CINC<4378> 消費行動のデジタルシフトを捉え企業のマーケティング支援事業の拡大を目指す

2021/11/01

デジタルマーケティングの支援ツールとツールを活用したコンサルティングを提供
消費行動のデジタルシフトを捉え企業のマーケティング支援事業の拡大を目指す

業種: 情報・通信業
アナリスト:鎌田 良彦

◆ デジタルマーケティングの支援ツールとコンサルティングを提供
CINC(以下、同社)は、Web検索エンジンやSNS等を活用したデジタルマーケティングの分野で、収集したビッグデータに基づき顧客のニーズや競合他社の戦略等を調査、分析し、マーケティング活動を支援するツールの開発・運用を行うソリューション事業と、それらのツールを活用したコンサルティングを提供するアナリティクス事業を行っている。

売上内訳は、20/10期ではソリューション事業が469百万円で売上高構成比が50.2%、アナリティクス事業が464百万円で同49.7%、21/10期第3四半期累計ではソリューション事業が452百万円、同48.5%、アナリティクス事業が480百万円、同51.5%と、ほぼ半々の売上構成となっている(図表1)。

◆ ソリューション事業
ソリューション事業では、同社が取得したWebページのコンテンツや、データサービスプロバイダーから購入したデータ等からなるビッグデータを対象に、自然言語処理注1、機械学習、深層学習技術注2と統計学を用いて解析を加え、デジタルマーケティングのための分析用データを提供するツールを開発・運用している。具体的には以下の2つのツールがある。

1) Keywordmap
Keywordmapは、Google検索を対象に、2,800万以上の検索キーワードの日本語データベースに基づき、市場分析から競合他社調査、自社サイトの改善点抽出まで、検索エンジンマーケティングの一連の業務を効率化するツールである。

具体的な機能としては、Webサイトのコンテンツを作成する際に、どのようなキーワードに注目し、コンテンツ対策をすべきかの分析ができる、競合獲得キーワードやワードマップ、共起語注3分析等がある。

競合獲得キーワードでは、自社と競合他社のWebサイトに関して、特定のキーワードによる検索結果の順位を知ることができる。これによって他社のサイトがどのようなキーワードで検索結果の上位に表示されているかといったことや、自社が取り込めていないキーワードの発見等が可能になる。

ワードマップでは、特定のキーワードに掛け合わせて検索されるキーワード等を視覚的に表示し、検索者がどのような意図とニーズを持って検索しているかを把握することができる。

共起語分析では、特定のキーワードで検索されるコンテンツで良く用いられる他の単語を知ることができる。これらの共起語をコンテンツに取り込むことで、ユーザーのニーズに応え、検索順位を上げることが可能となる。

顧客はこれらの機能を使うことによって、自社サイトのコンテンツを改善し、検索結果でより上位に表示されることで、認知度の向上や見込顧客の獲得、購買行動の促進等を目指すコンテンツマーケティングを行うことができる。

この他にも他社サイトが出稿している広告の内容やキャッチコピーの分析ができる広告出稿分析等、全部で50を超える機能を備えている。

Googleには、Google Search ConsoleやGoogle Analytics等、自社サイトの検索順位やどのようなキーワードで自社サイトに訪問しているか等を知ることができる無料のツールがあるが、他社サイトの分析を行うことはできない。他社サイトの分析を行うためには、Keywordmapのようなツールを使う必要がある。

2) Keywordmap for SNS
Keywordmap for SNSは、Twitterの投稿を対象に、ユーザーの潜在的なニーズやアカウントの傾向把握、投稿管理等のSNSマーケティングに必要な情報の抽出とアカウント運用の効率化を行うツールである。同社ではTwitter上での商品やサービスの反響を調査するソーシャルリスニングと、Twitterでの投稿を活用した企業や商品・サービスの認知度向上や、見込顧客の獲得等のためのコンテンツマーケティングのツールと位置づけている。

具体的な機能としては、注力すべきキーワードを見つけるための、自社と他社のアカウントにおける、投稿に対するリツイート等顧客の反応(エンゲージメント)が高いキーフレーズや効果の高いハッシュタグ注4の抽出、投稿の予約や投稿承認フロー、レポートの作成等の投稿管理機能等がある。また、投稿文章の単語や言葉遣い、表現から投稿者の感情を「愛情」「楽しみ」「ニュートラル」「怒り」「悲しみ」「恐れ」の6つに分類し、消費者が抱えるニーズの発見に役立てる感情判定の機能もある。

3) 顧客基盤と料金体系
ソリューション事業の顧客には、自社にデジタルマーケティングを行う人材を抱えて運用している事業会社と、顧客に対してマーケティングに関するコンサルティングを提供する広告代理店やWebマーケティング会社(以下、広告代理店等)がある。

21年7月時点で顧客数は370社となっており、同月のMRR注5ベースでの構成比は、事業会社が59%、広告代理店等が41%となっている。

KeywordmapとKeywordmap for SNSの料金は初期費用と定額の月額利用料からなる。契約期間は1年を原則としている。料金体系は大きく事業会社向けと広告代理店等向けに分かれている。Keywordmapの料金体系は、利用できる機能やID数によって、ライト、スタンダード、エキスパートの3つに分かれている(図表2)。

◆ アナリティクス事業
アナリティクス事業では、KeywordmapやKeywordmap for SNSを活用し、コンサルタント、データアナリスト、クリエイティブディレクターの3職種で連携し、コンテンツマーケティングを中心にデジタルマーケティング施策の提案・代行、効果測定、改善までを一貫してサポートするDX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルティングを行っている。

料金は初期調査費用と40万円/月からの定額の月額利用料からなる。また、定額の月額利用料の中で、その時々の必要に応じ様々なサービスを受けられるスイッチングオプション型のサービス形態をとっている。

21年7月時点の顧客数は95社で、業種や企業規模は様々だが自社にデジタルマーケティングを行う人材やスキルが揃っていない顧客が多く、ソリューション事業の顧客とは重複していない。

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