AB&Company<9251> フランチャイズを軸として全国的な出店を継続する方針

2021/11/24

業務委託型の美容室チェーン「Agu.」を全国で展開
フランチャイズを軸として全国的な出店を継続する方針

業種: サービス業
アナリスト: 阪東 広太郎

◆ 業務委託型の美容室チェーンを全国に展開
AB&Company(以下、同社)グループは、純粋持株会社である同社及び連結子会社6社(B-first、ロイネス、Puzzle、agir、AGU NY、建.LABO)並びに持分法適用関連会社1社(J ISLAND)で構成されており、業務委託型の美容室チェーン「Agu.」を中心に全国展開している。

同社グループの事業セグメントは、「直営美容室運営事業」、「フランチャイズ事業」及び「インテリアデザイン事業」で構成されている。21/10期第3四半期累計期間における売上収益構成比は、直営美容室運営事業77.7%、フランチャイズ事業10.0%、インテリアデザイン事業12.3%である(図表1)。

Agu.グループ(同社グループとそれ以外のフランチャイズ加盟法人全てを含むグループ)の特徴として、正規雇用ではなく、スタイリストと業務委託契約を結んでいる点が挙げられる。

報酬体系は完全に売上に連動しており、正規雇用モデルの報酬(平均311万円/年、出所:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」)よりも高報酬(平均378万円/年、20年8月から21年7月までの全ての月で報酬を支払っているスタイリストへの報酬の平均値)を得ることも可能である。また、シフトが柔軟であることから、収入を増やしたいスタイリストや家族の都合に合わせて働きたいスタイリストなど多様な人材を確保することが可能である。

◆ Agu.グループの美容室の特長
(1)顧客構成と集客経路
Agu.グループの美容室における顧客の男女比は、女性73%、男性27%であり、女性顧客の64%が20代から30代である。Agu.グループにおける女性のヘアカット・カラーセットの価格が4,000円程度と、個人経営店やチェーン店の平均的な価格である7,000円~8,000円と比較して低価格である点が、価格感度の高い20代から30代の女性に評価されている。

顧客の来店経路は20/10期において約8割がWeb経由である。リクルートが運営する美容検索・予約サイトである「HOT PEPPER Beauty」からの予約がほとんどである。同社によると、Agu.グループのターゲット顧客層の多くはコストパフォーマンスを重視して美容室を変更しており、「HOT PEPPER Beauty」で店舗を検索・予約する際に、Agu.グループのコストパフォーマンスに着目し、Agu.グループの店舗を選択しているようである。

Agu.グループの多くの店舗では、2回目以降の利用時であっても「HOT PEPPER Beauty」のクーポン券が使える事や、カットの品質やサービスへの満足度が高いこともあって、新規出店後の1店舗当たり月間総来店客数は、1年後で419人、2年後で490人、3年後で531人となり、そのうち前回来店時から6カ月以内に再来店した顧客の比率は、1年後で66%、2年後で74%、3年後で80%と徐々にリピーターが積み上がる傾向にある。

(2)スタイリスト構成と採用経路
Agu.グループのスタイリストの構成は、男女比は半々程度で、年齢は25歳~35歳が多い。資格保有者を業務委託契約により採用することが中心だが、新卒採用も一部行っている。

資格保有者の採用は、既に業務委託契約を結んでいるスタイリストからの紹介が多い。

同社グループは、特に地方でのスタイリストの確保が困難になったことを受けて、18 年から美容学校からの新卒採用を開始している。新卒生は正社員 のアシスタントとして採用し、同社グループの育成プログラムを経て、卒業後 約1 年程度でスタイリストとしてデビューし、業務委託へ転換する。

店舗当たりのスタイリスト数は平均すると4~5 名である。店長はスタイリストが兼務しており、業務委託契約を結んでいる。大半の店舗にはアシスタントはおらず、受付業務や店舗内の清掃業務はスタイリストが担当している。

(3)店舗立地
Agu.グループは、郊外では駐車場完備の広い敷地面積を持つ平屋店舗、都心では賃料の安い空中店舗を中心に出店することで、賃料を低減し、スタイリストへの報酬還元やWeb 広告費用に充当している。

(4)店舗の収益・費用構造
Agu.グループの美容室店舗の売上は、店舗当たりスタイリスト数、スタイリスト当たり顧客数、顧客単価の積で決まる。

店舗当たりスタイリスト数は、16/10 期末の5.6 人から、フランチャイズ加盟法人において地方都市での小型ロードサイド店舗の出店が増加したこと等により、21/10 期第3 四半期末の4.6 人に減少した。

スタイリスト当たりの顧客数(スタイリスト数の期首期末平均に対する来店客数)は、17/10 期の1,552 人から19/10 期の1,600 人に増加したものの、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、20/10 期には、1,396 人にまで減少した。

