ペイロール<4489> 標準化された業務プロセスとソフトウェアによるスケールメリットが強み

2021/06/29

大手企業向け給与計算業務のアウトソーシングサービスを展開
標準化された業務プロセスとソフトウェアによるスケールメリットが強み

業種: 情報・通信業
アナリスト: 阪東 広太郎

◆ 給与計算のBPO事業を展開
ペイロール(以下、同社)グループは、給与計算のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を主たる事業としている。同社グループは、「BPO事業」の単一セグメントである。

同社グループの給与計算業務のアウトソーシングサービスは、給与・定期賞与計算業務に加えて、年末調整補助業務や地方税特別徴収補助などの季節性業務、身上異動等の人事関連業務、従業員及び各拠点との直接対応など、給与計算に関わる様々な周辺業務もサポートする「フルスコープ型アウトソーシング」を特徴としている。

「フルスコープ型アウトソーシング」は、顧客企業の人事部門が担っている給与計算業務を受託することで、顧客企業に対し工数削減、コア業務へ特化できるよう支援するサービスである。同社グループは、「フルスコープ型アウトソーシング」を顧客企業に対して、「マネージドサービス」と「クラウドサービス」という2つのサービスを組み合わせて提供している。

「マネージドサービス」については、同社グループは、業務ごとの標準フローやITシステムを構築し、複数顧客からの業務をまとめて処理する専門センター(以下、「BPOセンター」)を設置して対応している。このセンターを活用することで、大量処理や幅広い業務を効率的に実施している。

一般的に自社内で給与計算業務を行う場合、給与担当者の退職や季節性業務による業務負担の増加、企業の成長に合わせた担当部門の増員などにより、「属人化のリスク」「精度担保のリスク」が発生する。同社グループは、細分化された業務を、顧客企業内の担当者とは別にBPOセンターが担うこ とで、担当者に頼った運用を回避し、かつ精度の高い大量の業務処理を行 っている。

BPO センターでは、顧客企業の従業員および各拠点の責任者からの電話・メールでの問い合わせや、各種書類発送・回収・督促を行う業務など、顧客企業の人事部門を介することなく直接対応できる体制を構築しており、手間のかかる業務を同社グループで対応することで、顧客企業の業務効率化に貢献している。

「クラウドサービス」について、同社グループは、パーソナルコンピュータとインターネット環境があればすぐに導入できるWeb サービス(e-pay サービス) を提供しており、顧客企業のシステム負担を低減している。e-pay サービスでは、各種計算結果の納品、人事関連情報の管理など、給与計算に関わるサービスを簡単に利用できる形で提供している。

同社グループは、「フルスコープ型アウトソーシングサービス」として、年末調整補助業務を含む「給与計算業務のアウトソーシングサービス」と「マイナンバー管理サービス」を提供している。

◆ 給与計算業務のアウトソーシングサービス
同社グループは、給与計算業務のアウトソーシングサービスとして、運用サービスと初期導入・仕様変更サービスを提供している。21/3 期における売上高で給与計算業務のアウトソーシングサービスが占める割合は9 割以上であり、うち運用サービスが約9 割、初期導入・仕様変更サービスが約1 割である。

運用サービスとして、給与・定期賞与計算、年末調整補助、地方税特別徴収補助サービスを基本サービスとして、付随する各種オプションサービスを提供している(図表1)。

同社グループは給与計算処理人数に応じた費用を顧客から受け取っている。処理人数当たりの年間単価は、正社員が約1.3 万円/人、パートが約0.7 万円/人を基本として、処理人数に応じたボリュームディスカウントを付与している。契約期間は3 年が大半である。

初期導入・仕様変更サービスとして、顧客企業へ業務改善提案(BPR)を行っている。BPR によって顧客企業の作業を削減することや、同社システムへの標準化を企図することで、顧客及び同社グループの工数を削減している。

◆ マイナンバー管理サービス
同社グループは、運用サービスの一環として、マイナンバーの保管・管理・削除に伴う業務負担、情報漏洩リスクを軽減するサービスを顧客企業に提供している。

本サービスにより、顧客企業は、申請書の授受やシステム改修などの業務プロセスの煩雑化を回避することが可能になる。

◆ 顧客の構成と獲得経路
同社グループの顧客の企業規模は、従業員数1,000人以上の大企業が中心である。顧客の業態としては、外食チェーン、コンビニチェーン、製造業、情報通信業、金融業、学校法人や自治体など多岐にわたるが、従業員数が多い事に加え、多様な勤務形態を採用していたり、人材の入れ替わりが多く、給与計算業務が複雑かつ工数がかかる業態が多いようである。

顧客獲得の経路は、顧客からの問い合わせに対応するプル型営業が大半である。既存の給与計算システムの入れ替えタイミングにある企業が、システムの入れ替えだけでなく、給与計算業務のアウトソーシングを検討する際に、同社グループへ問い合わせが来るようである。顧客企業の窓口は人事部門が大半である。

顧客の問い合わせから受注までの期間は約4、5カ月である。受注後から運用開始までは早くて6カ月程度のようである。

同社グループの顧客企業数および給与計算処理実績人数は、創業以来、増加傾向にあり、20年3月末の顧客企業数は253社、給与計算処理実績人数は98万人である。

◆ サービスの提供体制
同社グループは、東京1拠点、北海道3拠点(札幌2拠点、江別1拠点)、長崎1拠点の合計5拠点からサービスを提供している。サービス導入は東京・札幌・長崎、顧客企業の人事部門との窓口は東京・札幌、各種書類の発送・回収・督促業務や顧客企業の従業員から問い合わせ対応は江別・長崎で行っている。BCP(事業継続計画)の観点から、同一業務について複数拠点で展開している。

同社グループの従業員の配置は、運用サービス約270名、初期導入・仕様変更サービス約130名、ITシステム約30名、営業約20名、管理部門約30名である。上記に加えて、主に運用サービスで、第4四半期に集中する年末調整補助業務に対応する等の目的でパート社員を雇用しており、20/3期においては1日8時間換算で年間平均383名を臨時雇用している。

>>続きはこちら(1.00 MB)

一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。