日本情報クリエイト<4054> 業務支援の新サービスに加え、経営支援へ事業を拡大し、更なる成長を目指す
不動産業界に特化してITを活用した業務支援サービスの開発・提供を行う
業務支援の新サービスに加え、経営支援へ事業を拡大し、更なる成長を目指す
業種: 情報・通信業
アナリスト: 阪東 広太郎
◆ 不動産業務を支援するITを活用した製品・サービスを展開
日本情報クリエイト(以下、同社)は、不動産業界に特化したIT活用ソリューション企業として、不動産業務を支援する製品・サービスを開発し、日本全国の不動産会社に提供している。
同社の事業は「不動産業務支援事業」の単一セグメントであるが、同社が提供するソリューション(製品・サービス)については、その性質により、「管理ソリューション」、「仲介ソリューション」、「その他」に分類される。19/6期の売上構成比は、管理ソリューションが63.5%、仲介ソリューションが34.4%、その他が2.1%である(図表1)。
◆ 管理ソリューション
管理ソリューションは管理業務支援サービスと消費者支援サービスに分類され、管理業務支援サービスが売上高の大半を占めている。
管理業務支援サービスの主要な製品・サービスは「賃貸革命」である。「賃貸革命」は、不動産管理会社がアパート・マンション・一戸建て等の契約締結や入居者からの家賃入金管理、入金集計後のオーナーへの送金、契約期間満了に伴う契約更新、解約の処理など、賃貸管理に関する一連の業務を効率的に管理する為のシステムである。
賃貸管理業務においては、ExcelやWord、専用ソフトなど複数のソフトウェアを使い分けたり、複数の不動産ポータルサイトやインターネット広告に同じ物件情報を繰り返し入力するといった手間が発生する。また、オーナーや物件によって経理等の処理が異なり、それらを把握する必要がある。これらの手間は管理戸数の増加に伴い、複雑化する。「賃貸革命」は上記課題に対して、物件・顧客等の情報を一元管理し、情報処理のミス・ロスを減らすことを可能にする。
「賃貸革命」は、97年3月に発売して以降、導入社数は増加傾向にあり、20年5月末時点で、約4,500の不動産管理会社が導入している。顧客は日本全国に存在しており、管理戸数が200~3,000程度の中堅以下の事業者が中心である。
同社は顧客から、販売時に導入費用・導入ライセンス料を受け取り、その後は利用期間にわたってライセンス料・サービス利用料を月次で受け取る。平均すると、導入費用・導入ライセンス料は約110万円、ライセンス料・サービス利用料は約1万円/月である。
導入費用・導入ライセンス料、及びサービス利用料・ライセンス料は、顧客の登録管理戸数やアカウント数に比例して増加する。顧客は管理戸数に応じて収入が増える事や、「賃貸革命」が無い場合の業務負荷の大きさについての理解から、費用増への抵抗は小さいようである。
提供形態は、オンプレミス版とクラウド版の2パターンがあり、顧客がニーズに応じて選択している。顧客の構成比は、現状はオンプレミス版の方がやや高いものの、クラウド版を選択する顧客が増え、クラウド版の比率が高まっている。クラウド版では、外出先からのテレワークや在宅ワーク等、多様化する働き方のニーズに対応が可能である。
管理業務支援サービスのその他の製品・サービスには「賃貸革命」の有料オプションサービスである「巡回アプリ」、及び「会計連動」がある。
「巡回アプリ」は「賃貸革命」に点検項目やスケジュールを登録すると、スマホアプリから見る事でき、委託業者や新人であっても簡単に点検を行う事が可能となる。また、点検結果に対するコメントや写真をアプリに登録すると、点検情報が反映されたオーナーへの報告書類を「賃貸革命」から出力でき、報告書作成の手間を軽減することができる。
「会計連動」は、「賃貸革命」で管理する入出金のデータを主な会計ソフトとデータ連動することで、不動産会社の経営管理の効率化を支援している。