顧客単価は、リピート顧客に対する高単価メニューの提案などによって、20/10 期の5,250 円から、21/10 期第3 四半期累計期間の5,434 円に増加した。

Agu.グループの一般的な店舗売上に対する費用の構成比は、本部ロイヤリティ6%、人件費44%、原材料費5%、広告宣伝費9%、地代家賃9%、水道光熱費・POS 使用料等その他の店舗固定費10%、減価償却費・全社共通費用・経営指導料13%であり、店舗営業利益は3%である。

Agu.グループにおける、顧客から受け取る料金に対するスタイリストへの報酬還元の割合は、予約時のスタイリストの指名の有無で変わり、指名がある場合は65%、無い場合は55%である。報酬からシャンプーやカラー剤等の材料費等を経費として差し引いて支給している。アシスタントの月給は19 万円~23 万円である。

店舗の費用構成比は出店都市の人口によって異なる。出店都市の人口が多いほど、美容室間の集客競争や異業種を含めた出店競争が激しいため、店舗売上高に占める地代家賃及び広告宣伝費の割合は高くなる傾向がある。

◆ 直営店舗運営事業
同社の連結子会社であるロイネス、Puzzle、agir 及びAGU NYは、それぞれ美容室を直営展開している。ロイネス、Puzzle、agir はフランチャイズ加盟法人を連結子会社化することで直営展開をしている。

一定程度の店舗数を超えたフランチャイズ加盟法人については、Agu.グループ全体に対するガバナンス強化、同社グループの収益及び利益の拡大のため、同社グループが株式を買い取り、直営化する場合がある。同社は、18 年3 月にロイネス、18 年10 月にPuzzle 及びagir を株式取得により完全子会社化し、直営店として運営している。子会社化後は、当該フランチャイズオーナーは同社グループの一員として、若い世代のフランチャイズオーナー育成などを担っている。

同社グループの直営店舗数は、16 年10 月末の94 店舗から、21 年9 月末の242 店舗まで増加している。21 年9 月末における地域別の店舗数は、北海道15 店舗、東北73 店舗、関東23 店舗、中部47 店舗、近畿57 店舗、中国6 店舗、四国3 店舗、九州・沖縄18 店舗である。

◆ フランチャイズ事業
同社の連結子会社であるB-first はAgu.グループのフランチャイズ本部として、フランチャイズ店舗に対して、経営指導、企業ノウハウ及び教育研修の提供、プライベートブランド商品の販売、パーマ液やカラー剤等の材料販売、広告代理業務、採用、経理業務の代行等を行い、フランチャイズ加盟法人からその対価を得ている。

店舗の運営は各フランチャイズ加盟法人で行われ、フランチャイズ契約により、美容室の経営に関するシステム(サービス・商品・人員の配置方法等)やノウハウ、商標などを使用している。

21 年9 月末時点で31 人のフランチャイズオーナーが運営する店舗は413 店舗あり、フランチャイズオーナーごとの店舗数は数店舗から61 店舗まで様々である。同社によると、フランチャイズオーナーの出店地域は、日本各地に分散しており、店舗間の顧客やスタイリストの取り合いはほとんど無いようである。

同社グループは、フランチャイズ加盟法人より、ロイヤリティ収入とその他収入を得ている。店舗売上の5%がロイヤリティ収入となる。その他収入は、仕入代行収入(フランチャイザーとしてサプライヤーとの折衝を行う対価)、POS リース収入(POS をフランチャイズ店舗にリースする対価)、スタイリスト 採用代行収入(求人広告運用を一括管理し、成果報酬型で採用人数に応 じて請求)、プライベートブランド商品卸収入等である。その他収入はフラン チャイズ店舗の売上とは直接的に連動せず、フランチャイズ加盟店の店舗 数と連動する。

フランチャイズ加盟法人の店舗数は、16 年10 月末の149 店から21 年9 月末には413 店まで増加した。21 年9 月末時点における地域別の店舗数は、北海道11 店舗、東北56 店舗、関東92 店舗、中部106 店舗、近畿64 店舗、中国16 店舗、四国8 店舗、九州・沖縄60 店舗である。

◆ インテリアデザイン事業
同社の連結子会社である建.LABO は、美容室等の内装デザイン業者としてAgu.グループの美容室の出店及びグループ以外の受注案件に関して、店舗デザインや施工業者のアレンジ等のサービス提供を行い、その対価を得ている。Agu.グループ向けの売上がほとんどを占めている。

同社グループは、店舗デザインや施工業者のアレンジ等を内製化することにより、内装工事費用を比較的安価に抑え、かつ、より短い期間での開業を可能としている。同社グループの店舗内装のパターンが決まってきていることもあり、内装デザインの工数を大幅に削減することが可能なようである。また、フランチャイズを中心に安定的な数の新規出店があるため、施工業者に安定的に業務を発注できることもあり、比較的低いコストで施工業者を手配できるようである。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
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