WDBココ<7079> 独自の業務プロセスにより、高い収益性と資産効率を誇る

2020/01/14

医薬品の安全性情報管理サービスを主軸とするCRO
独自の業務プロセスにより、高い収益性と資産効率を誇る

業種: サービス業
アナリスト: 大間知 淳

◆ 安全性情報管理サービスを主軸とするCRO
WDBココ(以下、同社)は、製薬企業から、医薬品開発業務の中の臨床試験(治験)、承認申請、安全対策、製造販売後調査等の業務を受託するCRO(開発業務受託機関)であり、WDBホールディングス(2475 東証一部) の連結子会社である。

同社は、CRO サービスの中でも、国内外の臨床試験や医薬品の市販後に発生する安全性情報についての入力・評価案作成、報告書案作成等の支援業務である安全性情報管理サービスを主軸サービスとしており、その売上高構成比は18/3 期が77.2%、19/3 期が77.7%となっている。その他、ドキュメントサポートサービス、開発サポートサービス、臨床開発支援サービスを提供している。

(1)安全性情報管理サービス
医薬品の臨床試験では、人体に投与された治験品に対する望ましくない反応についての情報の収集、評価が行われている。安全性が確認され上市された医薬品であっても、製薬企業には望ましくない反応についての発現状況や有効性に関する情報(安全性情報)を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下、PMDA)に報告することが義務付けられている。つまり、安全性情報は、臨床試験中だけではなく、新薬として承認、販売後も継続的に収集・評価・報告することが求められている。

同社では、安全性情報について、安全性情報管理データベースでの症例管理番号の発番、安全性情報の入力、PMDAへの報告義務についての評価案作成、報告書案の作成サービスを提供している。また、安全性情報を管理する上で発生する日英/英日翻訳や紙資料のファイリング業務も行っている。

(2)ドキュメントサポートサービス
ドキュメントサポートサービスでは、医薬品開発の各段階で発生する様々な書類やPMDA への上市の承認申請の際に必要な資料の品質保証・翻訳からCTD(日米EU3 極共通の医薬品承認申請様式)と呼ばれる承認申請書の作成までの支援業務サービスを提供している。

(3)開発サポートサービス
開発サポートサービスでは、新薬の承認後や適応追加後に実施される製造販売後調査において、調査を依頼する医療機関との契約書類等の作成・管理代行業務、調査票の管理、調査関連文書のファイリング、コールセンター業務等のサービスを提供している。

(4)臨床開発支援サービス
臨床開発支援サービスでは、製薬企業等で実施される医薬品開発のプロセスの中で、主に臨床開発におけるモニタリング業務を中心に臨床試験関連業務の支援サービスを提供している。モニタリング業務とは、臨床試験における主要業務であり、試験に参加する医療施設において、試験実施計画書の説明、試験進捗の確認、症例報告書の回収、調査票の記入依頼、精査等を行っている。

◆ 中外製薬等の取引先上位4 社への依存度が高い
同社の主要取引先としては、ロッシュ(スイス)の子会社である中外製薬(4519 東証一部)、グラクソ・スミスクライン(東京都港区)、日本イーライリリー(兵庫県神戸市)、米国のバイオ医薬品企業の日本法人であるアッヴィ合同会社(東京都港区)が挙げられる。

同社のサービスは外資系製薬企業から高く評価されており、継続的にこの4 社が取引先上位の地位を占めている。19/3 期売上高において、上位3 社への依存度は約44%、上位4 社への依存度は約53%であった(図表1)。

◆ WDBホールディングスグループの中では中核事業ではない
同社は、84年8月に医薬医療・ライフサイエンス系分野の翻訳サービスを事業目的として設立された。94年にはCRO業務の拡大を目的に、薬事申請関連資料の作成を代行するメディカルライティングサービスを開始した。11年4月に人材サービス関連事業を営むWDB(現WDBホールディングス)の完全子会社となった。12年11月に安全性情報管理サービス、ドキュメントサポートサービス及び特定派遣サービスを行うWDBメディカルを吸収合併し、商号をWDBアイシーオーに変更した。19年6月にWDBココに商号を変更した。

WDBホールディングスは、19年11月20日時点で同社の議決権の100%を保有していたが、公募増資や売出しを実施した上場後も同社株式の75.0%を保有する親会社にとどまる見通しである。なお、WDBホールディングスのグループとしての中核事業は人材サービス事業(19/3期の売上高構成比89.4%)であり、CRO事業は中核事業(同8.8%)ではない。WDBホールディングスのCRO事業には、同社以外にも3社が属しているが、各社は専門領域に特化して事業を展開しており、現時点でグループ内での競合関係はない。

同社の取締役は5名で、このうち社外取締役は1名である。残り4名のうち、非常勤取締役である中野敏光氏はWDBホールディングス代表取締役社長である。谷口晴彦代表取締役社長を始めとする3名の取締役はWDB(現WDBホールディングス)の出身者であるが、同社に完全移籍している。また、同社の売上高にWDBホールディングスグループに対するものはないが、費用については、19/3期において事務所の賃貸料や出向料等の支払が存在している。

◆ 業務プロセスの最適化に向けた独自の仕組みを構築している
CROサービスは多くのスタッフを必要とする労働集約型のビジネスであるが、同社では、従来は経験者が行っていた業務を標準化した上で分業が可能な状況に組み直し、新たに採用した未経験者を育成して業務を遂行する方針でサービスを提供している。また、同社は直接雇用かつ常用雇用社員を中心に配置することで継続的な業務効率の改善に取り組んでおり、高品質と低価格を両立したサービスの提供を目指している。

同社では、業務プロセスを継続的に最適化していく独自の仕組みを「オプティマル・プロセス・マネジメント(以下、OPM)」と名付けており、業務プロセスの最適化に取り組んでいる。OPMは、①法規制の変化並びに最新のテクノロジーやビジネスモデルの調査、②それらを基にした業務プロセス開発、③業務プロセスの実施、④実施されている業務の集中管理の4機能から構成されている。

同社が提供するサービスのうち、安全性情報管理、ドキュメントサポート、開発サポートは継続的な業務が中心であるため、OPMが業務効率の改善に効果を発揮しているようである。

同社の売上総利益率は、18/3期が31.5%、19/3期が33.4%であった。売上原価の中心は各案件の業務を遂行する従業員に支払う労務費である。販売費及び一般管理費(以下、販管費)の中心も給料及び手当や出向料等の人件費である。なお、従業員数は、17/3期末が139名、18/3期末が202名、19/3期末が242名、19年10月末が303名と急増している。

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資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。