リベロ<9245>インターネット回線業者等をマッチングさせる移転者サポート事業を展開

2021/10/08

引越し・転勤する個人と不動産・引越し・電力・ガス・インターネット回線事
業者等をマッチングさせる移転者サポート事業を展開

業種: サービス業
アナリスト:阪東 広太郎

◆ 移転者サポート事業を展開
リベロ(以下、同社)グループは、同社及び連結子会社 1 社(リベロビジネス サポート)で構成されており、転勤・引越しを行う個人の部屋探しや引越し手 配、電力・ガス・インターネット回線等のライフラインの手配において、個人の 様々なニーズに基づいて事業者を選択・提案し、個人と不動産事業者・引 越し事業者・ライフライン提供事業者等をマッチングさせる事を主とした「移 転者サポート事業」を展開している。同社グループは「移転者サポート事業」 の単一セグメントだが、売上高は「新生活ラクっと NAVI」、「転勤ラクっと NAVI」及び「HAKOPLA・WEB」の 3 つの事業部門に区分される。21/12 期 第 2 四半期累計(以下、上期)における売上構成比は、新生活ラクっと NAVI 事業が 50.7%、転勤ラクっと事業が NAVI44.4%、HAKOPLA・WEB 事業が 4.9%である(図表 1)。

◆ 新生活ラクっと NAVI 事業
新生活ラクっと NAVI 事業では、転居する個人(以下、転居者)が、引越し事 業者の手配、電力・ガス・インターネット回線などのライフラインの手配を一 括で行うことができる「新生活ラクっと NAVI」サービスを提供している。転居 者は「新生活ラクっと NAVI」を利用することで、転居に必要な手続きの手間 を省くことができ、様々なサービスを比較検討することが可能になる。

「新生活ラクっと NAVI」は主に不動産事業者を通して転居者に提供されて いる。不動産事業者で転居先を決めた転居者に対して、不動産事業者は 「新生活ラクっと NAVI」の案内を行い、承諾を得た上で、同社グループに転 居者のサポートを依頼する。同社グループのコールセンターが転居者の希 望条件をヒアリングし、最適と考えられるサービスを提案する。サービスが決 まった後は、転居者を引越し事業者や新電力注 1 事業者、ガス小売り事業者 注 2 、インターネット回線事業者等のライフライン提供事業者に取り次いでい る。この他、「新生活ラクっと NAVI」では、レンタル家具・家電や不用品回収 等のサポートを実施しているが、引越し相見積もりとライフラインに関するサ ービスの仲介が売上高の大半を占めている。

同社グループは、転居者から対価は受け取らず、提携する引越し事業者や ライフライン提供事業者から、成約の都度、成功報酬を受け取る。成功報酬 は事業者ごとに相対で決まっているが、平均するとインターネット回線が最 も高く平均で約 4 万円であり、引越し、電力、ガスと続く。

紹介先となる不動産事業者に対して、送客数や成約数に応じて紹介手数 料を支払っている。紹介手数料の金額は不動産事業者ごとに相対で決まっ ている。「新生活ラクっと NAVI」に登録する不動産事業者等は全国展開す る大手事業者から地場事業者まで多岐にわたり、21年6月末時点で、1,025 社に達している。

◆ 転勤ラクっとNAVI事業
転勤ラクっと NAVI 事業では、法人企業向けのクラウド転勤支援サービス 「転勤ラクっと NAVI」、クラウド賃貸契約サービスである「ワンコイン転貸」及 び「ヘヤワリ」を提供している。同社によると、21/12 期上期において「転勤ラ クっと NAVI」が同事業の売上高の大半を占めている。

「転勤ラクっと NAVI」では、法人企業で発令された人事異動により転居が伴 う転勤者がサービスの利用者となり、総務人事担当部門は「転勤ラクっと NAVI」を転勤者に周知した上で、同社グループに転勤者のサポートを依頼 するところから始まる。

法人企業と事前に取り決めた契約条件の中で、転勤者の要望に合致する 新生活に関連する様々なサービス提供において事業者を選定し、同社グ ループが提供するクラウドサービスを通じて依頼する。

収益モデルとして、同社グループは法人企業や転勤者から対価は受け取ら ず、「転勤ラクっと NAVI」で提携する不動産事業者や引越し事業者、ライフ ライン提供事業者と転勤者が成約した場合に、不動産事業者や引越し事業 者、ライフライン提供事業者から成功報酬を受け取る。

「転勤ラクッと NAVI(ヘヤワリを含む)」を利用する法人企業は大手企業や 官公庁が中心で業種は多岐にわたるが、全国に多数の拠点を持ち転勤件 数の多い流通・サービス業が多く、21 年 6 月末時点で、2,379 社である。

