オプテックスグループ(6914) 経営計画達成に向けた戦略
代表取締役社長 中島 達也 |
オプテックスグループ株式会社(6914) |
企業情報
市場 | 東証プライム市場 |
業種 | 電気機器(製造業) |
代表取締役社長 | 中島 達也 |
所在地 | 滋賀県大津市におの浜4-7-5 |
決算月 | 12月 |
HP | https://www.optexgroup.co.jp/ |
財務情報
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期純利益 |
総資産 |
純資産 |
ROA |
ROE |
56,372百万円 |
5,899百万円 |
6,258百万円 |
4,608百万円 |
67,127百万円 |
44,271百万円 |
9.6% |
11.1% |
*2023年12月期実績。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。ROAは総資産経常利益率。
目次
1.会社概要
2.トップインタビュー
3.課題・マテリアリティと取り組み
4.3ヵ年(2024-26年)の経営計画
5.財務・非財務データ
<参考>
(1)ESG Bridge Reportについて
(2)「ROESGモデル」 について
1.会社概要
世界シェア40%を誇る屋外用防犯センサーや世界シェア30%・国内シェア50%の自動ドアセンサーを中心に、環境関連製品等の製造・販売も手掛けるオプテックス株式会社(以下、オプテックス㈱)を中心とした持株会社。産業機器用センサー事業を手掛けるオプテックス・エフエー株式会社(以下、オプテックス・エフエー㈱)、画像処理用LED照明事業で世界シェアトップのシーシーエス株式会社(以下、シーシーエス㈱)、産業用コンピュータの開発・製造・販売で豊富な実績を有するサンリツオートメイション株式会社(以下、サンリツオートメイション㈱)、画像処理検査/計測装置・自動化機械装置の企画開発、製造販売を行い、ものづくり現場の品質向上に高い技術で貢献するミツテック株式会社(以下、ミツテック㈱)、各種システム及びアプリケーション・デジタルコンテンツ開発等を得意とする株式会社スリーエース(以下、㈱スリーエース)、グループ製品の製造を担うオプテックス・エムエフジー株式会社(以下、オプテックス・エムエフジー㈱)、光ファイバー侵入検知システムを手掛けるファイバーセンシス社(米国)、カメラ補助照明で50%の世界トップシェアを有するレイテック社(英国)等の有力子会社を有する。2023年12月末現在、海外28社を含む世界95拠点で事業を展開している。
オプテックス(株) | 防犯・自動ドア等、各種センサーの開発・販売 |
オプテックス・エフエー(株) | 光電センサー、変位センサー、産業用画像検査・計測装置の開発、販売 |
シーシーエス(株) | 画像処理用LED照明装置やシステムの開発、製造、販売 |
サンリツオートメイション(株) | 産業用コンピュータの開発・製造・販売 |
ミツテック(株) | 画像処理検査/計測装置・自動化機械装置の企画開発及び製造販売並びに保守サービス |
(株)スリーエース | 各種システム及びアプリケーション・デジタルコンテンツの開発 |
オプテックス・エムエフジー(株) | グループ製品の製造・電子機器受託生産サービス |
ジックオプテックス(株) | 汎用型光電センサーの開発、独SICK AG社とオプテックス・エフエー(株)の合弁会社 |
技研トラステム(株) | 客数情報システム、来場者計数装置等の開発、製造、販売 |
(株)ジーニック | 画像処理関連のIC、LSIの受託開発及びFAシステムの設計、販売 |
オーパルオプテックス(株) | アウトドアアクティビティ及び環境体験学習プログラムの運営 |
FIBER SENSYS INC.(米国) | 光ファイバー侵入検知システム等の開発、製造、販売 |
FARSIGHT SECURITY SERVICES LTD.(英国) | 遠隔画像監視による警備会社 |
RAYTEC LIMITED. (英国) | 監視カメラ用補助照明の開発、製造、販売 |
GARDASOFT VISION LIMITED(英国) | マシンビジョン用LED照明コントローラの開発、製造、販売 |
【1-1 沿革】
1979年5月、京都の防犯機器メーカーでセキュリティ用センサー開発に取り組んでいた小林徹氏(創業者、前取締役相談役)が「自分たちの作るものが世間でどこまで認められるか試してみたい」というチャレンジ精神からオプテックス㈱を設立。
