シキノハイテック<6614> 半導体や画像処理に係る多様な技術力に特徴がある

2021/03/30

半導体検査装置、画像関連機器の製造販売や、半導体の回路設計等を展開
半導体や画像処理に係る多様な技術力に特徴がある

業種: 電気機器
アナリスト: 大間知 淳

◆ 半導体検査装置等の製造販売や、半導体の回路設計等を展開
シキノハイテック(以下、同社)は、半導体検査装置等を製造販売する電子 システム事業、半導体の回路設計等を行うマイクロエレクトロニクス事業、画 像関連機器等を製造販売する製品開発事業を展開している。

同社は富山県魚津市に本社を置いており、電子システム事業と製品開発事 業の生産拠点は本社魚津工場である。また、本社魚津工場、大阪デザイン センター、東京デザインセンター、九州事業所、福岡デザインセンターにお いては開発設計業務を行っている。

同社は、各事業において、様々な製品、サービスを提供している。その主要 製品分野は図表 1 の通りである。

20/3 期において、売上高構成比は、電子システム事業 39.2%、マイクロエレ クトロニクス事業 40.7%、製品開発事業 20.1%である。セグメント利益率を見ると、マイクロエレクトロニクス事業が 13.4%と高採算であるが、減価償却費 の負担が重い電子システム事業は 2.6%と低水準である。また、先行投資段 階にある製品開発事業はセグメント損失が続いている。

20 年 12 月末時点の従業員数は 340 名であるが、セグメント別では、電子シ ステム事業 70 名、マイクロエレクトロニクス事業 129 名、製品開発事業 43 名、 全社(共通)98 名である。

◆ 電子システム事業
電子システム事業は、半導体のテスト工程の一つであるバーンイン工程で 使用されるバーンイン装置やバーンインボード等の半導体信頼性商材と、 半導体周辺機器開発により培われた技術を応用して、一般産業の顧客向 けに開発した検査ボードや専用計測機器、各種電子機器等によって構成さ れる産業用機器等に大別される。

バーンインとは、半導体の初期不良を除去するための選別方法の一種で、 半導体製品を通常の使用状態よりも高温環境下で動作させることで、通常 の使用環境であれば 2~3 年以内で故障する恐れのある半導体を取り除く テスト工程(パッケージバーンインテスト)である。バーンイン装置は高温環 境下を作る試験装置であり、バーンインボードは半導体を動作させる周辺 回路を持ち、バーンイン装置内で駆動するボードである。

同社は、車載向け 半導体のバーンイン装置で国内トップシェアを誇っている。 同社は、電子システム事業の各種製品を開発、設計、製造しているが、半 導体のテストプログラムの提供や、バーンイン装置のレンタルも行っている。

電子システム事業は、材料費や減価償却費の負担が重いため、採算がや や改善した 20/3 期で見ても、セグメント利益率は 2.6%にとどまっている(図 表 2)。

◆ マイクロエレクトロニクス事業
マイクロエレクトロニクス事業は、アナログ半導体やデジタル半導体の回路 設計と、JPEG 注 1 や MIPI 注 2 等の IP コア注 3 製品のライセンス販売を手掛け ている。

アナログ半導体では、電源 IC や、受信機・通信機において周波数変換され た信号を処理する電子回路である高速 I/F 回路、光を電気信号に変換する 撮像素子であるイメージセンサ回路等が中心となっている。サービスの内容 としては、回路設計、レイアウト設計、特性評価から、テスト部門との連携に よるLSIテストプログラム作成までの一貫設計体制を構築している。特に、高 速 I/F 及び電源 IC の設計技術に強みを持っている。また、設計技術者の人 材派遣も行っている。

デジタル半導体では、画像処理系 LSI や、高速 I/F 回路、ASIC 注 4 、FPGA 注 5 等を扱っているが、画像処理や高速 I/F を中心としている。また、アナロ グ・デジタル混在の LSI 設計も行っている。

開発した LSI の主な用途としては、デジタル情報家電(携帯電話、DVD 機 器、デジタルカメラ、液晶テレビ等)及び車載関連機器(カーナビゲーション システム等)が挙げられる。開発した LSI の主な用途としては、デジタル情報家電(携帯電話、DVD 機 器、デジタルカメラ、液晶テレビ等)及び車載関連機器(カーナビゲーション システム等)が挙げられる。

マイクロエレクトロニクス事業は、人件費や研究開発費の負担は重いが、材 料費がかからず、減価償却費の負担も軽いため、安定して高い利益率を確 保しており、同社の収益源となっている(図表3)。20/3期の同事業の研究開 発費は 33 百万円であった。

◆ 製品開発事業
製品開発事業は、産業用組込カメラや、画像処理ソフトを実装して検査や センシングの機能を持たせた画像処理カメラ、画像処理システム・モジュー ル等を開発、製造、販売している。産業用組込カメラの主要用途であるコン ビニ ATM 向け監視カメラでは高いシェアを誇っている。

製品開発事業は、設計開発や営業の体制強化に伴う人件費の増加に加え、 クリーンルームの設置に伴う費用負担や、研究開発費の負担が重荷になっ ており、セグメント損失が継続している(図表 4)。20/3 期の同事業の研究開 発費は 60 百万円であった。

◆ 労働集約型のビジネスモデルであるが、限界利益率は高い
同社の売上原価の 6 割弱は自社の技術者に支払う労務費であり、労働集 約型のビジネスと言える。また、売上高材料費率及び売上高外注費率から 推測される限界利益率は 7 割超と高水準である。なお、売上原価に計上さ れている減価償却費は20/3期において83百万円であり、事業全体としての 負担は小さい。

販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、給与及び手当や、役 員報酬、研究開発費等、固定費が中心を占めている。研究開発費は、マイ クロエレクトロニクス事業と製品開発事業で計上されており、20/3 期の売上 高研究開発費率は 2.1%である。

◆ 特定顧客への依存度が比較的高い
同社の取引先としては、電子システム事業、マイクロエレクトロニクス事業、 製品開発事業の全てで取引があるデンソー(6902 東証一部)と、マイクロエ レクトロニクス事業の取引先であるソニーLSIデザインのほか、ルネサスエレ クトロニクス(6723 東証一部)、明治電機工業(3388 東証一部)等が挙げら れる。ソニーLSIデザインは、ソニー(6758 東証一部)の孫会社である。中で も、継続的な取引先であるデンソーとソニーLSIデザインに対する依存度が 比較的高く、19/3 期以降においては、両社共に総売上高の 10%を超えてい る(図表 5)。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。