法人企業の窓口は総務人事担当部門が大半である。多数の転勤者に対す る部屋探しや引越し業者の手配などの手間を低減する手段を検討する中 で「転勤ラクっと NAVI」を導入するようである。法人企業とのコンタクトの経 路は総務人事関係の大規模イベントが中心である。同社はこれらのイベント に出展し、企業の担当者との接点を作った後、営業担当者が直接営業を行 っている。上記に加えて、人材派遣事業者等の総務人事担当部門と接点を 持つ販売代理店や、同社グループの株主でもあるベネフィット・ワン(2412 東証一部)から紹介を受けるケースもある。

「ワンコイン転貸」は、同社の連結子会社であるリベロビジネスサポートが法 人企業に替わって、不動産管理会社又は家主と賃貸借契約を締結し、その 上で転貸人として法人企業と転貸借契約を締結する転貸サービスである。 法人企業は転借した部屋に転勤者を住まわせることになる。同社グループ は、「転勤ラクっと NAVI」を利用している法人企業より、部屋探し及び引越し 手配のみならず、社宅の管理まで委託したいという要望を受け、「転勤ラク っと NAVI」のオプションサービスとして、19 年 11 月に「ワンコイン転貸」を開 始した。

法人企業の総務人事担当部門の担当者は、「ワンコイン転貸」を活用するこ とで、クラウド上で社宅として契約している部屋の管理ができる。個別の社宅 契約は全て電子契約であり、更新及び解約をクラウド上で完結することがで きる。「ワンコイン転貸」では、転貸方式を採用することにより、法人企業は転 勤者ごとの賃貸借契約書が不要となるなど、業務の効率化などのメリットが ある。

同社グループは法人企業より、管理戸数に応じた月額管理手数料を受け 取っている。一戸当たりの月額管理手数料は 500 円(税別)に設定されてお り、サービス名もこれに由来している。

21年6月末時点で「ワンコイン転貸」を導入する法人企業の数は 107 社で あり、管理戸数は 2,784 戸である。

「ヘヤワリ」は個人契約向けのクラウド賃貸契約サービスであり、法人企業に 対して、従業員向けの無料の福利厚生サービスとして提供している。法人 企業の従業員は、「転勤ラクっと NAVI」と同様のサポートを無料で利用でき る事に加えて、転居先の家賃について割引を受ける事ができる。

「ヘヤワリ」では、法人企業の従業員が希望する部屋を同社の子会社である リベロビジネスサポートが借上げ、法人企業の従業員に貸し出す転貸借方 式を採用しているため、転貸料金を同社が設定することが可能となり、入居 者である法人企業の従業員向けに家賃の割引(21年6月末時点で、同じ部 屋に住む期間、毎月の家賃を2,000円、最大24カ月の割引を提供。当該割 引は、提携不動産事業者で部屋の申し込みをした上で、同社グループが 貸主となる転貸借契約を締結した場合に適用される)を提供している。従業 員は物件を探す際は、「ヘヤワリ」上で検索するか、インターネット等で希望 する物件を見つけた後、「ヘヤワリ」に希望物件が記載されているかを確認 する。法人企業の従業員は不動産事業者が提示している家賃に対して上 記の割引を受ける事ができる。

同社グループは、「転勤ラクっと NAVI」は法人企業の転勤者のみがターゲ ットのため、市場規模が限定的と考え、法人企業の従業員の個人的な転居 に伴う、部屋選び・引越し事業者の手配・ライフラインの手配のサポートまで 事業領域を拡大するために、20年9月に「ヘヤワリ」を開始した。サービス開 始当初は「ワンコイン転貸」と同様に法人企業に対して一部屋当たり月額 500 円を課金していたが、総務人事部門の担当者にとって従業員個人の住 居については社宅のような管理効率化のニーズは無く、21 年 4 月より無料 化した。

同社グループは法人企業や従業員から対価は受け取らず、不動産事業者 や引越し事業者、ライフライン提供事業者等と顧客の間で取引が成約した 際に、不動産事業者や引越し事業者、ライフライン提供事業者等から成功 報酬を受け取る。

入居者である従業員に対する家賃割引の条件として、顧客は家賃保証に ついては、ヘヤワリと提携する家賃保証事業者と契約することが必須であり、 電力は同社グループが提携する新電力から選択し、契約することが推奨さ れている。これらの先から得る報酬が家賃割引の原資となる。

「ヘヤワリ」を利用するのは「転勤ラクっと NAVI」と同様の大手企業や官公庁 及び、転勤者数の少ない中堅・中小企業の従業員である。

◆ HAKOPLA・WEB 事業
HAKOPLA・WEB 事業では、引越しプラットフォームサービス「HAKOPLA」 及び、「引越しラクっと NAVI」という 2 つのサービスを展開している。同社によると、21/12 期上期における売上高構成は「HAKOPLA」が約 5 割、「引越 しラクっと NAVI」が約 5 割である。