同年11月には、「世界初の遠赤外線自動ドアセンサー」を開発した。当時の自動ドアはゴムマットの足踏み式が主流であり、遠赤外線利用の自動ドア用センサーは極めて画期的な製品。メンテナンスや施工対応力でも他社の追従を許さず、創業3年目には自動ドアセンサーでトップシェアを有するに至った(現在、国内シェア約50%)。
その後も独自のアイデアとそれを実現する技術力で、セキュリティ、自動ドア、産業機器向けに様々な製品を開発する。
1980年代には、海外にも進出。光などの外乱要因によって誤報しやすいため屋外には設置不可能と考えられていた遠赤外線センサーを独自技術によって利用可能とした屋外用赤外線センサー「VX-40」が欧州市場中心に高く評価され、屋外用侵入検知センサー世界シェアNo.1へと成長する。
業容の拡大を背景に1991年に店頭登録(JASDAQ上場に相当)。2001年の東証2部上場を経て、2003年には東証1部に指定替えとなった。
近年では、画像処理技術をコアとしたソリューションやハイエンド防犯システムの強化に取り組んでおり、2008年に画像処理関連のIC・LSIの受託開発等を手掛ける㈱ジーニックを子会社化。2010年には欧米各国の重要施設向けハイエンド防犯システム(光ファイバー侵入検知システム)で豊富な実績を持つファイバーセンシス社(米国)を、2012年には大型重要施設に設置されるハイエンド防犯システム向けのカメラ補助照明を手がけるレイテック社(英国)を、それぞれ子会社化した。
また2016年5月には画像処理用LED照明で世界シェアNo.1のシーシーエス㈱を子会社化(18年7月に完全子会社化)した。
次世代経営への移管やグループシナジーの追求を目指し、2017年1月1日付で持株会社体制へ移行。
2020年12月には産業用コンピュータシステムの開発・製造・販売で豊富な実績を有するサンリツオートメイション㈱を子会社化。更に2021年11月に画像処理検査/計測装置・自動化機械装置の企画開発、製造販売を行うミツテック㈱を子会社化。2022年4月に東京証券取引所の市場再編に伴い、新市場区分「東証プライム」に移行した。
3か年(2024-26年)の経営計画では、計画達成への施策としてビジネスモデルの変革やソリューション提案力強化を推進しており、グローバルニッチNo.1企業として更なる成長を目指している。
【1-2. 企業理念】
グループ企業理念 | 「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す!」
ベンチャースピリットとは、自らの行動を革新し、新しい事業創出に挑戦することで、世の中の発展に貢献しようとする志である。 |
行動指針 | 人と組織の能力・活力・効率を高め、グループ全体の企業価値を最大化する。
人と組織の価値観を互いに尊重し、多様性を企業活動の力にする。 人と組織の自律を促進し、社会に誇れる企業集団であり続ける。 |
2019年に創業40周年を迎えた同社であるが、ベンチャースピリットの発揮を最も重視する評価項目の一つとしており、同社最大の無形資産である人的資本強化のために、ベンチャースピリット醸成のための環境作りに取り組んでいる。
【1-3. 事業内容】
事業は、主力の防犯関連及び自動ドア関連などからなる「SS(センシングソリューション)事業」、産業機器用センサー、画像処理用LED照明装置、産業用コンピュータ、により製造ラインの自動化・省人化・効率化を図る「IA(インダストリアル・オートメーション)事業」、中国で電子機器受託生産サービスを提供する「EMS(エレクトロニクス・マニュファクチュアリング・サービス)事業」、アウトドアアクティビティ及び環境体験学習プログラムの運営及びアプリケーション・デジタルコンテンツの開発を手掛ける「その他事業」に分かれる。
事業セグメント |
事業内容 |
|
SS*事業 | 防犯関連 | 主な製品は、屋内外で使われる各種センサー、ワイヤレスセキュリティシステム、LED照明制御システム等。屋外用センサーでは、世界でもトップクラスのシェアを有している。 |
自動ドア関連 | 世界で初めて遠赤外線式自動ドア用センサーを開発した。
主な製品は、自動ドア開閉用センサー、工場向けシャッター用センサー、ワイヤレスタッチスイッチ、客数情報システム等。 |
|
社会・環境関連 | マイクロウエーブ技術を活用した車両検知センサー、水質計測機器、画像処理関連等の開発・販売 | |
IA*事業 | FA*関連 | 主な製品は、工場での生産ラインに使用される品質管理及び自動化のための光電センサー、変位センサー、画像センサー、LED照明等。国内では食品・医薬品業界を中心とした幅広い業界における生産ラインの品質管理に、海外では産業用センサーのトップシェアを誇るSICK AG社(独)との技術提携により、ヨーロッパ全域でOEM販売、自社ブランドでは国内・アジア・北米と幅広い地域で販売されている。 |
