ヴィッツ<4440> 自動車制御システム向けのリアルタイムオペレーションの開発に強み

2019/04/25

自動車や産業機械を制御する組込ソフトウェアを開発
自動車制御システム向けのリアルタイムオペレーションの開発に強み

業種: 情報・通信業
アナリスト: 松尾 十作

◆ 組込ソフトウェア開発が主力
ヴィッツ(以下、同社)グループは、同社、及び連結子会社(アトリエ、ヴィッ
ツ沖縄)の3 社で構成されている。同社の事業は組込システム事業、システ
ムズエンジニアリング事業、機能安全開発事業、その他の4 つに分かれて
いる。

アトリエは13 年4 月に同社の子会社となったが、同社グループのシンクタン
ク的存在である。出資比率は同社が74.8%で、残りはアトリエの役員2 名に
よるものである。産業技術総合研究所で規格策定や調査を担当していた技
術員が中心となり運営されている。ソフトウェアの数多い新規格の調査を行
い、ソフトウェアの新規格への対応状況に関する調査結果を提供している。

ヴィッツ沖縄は16 年10 月に設立した完全子会社である。組込ソフトウェア
の評価及び開発支援を行っている。多数の技術者を必要とするソフトウェア
の評価等に対し若年技術者を活用することで、コスト削減を実現している。

同社の事業基盤であり、売上高の過半を占めている組込システム事業では、
産業機械メーカー、自動車メーカー及び関連企業向けに組込ソフトウェアを
開発している。産業機械や自動車などには、マイクロコンピュータと呼ばれ
る小型のコンピュータが搭載されている。コンピュータを含む機器類とコンピ
ュータを動作させるソフトウェアを合わせたものが組込システムで、ソフトウェ
アが組込ソフトウェアである。

具体的な事業内容としては、自動車部品の電子化に対応したソフトウェア開
発等のサービスを提供している制御ソフトエンジニアリングサービス、自動
車制御システム向けのRTOS(リアルタイムオペレーティングシステム)の開
発及び販売、自動車の自動運転を実現するためのセンサー技術や人工知
能を活用した判断技術等を提供している自動運転技術研究と技術支援サ
ービス等が挙げられる。

RTOS とは、時間的な制約があるなか、優先度が高く設定された数多くの処
理を遅延させずに実行する機能を備え、様々な働きをするシステムの制御
用として用いられている。処理が遅延すると、例えば音楽プレーヤーでは音
飛びとなるため、高い信頼性がRTOS には求められている。

システムズエンジニアリング事業は、コンピュータなどを活用して模擬的に
実験が出来るシミュレーション環境を自動車及び関連企業等向けに提供し
ている。具体的な例では、車載制御シミュレーション開発がある。

自動車部品向けの組込ソフトウェア開発において、エンジン稼働時の各種
部品の動作状況をシミュレーション環境で確認することにより、組込ソフトウ
ェアの開発期間の短縮に貢献している。また、研究段階にある自動運転車
両を公道で走行させることが出来る地域が、日本国内では限定されている
ため、コンピュータ上で公道走行と同じ環境を再現し、自動運転の検証を可
能にする仮想環境シミュレーション技術を同社は提供している。

機能安全開発事業では、工作機械メーカーや自動車メーカー向けに機能
安全コンサルティング及び開発支援サービスを提供している。機械類の故
障やソフトウェアの不都合により、機械が機能を停止することで危害が発生
する可能性がある。機能安全とは、こうした危害を防ぐために監視装置や防
護装置などの付加機能を施すことである。

その他は連結子会社のアトリエと沖縄ヴィッツの業務を指している。

事業別売上高構成比(18/8 期)では、組込システム事業が62.7%と全体の
過半を占めている(図表1)。

上位顧客では、パナソニック(6752 東証一部)の社内カンパニーであるパナ
ソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社注1、アイシン精機
(7259 東証一部)、トヨタ自動車(7203 東証一部)等が挙げられる(図表2)。
上位30 社で同社の売上高の9 割以上を占めており、うち27 社が上場企業
及びグループ企業である。

◆ コア技術を提供
同社は、自動車制御システム用RTOS を自社で開発している。欧州の規格
で実質的な標準仕様であるAUTOSAR(オートザー)仕様のRTOS を、国内
で開発しているのは同社を含め数社である。また、IEC(国際電気標準会議)
が制定した、機能安全に関する国際規格であるIEC61508 のソフトウェア開
発プロセス認証注2 を国内で初めて取得した。

◆ コア技術は産官学連携
同社は05 年より公的研究事業(産官学連携)による研究を本格的に実施し、
06 年以降毎年概ね数本の研究事業を実施している。前述のAUTOSAR 仕
様のRTOS の開発も公的研究事業により事業化したものである。

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一般社団法人 証券リサーチセンター
資本市場のエンジンである新興市場の企業情報の拡充を目的に、アナリスト・カバーが少なく、適正に評価されていない上場企業に対して、中立的な視点での調査・分析を通じ、作成されたレポートです。