コマ―スOneホールディングス<4496> 提供するECプラットフォーム事業を展開

2020/07/03

中堅・中小サイト運営企業向けにECサイト運営支援サービスをSaaS形式で
提供するECプラットフォーム事業を展開

業種:情報・通信業
アナリスト:髙木 伸行

◆ ECサイト運営支援サービスを提供
コマースOneホールディングス(以下、同社)は純粋持株会社として、フューチャーショップ、ソフテル、TradeSafeの3事業子会社を統括している。

フューチャーショップはECサイト構築プラットフォームfutureshopの提供を、ソフテルはEC用の多店舗の受注、在庫などを一元管理するパッケージソフトウェア「通販する蔵」の提供を中心に行っている(図表1)。TradeSafeはトラストマーク注1の認証業務の他、ECサイト構築に関する助言業務を行っている。

同社は06年8月に通販サイトへの信頼性認証サービスを提供する目的で設立された(設立時の社名はTradeSafe)。当時はネットショップでのトラブルが増加しており、現代表取締役社長の岡本高彰氏がネットショップ事業者と生活者が安心して参加できるEC 市場を創るために同社を設立した。諸外 国では政府がバックアップする団体や非営利法人がトラストマーク・サービ スを行う例が多いが、公益を守りEC 市場を発展させる上で重要との判断か ら同事業を開始した。ただし、事業の性格からしっかりとした指導・審査の後 に認証することになるため、事業の拡大ペースは緩やかであった。

その後、EC サイト運営者に対してワンストップであらゆるインフラサービスを提供できる会社を目指し、10 年3 月にEC サイト構築支援ソフトを提供するためにフューチャーショップを共同設立し、12 年12 月に完全子会社化した。11 年9 月にはEC バックヤードのWEB システムに強みを持つソフテルの株式を取得し子会社化した。これにより、同社グループはトータルでEC サイト事業者をサポートできる体制を築き上げた。

17 年9 月に現TradeSafe を新設分割することで子会社化し、同社は純粋持株会社に移行した。

◆ フューチャーショップ
フューチャーショップはEC サイト運営者向けにSaaS 注2 形式でEC サイト構築プラットフォームfutureshop を提供している。フューチャーショップのサービス提供先は中小・中堅企業が中心で20/3 期では2,622 社となり、流通取引総額は1,151 億円(1 契約社当たり44 百万円)に達している。

futureshop の料金体系は導入時の初期費用と利用期間に亘って受け取る基本料金から構成されている(図表2)。futureshop のサイト内で登録できる商品数によって6 つのプランがあり、初期費用は3 段階、基本料金は6 段階となっている。

プラットフォームはEC サイトの要素をパーツ単位に分割し、各パーツを組み合わせてサイトをデザインすることを可能にしている。また、導入後にコンバージョン率注3やリピート率を高めるためにデータを解析し、サイト改善策を提案することでEC サイトの流通取引総額の拡大、つまり契約先の売上増に寄与している。

18 年9 月に新機能としてリースされたcommerce creator はEC サイトを構成する要素をより細かいパーツに分割しており、簡便なレイアウト機能により各パーツの配置を自由に変更できるものである。また、パーツはシステムが提供するものとは別にEC サイト運営者が独自に作成することも出来るため、よ り独創性の高いEC サイトの構築を可能にしている。

一般的なSaaS 型のEC サイトは定型的なサイトが多いが、自由度の高いカスタマイズが可能な点で他社との差別化が図れている。このため、フューチャーショップのプラットフォームの導入先はサイトのデザインに拘りの強いアパレル・ファッションや雑貨、コスメ、ジュエリーといった事業者が多い。

この他、リアル店舗での在庫表示機能及び店舗間ポイント連携機能を持つfutureshop omni-channel、越境EC サイト構築用のfutureshop overseas も提供している。また、決済代行会社からの代行手数料(紹介料)を得ている。

◆ ソフテル
ソフテルはEC 用の多店舗の受注、在庫などを一元管理できるパッケージソフトウェア「通販する蔵」を中心に、EC カートサービス「出店する蔵」、オムニチャネル対応クラウドPOS レジ「レジする蔵」、倉庫管理 物流システム「ロジする蔵」を提供する、EC バックヤードに強いWEB システム会社である。

ソフテルのサービスはサーバー内に契約顧客専用のアクセス先を設定するプライベートクラウド型で提供されており、既存システムと連動させる上で初期的なカスタマイズは必要となるがSaaS 型で提供されるためシステム利用時の負担は低く抑えられる。

ソフテルの収益は初期導入に関してのカスタマイズ料(150 万円~)と導入後の保守メンテ料(月額6 万円~)から構成されている。なお、平均受注数、出店モール・カートに応じて初期導入費用及び保守メンテ料は異なっている。20/3 期のソフテルの契約先は229 社で契約社合計の流通総額は2,204 億円(1 契約社当たり963 百万円)とフューチャーショップの顧客先と比較すると規模の大きい先が多い。

◆ TradeSafe
TradeSafe はトラストマークの認証業務の他、電子商取引の円滑化に関しての助言を行っている。World Trustmark Alliance に加盟し、OECD のガイドラインに沿った「トラストマーク運営事業者のためのガイドライン」をもとに加盟企業共通審査を行っている。

トラストマークの料金体系は登録料(本店サイト注438,500 円、モール店舗注411,000 円)、月額利用料は本店サイトが月間店舗売上高に応じて11,000 円(月間店舗売上200 万円未満)、14,300 円(同200 万円以上300 万円未満)、19,800 円(同300 万円以上500 万円未満)、25,300 円(同500 万円以上)の4 段階に分かれ、モール店舗は一律3,300 円である。

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