BCC<7376> 21年9月期はヘルスケアビジネス事業黒字化が主要因で大幅増益の会社計画

2021/07/27

IT企業への営業人材提供と介護分野でのヘルスケア業界支援の二本柱で展開
21年9月期はヘルスケアビジネス事業黒字化が主要因で大幅増益の会社計画

業種: サービス業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ IT企業向け営業人材の提供と介護レクリエーション中心のヘルスケア業界支援の二軸展開
BCC(以下、同社)は、大手IT企業の営業部門への人材提供と、介護レクリエーション注を中心とした支援サービスを事業の二本柱としている。02年3月に現代表取締役社長が設立した営業創造が前身で、現在と同じ大手IT企業への営業人材提供を行っていた。12年1月にスマイル・プラスを子会社化したことで介護レクリエーション分野に参入し、その後、グループ再編を経て現在に至っている。

同社の事業は、IT営業アウトソーシング事業、ヘルスケアビジネス事業の2つの報告セグメントに分類されている(図表1)。主力事業は前身の会社の設立来から手掛けてきたIT営業アウトソーシング事業で、全売上高の8割強を占め、利益の大半を稼いでいる。介護レクリエーション分野での支援サービスをはじめとするヘルスケアビジネス事業は、売上構成比は10%台に留まっており、20/9期まではセグメント損失を計上し続け、利益貢献には至っていない。

◆ IT営業アウトソーシング事業
20/9期売上高の85.3%、21/9期第2四半期累計期間(以下、上期)売上高の86.8%を占めるIT営業アウトソーシング事業は、(1)大手IT企業に対して営業力を提供する営業アウトソーシング事業と、(2)中小企業向け新規開拓営業を行うソリューション事業に分類される。

◆ IT営業アウトソーシング事業(1):営業アウトソーシング事業
営業アウトソーシング事業では、大手IT企業の営業部門を強化、補完するために、同社で教育、育成された従業員を営業人材として提供している。人材の提供形態は、(1)人材を派遣して顧客企業に常駐して営業支援を行う営業派遣、(2)営業支援の業務を請け負う業務請負の2種類だが、営業派遣としての提供が大半となっている。20/9期の期中平均の派遣人数は105人であった(図表2)。

同社が提供する営業人材は、ITスキルと営業力を併せ持つ人材が慢性的に不足している大手IT企業に重宝されており、これまでに50社超への提供実績がある。同社の上位顧客3社は、インターネットイニシアティブ(3774東証一部)、日本電気(6701東証一部)、日鉄ソリューションズ(2327東証一部)で、合計で全社売上高の4割強を占めている。

営業派遣の場合、派遣人数と派遣単価を掛け合わせた金額が売上高となり、人件費と販売手数料(案件紹介手数料)が原価となる。

◆ IT 営業アウトソーシング事業(2):ソリューション事業
大手IT 企業が中堅・中小企業向けに製品やサービスを販売する際、営業人材の不足のために、十分な営業体制を構築できないことがある。同社は前身の会社の設立以来、中堅・中小企業の情報システムの状況や課題といった情報を蓄積し続け、データベースを構築している。ソリューション事業では、このデータベースを活用する形で、大手IT 企業の販売代理店として、大手IT 企業の商材であるインターネットサービスやクラウドサービス等を組み合わせて中堅・中小企業に販売、提供している。販売代理店として、これまで累計1,200 社超の中堅・中小企業への提供実績がある。

中堅・中小企業向けに販売した金額が売上高、仕入高と販売促進費(キャッシュバック)が原価として計上される。

◆ ヘルスケアビジネス事業
20/9 期売上高の14.7%、21/9 期上期売上高の13.2%を占めるヘルスケアビジネス事業は、(1)介護レクリエーション事業と、(2)ヘルスケア支援事業に分類される。

◆ ヘルスケアビジネス事業(1):介護レクリエーション事業
介護レクリエーション事業は、介護レクリエーションを通じて、介護現場のスタッフを支援する事業である。実施しているサービスは、以下の3 つである。

中心となるのは、「レクリエーション介護士」の資格制度の運営である。同社が100%所有する一般社団法人日本アクティブコミュニティ協会が資格認定機関となっている資格制度であり、現在3 万人を超える有資格者がいる。この有資格者のネットワークがヘルスケアビジネス事業を展開する上でのベースとなっている。

資格取得希望者は、ユーキャンのような通信講座、福祉系専門学校等が実施する通学講座、介護施設で行われる団体研修のいずれかで、求められるカリキュラムを受講する必要がある。同社はこうした講座開催者に対して教育プログラムを提供し、その対価として受講者数に応じた講座手数料を受け取り、収益としている。そのため、新規のレクリエーション介護士の人数がKPI となり、受講生ひとり当たり収益と掛け合わせた金額が「レクリエーション介護士」の運営からもたらされる収益となる(図表3)。

介護レクリエーション事業では、介護人材向けの自社メディアの運営も行っている。その中心となる「介護レク広場」は、高齢者向けの介護レクリエーションの素材等を無償提供するメディアである。21年3月末時点で51,455人の会員がおり、その85%超が介護関係者とされている。

「レクリエーション介護士」の有資格者と、「介護レク広場」の会員をベースとしたネットワークを同社は「シニアプラットフォーム」と定義しており、介護現場での介護レクリエーションのニーズや課題抽出に活用し、ヘルスケアビジネス事業の展開につなげていくとしている。

資格と自社メディアの運営以外では、介護レクリエーションを学んだ人材を活用する事業として、人材派遣や介護レクリエーションの代行サービスを行っている。

◆ ヘルスケアビジネス事業(2):ヘルスケア支援事業
ヘルスケア支援事業は、(1)自治体等からのヘルスケア関連施設の運営受託と、(2)ヘルスケア分野への参入や事業拡大を目指す企業に対する市場調査、プロモーション支援から構成される。

ヘルスケア関連施設の運営受託では、大阪府大阪市及びアジア太平洋トレードセンターが設置者となっている国内最大級の介護・福祉関連の常設展示場「ATCエイジレスセンター」や、大阪府高石市のアクティブシニア向けヘルスケア関連施設「高石健幸リビング・ラボ」の運営を受託している。特に後者については、健康をテーマに地域が抱える課題の解決を、市民、自治体、大学(研究機関)、民間企業が連携し、課題解決につながる新しい製品やサービスを創出する仕組みとしての「ヘルスケア・リビングラボ」モデルの確立に向けて取り組んでいる。

市場調査やプロモーション支援は、介護レクリエーション事業で構築した「シニアプラットフォーム」を活用したサービスで、アンケート調査やヒアリング調査を行うほか、介護士向け会報誌「スマレク」や、上述の「介護レク広場」への広告掲載等を行っている。

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