ユミルリンク<4372> 中期的にメッセージングプラットフォーマーとしてのサービス提供を志向

2021/09/28

法人顧客向けにメッセージングソリューション「Cuenote」を提供
中期的にメッセージングプラットフォーマーとしてのサービス提供を志向

業種: 情報・通信業
アナリスト:藤野 敬太

◆ 法人顧客向けにメッセージングソリューションを提供
ユミルリンク(以下、同社)は、法人顧客のマーケティング活動やコミュニケーション促進を支援するソフトウェアシリーズ「Cuenote(キューノート)」を提供している。同社は、独立系のシステム受託開発の企業として創業したが、親会社がサイバーエージェント(4751東証一部)、サイボウズ(4776東証一部)と変わっていく過程で、メッセージングソリューションを提供するサービスモデルに進化していった。09年にサービスブランドを「Cuenote」に統一し、11年にアイテック阪急阪神(大阪府大阪市)が親会社となり、現在に至っている。

「Cuenote」は、メールや携帯電話のショートメッセージ等を円滑に、かつ正確に配信するシステムを提供しているが、SaaS注1形式とソフトウェア形式という2つの提供形態が用意されている。21/12期第2四半期累計期間(以下、上期)におけるSaaS形式による提供は全売上高の96.7%と大半を占めており、安定的な収益を獲得できるリカーリングビジネス注2として展開している。

同社の事業はメッセージングソリューション事業の単一セグメントで、サービス別に見ても「Cuenote」シリーズからのものがほぼすべてである(図表1)。

◆ 「Cuenote」のサービスラインナップ
「Cuenote」は、主に5つのサービスで構成されている(図表2)。

中心となるのは、同社の21/12期上期の売上高の68%を占める「Cuenote FC」で、同社の法人顧客が主にマーケティングやプロモーションを行うために組織外部に送信するメール配信システムである。大量のメールを、一斉に、タイムリーに配信することができるだけでなく、メールマーケティング効果を測定、評価するための機能も搭載されている。

21/12期上期の売上高の18%を占める「Cuenote SR-S」は、「Cuenote FC」のメール配信機能の一部を取り出してひとつのサービスとしたものある。既存のメール配信システムから送られたメールを中継して配信するサービスである。メールの遅延や不達を解消することを目的としており、商品発送や取引決済の際の連絡や確認のためのメールに用いられる。

「Cuenote SMS」はメールではなく、携帯電話のショートメッセージサービス(以下、SMS)を用いたコミュニケーションに使われる配信サービスである。国内4キャリアと直接接続し、スマートフォンや携帯電話を持つ個人に対し、個人が特定されている電話番号に向けてメッセージを送信することができる。電話番号だけで送信できる、電話番号はなかなか変わらない、開封率が高いといった特徴から、重要な通知や本人認証の用途で利用が拡大している。そのため、21/12期上期の売上高の10%を占めるが、その構成比は上昇傾向にある。

「Cuenote Survey」は、比較的容易にウェブアンケートや問い合わせフォームを作成できるシステムである。単独で使用することもできるが、メール配信やSMS配信のオプションとして使われることが多いと考えられる。

「安否確認サービス」は、法人顧客の内部コミュニケーションのツールであり、自然災害発生時等に、外部の気象データと連携して、自動で従業員等の安否確認や緊急参集のための連絡を行うことができるサービスである。

◆ 「Cuenote」の顧客
「Cuenote」はメールソリューションをベースとしているため、汎用的なソリューションである。そのため、マーケティングやプロモーションに留まらず、多目的で用いられる。また、特定の業種に限ったソリューションでもない。そのため、顧客業種は分散しており、21 年6 月末時点で契約数は1,800 を超えている。

1 法人顧客ごとの契約数の分布は、21 年6 月末時点で、1 契約が全体の80.7%、2 契約が12.6%、3 契約以上が6.7%となっている。また、21 年6 月時点の1 社当たりの平均契約額は11.4 万円と前年同月より1.5 万円上昇している。

また、リカーリングビジネスとして展開しているために常に解約が発生しうるが、20 年7 月から21 年6 月までの月次平均解約率は0.31%と低い水準にある。

◆ 「Cuenote」を支える体制
販売経路は直販が約8 割を占めている。これは迷惑メールや詐欺メール等の配信を防ぐために、やみくもに代理店を増やすようなことをせず、質を維持する方針を採っているためである。

一方、システム運用面では、データセンターは国内に6 カ所(関東3 カ所、関西2 カ所、九州1 カ所)に置くことで自然災害やシステムトラブルといったリスクの分散を図っている。また、全社員の55.0%が技術系社員という体制を敷くことで、高い質を維持している。その結果、20/12 期は99.99%以上の稼働率注3 を実現している。

>>続きはこちら(1.22 MB)

一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。