CS-C<9258> SaaS型マーケティングツール「C-mo」へのシフトが22年9月期の焦点
ローカルビジネスの業界向けにデジタルマーケティングのソリューションを提供
SaaS型マーケティングツール「C-mo」へのシフトが22年9月期の焦点
業種: サービス業
アナリスト: 藤野 敬太
◆ ローカルビジネスを対象にデジタルマーケティング領域の
ソリューションを提供
CS-C(以下、同社)は、ローカルビジネスを営む顧客を対象に、デジタルマーケティング領域におけるソリューションを提供している。ローカルビジネスとは、地域密着の店舗型ビジネスのことを指し、グルメ業界(飲食店)やビューティー業界(理美容室等)が代表例である。こうしたローカルビジネスは、参入障壁が低いことから、競争が激しく、生産性が低い業界である上に、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する人材もノウハウも乏しいといった課題を抱えている。同社はこうしたローカルビジネスを対象に、業界特化型のコンサルティングとSaaS型統合マーケティングツールという2つの形態のソリューションを提供している。
同社の事業は、ローカルビジネスDX事業の単一セグメントだが、売上高は、ハンズオン型コンサルティング注1のC+、SaaS型統合マーケティングツールのC-mo、広告運用代行のデジタル広告の3サービスに分類される(図表1)。期を追うごとに、C-moの売上構成比が上昇し、デジタル広告の売上構成比が低下してきている。
◆ サービス(1): C+
C+は、顧客のデジタルマーケティングを運用代行するハンズオン型コンサルティングサービスである。ウェブ販促の施策の策定から実際の実行、施策の評価と改善策の抽出までのPDCAサイクル全体を、同社のコンサルタントが直接カバーする。
◆ サービス(2): C-mo
C-moは、C+でのコンサルティングを通じて蓄積されてきたマーケティングのナレッジやノウハウ、ビッグデータを活用して独自開発した、店舗マーケティングのDX化を実現するSaaS型統合マーケティングツールである。ニーズ調査、販促ツール最適化、新規客獲得、固定客化に必要な機能をワンストップで提供している。顧客側にマーケティングに詳しい人材がいないことや、スタッフのITリテラシーが高くないことを前提として作り込まれているため、操作が簡単で、ルーチン業務の軽減による人件費の低減も期待できる。
C-moのシステムは、ローカルビジネスの各業態に共通して適用できる汎用性が高い基本システム部分と、業界ごとに必要な機能部分によって構成されている。業界ごとに必要な機能の部分は、C+でのコンサルティングを通じてデータやノウハウ、知見が蓄積され、業界特有の勝ちパターンや改善点が洗い出されて開発されている。基本システム部分と業界ごとの機能部分の組み合わせにより、C-moグルメ版やC-moビューティー版のように、業界特化型のサービスとして提供されている。また、こうしたサービス展開により、各業界固有の消費者データの蓄積も進み、サービスとしての競争力も上がっていく。
◆ サービス(3): デジタル広告
顧客のために、Google広告やYahoo!広告、Facebook広告、LINE広告等の広告運用代行を行うサービスである。
◆ 収益構造
C+、C-moともストック型ビジネスモデルであり、両サービス共通で、1店舗につき初期導入費50,000円(税抜き)、月額利用料50,000円(同)の料金が発生する。そのため、導入店舗数が重要なKPIとなる。21/9期末の契約店舗数は、C+、C-mo合計で、4,675店舗となっている。
一方、原価構造は異なっており、C+はコンサルタントの人件費が原価計上される分、C-moに比べて売上総利益率が低くなる。収益が同じで利益の差が大きいことや事業拡張性の違いから、同社は、C+からC-moへのシフトを打ち出している。今後C+は、新規業界向けのC-moを開発する際に業界固有のデータや課題抽出を行うことを主目的に展開していくことになる予定である。
一方、デジタル広告はフロー型ビジネスモデルである。さらに、原価として広告枠の仕入が発生するため、売上総利益率は低い。同社は事業全体のストック型ビジネスモデルへの移行を進めており、デジタル広告には注力しない方針である。
今後注力していくC-moに限ったデータとなるが、C-moのMRR注2とARR注3は、新型コロナウイルス禍の影響を強く受けたグルメ業界での解約が増えて20年9月は微減となったが、新型コロナウイルス禍の影響が相対的に軽かったビューティー業界へのシフトが進み、21年9月は大幅に上昇した(図表2)。
ビューティー業界へのシフトによって新規獲得が進んだことにより、21/9期末のC-moの登録店舗数は2,931店まで増加した。また、販売価格の改定により、21/9期の平均単価も36,484円まで上昇した(図表3)。