MVL*関連 | 画像処理用LED照明事業で世界でもトップクラスのシェアを有している。周辺機器、ソフトウェア関連企業などと連携し、「ベストソリューション」を提供。 | |
IPC*関連 | 産業用コンピュータの開発・製造・販売で豊富な実績を有する。産業用組み込みコンピュータの「ハードウェア」と「ソフトウェア」、その両方が必要となる装置・システムの開発を得意とする。 | |
MECT*関連 | 様々な産業分野向けの画像処理検査/計測装置、二次電池製造等の自動化機械装置の企画開発及び製造販売並びに保守サービスを手掛ける。 | |
EMS*事業 | 中国工場で展開する電子機器受託生産サービス | |
その他事業 | アウトドアアクティビティ及び環境体験学習プログラムの運営、アプリケーション・デジタルコンテンツの開発 |
*SS:Sensing Solution、IA:Industrial Automation、FA:Factory Automation、MVL:Machine Vision Lighting、IPC:Industrial PC 、MT:Mechatronics、EMS:Electronics Manufacturing Service
【1-4. 価値創造のフロー】
オプテックスグループは、創業以来の理念・ビジョン・存在意義をベースに、優れた人的資本を始めとする競争優位性を活かして7つの事業ドメインで独自性の高い製品を開発。
「ニッチグローバルNo.1企業」として世の中に「安全・安心・快適・効率化」といった価値を提供している。
【1-5. ESGに関する第3者評価】
①MSCI※ESG 格付け評価
同社は、2024年8月、MSCI※ESG 格付け評価において、「BBB」を獲得した。MSCI ESG 格付けは、世界中の数千社の企業を対象に、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)について総合的に評価し、業種別に比較して最上位「AAA」から最下位「CCC」までの7 段階で格付けされており、ESG 投資における世界的な評価指標とされている。
今回のレーティングでは、同社の「労務管理」、「コーポレートガバナンス」の取り組みにおいて改善が見られたことから、前年の「BB」から格付けが上昇した。
※MSCI : 米国・ニューヨークに拠点を置く金融サービス事業者。GPIF をはじめとした大規模公的年金や資産運用会社、ヘッジファンド等、世界中の機関投資家に対して、投資の意思決定をサポートする様々なツールを提供 している。
②CDP※気候変動レポート
同社は、英国に本部を置く国際的な非営利団体 CDP※が公表した「気候変動レポート 2023」において、8 段階評価の中、上位から 3 番目の「Bスコア」に認定された。本調査は、気候変動に対する目標設定や事業戦略、リスク・機会の認識、温室効果ガスの排出量の開示などの観点で企業の取り組みを 8 段階(A、A-、B、B-、C、C-、D、D-)で評価している。同社は、地球温暖化をはじめとする気候変動に関するリスクと機会を重要な経営課題と認識しており、2023年1月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」※への賛同を表明した。今後さらにTCFDのフレームワークに基づき、「ガバナンス」「戦略」「リスクマネジメント」「指標と目標」を含む項目について情報開示を進めるとともに、事業活動を通じた持続可能な社会の実現への貢献と新しい価値の提供を進めていく。
※ CDP:Carbon Disclosure Project。英国のロンドンに本部を置く 2000 年に設立された非営利団体)。環境問題に高い関心を持つ世界の機関投資家や主要購買企業の要請に基づき、主要国の民間企業や自治体 に対し気候変動対策、水資源保護、森林保全などの環境問題対策に関する情報開示を求め、分析・評価すること で、グローバルな環境課題に関する働きかけを主たる活動としている。2023 年は、世界の時価総額の 3 分の 2 を超える約 23,000 社が CDP を通じてデータを開示している。
※気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD):
G20の要請を受け、国際金融に関する監督業務を行う機関である金融安定理事会(FSB: Financial Stability Board)が2015年に設立したタスクフォース。2017年6月に公表された最終報告書では、企業から投資家への気候変動に関する情報開示の推奨や、開示の際の枠組みを提言している