消費者支援サービスの代表的な製品・サービスは「くらさぽコネクト」である。「くらさぽコネクト」は不動産会社と入居者をつなぐコミュニケーションアプリであり、不動産会社からは契約更新や物件メンテナンス、請求の案内等を通知することができ、入居者からも不動産会社への問い合わせ等が、チャット形式で行えるなど、不動産会社の業務負担を減らすことに繋がる。
顧客獲得の起点は、顧客からの問い合わせが3割、同社からの架電や訪問が7割である。同社の主な顧客である中堅以下の賃貸事業者では、社内にIT専門家がいない事がほとんどで、ソフトウェアの知識が少ない事や、ExcelやWordの利用で業務は成り立っているものの手間がかかることから、同社からの提案をきっかけに問題意識を持ち、また便利さを知って導入するケースが多いようである。
◆ 仲介ソリューション
仲介ソリューションでは、不動産仲介業務(不動産情報流通業務、入居者募集業務、契約業務)に関して、業者間物件流通サービスである「不動産BB」を無償で提供すると共に、そのシステム上で機能する仲介業務支援サービスを有償で販売している。
「不動産BB」によって、仲介を行う不動産業者は、これまで書面・FAX・電話でのやりとりが主流であった物件情報の共有をインターネット上で行う事ができ、24時間いつでも情報の更新・確認ができることから、貸し手側、借り手側双方の不動産事業者が効率的に仲介を行える業者間物件流通のプラットフォームとなっている。
「不動産BB」は、同社が13年1月から運営を開始し、会員数は順調に伸びており、19年6月末時点で12,526店となっている。不動産仲介会社に加えて、「賃貸革命」を導入している不動産管理会社も無料で会員登録が可能であり、不動産BBに物件情報を供給している。
「不動産BB」によって業者間で共有されている物件情報を二次活用できる仲介業務支援サービスとして、不動産会社の募集方法である自社ホームページを作成するためのシステム「Web Manager Pro 3」とポータルサイト連携 システム「物件データ連携」、同社にて運営を行う不動産ポータルサイト「くら サポ」がある。
「Web Manager Pro 3」は、標準の複数テンプレートとCMS 注機能により、パーツを組み合わせていくことで不動産ホームページが作成できるレスポンシブ対応のホームページ作成ツールである。掲載する物件情報は「不動産B B」と連携でき、掲載情報もリアルタイムに更新可能である。
「物件データ連動」は不動産ポータルサイトへの物件情報の掲載を効率的に行えるシステムである。また、「物件データ連動」を利用することで、複数の不動産ポータルへの物件情報の一括掲載も可能になり、効率的に集客業務を行うことが可能となる。
「Web Manager Pro3」及び「物件データ連動」について、同社は顧客から導入時に導入費用を受け取り、その後、利用期間にわたってサービス利用料を受け取る。同社によると、「Web Manager Pro3」の導入費用は約15 万円、利用料は約4 万円/月であり、「物件データ連動」は接続先のポータルサイトひとつにつき、導入費用は約5 万円、利用料は約6 千円/月である。
「不動産BB」の顧客獲得経路は、同社からの架電が大半である。獲得率を高めるために、同社はターゲット顧客周辺の管理戸数の多い賃貸管理会社と連携している。同社は仲介会社に架電する際、賃貸管理会社が仲介会社からの問い合わせ方法を電話やFAX から、「不動産BB」に切り替えるので、賃貸管理会社が仲介会社も「不動産BB」を導入することを希望している事を訴求して、導入を促している。
「不動産BB」の導入後は、顧客からの問い合わせや、定期的な顧客訪問時に自社ウェブサイトやポータルサイト経由の集客状況や課題をヒアリングし、アドバイスをすることをきっかけに、「Web Manager Pro3」や「物件データ連動」が導入されることが多いようである。