サイバートラスト<4498> 需要拡大が見込まれるIoTサービスの拡大スピードが今後の焦点となろう

2021/04/28

電子認証技術とLinux/OSS技術でITインフラ上のトラストサービスを提供
需要拡大が見込まれるIoTサービスの拡大スピードが今後の焦点となろう

業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ ITインフラの安全な利用を支えるトラストサービスプロバイダー
サイバートラスト(以下、同社)は、ITインフラの安全な利用を支えるトラストサービスを提供する会社である。SBテクノロジー(4726東証一部)を親会社としており、兄弟会社の関係にあった旧サイバートラストとミラクルリナックスが17年10月に合流して現サイバートラストとなった。

こうした経緯から、旧サイバートラストが持っていた認証・セキュリティ技術とミラクルリナックスが持っていたLinux/OSS注1技術という2つのコア技術をベースとしてサービス提供をしている。さらに、両技術を融合する形で、今後需要拡大が見込まれるIoT注2分野でのソリューションの提供も増えている。

同社の事業セグメントは、トラストサービス事業の単一セグメントだが、売上高は認証・セキュリティサービス、OSSサービス、IoTサービスの3つに分類される(図表1)。全体の売上高の約6割が認証・セキュリティサービス、約2割がOSSサービスによるものとなっている。

◆ 認証・セキュリティサービス
売上高の約6割を占める認証・セキュリティサービスは、デジタル社会における「身分証」に該当する電子証明書、電子的本人確認、電子署名等の各種証明書の提供を中心とした情報セキュリティに関するサービスである。

提供される電子証明書や電子署名等が信用に足るものであるためには、電子認証局による保証が必要不可欠となる。同社は国内で初めて商用電子認証局を立ち上げた実績を持ち、また、同社の電子認証局は国際的な監査規格であるWeb Trust for CAに合格しているなど信頼性が高い。

具体的には、以下のサービスを提供している。

(1) サーバーが実在していることを証明するSSL/TLS注3サーバー証明書サービスの「Sure Server」。業界では、SSL/TLSサーバー証明書は3種の認証レベルがあるが、「Sure Server」はその中で最も審査レベルが高い。
(2) ネットワークにアクセスして良い端末であるかどうかを認証するデバイス認証サービスの「デバイスID」。
(3) 書面での手続きに必要な手続きをオンライン化する際に必要な電子認証の仕組みを提供する、本人確認・電子署名サービスの「iTrust」。

「iTrust」は、顧客企業が展開するサービスの裏側で使われることが多く、弁護士ドットコム(6027東証マザーズ)の「クラウドサイン」や、三菱UFJ銀行に採用された日立製作所(6501東証一部)の「eKYC支援サービス」に導入されている。

◆ OSSサービス
OSS(オープンソースソフトウェア)は、誰でも無償で利用できるため、低コストでシステムを構築したい場合や、自由にシステム設計をしたい場合に使われる。ただし、動作保証やサポートが存在しないため、OSSを用いたシステムの構築及び運用のすべてを自力で行うのは難しい。

そこで登場するのが、OSSをベースとしたパッケージとして提供するディストリビューターである。同社は国内で唯一のLinux/OSSのディストリビューターであり、サポートサービスもセットにしたパッケージで、包括的にソリューションを提供する。

具体的には、サーバー向けLinux OS注4「MIRACLE LINUX」を自社製品として提供するほか、統合システム監視「MIRACLE ZBX」やシステムバックアップ「MIRACLE System Savior」等のサービスを提供している。また、「MIRACLE LINUX」以外のLinux OSを使用するユーザーに対するサポートサービスも提供している。

◆ IoTサービス
IoT機器を使うためのソリューションを提供している。OSは自社製品であるIoT機器向けのLinux OS「EMLinux」の使用を推奨するとともに、システムをセキュアに利用できるようにするための「セキュアIoTプラットフォーム」や、IoT機器の長期使用を支援する「EM+PLS(イーエムプラス)」を提供している。

また、20年5月に完全子会社化したリネオソリューションズが持つIoT機器向け高速起動製品「Warp!!」といった製品もある。

◆ ストック型収益が全体の約6割を占める収益構造
同社の売上を提供形態別に区分すると、ライセンス、プロフェッショナルサービス、リカーリングサービスの3つの区分に分類できる。

ライセンスの売上は主に自社製品の提供時に、プロフェッショナルサービスの売上は、製品のカスタマイズや導入支援、セキュリティコンサルティング等を提供した際に計上され、どちらもフロー型収益である。一方、リカーリングサービスの売上は電子証明書サービスや自社製品のサポート等の提供に対して支払われるストック型収益である。リカーリングサービスの売上構成比は全体の約6割を占め、収益の安定性に貢献している(図表2)。

◆ サイバートラストの強み
同社の特色及び強みとして以下の点が挙げられる。

(1) 電子認証・セキュリティ技術とLinux/OSS技術という2つのコア技術を1社で保有している状況。
(2) 認証・セキュリティサービスにおける、国内初の商用電子認証局を立ち上げた実績と、国際的な監査規格に合格している電子認証局の信頼性の高さ。
(3) OSSサービスにおける、国内で唯一のLinux/OSSのディストリビューターとしてのポジショニング。
(4) Linux/OSS技術を支える多数のエンジニアの存在。
(5) IoTサービスにおける、OSとセキュリティの両面からソリューションを提供できる状況。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
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