2.トップインタビュー
オプテックスグループ㈱ 代表取締役社長 中島 達也氏に、同社の企業理念、競争優位性、ESGへの取り組み、ステークホルダーへのメッセージなどを伺った。
●企業理念、ビジョン、社会的存在意義について
Q:近年、社会全体が持続可能な成長を目指す中で、その重要なプレーヤーの一員である企業の理念、ビジョン、ミッション、社会的存在意義が重視されています。 先ずは御社の企業理念についてお聞かせください。
企業理念は、「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す!」です。
創業者が1979年に会社を設立した際、ゼロからスタートした会社が世の中に受け入れられるためには、既存製品の焼き直しではなく、全く新しいものや異なるものを提供し、世の中の役に立たなければならないと考えました。この想いが「世界初の遠赤外線自動ドアセンサー」をはじめとする独自性の高い製品開発や、国内外での高シェアに繋がりました。
2017年に持株会社体制に変更し、これを第二創業期と位置付け、もう一度原点に戻ろうということで、「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す」という企業理念を改めて掲げました。製品開発だけでなく、日々のルーチンワークにおいても新しいことに挑戦し、それによってさらに付加価値を高めていこうという創業時の想いを再び大切にしています。 |
代表取締役社長 中島 達也氏 |
Q:御社では「オプテックス流三方よし」という考え方も掲げておられますね。
近江商人の「三方よし」は、「売り手よし、買い手よし、世間よし」として広く知られています。商売において自分の利益を追求することは重要ですが、それだけではなく、売り手と買い手が満足し、さらに社会に貢献できてこそ良い商売と考えられています。
当社の事業においても、部品の仕入れや金型の発注において信用がなければ取引は成立しません。事業を持続的に拡大するためには、「モノを買う人が一番偉い」のではなく、買い手も売り手も同じ立場にあることが重要です。
当社グループでは、近江商人の「三方よし」を独自に解釈し、「オプテックス流三方よし:己よし、相手よし、世間よし(地球環境も含む)」として掲げています。まずは「相手」に喜んでいただくことを第一に考え、それが己(自社)の利益につながるという信条を創業以来大切にしています。
当社グループでは、「相手」には直接商品・サービスを提供するお客様だけでなく、仕入れ先や協力会社などの「サプライチェーン」も含まれます。「一緒に成長しましょう!」という姿勢です。さらに、「相手」には競合他社も含まれます。なぜなら、当社グループは常に独自性の高いアイデアや技術を追求しており、競合他社との切磋琢磨の中で他の誰も作っていない製品を創出することで、不毛な価格競争を避け、画期的な製品によって市場を広げることができるからです。これにより、お客様・ユーザーの選択肢が拡大し、「世間よし」の実現にもつながります。
また、当社が積極的に推し進めるM&Aにおいても、買い手(当社グループ)と売り手(例:シーシーエス、サンリツオートメイション、ミツテック等)がシナジー効果を発揮し、単なる製品販売だけでなくシステムソリューション販売を展開することで、お客様・ユーザーへの提案の幅が拡大し、「世間よし」につながると考えています
このように、あらゆるステークホルダーとの信頼関係を重視する「オプテックス流三方よし」の精神は、当社グループの土台を支える重要な考え方です。
Q:事業への取り組みの指針としての「ふとるビジネス」とはどんな考え方でしょうか。
「グローバルニッチNo.1」のセンサーメーカーとして目指してきたのが、「ふとるビジネス」です。これは、お客様の「不安」を「安心・安全」に、「不便」を「便利」に、「不満」を「満足」に変えること、つまり、私たちの開発・提供する製品やサービスによって、お客様の抱える全ての「不」を取り除くということです。
こうした「ふとるビジネス」によって快適性や効率性を提供し、社会に貢献することが、オプテックスグループとしての事業の目的だと考えています。ただ、当社グループは技術の会社ではありますが、お客様が求めているのは「問題の解決」であり、それを実現するのは必ずしも最新技術やハイテクである必要はありません。お客様が求めているのは何かという本質を常に見極めることが重要だと考えています。
