ヒューマンクリエイションホールディングス<7361> 幅広い顧客、開発領域に対応可能な体制を構築している

2021/03/23

企業向けITシステムの開発・運用保守を行う技術者派遣会社
幅広い顧客、開発領域に対応可能な体制を構築している

業種: サービス業
アナリスト: 大間知 淳


◆ 企業向け社内システムの開発・運用保守を行う技術者派遣会社
ヒューマンクリエイションホールディングス(以下、同社)は、大手SIerや大手総合電機メーカーグループ等が受注した企業向けITシステム等の開発案件に参画し、顧客企業先常駐を基本としてシステムの開発や運用保守等を行う技術者派遣を中心に展開している。また、エンドユーザーから直接受注したシステムのコンサルティング等も行っている。同社は純粋持株会社であり、連結子会社4社を通じて、コンサルティングから、開発、運用保守に至るまで、システム開発の全工程を一貫して対応できる体制を構築している。

開発したシステムの提供先は、金融サービス業界、製造・流通業界、エネルギー業界、公共・医療業界、通信・メディア業界等幅広く、開発領域についても、物流、製造、マーケティング・販売、サービス等、多岐に亘っている。

同社は、金融機関向けハードウェア販売・開発・運用保守を目的として74年に設立された株式会社バンキング・システムズを前身としており、16年10月にバンキング・システムズからの株式移転の方式によって設立された。20/9期末時点での連結子会社は、ブレーンナレッジシステムズ、シー・エル・エス、セイリング、アセットコンサルティングフォースの4社となっている。

ブレーンナレッジシステムズは、システムインテグレーション(以下、SI)における基本設計・詳細設計を担い、全国6拠点(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡)で展開するシステムエンジニア(以下、SE)・プログラマー(以下、PG)集団である。主として派遣契約に基づく技術者派遣を行っている。20/9期末の保有エンジニア数は、グループ最大の504名である。20/9期の売上高は3,120 百万円、経常利益は184 百万円であった(各子会社の数値には グループ間の内部売上高が含まれている)。

シー・エル・エスは、SI における要件定義・基本設計を担うSE 集団である。プロジェクトチーム単位で、主として派遣契約に基づく技術者派遣を東京圏で行っている。また、ブレーンナレッジシステムズのエンジニアの早期育成環境提供の役割も担っている。20/9 期末の保有エンジニア数は128 名である。20/9 期の売上高は1,015 百万円、経常利益は69 百万円であった。

セイリングは、主として派遣契約に基づく技術者派遣を通じて、システム更改、機能拡張・改善、運用保守等を中心に行うエンジニア集団であり、19 年10 月に同社に買収された。SI 工程の最終工程を担っているため、長期・安定型の技術者派遣を提供しているという特徴がある。20/9 期末の保有エンジニアは70 名である。20/9 期の売上高は401 百万円であった。

アセットコンサルティングフォースは、19 年7 月に設立され、SI の上流工程であるコンサルティングを主体としたサービスを提供している。20/9 期末の保有エンジニアは7 名である。20/9 期の売上高は203 百万円であった。

20/9 期末におけるグループ全体でのエンジニアの構成は、プロジェクトマネージャー及びプロジェクトリーダークラスは114 名、SE クラスが277 名、PG クラスが272 名、ハードウェアの設計・開発、組込みシステム等の業務を担当するその他クラスが46 名の合計709 名となっている。

◆ 営業利益率は平均的な水準だが、資産効率に優れている
同社の売上高は、技術者1 人当たりの月当たり単価である平均契約単価に技術者の稼働人数を乗じて算出される。稼働人数は、技術者の保有人数から待機人数を控除して算出される。同社は、期末保有人数の推移を開示している。同社の売上高は、保有人数の拡大と、期中平均保有要員1 人当たり売上高の増加によって、順調に伸長している(図表1)。

1 人当たり売上高の増加は、平均契約単価の上昇によって説明できる。子会社別平均契約単価の推移は図表2 の通りである。

コスト構造を見ると、同社の総費用の約8割を売上原価が占めており、20/9期の原価率は73.9%となっている。同社の売上原価は、主として自社の技術者の人件費であるが、同社は二つの費用に分けて管理している。一つは、個別案件に従事している技術者の人件費等である通常経費であり、もう一つが、待機中の技術者に関する非稼働日数分の人件費である待機経費である。

待機経費については、17/9期は77百万円(売上高比率2.9%)、18/9期は41百万円(同1.2%)、19/9期は24百万円(同0.6%)、20/9期は122百万円(同2.7%)と変動している。売上高待機経費比率は、稼働率や営業利益率と逆相関の関係となっている(図表3)。

販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、給料及び手当(20/9期売上高比率6.0%)や地代家賃(同2.3%)等が中心であり、20/9期の販管費率は19.5%となっている。結果、営業利益率は6.7%であり、平均的な水準である。なお、10年で償却しているのれん償却額は、20/9期で59百万円(同1.3%)に過ぎず、大きな負担とはなっていない。

資産構成を見ると、同社グループは、本社のほか、全国各地に開発・営業拠点を設置しているが、これらは全て賃借施設であることから、20/9期末の有形固定資産は69百万円、総資産は1,855百万円に過ぎない。一方、20/9期において、売上高は4,565百万円、経常利益は303百万円を確保している。結果、20/9期における総資産回転率(売上高÷期中平均総資産)は2.8回、総資産経常利益率は18.4%であり、資産効率の高さが特徴と言える。

◆ 特定の顧客への依存度は低い
同社の顧客は、大手SIer等が主体となっている模様であるが、リスク管理の観点から取引先の分散を進めた結果、売上高の10%を上回る相手先はなく、特定の企業には依存していない。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。