グッドパッチ<7351> 大手企業におけるデジタル技術を活用した変革ニーズの取り込み拡大を目指す

2020/07/07

デジタルプロダクト等の顧客インターフェースや顧客体験のデザイン開発を支援
大手企業におけるデジタル技術を活用した変革ニーズの取り込み拡大を目指す

業種:サービス業
アナリスト:阪東 広太郎

◆ デジタルプロダクト等のデザイン開発を支援する事業を展開
グッドパッチ(以下、同社)グループは、デザインパートナー事業、及びデザインプラットフォーム事業を展開している。デザインパートナー事業は、「デザイン」の考え方を活用し、主にスマートフォンやSaaSアプリケーション等のデジタルプロダクトにおける戦略立案・企画・設計・開発を支援している。デザインプラットフォーム事業は、自社開発のSaaSアプリケーションであるプロトタイピングツール「Prott」及びVRデザインツール「Athena」、デザイナーに特化したクラウドソーシング注1サービス「Goodpatch Anywhere」、デザイナー採用支援サービス「ReDesigner」を展開している。

19/8期の売上構成比は、デザインパートナー事業が78.6%、デザインプラットフォーム事業が21.4%である(図表1)。エリア別の売上構成比は、日本が83.3%、ドイツが10.8%、欧州が5.9%、その他が0.0%となっている。

なお、同社グループは、「デザイン」を、問題の本質を掘り下げ、解決のための設計を行い、設計に基づいた見た目(ビジュアル表現)を作り上げ、問題解決へ導くものという意味で使用している。日本において、デザインは、装飾・表面的なものと認識されることが多いが、本来デザインとは、製商品を使う人を中心に据え、その目的、置かれる状況、付随する思考を含めた情報伝達や体験の創造を実現するものであると、同社グループでは考えている。

◆ デザインパートナー事業
デザインパートナー事業は、同社のコア事業であり、11年9月の同社設立と同時にスタートした。主に顧客企業に対して、Webサイトやスマートフォンアプリケーション等のデジタルプロダクトのデザイン開発を支援している。支援は、基本的にはプロジェクト形式で、同社グループのデザインプロセスに則って行われる。

同社グループのデザインプロジェクトでは、UX注2デザイナー及びUI注3デザイナーが少なくとも一人ずつ参加することを原則としている。

UXデザイナーの役割は、顧客のサービス体験の設計である。ユーザー像を絞り込んで定義し、ユーザー像から顧客のサービスにおける問題の本質を発見し、解決のための設計を行う。

UIデザイナーは、絞り込まれたユーザー像からプロトタイプを設計し、プロダクトの最終的なデザインを制作する。

プロジェクトスコープにプロダクト開発が含まれる場合には、UXデザイナー、UIデザイナーに加えて、エンジニアがプロジェクトに参画する。エンジニアは、デザインが確定した後のアプリの実装を担う。同社グループには、iOS、Andoroid、Web、サーバーなどの様々な専門スキルを持ったメンバーが在籍している。

同社グループの顧客企業の規模・業種は分散している。スタートアップから大手企業まで幅広い規模の企業が顧客となっている。業種については、メディア、通信、金融、自動車などが比較的多いようである。

顧客企業との契約形態は大半が準委任契約であり、一部が請負契約となっている。準委任契約では、プロジェクト期間中、月次で報酬を得ている。

プロジェクト受注金額は、顧客ごとに相対で決めている。プロジェクト受注金額は、デザイナーの請求単価、プロジェクトに従事するデザイナー数、プロジェクト期間で決まり、デザイナーの請求単価はデザイナーの等級で決まる。

プロジェクトには、平均すると、同社のUX デザイナー、UI デザイナーやエ
ンジニアらが合計3 名程度、参画するケースが多い。

デザインパートナー事業におけるデザインプロジェクトの実施数とその平均
月額単価は、増加傾向にあり、20/8 期第2 四半期の月平均プロジェクト数は
26.3 件、平均月額単価は4,901 千円になっている(図表2)。

プロジェクト期間は顧客ごとに相対で決めているが、顧客の要件定義から実
装するデザインの制作までの所要期間が半年程度のようである。アプリ等の
開発まで支援する際は、プロジェクトが数年にわたるケースもある。

顧客の獲得経路は、口コミや既存顧客からの紹介が大半のようである。特に、
スタートアップ企業やデジタル領域に精通した大手企業の間では、UI/UX
デザイン注4 といえば、まず同社が想起されることが多いようである。

◆ デザインプラットフォーム事業
デザインプラットフォーム事業では、デザインパートナー事業によって行わ
れるUI/UXデザイン支援を様々な側面からバックアップするサービスを展開
している。デザインが有効に活用され、プロダクトとして世の中にリリースされ
るまでのプロセスをソフトウェア(デザインIT ツール「Prott」「Athena」)、企業
内デザイン人材(デザイナー採用支援サポート「ReDesigner」)、デザインビ
ジネス環境(クラウドソーシング「Goodpatch Anywhere」)の点からサポートし
ている。

「Prott」は14年にリリースしたプロトタイピングツールである。デザイナーは「Prott」を用いる事で簡易的に画面設計を行う事が可能になる。アプリにおける画面遷移の動作やタッチパターンなどの設定をプログラミング無しで表現することが可能になる。20年4月末において、1,306アカウントの有料ユーザーの登録があり、有料ユーザーから月額課金を受領している。

「ReDesigner」は18年にリリースしたデザイナーに特化した人材紹介サービスである。デザインの知識を持つ同社がエージェントとしてデザイナーと求人企業の間に入り、独自の求人票、オンラインアンケート、面談等を通じて、デザイナーの特性やキャリア志向を踏まえてマッチングを実施している。人材紹介が成約した場合には、求人企業から成功報酬の形で成約者の年収の約30~40%に相当する金額を受け取っている。

「ReDesigner for Student」は19年にリリースした、デザイナー志望の学生に向けた採用支援サービスである。学生は本サービスに登録し、自身のポートフォリオ(作品集)の掲載を行い、求人企業からの採用アクションを待つ。一方、求人企業は毎月定額の利用料を同社グループに支払い、ポートフォリオを登録している学生にコンタクトを取る事ができる。

「Goodpatch Anywhere」は18年にリリースした、デザイナーに特化したクラウドソーシングサービスである。フルリモートのフリーランスデザイナーのチームを組成し、同社グループが品質管理を行いながら企業のデザインを支援している。

「Goodpatch Anywhere」の登録者数は、19年2月末の20名から20年4月末には114名となり増加傾向にある。20年4月末の稼働人数は29名である。顧客との契約形態は、デザインパートナー事業と同様に準委任契約である。

「Athena」は、カーデザインをVirtual Realityの環境で行うことができるソフトウェアである。現在は顧客企業のオーダーに応じた取引を実施しており、ソフトウェアを顧客用にカスタマイズし、個別のデザインプロジェクトとして提供している。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。