エブレン<6599> 顧客の仕様に合わせたカスタム製品が中心

2020/06/30

インフラシステム向け組込型コンピューター及び周辺機器の設計・製造・販売を行う
顧客の仕様に合わせたカスタム製品が中心

業種:電気機器
アナリスト:髙木伸行

◆ 産業用コンピューター及び周辺製品を設計・製造・販売
エブレングループはエブレン(以下、同社)及び中国の蘇州惠普聯電子有限 公司で構成されており、産業用電子機器や工業用コンピューターに使用され るバックプレーン、ラック注 1 (システムラックやコンピューターシャーシ)及びボ ードコンピューター注 2 を含む周辺機器等の開発、設計、製造、販売を行って いる。

同社の主力製品であるバックプレーンは CPU ボード注 3 や I/O ボード注 4等の 各種回路基板(ボードコンピューター)を相互に接続して信号伝送を行う回路 及び基板に電力を供給する回路を備え、これらの基板の着脱をコネクターを 介して自在にできるようにしたユニットを指す(図表 1)。

同社の社名は「Electoronics BRAINs」からの造語で、エレクトロニクス分野に おける頭脳、知力の集団となることを目標とし、最高のソリューションを提供す ることのできるブレインでありたいとの想いが込められている。同社は 1973 年 に設立されて以来、産業用電子機器のバックプレーンや電子機器および工 業用コンピューターの本体まわりの設計と生産技術を専門領域としている。

納入先の産業用電子機器メーカーや機械装置メーカー等は選択と集中を進 めてきたことから、各々得意分野に資源を重点配分する一方で、重点分野以 外においては同社のような専門メーカーへ依存する傾向が強くなっている。 同社は顧客の生産工場として活用してもらうことを目標としており、開発、試作、 量産のどの段階からでも請け負っている。

同社は規格に準拠した標準品も取り扱っているが、多種少量、変種変量が当 たり前の産業用電子機器メーカーの独自の仕様に合わせたカスタム製品を 中心に取り扱っている。また、バックプレーン単体ではなく、顧客の要望に合 わせてデザインしたラックに組み込み、電源ユニットやファン等を取り付け、配 線した上でコンピューター本体として完成した製品の販売も行っている。

ボードコンピューターには半導体製造装置や鉄道車両等の大規模なシステ ムで使用される、バックプレーンに接続して複数のボードコンピューターと一 緒に動作するものや、IoT 注 5やエッジコンピューティング注 6等、比較的小規模 な分野で使用される、1 枚のボードコンピューターのみで動作するものがあ る。

コンピューターとして動作させるためには CPU の他に記憶装置、入出力装置、 通信装置等を回路基板に組み込む必要があるが、顧客は CPU の開発に専 念し、ボードコンピューターとして動作させることは同社グループが担当する ケースが増えている。換言すれば、単なる部品の供給というよりは完成品に近 いユニットまで提供できないと顧客ニーズを満たすことが出来ない。

産業用電子機器では、回路基板を自由に抜き差しできるバックプレーン方式 が一般的に採用されているため、応用分野は多岐に亘っている。また、ボー ドコンピューターも広く使用されている。このため、同社の売上高は製品別で はなく、「通信機器」、「電子応用装置」、「電気計測器」、「交通関連装置」、 「防衛・その他」の 5 つの応用分野に分類され、開示されている(図表 2)。

半導体製造装置や検査・計測機器が主な適用となる電気計測器分野が中心 で、売上高の半分を占めている。また、同社単体では全ての応用分野の製品 を、中国子会社は電子応用装置分野と電気計測器分野の製品を製造してい る。

同社グループの取引先は大手・中堅電機メーカー約 220 社に上っており、上 位 10 社で売上高の約 50%、上位 30 社で約 75%、上位 50 社で約 90%を占 めている。ちなみに最大顧客である、半導体製造装置の受託製造を行うアバ ールデータ(6918 東証 JQS)向け売上高は 19/3 期の全売上高の 16.7%を占 めており、アバールデータ向けの主な最終ユーザーは東京エレクトロン(8035 東証一部)である。

◆ データ蓄積に基づいた開発力と新規格への対応力
同社は実績によって培われたデータベースを基に、多種少量、変種変量のカ スタム製品においても設計期間の短縮化やコスト低減を実現している。

同社は年間約 150 機種を設計しており、設計回路のパターンや個々の電子 部品の特性等をデータベース化している。新規の設計を受託した際には過 去の類似案件を利用するとともに、追加的な独自部分のみを新規作成するこ とで設計開発の効率化を図っている。

新規格への対応については産業用コンピューターのグローバルな業界団体 である PCI Industrial Computer Manufacturers Group(PICMG)に参画し、新し い規格情報を収集している。PICMG は遠距離通信、軍事、産業といった分 野向け、および汎用の組み込みコンピュータ・アプリケーション向けにオープ ンな標準仕様を参画企業が協力して策定する団体である。製造面では各種のコネクターや様々なサイズや厚さのプリント基板に対応で きる自動組立装置や検査装置を自社で設計、開発して使用している。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
ホリスティック企業レポート   一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。

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