まぐまぐ<4059> 有料コンテンツ配信およびWebメディア広告の両輪での成長を目指す

2020/10/08

メルマガを中心としたコンテンツ配信プラットフォーム「まぐまぐ!」を運営
有料コンテンツ配信およびWebメディア広告の両輪での成長を目指す

業種: 情報・通信業
アナリスト:阪東 広太郎

◆ メルマガの配信プラットフォーム事業とメディア広告事業を展開
まぐまぐ(以下、同社)は、メールマガジン(以下、メルマガ)配信プラットフォームを中心とした「プラットフォーム事業」および「メディア広告事業」、「その他事業」を展開している。19/9期の売上構成比は、プラットフォーム事業47.3%、メディア広告事業52.1%、その他事業0.6%である(図表1)。

1) プラットフォーム事業
プラットフォーム事業は、同社創業以来の中核事業である。メルマガを中心としたコンテンツ配信プラットフォーム「まぐまぐ!」は、99年からメルマガ配信業者として、20年以上に亘り、クリエイターにメルマガを配信する仕組みを提供している。20年7月末時点で、メルマガ発行総数は約6,500誌(有料メルマガ約1,000誌、無料メルマガ約5,500誌)、メルマガ会員は約750万人となっている。

プラットフォーム事業は主に、有料メルマガサービス、無料メルマガサービス、ライブ配信サービス、mineで構成される。同社によると、プラットフォーム事業の売上高の大半が有料メルマガサービスによるものである。

有料メルマガサービスは、有料メルマガの発行を希望するクリエイターがメルマガの執筆から配信までを一気通貫で行うことができるサービスである。クリエイターの有料メルマガセールスページに訪れた読者がメルマガを購読すると、その対価として毎月継続的に購読料が課金される。この購読料をクリエイターと同社で分配することで、同社は収益を得ている。

クリエイターは「まぐまぐ!」のプラットフォームを活用するにあたり、イニシャルコスト及びランニングコスト(年会費、決済手数料、システム運営費、回線使用料、人件費など)などを負担することなく、メルマガを発行することができる。その他にも同社が運営するWebメディアに記事を掲載することで、有料メルマガへの送客を促すなど、メルマガの販売支援読者増加を支援している。また、同社は、クリエイターの活動やクリエイター同士の交流などを支援している。

有料メルマガの発行数は20年7月末時点で約1,000誌であり、カテゴリーは多岐にわたるが、ビジネス、金融の比率が高いようである。読者数の多い著名なクリエイターとしては、元ライブドア社長の堀江貴文やライターの高城剛、国会議員の河野太郎、ニュースキャスターの辛坊治郎らが挙げられる。

有料メルマガの購読者数は15年10月以降、12万人から12.5万人の間で推移している。購読者の構成は、19年11月時点で、性別は男性が62%、年齢は35歳以上が85%を占める。特に35歳から64歳が72%を占めており、同社によると、これらの購読者の多くは、仕事や資産運用、旅行などの趣味に関して、他のメディアでは得られない、クリエイター独自の意見を求めて、また、通勤や昼食時などの空き時間の活用としてメルマガを購読するケースが多いようである。有料読者が定期購読するメルマガの数は大半が1誌であり、メルマガというメディアのファンというより、特定のクリエイターの意見を求めて購読する読者が中心と推察される。

同社とクリエイター間の購読料の分配比率は、基本的には半々である。購読者数の多いクリエイターの場合、クリエイターへの分配比率が高くなることもある。メルマガは月次課金となっており、単価はクリエイターが設定するが、メルマガの購読料は平均すると月500円程度となっている。

同社は新規クリエイターの開拓にあたっては、他メディアや様々な分野でファンの多いクリエイターに、同社の社員が直接アプローチをしている。クリエイターにとって、オープンな場では出せない内容を発信できることや、活動資金の獲得に繋がること、また同社のプラットフォームの利便性などが評価されて、「まぐまぐ!」でのメルマガ執筆・配信に至っているようである。

無料メルマガサービスは、無料メルマガを発行するクリエイターに対して付加サービスを提供することでサービス課金収益を上げるサービスである。具体的には、「有料配信メニュー」と「代理登録機能」を提供している。

