交換できるくん<7695> 新型コロナウイルスの感染が拡大する中でも住宅設備機器の交換需要は堅調
住宅設備機器と交換工事をセットで販売するeコマース事業を展開
新型コロナウイルスの感染が拡大する中でも住宅設備機器の交換需要は堅調
業種: 小売業
アナリスト: 大間知 淳
◆ 住宅設備機器と交換工事をセットで販売するeコマース事業を展開
交換できるくん(以下、同社)は、住宅オーナーの住宅設備機器の故障や劣化等による機器交換ニーズに対して、機器と工事をセットで販売するeコマース事業を展開している。同社が取扱う住宅設備機器は、キッチンまわり、トイレ・洗面所・浴室まわり等に限定されている(図表1)。
現時点の販売エリアは、工事対応が可能な関東(東京、埼玉、神奈川、千葉の各都県の一部地域)、関西(大阪、兵庫、奈良、京都、滋賀の各府県の一部地域)、東海(愛知、岐阜の各県の一部地域)、札幌市周辺、福岡市周辺の5大都市圏に限られている。
サービスの流れとしては、まず、自社WEBサイト「交換できるくん」に訪れた利用者は、サイト上で、①工事対応エリアを確認の上、希望の商品を選択する。②商品・取付工事の見積りを依頼する。同社には累計30万件の工事で蓄積されたノウハウがあるため、利用者が機器やその周辺を撮影した写真を添付することで同社による工事前の現地調査は不要となっている。
③依頼当日か翌営業日に同社から送られたメールで案内された顧客専用の見積りページを通じて、見積り内容を確認する。④見積り内容に納得した場合は、支払方法、工事希望日時等を入力し、注文を完了する。⑤メールで工事日時を確定する。⑥工事当日に担当者が商品を持参して利用者の自宅を訪問、工事を実施する。⑦取付工事後に不具合や気になる点があった場合は、連絡を受けたアフターサービス部署が相談に応じている。
同社は、「ITを縦横に駆使したインターネット完結型のビジネスモデル」により、顧客に「透明性のある料金体系を提示し安心施工を約束すること」を事業コンセプトとしている。01年のサイト開設以来、約30万名がサービスを利用した結果、集客の要である自社サイト「交換できるくん」には、多数の商品情報に加え、5,000件を超えるユーザーレビュー、22,000件を超える施工事例を蓄積しており、サイト訪問者にとって有益なコンテンツとなっている。
コンテンツが強化されることでサイト訪問者が増加し、見積り依頼の増加に繋がるという好循環が生まれていることが同社の成長に寄与している。また、ネットで見積りから受注までを完結することで営業コストを削減し、競争力のある商品価格の実現を目指している。
交換工事においては、同社が定めた技能水準を満たした正社員か契約職人が、無駄を極力省いたスケジュールで現場を回る体制が構築されている。また、最長10年の工事保証を提供し、利用者の安心を担保している。
◆ 営業利益率は高くはないが、資産効率に優れている
同社は、水回りの救急修理サービスを提供する会社等とは異なり、住宅設備機器の販売が売上高の中心を占めるため、小売業に分類されている。ただし、通常のネット通販会社とは異なり、交換工事も行うため、対象エリアは施工体制が確保されている地域に限定されており、地域毎の施工担当者の人数が供給面での制約要因となっている点に注意が必要である。
コスト構造を見ると、同社の売上原価は主として、変動費である材料費(機器の仕入高、20/3期売上高比58.9%)と契約職人に支払う委託作業費(同9.2%)、固定費である労務費(正社員の施工担当者の人件費、同2.1%)等によって構成され、20/3期の原価率は77.3%に達している。一方、販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、給料及び手当(同6.5%)や広告宣伝費(同3.2%)等が中心であり、20/3期の販管費率は18.7%となっている。結果、営業利益率は4.0%であり、高い水準とは言えない。
同社は、本社、大阪営業所、ショールーム(東京及び大阪)のほか、対象エリア各地に商品センターを設置しているが、これらは全て賃借施設であることや、販売店舗を保有していないことから、20/3期末の固定資産は114百万円、総資産は855 百万円に過ぎない。一方、売上高は16/3 期の2,910 百万円から20/3 期には4,008 百万円に拡大した。結果、20/3 期における総資産
回転率(売上高÷期中平均総資産)は5.0 回に達しており、総資産経常利益率は21.5%と高水準を誇っている。
◆ 特定の仕入先への依存度が高くなっている
同社の主要な仕入先は、パナソニック(6752 東証一部)のグループ会社で
あるパナソニックリビング、住宅設備機器の商社であるヨコヤマ(東京都品川
区)及びサンエイ(神奈川県横浜市)の3 社である。20/3 期の総仕入高に対
する割合は、それぞれ、23.1%、22.6%、19.0%となっており、特定の仕入先
への依存度が高くなっている。同社の売上高が拡大してきたため、これまで
直接取引が出来なかった住宅設備機器メーカーやそのグループ企業から
の仕入比率が上昇し、今後は仕入先は分散してくると予想される。