オキサイド<6521> 光学分野の川上から川下である光部品、レーザ光源、光計測装置へ事業を展開

2021/04/13

単結晶およびレーザの研究開発型グローバル・ニッチ企業
光学分野の川上から川下である光部品、レーザ光源、光計測装置へ事業を展開

業種: 電気機器
アナリスト: 黒田 真路

◆ 光学分野の川下分野へ事業展開を進める研究開発型ニッチ企業
オキサイド(以下、同社)は、単結晶・光学関係の博士号を保有する技術者25名が在籍し、光学単結晶に関する多くの育成技術を保有する研究開発型企業である。14年には経済産業省が認定する「グローバルニッチトップ企業100選」に選定され、21年にはForbes Japanが主催する「Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD 2021」のグランプリを獲得した。

単結晶とは、あらゆる部位において原子配列の向きが全く同一である物質を言う。ルビーやエメラルド、ダイヤモンドなどの宝石が単結晶物質として知られている。工業用途では、光や熱、電気などの波長変換や偏光などのエネルギー形式を転換させる機能を活用して、電子デバイスや発光素子、光学素子、半導体ウエハなどで使用されている。

同社は日立金属(5486東証一部)出身の現代表取締役社長である古川保典氏により独立行政法人物質・材料研究機構(現 国立研究開発法人物質・材料研究機構)発のベンチャー企業として2000年10月に設立され、光学分野の川上に位置する単結晶の開発・製造から事業をスタートした。大手エレクトロニクスメーカーや電子材料メーカーと資本提携や業務提携を行う一方、国内外企業4社から光学関連技術を買収、光学分野の川下に位置する光部品、光計測装置、レーザ光源、マイクロ加工などへ事業を展開してきた。

21年1月時点における同社従業員155名の内、25名が単結晶・光学関係の博士号を保有する技術者である。20/2 期の研究開発費は131 百万円、売 上比率は4.3%。同社は新製品開発と既存製品の改良開発に加え、基盤技 術開発を行う研究開発型企業である。

同社は光学事業の単一セグメントであるが、売上高は製品の用途別に、「光計測・新領域事業」、「半導体事業」、「ヘルスケア事業」に区分している(図表1)。

◆ 光計測・新領域事業
光計測・新領域事業は、同社のコア技術である光学単結晶および光学技術に基づき製造された単結晶に加え、波長変換の光部品やレーザ光源、光学測定装置などを開発・製造・販売している。20/2 期の光計測・新領域事業の売上高は576 百万円であり、売上構成比は18.8%である(図表2)。

◆ 半導体事業
半導体事業は、半導体ウエハの検査装置メーカー向けに非線形光学効果の強い単結晶と単結晶を搭載したレーザの開発・製造・販売を行っている。レーザ光源は短波長化(266nm)と高出力化(2W 以上)に特徴がある。20/2 期の同事業売上高は1,282 百万円(売上構成比41.8%)である。

半導体チップの歩留まり向上のためには、シリコンウエハの品質検査が不可欠である。同社の単結晶と単結晶を搭載したレーザはウエハ検査装置に使用されている。単結晶に関しては、06 年に開発案件を受託、その成功を受けて11 年から量産化が始まった。レーザは11 年に開発を受託、現在はレーザーテック(6920 東証一部)やKLA、日立ハイテクなどのシリコンウエハの検査装置向けに量産レーザの販売が本格化している。

また、新規投資の半導体ウエハ検査装置向けのみならず、稼働中の検査装置向けに1~2 年周期で単結晶やレーザのメンテナンス需要が発生する。20/2 期におけるメンテナンス売上高は半導体事業の2 割強を占めている。

◆ ヘルスケア事業
ヘルスケア事業は、15年に日立化成(現 昭和電工マテリアルズ)から買収したシンチレータ単結晶事業がベースとなっている。がんの診断に使用されるPET検査装置に搭載されるシンチレータ単結晶の開発・製造・販売を行っている。PET検査装置では、放射線を光信号に変換し、画像化するためにシンチレータが必要となる。同事業の20/2期売上高は1,206百万円(売上構成比39.4%)であった。

同社のシンチレータ単結晶は、乳房検査用PET検査装置や重粒子線を用いたがん治療のOpen-PET検査装置にも採用されている。また、PET検査装置は、将来的には、がんの診断以外としてはアルツハイマー型認知症診断への適用範囲拡大が見込まれており、同社でも用途拡大に向けた研究開発を進めている。

同社は全身検査用PET検査装置のシンチレータ単結晶については世界市場の約20%のシェアを占めており、世界3大PET検査装置メーカーの1社へ納入している。

◆ 特定顧客及び米国市場への高い売上依存度
19/2期の主要顧客売上高を見ると、丸紅(8002東証一部)の米国事業の一端を担うMarubeni Specialty Chemicals Inc.向けが1,058百万円(売上構成比40.6%)、日立ハイテク向けが688百万円(同26.4%)、資本・業務提携先であり、半導体検査装置メーカーであるKLA Corporation向けが292百万円(同11.2%)となり、上位3社で売上高の78.2%を占めた(図表3)。

また、20/2期においては、Marubeni Specialty Chemicals Inc.向けが1,166百万円(売上構成比38.1%)、日立ハイテク向けが624百万円(同20.4%)であり、これら2社で売上高合計の58.5%を占めている。この他、主要顧客として、島津製作所(7701東証一部)、浜松ホトニクス(6965東証一部)、国立研究開発法人物質・材料研究機構なども挙げられる。

20/2期の売上高を地域別にみると、国内向けが33.6%(前期は39.8%)、米国向けが51.4%(同56.8%)、その他が15.0%(同3.4%)であり、北米市場への依存度が高い。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。