フレクト<4414> インテグレーションで稼ぎ、「Cariot」への投資を続ける構図はしばらく不変

2021/12/14

顧客企業の「攻めの DX」推進を支援するインテグレーションサービスを提供
インテグレーションで稼ぎ、「Cariot」への投資を続ける構図はしばらく不変

業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ 顧客企業の DX 推進を支援するマルチクラウドインテグレーター
フレクト(以下、同社)は、クラウドの先端テクノロジーをベースに、企業のデ ジタルフォーメーション注 1 (DX)の推進を支援するプロフェッショナルサービ スを提供する企業である。05 年の創業当初からリクルート等の B2C 向けウェ ブモバイルアプリケーション開発を手掛けてきたこともあり、顧客接点のアプ リケーション領域を強みとしてきた。その後、09 年にセールスフォース・ドット コムとパートナー契約を締結したのを皮切りに、顧客企業が求める機能に応 じて複数のクラウドプラットフォームを使い分けるマルチクラウドインテグレー ターとして成長してきた。

また、16 年からは、新規事業として、モビリティ業務最適化クラウドサービス 「Cariot(キャリオット)」を提供している。

同社の事業はクラウドソリューション事業の単一セグメントだが、クラウドイン テグレーションサービスと Cariot サービスに分類される(図表 1)。全売上高 の約 9 割を占めるクラウドインテグレーションサービスが主体となる状況が続 いている。

◆ 「攻めの DX」を支援するクラウドインテグレーションサービス
同社は DX を、(1)コスト削減を目的とした、紙からデジタルへの置き換え等 の社内のアナログな業務やデータをデジタル化する「守りの DX」、(2)収益 や顧客エンゲージメントの向上を目的とした新しい顧客体験を創出する「攻 めの DX」の 2 つに大別しており、「攻めの DX」を DX の本質と位置づけて いる。

顧客企業が「攻めの DX」を進めていくのを、クラウドの先端テクノロジーを用 いて支援するのが、同社のクラウドインテグレーションサービスである。(1) 顧客企業が実装しようとするデジタルサービスの企画、デザイン、開発、運 用までをワンストップで提供すること、(2)Salesforce を中心に Amazon Web Services や Heroku 等の複数のパブリック・クラウドサービスを組み合わせて 最適なマルチクラウドインテグレーションを提供することの 2 点を特徴として いる。

新規案件は、Salesforce をはじめとするクラウドパートナーからの紹介でスタ ートすることが多い。デジタルサービスの初期構築自体は約3カ月で終了す るが、そのデジタルサービスの高度化を支援する段階に続くことが多く、継 続受注につながりやすい。併せて、複数のクラウドプラットフォームでのサー ビス構築に対応できる強みを活かして、同一顧客企業の他のデジタルサー ビス構築の案件も獲得している。ひとつの顧客企業に対して複数のデジタ ルサービス案件を同時並行で開発・高度化することで、あたかもストックビジ ネスのように展開していくことになる。

そのため、同社では、月次契約顧客数と顧客当たり月次平均売上高 (ARPA)を、クラウドインテグレーションサービスの KPI に設定している(図表 2)。新規顧客の増加が続き、22/3 期第 2 四半期の月次契約顧客数 45 社の 3 分の 2 に当たる 30 社が大企業となっている。

◆ Cariot サービス
Cariot サービスは SaaS 型モビリティ業務最適化クラウドサービスである。企 業が所有する商用車(トラック、バス、ハイヤー、営業車、建機等)がサービ スの対象で、スマートフォンのアプリケーションや車載デバイスの GPS 情報 をもとに、車両の動態データや輸配送のステータス状況を取得し、それらの データを活用して日々の業務の改善につなげていく動態管理サービスであ る。

クラウドサービスとして提供されるため、初期導入時はドライブレコーダー取 付工事以外の費用はかからず、サービス開始後、契約台数とアカウント数 に応じた月額費用がかかる。そのため、継続的、安定的な売上を確保する ことができる。

サブスクリプション型の収益モデルであるため、同社は Cariot サービスの KPI として、月間経常収益を 12 倍して算出される年間経常収益(ARR)を重 視している(図表 3)。Cariot サービスの ARR は、ライセンス料、車両に取り 付けるデバイスのレンタル料といった契約期間において継続的に発生する 売上高で構成されている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。