このように、「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す!」、「オプテックス流三方よし」、「ふとるビジネス」が、創業以来の当社グループの企業文化・DNAです。
≪ふとるビジネスの具体的な製品紹介≫
① 屋外用防犯センサー
オプテックス㈱は「侵入される前に知らせる」屋外事前防犯の重要性にいち早く着目し、1996年に雨・太陽光・風など誤作動要因が多い屋外環境でも正確に作動する「屋外警戒用侵入検知センサーVX-40」を開発しました。
特に、欧州をはじめとした海外では、建物内部に侵入される前に侵入者を検知し通報する「事前防犯」が一般家庭に普及しつつあります。 住民の在宅・不在に関わらず不正侵入や犯罪が実行されるケースがあるため、早い段階で侵入者の存在を認知することで通報や自衛を行うことができ、安全を確保できます。 現在では高い信頼性を評価いただき、世界中の建物・施設に採用されており、同分野で世界シェア約40%を誇っています。 |
各種 屋外用防犯センサー(イメージ)
設置事例(イメージ)
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② 自動ドア用センサー
オプテックス㈱が提供する自動ドア用センサーは、より確実に人の動きを検知し、より安全に自動ドアをご利用いただくために活躍しています。
特に「eスムースセンサー」は、センサーと画像技術を用いて人の歩く速度や進む方向を読み取り、自動ドア前を横切る通行者による「無駄開き」を抑制できます。 必要な時だけドアが開閉するため、建物の空調効率を向上させ、電力消費量は従来の自動ドアセンサーに比べ約30%削減することができます。
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「eスムースセンサー」使用事例(イメージ)
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③ 自動ドア用非接触スイッチ
オプテックス㈱は衛生面やウイルス・細菌の感染リスク軽減に配慮したい場所に最適な非接触スイッチ「Clean Switch」を開発しました。
ドアノブやスイッチに直接触れることなく、手をかざすだけで扉の開閉が可能です。食品工場や医療施設などをはじめ、不特定多数の人が利用する公共施設や商業施設など衛生管理が必要な場所に最適です。
今後も非接触スイッチのラインアップの拡充によりあらゆる現場での衛生管理に貢献していきます。
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「非接触スイッチ」使用事例(イメージ)
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➃ FA用センサー
オプテックス・エフエー㈱のFA用センサーは、工場のモノづくりの製造工程で使用されています。 特に出荷台数世界ナンバーワンを誇る「印字検査用」の画像センサーは、包装上に印字された賞味・消費期限、ロット番号等を検査することで、食品ロスを低減し安全で安心な食品供給をバックアップしています。 2021年に日本食糧新聞社が主催する「日食優秀食品 機械賞」を受賞しました。食品表示法改正やトレーサビリティ強化等、食品業界の新しい印字検査ニーズに対応できる、非常に競争力の高い商品です。
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印字検査用画像センサー「GVS-OCR」(イメージ)
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⑤ 画像検査用LED照明
シーシーエス㈱の画像検査用LED照明は、工場のモノづくりの検査工程において、良品・不良品の判定を行うための検査対象物の撮像に使われます。 同社は業界のパイオニアであり、5万件以上の撮像実績、約1万機種以上の特注照明の設計・開発・製作を強みとしています。また国内14か所、海外15か所の実験施設を保有し、レンズやカメラ等の周辺商材を含む「トータルソリューション」提案がお客様から高い評価をいただいています。 |
画像検査用LED照明 使用事例(イメージ)
実験施設での提案の様子(イメージ)
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●ESGについての認識、考え方
Q:今伺った理念とESGの関係性についてお聞かせください。
