ヘッドウォータース<4011> 自社AI製品やシステムの運用保守等も手掛けている
AIやIT技術を用いたシステム開発を提供する情報サービス会社
自社AI製品やシステムの運用保守等も手掛けている
業種: 情報・通信業
アナリスト:大間知 淳
AIやIT技術を用いたシステム開発や関連サービスを提供している
ヘッドウォータース(以下、同社)は、顧客企業の業務改善、経営課題の解決のため、AIをどこに、どのように、どうやって活用するのかを追求し、複雑な導入プロセスをワンストップで提供する「AIソリューション事業」を展開している。
同社は、創業後しばらくは、エンジニアの派遣や請負の形態で業務システムに係るソフトウェア開発を行っていたが、14年にソフトバンクグループ(9984東証一部)が開発した人型ロボットPepper向けのアプリケーション開発を開始したことが事業転換の契機となった。その後、AIの研究や、AIのロボットへの実装に取り組んだことで、現在は幅広い顧客の業務システムにAIを利用したソリューションを提供している。
AIソリューション事業は、顧客の経営課題をAIやIT技術を用いたシステム開発を通して解決するインテグレーションサービスと、インテグレーションサービスで開発したシステムの改善、保守を行うOPSサービスに大別される。
インテグレーションサービスは、更に、AIを活用するAIインテグレーションサービス、AIを活用しないDX(デジタルトランスフォーメーション)サービス、自社AI製品を提供するプロダクトサービスに区分されている。19/12期におけるサービス別の売上高構成比は、AIインテグレーションサービスが28.5%、DXサービスが53.7%、プロダクトサービスが4.4%、OPSサービスが13.5%となっている(図表1)。
(1)AIインテグレーションサービス
AIを業務で利用するために、顧客業務の分析から始まり、AIの選定、学習モデルの構築、実証実験、AIを組み込んだシステム開発、追加学習を含めたシステム運用までをワンストップでサービスを提供している。
同社は、公開されている既存技術や、過去に自社で生成した学習モデル等を組み合わせてシステムを開発している。顧客がシステムを十分活用できるように、AIと連携する管理画面やWEBアプリケーション等の周辺システムも開発している。
同社は、顧客の要望に応じて、MicrosoftやGoogleの様なAIプラットフォーマーが提供するアルゴリズムを活用した学習モデルを短期、かつ、低コストで生成するほか、AIプラットフォーマーが提供する顔認識機能や自然言語解析機能等を組み込んだソリューション開発を行っている。
(2)DXサービス
業務のデジタル化が遅れている顧客に対しては、顧客の業務分析、デジタルトランスフォーメーション計画の策定、システム開発、AIの活用を見越したデータの蓄積及び解析等のサービスを、顧客の要望に応じて提供し、顧客のデジタルトランスフォーメーションを支援している。サービスの事例としては、アナログからデジタルへの業務・サービス変換への対応や、オンプレミスからクラウドサービスへの移行等が挙げられる。
(3)プロダクトサービス
自社開発した「SyncLect」や「Pocket Work Mate」等を顧客に提供、もしくはカスタマイズすることにより顧客の経営課題を解決するサービスである。
SyncLectは、AIソリューションの開発を短納期、低コストで行うための社内向けマルチAI注1プラットフォームである。SyncLectの活用により、AIと各種デバイスを連動させたり、WEBシステムやスマートフォンアプリにAI機能を
簡単に取り込んだりすることが可能となっている。Amazon やMicrosoft 等が クラウド上で提供しているAI 機能を評価し、適切なものをスイッチングして顧 客に提供するマルチクラウド機能注2 も備えている。
Pocket Work Mate は、従業員教育に関連する業務マニュアル等をデジタル化し、早期戦力化を支援するノウハウ配信のためのプラットフォームである。動画マニュアルでは自動字幕生成に加えて自動翻訳機能(60 カ国語まで拡張可能)も提供しており、外国人労働者向けの教育にも対応している。
(4)OPS サービス
AI インテグレーションサービス及びDX サービスで開発したシステムの改善、保守を行っている。AI インテグレーションサービスで開発したシステムについては、常に学習を続けていく必要があるAI の機械学習サポートを行っている。
◆ 期毎では特定顧客への依存度が高いが、継続的な依存先は少ない
同社の主要顧客としては、金融決済サービスを手掛けるインフキュリオンデジタル(東京都千代田区)、日本航空(9201 東証一部)の情報システム子会社であるJAL インフォテック、プロパティエージェント(3464 東証一部)等が挙げられる。各期の売上高に占める上位企業への依存度は高いものの、インテグレーションサービスでの大口案件が売上計上されたことによるものであり、継続的な取引で大きく依存している企業はいない模様である(図表2)。
◆ 労働集約型から知識集約型にビジネスモデルが移行
同社の売上原価の9 割以上は自社の技術者に支払う労務費と協力会社(ソフトウェア開発会社)に支払う外注加工費であり、労働集約型のビジネスと言える。一方、19/12 期の売上総利益率は45.4%であり、他のソフトウェア開発会社に比べ高い。18/12 期の38.4%から上昇したのは、利益率が高いAI インテグレーションサービスの売上高構成比が上昇しているためであり、同社のビジネスモデルは労働集約型から知識集約型に移行しつつある。
販売費及び一般管理費(以下、販管費)については、給料手当、役員報酬等の人件費が中心を占めている。なお、20年7月末の従業員数は74名(前期末比4名増)である。