Retty<7356> 「Go to Eatキャンペーン」に伴う広告宣伝費増で20年9月期は赤字見込み

2020/11/10

実名型であることを特徴とするグルメプラットフォーム「Retty」を運営
「Go to Eatキャンペーン」に伴う広告宣伝費増で20年9月期は赤字見込み

業種: サービス業
アナリスト: 藤野 敬太

◆ 実名型を特徴とするグルメサイト「Retty」を運営
Retty(以下、同社)は、11年6月に開始した実名型注1グルメプラットフォーム「Retty(レッティ)」を運営している。飲食店探しにおいて、友人や知人からの口コミが最も参考にされる情報であるという考えのもとにサイトが構築されてきた。実名型であることによって、信頼できる「ヒト」からの情報をもとに飲食店を探す仕組みを提供し、他の大手グルメサイトとは一線を画した存在となっている。

同社の事業は、実名型グルメプラットフォーム「Retty」運営事業の単一セグメントだが、売上高はFRM(Fun Relationship Management)と広告コンテンツの2つのサービスに分類される(図表1)。FRMはストック型ビジネス、広告コンテンツはフロー型ビジネスとして展開されている。広告コンテンツの増加ペースにより変動するが、FRMの売上構成比は50%台後半から60%台で推移してきている。

◆ 「Retty」のグルメサイトとしての特徴
「Retty」は実名型であることが最大の特徴である。「誰が発信した情報なのか」が重視されることで、実際に飲食店を利用して投稿された口コミ情報の信頼度が上がる。また、点数評価を行わないため、口コミ情報が受け入れられやすくなっている。また、SNS機能を組み込んでいるため、趣味嗜好が合う利用者同士で情報共有ができ、フォローする利用者を起点に飲食店を探すこともできる。

こうした特徴を受けて、「Retty」の月間利用者数は20年1月に約4,500万人となった。新型コロナウイルス禍で4月には約2,500万人の水準まで落ち込んだものの、8月には約4,400万人の水準まで回復してきている。

◆ FRMの収益は飲食店からもたらされる
飲食店に共通した経営課題は、稼働率向上による売上高の増加と、採算改善による利益率の向上である。こうした飲食店の経営課題を解決するために、同社は、「Retty」を通じたオンライン販促ツールとしての機能を提供しており、当該サービスをFRMと称している。

飲食店の販促には2種類ある。ひとつは、他のグルメサイトと同様、新規利用者を対象とした一次的な集客である。もうひとつは、来店したことがある利用者のリコメンド等による二次的、三次的な集客である。実名型である特徴を活かせるため、「Retty」はこの二次的、三次的な集客が得意とされる。また、顧客管理機能によるリピート促進や常連づくりの仕組みもあり、他のグルメサイトに対する差別化要因となっていると考えられる。

FRMは、飲食店から毎月定額のサービス利用料を得るサブスクリプション型のビジネスモデルに仕上がっており、ストック型ビジネスとして展開している。FRMの売上高は、有料店舗(お店会員)の数とARPU(有料会員単価)という2つのKPIの掛け算で表すことができる。

有料店舗は20年2月に10,000店舗を超えたが、その後、新型コロナウイルス禍の影響で閉店した店舗の解約が発生し、8月末時点で9,678店となっている。

20/9期のARPUは8月までの11カ月平均で約20,000円となっている。19/9期の21,000円より低下しているのは、地方を中心に営業をしたことで、相対的に安価なプランが増えたことが影響している。複数あるプランの構成比、トライアル店舗(大手外食企業向けに多数の店舗を一括でトライアルとして受注する形式)の存在、オプションの有無によってARPUは変動する。

◆ FRMの営業は代理店が中心
有料店舗を集めるルートとして、代理店と自社営業がある。現在は代理店が中心となっている。

◆ 広告コンテンツ
同社の広告コンテンツはフロー型ビジネスとして展開しており、(1)「Retty」の利用者を飲食店以外の顧客に送客する広告ソリューション、(2)「Retty」の運営を通じて蓄積されたコンテンツを「Food Data Platform」というデータベースとして顧客に継続的に提供するコンテンツソリューションの2種類がある。「Food Data Platform」は19年10月に提供を開始したサービスで、20年8月末時点で79万店の店舗データ、写真データ、実名口コミデータ、ユーザーログ等が蓄積されている。

◆ 戦略的提携
18年4月に、Zホールディングス(4689東証一部)傘下のヤフー(東京都港区)と、グルメ情報サービス領域における戦略的パートナーシップの構築を開始した。ヤフーのグループ会社とのメディア連携による飲食店への送客効果の向上や、両社での飲食店向けのオンライン予約・集客サービスの開発を進めていくというのが戦略的提携の骨子である。

◆ 海外展開
同社は、17年8月に、タイで「Retty」のサービスの提供を開始した。現在、海外で展開しているのはタイ1カ国のみである。

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