バルテス<4442> 18年3月期に実施した構造改革の効果で20年3月期も増収増益が続く見込み
品質向上のトータルサポートを標榜するソフトウェアテストサービス大手
18年3月期に実施した構造改革の効果で20年3月期も増収増益が続く見込み
業種: 情報・通信業
アナリスト: 藤野 敬太
◆ ソフトウェアテストサービスが主力事業
バルテス(以下、同社)は、「品質向上のトータルサポート企業」として、ソフトウェアテストサービスを中心にサービスを提供する企業である。
同社の事業は、ソフトウェアテストサービス事業、Web/モバイルアプリ開発サービス事業、オフショアサービス事業の3事業に分類されている。ソフトウェアテストサービス事業が、売上高の約90%を占めている(図表1)。
主力のソフトウェアテストサービス事業は同社が担う。一方、Web/モバイルアプリ開発サービス事業及びオフショアサービス事業は、連結子会社がそれぞれ担っている。
◆ ソフトウェアテストサービス事業~需要サイドの観点
ソフトウェアは幅広い分野に搭載されて活用されており、一概にソフトウェアと言っても、それぞれの分野ごとに特徴を有する。同社はエンターテインメント系以外のソフトウェアテストを取り扱っており、その幅の広さは同社の特徴のひとつとなっている(図表2)。
ソフトウェアテストサービス事業では、ソフトウェアの不具合によって生じる悪影響を回避するためのサービスを提供する。具体的には、開発後のソフトウェアの不具合を発見するためのソフトウェアテストを中心に、ソフトウェア開発工程のプロセスの確立や標準化等を支援する品質コンサルティングサービス、品質管理を行う人を対象としたソフトウェア品質セミナーサービス等を行う。
テストサービスの提供形態は、同社のテストセンターでテストを実施するテストセンターテストサービスと、顧客の施設でテストを実施するオンサイトテストサービスに大別され、オンサイトテストサービスの方が多い模様である。
また、契約形態は、(1)エンジニアを顧客側に派遣する派遣契約(指揮命令は顧客)、(2)同社の指揮命令のもとで役務提供を行う準委任契約、(3)同社がテストを行いその成果物を納品する請負契約に分類される。派遣契約は減少傾向にあり、多くが準委任契約か請負契約による案件と推察される。契約形態による差はあるものの、契約期間は1~3 カ月程度のものが中心となる。
現在は、年間で約1,200 プロジェクトを実施する体制となっている。顧客数は19/3 期年間で251 社となり、創業来の累計では600 社以上での導入実績を有する。また、同社の売上高の約2 割が楽天(4755 東証一部)向けによるものとなっている。
◆ ソフトウェアテストサービス事業~供給サイドの観点
ソフトウェアテストサービスはまだ労働集約的な性格が強く、高スキルのエン
ジニアをどれだけ確保できるかが競争力に直結する。ソフトウェアテストの業
界で標準的な資格である「JSTQB 注1 認定テスト技術者資格」があるが、18
年10 月時点で入社2 年目以降の同社の正社員のうち92%が同資格を保
有している。また、JSTQB の上位組織にあたるISTQB 注2 において、同社は
全世界で8 社のみ(日本の企業では初)のGlobal Partner になっており、高
い評価を受けている。それを支えるのが、同社独自の研修プログラムであり、
エンジニアの早期戦力化を支えている。
それでも業界全体として人材不足感が慢性化しており、同社もその対応の
ため、18/3 期に人材の採用と育成の分野での構造改革を実施した。構造改
革の具体的な内容は、(1)人材開発チームの強化を通じた、協力会社の増
加及び協力会社の人材の育成、(2)契約社員の採用のための自社採用媒
体「ソフトウェアジョブズ」の運営開始(1 人当たり採用費の低減)、(3)適性
試験の開発・展開による、30 歳以下の人材に対する他業種からソフトウェア
テスト業界へのキャリアチェンジの促進というものであり、採用及び育成の体
制が強化された。
◆ Web/モバイルアプリ開発サービス事業
連結子会社のバルテス・モバイルテクノロジーが担当する事業で、Web アプリやモバイルアプリの開発のほか、セキュリティ診断(脆弱性診断)を提供する。19/3 期の全売上高の10.2%を占める。このうち、セキュリティ診断は拡大が続いている。
◆ オフショアサービス事業
フィリピンにある連結子会社のVALTES Advanced Technology, Inc.が担当する事業で、19/3 期の全売上高の1.7%を占める。現地のエンジニアが主に在フィリピンの日系企業向けにサービスを提供している。
◆ バルテスの強み
同社の特色及び強みとして、(1)同業他社に比べて広い事業領域、(2)同社の独自カリキュラムに基づいて育成された高スキルのエンジニア、(3)年間1,200 件以上の案件をこなす実績、(4)業務の標準化プロセスの存在が挙げられる。