「HAKOPLA」では、引越し事業者同士のマッチングにより、引越し事業者 のコスト削減・利益率アップを支援している。また、資材の配送及び回収、作 業員一人では運送ができない大型家具配送、人材に関するマッチングや 引越しに利用する車両の燃料共同購入によるコスト低減や鉄道輸送の共同 利用も行っている。

引越し繁忙期となる 3~4 月に、引越し事業者から取引を断られてしまう「引 越し難民」が発生する一方で、引越しを提供したくてもできない引越し事業 者が存在する事が社会的な課題になっている。同社は、この課題の原因は、 4 月を起点とした一斉就職・一斉就業という制度に起因する引越しサービス の需給バランスの崩壊に加えて、エリア限定で営業する引越し事業者が抱 えるエリア外への引越しに対する採算性の低さがあると考え、この原因を解 決すべく、18 年 6 月に、当時提携する約 60 社の引越し事業者の中から、課 題解決に意欲を示す全国約 30 社(発足当初)の引越し事業者と共に年 4 回の実務者協議(後にハコプラ協議会、ハコプラ定例会)を実施してきた。 実務者協議を通して、サービスメニューの開発、システム開発、提携のため のルールの制定等に取り組み、19 年 7 月より「HAKOPLA」を開始した。

同社グループはマッチングが成立した際に、マッチング金額の一定割合を、 マッチングした両社から受け取る。21 年 6 月末における「HAKOPLA」の参 加引越し事業者数は 86 社であり、20/12 期において、自社の保有する引越 し案件を他の引越し事業者に任せたいとして「HAKOPLA」に登録された案 件数は 9,207 件である。

「引越しラクっと NAVI」は、「転勤ラクっと NAVI」を個人向けに仕様変更した サービスである。「転勤ラクっと NAVI」を利用した法人企業の総務人事担当 部門の担当者や転勤者から、自身の個人的な転居でも同様のサービスを 受けたいという声を受け、15 年 5 月から提供を開始した。

「引越しラクっと NAVI」では、利用を希望する個人が WEB サイト上で直接 同社グループにサポートを依頼し、コールセンターは本人の要望に沿って サポートを行い、本人の希望に合致するようにライフライン提供事業者や引 越し事業者等にサービス提供を依頼する。サポート内容は「転勤ラクっと NAVI」と同様である。「引越しラクっと NAVI」の利用者はサポートサービスを 無料で利用することができ、同社グループはライフライン提供事業者や引越 し事業者等から成功報酬を受け取る。

◆ 主要サービスのサポート件数の推移
「新生活ラクっと NAVI」の主要サービス(電力・ガス・インターネット回線など のライフラインサービスや引越し相見積もりサポートサービス)のサポート依 頼件数(複数のサービスを利用するサービス利用者が存在するため、サポ ート依頼件数はサービス利用者の重複を含む延べ件数)は 17/12 期に引越 し事業者からの送客受付を段階的に停止した影響もあり、16/12 期の 158,427 件から 157,147 件に減少した。18/12 期に電力及びガスの取扱を開 始し、転居者にとっての利便性が増したことから、19/12 期には 282,225 件ま で増加した。20/12 期には新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けたた め、前期比 0.8%増の 284,359 件に留まった。

「転勤ラクっと NAVI」の主要サービス(部屋探し・引越し相見積もりサービス) のサポート依頼件数(複数のサービスを利用するサービス利用者が存在す るため、サポート依頼件数はサービス利用者の重複を含む延べ件数)は、 サービス依頼者である法人企業の増加を受けて、16/12 期の 12,810 件から 20/12 期の 26,597 件まで年率 20.0%で拡大した。

◆ 提携事業者の構成
同社グループは、21 年 6 月末時点で、サービス提供者として 372 社の不動 産事業者、77 社のライフライン提供事業者、86 社の引越し事業者と提携し ているが、売上高はインターネット回線事業者を中心に少数の提携事業者 に偏る傾向がある(図表 2)。21/12 期上期において、ソフトバンク(9434 東証 一部)及び NTT(9432 東証一部)の子会社である NTT ぷららの 2 社で総売 上高の 37.4%を占めている。これらの先は成功報酬の単価が高いため、売 上高が大きくなるようである。

◆ サービスの提供体制
同社グループの従業員の配置は、法人営業約 20 名、不動産事業者営業 約 20 名、コールセンター約 20 名、営業事務・転貸事務約 20 名、コーポレ ート約 10 名、システム数名である。上記に加えて、コールセンター及び転貸 事務においては 1 日 8 時間換算で年間平均 125 名のアルバイトや派遣社 員を臨時雇用している。

>>続きはこちら(1.08 MB)

一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。