ブロードエンタープライズ<4415> IoTインターフォンシステム「BRO-LOCK」を第2の柱にすべく拡大に注力

2021/12/23

集合住宅向けにISP導入サービス「B-CUBIC」を提供
IoTインターフォンシステム「BRO-LOCK」を第2の柱にすべく拡大に注力

業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ 集合住宅を対象にインターネットサービスを提供
ブロードエンタープライズ(以下、同社)は、集合住宅を対象に、インターネットサービスを提供する企業である。創業当初は大手通信キャリアの通信機器等を販売していたが、03年にNTT西日本のマンション向けインターネットサービスの販売代理を委託されたのを機に集合住宅への販売に着目し、05年に現在の主力となっているISP注導入サービス「B-CUBIC(ビーキュービック)」の提供を開始した。

「B-CUBIC」は、集合住宅の全居室にインターネット環境を一括で導入する全戸一括型のインターネットサービスである。顧客は、マンションオーナー、不動産管理会社、ハウスメーカー等であり、BtoBtoC型でサービスが提供されている。

また、IoTインターフォンシステム「BRO-LOCK(ブロロック)」をはじめ、集合住宅の共用部向けのIoTシステムの提供を順次開始している。

同社の事業はインターネットサービス事業の単一セグメントだが、売上高のほとんどが「B-CUBIC」によるものである(図表1)。

◆ 「B-CUBIC
全戸一括型のインターネットサービスである「B-CUBIC」が導入されている集合住宅では、既にすべての住戸にインターネット環境が整備されているため、入居者は、申し込み手続きが不要で、入居初日から無料でインターネットを使用することができる。賃貸用集合住宅のオーナーにとっては、全戸にインターネット環境を整備することで、他の集合住宅に対して差別化を図り、入居率向上を目指すことができる。

また、「初期導入費用0円プラン」という、契約時に一括で支払う工事代を0円にして、初期費用相当額をオーナーが支払う毎月の利用料に含めるプランも用意されており、初期導入時の支出額を低く抑えることで、「B-CUBIC」導入のハードルを低くしている。

「B-CUBIC」は既築・賃貸の集合住宅を中心に導入が進められてきた。そのため、同社の営業先は入居率向上を図る集合住宅の管理会社が多い。21年8月時点で取引のある管理会社は607社あり、国内の賃貸住宅の管理会社の約13%をカバーしている。その管理会社が同じく入居率向上を目指すオーナーを紹介していく形で、「B-CUBIC」の導入が増えていった。20/12期末の累計導入戸数は98,233戸となり、21/12期末は134,969戸まで増加すると同社は見込んでいる(図表2)。

◆ 「BRO-LOCK
「BRO-LOCK」は、集合住宅のエントランスをオートロック化するための顔認証付きIoTインターフォンシステムである。集合エントランスの解錠のためにいろいろな認証方式が存在しているが、多くの認証方式に対応できるようになっている。さらに特徴的なのが、スマートフォン経由で外出先から来訪者への応対ができることである。

スマートフォンを使う関係上、インターネット回線との接続が欠かせない。同社は「B-CUBIC」のサービスを提供しているため、「B-CUBIC」が導入されている集合住宅では、インターネット回線を新たに契約する必要がない。そのため、「B-CUBIC」との親和性が高く、「B-CUBIC」導入先への営業が進められている。19年にサービス開始のため日が浅く、20/12期末の累計導入戸数は179戸となっているが、21/12期末は1,081戸と見込まれており、今後大きく導入が進んでいく可能性がある。

◆ 収益構造
同社の収益は、機器の設置工事及び導入作業にかかるイニシャル売上高と、機器設置後のサービス提供にかかるランニング売上高に分けられる。ランニング売上高は、契約期間(「B-CUBIC」の場合では6年間が主)に応じて計上される。直近5年はイニシャル売上高がランニング売上高を上回っており、20/12 期について全売上高の57.6%がイニシャル売上高となっている (図表3)。

なお、同社は、22/12 期より新収益認識基準を適用する予定である。その影響で、23/12 期以降、イニシャル売上高は検収時点の一括計上から、契約期間にわたっての計上に変更されるため、旧基準での計上に比べて売上高は減少するように見える。また、新基準適用に伴い、22/12 期期初時点の売掛金、純資産額、利益剰余金を減少させて過去の分の影響を調整することになる見込みである。

「初期導入費用0 円プラン」が適用されると、契約時の工事代は同社が支払い、毎月の利用料に初期費用相当額を含めることで徐々に回収されていくことになる。同社にとっては現金支出が先行することになり、売上成長に伴い手当てすべき資金が増えていくことになる。借入金での調達に加えて、売上債権の流動化により自己資金を確保することで通信設備投資資金を賄うことにより、資金不足が成長のボトルネックとならないように手当てしている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
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