近年、企業の成長には「ESG(環境・社会・ガバナンス)」の観点が不可欠と言われていますが、環境問題や社会問題も世の中に存在する「不」であると考えます。当社グループは創業時より、得意のセンシング技術を駆使して「安全・安心・快適」な社会や産業に貢献することを目標に事業を展開してきました。これは、先程申し上げたように、世の中に存在するさまざまな不安や不快、不便から「不」を取り除く仕事(=ふとるビジネス)の拡大でした。
その意味では、引き続きこの「ふとるビジネス」を推進することが、環境問題や社会問題の解決に寄与し、各事業の拡大や企業価値の向上にも繋がると確信しています。
また、「オプテックス流三方よし」も、多様なステークホルダーとの関係構築を目指すという意味で、当社グループならではのESGに対する姿勢を表したものと考えています。
(同社ウェブサイト_サステナビリティ_ステークホルダーの皆様へより) https://www.optexgroup.co.jp/esg/stakeholder.html
社会的課題を解決する「ソリューション企業」として、世の中へさらなる価値提供を目指す
私たちオプテックスグループは、創業時より世の中に存在する「不安」を「安心・安全」に、「不便」を「便利」に、「不満」を「満足」に変える仕事(=ふとるビジネス)をキーワードに、お客様の課題解決に貢献してまいりました。
これは英語の「Sustainability」の基となる「sustain」が意味する「(安心・便利・満足な社会を)下から掴んで支える」と同意で、さまざまな社会的課題を解決するソリューション企業としてのオプテックスグループの考えと合致しています。
多くの社会的課題に対して、当社グループでは、気候変動対応を含めた環境問題への取り組み、多様性の尊重、少子高齢化に伴う人口減少に対する製造現場での生産性向上の3つを優先的に取り組むべき経営課題と位置づけております。
まず、気候変動対応を含めた環境問題への取り組みにつきましては、環境に配慮した事業運営をベースに、当社グループの強みである、省電力で環境負荷が少ない製品の提供を通じた社会貢献を行ってまいります。
次に多様性の尊重につきましては、創業時から、役職名を使わず「さん」で呼び合う、「さん」付け文化が根付いており、このようなフラットな社風は私たちの財産であると考えています。これに加え、「会社は自己実現の舞台」という考えのもと、従業員の働く環境の整備や女性の活躍、従業員の教育など、人への投資を更に進めていくことが重要と考えています。
少子高齢化に伴う労働人口の減少への対応につきましては、世の中のモノづくりの自動化および高度化に貢献する製品やサービスを提供することで、社会の持続可能性の向上に貢献してまいります。
当社グループが社会的課題の解決で創出した付加価値を数値化したものが利益であり、お客様に認めていただいたこの利益こそが、持続可能な社会での当社グループの存在価値と考えています。
これからも、創業時からの基本姿勢を大切に、社会的価値と経済的価値を両立させた持続的な成長により、ステークホルダーの皆様と共に未来を築いてまいります。
●特徴・強み・競争優位性
Q:御社の特徴や強み、競争優位性はどんな点でしょうか。
当社グループは、センシング技術に加え、照明技術やさまざまな要素技術を取り入れ、変化や状態を「見る」、見えないものを「視る」、観察し判断する「観る」を包含した「見る」技術を進化させ、多様化するお客様に価値ある提案を行い、ソリューションを提供してきました。確実で安定したセンシングの実現には、複数の要素技術とノウハウ、そして物理的変化を制御する「アルゴリズム」が不可欠です。
こうした用途に適した技術・ノウハウと独自のセンシングアルゴリズムが当社グループの大きな強みであり、競争優位性となっています。それが主にSS事業の各製品分野で高いシェアを実現し、当社グループのブランド力にも繋がっていると考えています。こうした技術・ノウハウの蓄積には「本質的に要求されていることは何か」を追求する姿勢が極めて重要です。
例えば、オプテックス㈱では、顧客の視点に立った発想でのモノづくりを重視し、永年受け継がれてきた開発のフィロソフィーを「オプテックスのかたち」として掲げています。また、「高い信頼性」と顧客の要求を満たす「性能」を実現するために、さまざまな製品評価テストを実施しています。
当社グループのセンサーが利用される屋外環境では、雨や風、気温の変化、雷、小動物など、日々想定外の現象が多くの影響を与えますが、信頼性の高いセンサーを作り上げるには、そうした現象を一つ一つクリアすることが必要です。また、販売する世界各国によって異なる法令や公的規格に準拠した製品づくりも不可欠であり、そのために数多くの製品評価テストの実施が重要となります。
