松屋アールアンドディ<7317> 独自のビジネスモデルで血圧計腕帯やカーシートカバーの生産請負も行う

2020/04/15

労働集約的な縫製業界の無人化・省人化を進める縫製自動機メーカー
独自のビジネスモデルで血圧計腕帯やカーシートカバーの生産請負も行う

業種: 輸送用機器
アナリスト:藤野 敬太

◆ 設備の販売のほか縫製品の生産請負も行う縫製自動機メーカー
松屋アールアンドディ(以下、同社)は、裁縫業界向けに無人化、自動化さ れた生産ラインを製造、販売している。1982 年の創業以来、縫製関連機器 の開発及び製造を手がけ、シートベルト用やエアバッグ用の自動縫製機の 製造を行い、縫製業界の生産ラインの自動化ノウハウを蓄積してきた。

その後、01 年にオムロン(6645 東証一部)グループ向けに血圧計腕帯の生 産を開始したことを契機に、自動縫製機等の縫製ラインの生産設備の販売 と、顧客企業に販売した自社開発の設備を用いて製造した縫製品の販売 の両方を行うビジネスモデルを確立した。

同社の事業は、縫製自動機と縫製品の 2 つの報告セグメントに分類される (図表 1)。縫製品セグメントが売上高の 8~9 割を占め、利益の大半を稼い でいるが、中でも血圧計腕帯とカーシートカバーの売上構成比が高い。

◆ 縫製自動機事業
縫製ラインには、裁断、縫製、検査の工程がある。従来の縫製ラインは多く の人員が必要であり、労働集約的なものとなっていた。これに対して同社は、 仕入れたミシンや裁断機をベースに、同社が自社開発したAIロボットやソフ トウェアを装備して縫製自動機に仕立てることにより、縫製ラインの自動化、 省人化を付加価値として提供している。

具体的には、(1)作業スタッフをロボットにより置換、(2)裁断と縫製、縫製と 検査の各工程間の搬送自動化、(3)生産データの集中管理によって、生産 ラインの自動化または省人化を実現している。

エアバッグやシートベルトといった自動車の安全装置のほか、アパレルや航 空機分野における縫製ラインが対象となる。

◆ 縫製品事業
同社が開発した縫製自動機を用いた生産ラインにより、生産請負の形で顧 客企業に対し縫製品を供給する事業である。顧客企業は同社の自動縫製 機等の生産設備を購入し、同社のベトナムの工場に設置し、同社がその設 備を用いて顧客企業の要求に沿って縫製品を生産するというビジネスモデ ルである。

このビジネスモデルは、同社の縫製自動機事業で培われた縫製機械技術 により成立しているものである。(1)生産設備の販売と生産品の販売という 2 つの収益源がある、(2)生産設備への投資は顧客企業が行うので、案件開 始時の同社の投資が抑えられ、投資の未回収リスクが低い、(3)自動化、省 人化された生産ラインで生産するため熟練工を必要とせず、同社及び顧客 企業の両者のコスト削減に資する、(4)同社は生産品の在庫リスクを負わな いという利点がある。

取り扱っている製品は、オムロングループ向けの血圧計腕帯、自動車関連 メーカー等向けのカーシートカバーやエアバッグのほか、アパレル製品やス ポーツ用品となる。

◆ 顧客
同社の売上高の大半を占める縫製品事業の売上高は顧客企業の製品の 生産、販売動向の影響を受ける。顧客企業の製品の販売増に応じて、主要 な顧客企業への売上の集中が進み、20/3期第3四半期累計期間の売上高 の 88%が上位 5 社向けとなっている(図表 2)。

◆ 生産体制
同社の生産拠点は、福井本社のほか、宮城、ベトナム、ミャンマーに合計 4 カ 所ある。縫製自動機等の開発、製造は福井本社でのみ行っており、残り 3 カ 所は縫製品の生産を担当している。

縫製品の生産量が圧倒的に多いのがベトナムのドンナイ省にある工場である。 自動化、省人化しても残る人のコストを下げるべく、08 年に Matsuya R&D (Vietnam) Co., Ltd.を設立して進出して以降、第 1~第 5 工場までが稼働す る体制となっている。縫製品の主力である血圧計腕帯、カーシートカバー、エ アバッグを生産している。

ミャンマーには、14 年に Matsuya R&D(Myanmar) Co., Ltd.を設立して工場 を新設した。ベトナム以上に人件費が安価であり、ローコスト生産の需要に対 応するためである。現在は、ベトナム工場向け血圧計腕帯材料の一部の加工 を行っている。

宮城工場は 17 年にタカハターの買収、完全子会社化により取得した。こちら ではカーシートカバーの生産を行っている。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
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