ジィ・シィ企画<4073> クラウド型決済ASPサービスへのシフトでストック収益基盤拡大を目指す

2021/10/01

キャッシュレス決済システムの開発・保守・運営を行う
クラウド型決済ASPサービスへのシフトでストック収益基盤拡大を目指す

業種:情報・通信業
アナリスト:髙木 伸行

◆ キャッシュレス決済システム構築やクラウドサービスを提供
フランチャイズを含む多店舗展開を行う流通事業者は、複数のレジで使用 されるクレジットカードや電子マネーなどの決済を処理し、与信管理や取 消・返品の対応、決済後のクレジットカード会社などとの精算業務が必要と なる。ジィ・シィ企画(以下、同社)は、主に中堅から大手の流通事業者向け にキャッシュレス決済サービスに関するシステム構築やクラウドサービスを提 供している。

同社は流通事業者をはじめとするカード会社加盟店とカード会社を接続し、 決済処理、一日の利用データの作成や、カード会社加盟店に会計システ ムなどとの連携のためのデータ還元を行うなどのカード会員管理や加 盟店管理業務などを担っている。

同社はカード会社加盟店の運用負担やコストの低減、セキュリティの確保な どの要望に応えるため、カード会社加盟店が自前で構築するオンプレミス 型の情報システムや同社が保有するシステムをクラウドとして利用できる決 済 ASP サービス注 1 を提供している。

同社の事業はキャッシュレス決済サービス事業の単一セグメントだが、サー ビスを「情報システム開発」と「アウトソーシングサービス」に区分して開示し ている(図表 1)。21/6 期では情報システム開発が売上高の 56.7%、アウトソ ーシングサービスが 43.3%を占めている。詳細は後述するが、21/6 期の情 報システム開発の売上高が前期比 32.7%減となったのは、20/6 期にあった 特需の反動によるものである。

◆ 情報システム開発
カード会社加盟店自身がプロセシング業務(決済、顧客管理、コールセンタ ー業務)を行う際に必要となる決済処理システムを提供している。同サービ スの最終的な顧客はカード会社加盟店であるが、直接受注する場合と大手 システムインテグレーター経由の二次請けとして受注する場合とがある。 21/6 期では直接受注と二次請けの比率はおおよそ半々とのことである。

決済処理システムの基本機能は決済パッケージソフトウェアである CARD CREW シリーズをライセンス提供しており、顧客ニーズに合わせてオンプレ ミス型、決済 ASP サービス型で提供している。オンプレミス型では殆どの場 合でカスタマイズをおこなう。決済 ASP サービス型ではカード会社加盟店の 求めにより、顧客環境に合わせてのカスタマイズが伴う場合があることから、 カスタマイズ部分を「情報システム開発」として売上計上している。

POS システムとの親和性が高いことから EC 業者よりは対面販売事業者のユ ーザーが多い。このため、対面販売での決済に必要な決済端末の販売も 行っており、その売上高も情報システム開発に含まれている。21/6 期の情報 システム開発の 52%がシステム開発、48%が機器販売と推定される。

◆ アウトソーシングサービス
アウトソーシングサービスとして1)決済 ASP サービス(クラウド型)と 2)保守 運用サービスを提供している。21/6 期のアウトソーシングサービスの売上高 の 67%が決済 ASP サービス(クラウド型)、33%が保守運用サービスからと推 定される。

1)決済 ASP サービス(クラウド型)
同社が用意する業務処理に必要なソフトウェア、通信専用回線、サーバー、 保守・運用サービスを顧客企業に利用してもらうクラウド型のサービスである。 外部事業者が提供するデータセンター内にサービスに必要なシステムと通 信環境を設置した「ジィ・シィ企画専用データセンター」を運営している。

2)保守運用サービス
同社がオンプレミス型で提供したシステムに対して、24時間365日対応の保 守・運用体制とヘルプデスクを用意している。

◆ 収益構造
同社の最終的なユーザーは流通事業者となるが、受注経路によって販売 先はシステムインテグレーターや決済事業者、流通事業者であったりする (図表 2)。

21/6期第3四半期累計期間の実績では、流通事業者としてはユニー、ドン・ キホーテといったパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス (7532 東証一部)の傘下企業、システムインテグレーターとしてはアイネット (9600 東証一部)、日本電気(6701 東証一部)、決済事業者としてはジェー シービーの子会社で CARDNET 注 2 を運営する日本カードネットワーク(東 京都新宿区)が過去の上位取引先に名を連ねている。

収益のタイプとしては、情報システム開発はフロー型、アウトソーシングサー ビスはストック型となっており、21/6 期では売上高の 43.3%がストック型収益 となる。フロー型のシステム開発は検収基準で売上高が認識されるが、受注 から売上計上までの期間は 3 カ月~6 カ月が一般的である。ストック型の課 金形態としては、保守運用サービスは基本、固定料金、ASP サービスは固 定部分に加えて、端末の台数とサービス内容に応じた料金を課金してい る。

フロー型の情報システム開発に機器販売が含まれている関係で同社の売 上原価は製品売上原価と機器販売に関連した商品売上原価に分けて開示 されている。ただし、機器販売に関する端末へのアプリケーションの設定費 用などは商品売上原価に加算されていない点には注意が必要である。21/6 期の売上原価は合計で1,203百万円であり、内訳は82.9%が製品売上原価、 17.1%が商品売上原価となっている。21/6 期の製品に関しての総製造費用 1,276 百万円のうち労務費が 44.4%、外注費が 20.1%、通信費が 9.8%を占 めている。

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資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。