「有料配信メニュー」は、無料メルマガの通常配信時に挿入されている広告を停止することができ、広告の入らないメルマガを読者に送る事ができるサービスである。主に、非営利団体や官公庁などの発行者が使用している。

「代理登録機能」は、クリエイターが講演会などで、メルマガの読者登録をすることについて、クリエイターが明示的な承諾を受けて収集したメールアドレスを承諾者に代わって読者登録を行うサービスである。

ライブ配信サービス「まぐまぐ!Live」は、テレビの生中継のようにスマートフォンアプリやWeb ブラウザ上で映像や音声をリアルタイムに配信できるサービスである。メルマガサービス「まぐまぐ!」のクリエイターは「まぐまぐ!Live」を通じて、リアルタイムで視聴者へ情報を届けることができ、また視聴者はLive 配信中にコメント機能等を活用し、クリエイターとコミュニケーションを取ることが可能となっている。

「mine」は、クリエイターが「記事単位の作品」を届けられるコンテンツプラットフォームである。クリエイターが書きたかった事、勢いで書いてみた事、書かなければならなかった事など、どうしても伝えたいメッセージを最小単位の「作品」に仕上げて、読者にいち早く届けるサービスである。クリエイターはメルマガのように定期的に発行しなくても良い。また、読者は定期継続課金ではなく、記事単位で購入する仕組みである。

2) メディア広告事業
メディア広告事業では、メルマガコンテンツの有効活用を目的として、14 年に立ち上げた「MAG2 NEWS」の他に「MONEY VOICE」、「TRiP EDiTOR」、「by them」の全部で4 つのWeb メディアを運営している。それぞれ、ジャンルに特化した情報(ニュース、金融、旅行、恋愛)を、インターネットを通じて提供している。また、「Web メディアコンテンツ」、「メルマガコンテンツ」の広告枠販売サービスを展開している。

4メディア合計の年間ユニークユーザー注1(UU)は、15/11期の8,756千UUから、19/9期の66,412千UUまで約7.5倍に増加した(図表3)。主に、「MAG2 NEWS」と「MONEY VOICE」におけるユニークユーザーの増加によるものである。

同社はユニークユーザーの拡大にあたっては、まず同社の750万人のメルマガ会員から集客を始め、一定数を確保している。同社のWebメディアのユニークユーザーの約15%が同社のメルマガ会員である。その後は、掲載記事を増やす、掲載方法を工夫するなどしてユニークユーザーを増やし、ある一定数までユニークユーザーが増えると、スマートニュース(東京都渋谷区)などのニュースメディアに掲載され、さらにユニークユーザー数を拡大してきた。

ユニークユーザーの属性は、19年11月?時点で、男性が68%、35歳以上が71%と、メルマガ読者と同様に、35歳以上の男性が中心となっている。年収が比較的高いと思われる男性の比率が高いことが評価され、広告主の業種における金融や健康食品の比率に高さにつながっているようである。

メディア広告事業では、同社が運営するWebメディアやオフィシャルメルマガに設置している広告枠を利用し、広告サービスを顧客企業へ提供することで、顧客企業から支払われる掲載料を広告収入として得ている。具体的には、純広告注2、アフィリエイト広告注3、アドネットワーク広告注4によって広告収入を得ている。また、メルマガ読者の獲得を希望する無料メルマガクリエイターを対象として、本広告枠を活用することで当該無料メルマガの魅力を訴求し、読者獲得をサポートする「メルマガ読者増加メニュー」サービスも展開しており、一定の課金収入を得ている。

同社によると、メディア広告事業の売上高の大半は、Webメディアの広告収入が占め、特にアドネットワーク広告の構成比が高い。広告主が広告予算におけるアドネットワーク広告の比率を増やしており、同社もアドネットワーク広告を強化しているためである。特にGoogle Asia Pacificの運営するGoogle Adsense向けを強化しており、Google Asia Pacific向けの売上構成比は18/9期の7.2%から20/9期第3四半期累計期間の18.2%まで高まっている(図表4)。

3) その他事業
その他事業にはイベント企画等が含まれる。イベント企画は有料メルマガクリエイターの知名度と信頼性向上を目的としている。19/9期中は、有料メルマガの人気クリエイターを講師に迎えた講演・イベント等を15件開催した。

 

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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