ステラファーマ<4888> 薬剤の販売開始により、今後の成長速度を左右するのはBNCTの普及度合い

2021/04/30

ホウ素薬剤を使うBNCTと呼ばれるがん治療法を開発するバイオベンチャー
薬剤の販売開始により、今後の成長速度を左右するのはBNCTの普及度合い

業種: 医薬品
アナリスト: 藤野 敬太

◆ ホウ素薬剤を用いたがんの放射線治療を行うバイオベンチャー
ステラファーマ(以下、同社)は、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)と呼ばれる、放射線治療の一種で新しいがん治療法を開発するバイオベンチャーである。現代表取締役会長の浅野智之氏が、ステラケミファ(4109東証一部)に在籍中に、ステラケミファが保有していたホウ素同位体の高濃縮技術に着目して開発を始めたのが発端であり、実用化の要件が揃ったことで、ステラケミファの子会社として07年6月に同社は設立された。

◆ ホウ素中性子補足療法(BNCT)
ホウ素中性子補足療法(BNCT)は、ホウ素の安定同位体であるホウ素10(B-10)を含む物質をがん細胞に取り込ませ、熱中性子を照射することでがん細胞だけを破壊するというがんの治療法で、放射線治療に分類されるもののひとつである。以下の原理に基づいている。

(1) 熱中性子自体は細胞破壊能力が小さい。
(2) B-10の原子核は熱中性子を吸収しやすく、熱中性子を吸収した時の細胞を破壊する能力が大きい。ただし、影響を及ぼす範囲が極めて短い。

B-10を選択的に集積させたがん細胞だけを破壊するため、がん細胞のまわりの正常組織への影響が少なく、他の治療法に比べて副作用が少なく、術後のQOL(Quality of Life、生活の質)が良好とされている。

◆ コンビネーションプロダクトとしてのBNCT
BNCTは、B-10を含む薬剤の投与と、加速器を伴う熱中性子照射装置(以下、加速器)による照射がそろって成立するコンビネーションプロダクト注1である。

薬剤の原材料の天然ホウ素にはB-10は約20%しか含まれず、BNCTに用いるホウ素薬剤とするためには、B-10を高純度(含有率99%以上)に濃縮する必要がある。この濃縮技術を持つのがステラケミファであり、同社は高純度に濃縮されたB-10をステラケミファから独占的に仕入れ、高純度のB-10含む「ボロファラン」を原薬として製造している。

この「ボロファラン」を原薬として製剤加工したものが、「ステボロニン®(開発品名:SPM-011)」である。そして、切除不能な局所進行または局所再発の頭頚部癌注2を効能・効果として、抗悪性腫瘍剤「ステボロニン®点滴静注バッグ 9000mg/300ml(一般名ボロファラン)(以下、ステボロニン®)」が、20年3月に世界初の医薬品製造販売承認を取得した。なお、「ボロファラン」と「ステボロニン®」の製造は外部企業に委託している。

加速器の開発は、治験も含めて同社と加速器メーカーが共同で行い、加速器の製造は加速器メーカーが行う。製造された加速器は医療施設等に設置される。

現在、頭頚部癌のBNCT用には、住友重機械工業(6302東証一部)製の加速器が総合南東北病院(南東北BNCT研究センター)と大阪医科大学附属病院(関西BNCT共同医療センター)の2カ所に設置され、既にBNCTによる治療が保険診療により実施されている。また、国立がん研究センター中央病院で行われているメラノーマ(悪性黒色腫)及び血管肉腫を対象としたBNCTの臨床試験についてはCICS(東京都江東区)の加速器が、フィンランドのヘルシンキ病院で行われているEUにおける頭頚部癌のBNCTの臨床試験については、米国とフィンランドにオフィスを持つNeutron Therapeutics(ニュートロンセラピューティクス)の加速器がそれぞれ使われている。

◆ 収益構造
同社は、研究開発から上市後の製造・販売までを自社で行うビジネスモデルを採用している。上市前は、研究開発費のみが計上されるために、費用が先行する。上市後は、スズケン(9987東証一部)等の医薬品卸売業者に薬剤を販売することで売上高が計上される。

「ステボロニン®」1袋の薬価は444,215円であり、そこから消費税と医薬品卸売業者への手数料を控除した金額が販売単価となる。体重60kgの患者の場合、BNCT1回につき4袋使用するが、BNCTは実施回数が基本的には1回で良いため、BNCTの実施人数から、使用する袋の数と売上高が定まることになる。

売上高に対する原価は、製造委託先に支払われる製造加工費である。21/3期第3四半期累計期間の原価率は11.7%となっている。

一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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