率化のシステム、三菱UF J銀行向けには業務効率化のシステムを構築している。大口販売先としての開示対象にはなっていないが、BIPROGY(8056 東証一部、4 月1 日に日本ユニシスから社名変更)とも18 年に業務提携、21 年4 月に資本業務提携し、トチカチの販売パートナーとして、BIPROGY のサービスと組み合わせたサービスの提供を行っている。BIPROGY からもOJT 注3 型データインフォームド人員育成プログラムに基づいて出向者を受け入れている。

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