こうした取り組みは大変地道なものですが、簡単に真似できるものではありません。ニッチ分野において、一つの事柄を長くかつ深く掘り下げてきたことが、目には見えない強力な参入障壁の構築に繋がっています。
このように、当社グループはお客様の使用方法や環境を知り尽くし、愚直なまでに一つ一つ問題を解決しようとする中で、新たなアイデアを生み出し、結果として他社が追随できない付加価値の高い事業に仕上げることができる点が大きな強みです。さまざまな環境やシーンにおいて、センシング性能が発揮できるかを実際に現地に出向いて実験を行ったり、同様の環境を作って評価テストを実施したりしており、そうした地道な活動によって的確な性能評価を行うことができる点が当社グループの競争力となっています。今後も、一つの事柄を長くかつ深く掘り下げることで競争力をさらに強化していきます。
一方で、さまざまな製品を送り出してはいますが、世界的に高く評価され、高シェアを実現している屋外用防犯センサーのような製品が新たに生まれていない、つまり新製品売上高比率の伸びが課題であるとも認識しています。これは、企業規模が大きくなるに伴い製品の幅が広がり、全く新しい製品の開発と既存製品の維持・改良が混在し、どちらかと言えば後者にウェイトがかかっている点に起因しており、もっとチャレンジが必要であると考えています。
そこで、そうした状況を打破し、各事業会社に自社の専門分野をもっと深く掘り下げてもらう狙いもあり、2017年に持株会社体制に移行しました。各社とも全体最適ではなく個別最適で、幅ではなく深さを意識して製品開発に取り組んでおり、各事業会社のやるべきことは非常に明確になってきましたので、新しいものがこれからもっと出てくると思います。そうした中、今後は持株会社としてのリーダーシップを一層発揮・強化する必要があると考えています。
●主要マテリアリティにおける
取り組み
Q:今回御社では16のマテリアリティを選定しています。(「3.課題・マテリアリティと取り組み」参照)
このうち、御社の持続的成長にとって特に重要なマテリアリティについて社長のお考えを伺いたいと思います。
最初は、「人的資本」についてです。従業員の働き甲斐醸成、教育・育成制度、多様性を尊重する企業文化などについてお聞かせください。
環境課題への対応、AIを始めとしたテクノロジーの急速な進化、ステークホルダーとの関係など、企業を取り巻く環境は大きな変化を迎えています。企業がこうした変化に対応しながら持続的に企業価値を高めていくためには、イノベーションや付加価値を生み出す人材の確保・育成、組織の構築など、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことが求められています。
当社グループは創業以来、社員の成長が会社の成長に繋がるとの想いから、社員が生き生きと活躍できる環境づくりに力を入れてきましたが、今後はより一層、環境整備と人的資本強化に注力していく考えです。
米国の心理学者アブラハム・マズローが「欲求5段階説」において、人として最も高次元な欲求は「自己実現の欲求」であると唱えているように、人間が何によって動かされるかというモチベーションは、自分でやりたいことがあり、それが実現できて、褒められ、評価されることだと思います。そうしたことから、当社グループは創業以来、「世界一、自己実現ができる会社でありたい」、そのために「会社とは、従業員にとっての舞台である」と考えています。その舞台でどう演じるか、どう踊るかは「主役」である社員一人一人次第ですので、ぜひ会社を舞台に自分の夢を実現して欲しいと思っています。
もちろん仕事のやりがいには報酬も重要な要素ですが、それだけではありません。そのため、マネジメントは社員がどんな夢を持ち、どんなことをやりたいかをヒアリングし、それが実現できるようにサポートするよう努めています。
当社グループにおける評価基準についてもお話ししましょう。当社グループで一番評価される人は「チャレンジをして成功した人」です。二番目は「チャレンジをして失敗した人」、三番目は「チャレンジをサポートした人」で、評価が一番低い人は「チャレンジをしない人」です。この結果だけでなくプロセスを重視する姿勢も、創業以来大切にしてきたオプテックスグループの経営哲学の一つです。
また、当社グループでは「多様性の尊重」にも重きを置いています。「多様な選択肢こそが豊かな社会の証し」との考え方の下、製品開発を通じた社会の多様性に貢献することがオプテックスグループの役割であると考えており、「オプテックス流三方よし」の相手に競合他社を含めているのも、多様性重視の表れです。
もちろん、社員一人ひとりの多様性も尊重しており、そのうえで各自が主体性を発揮し、常に挑戦を続けてもらいたいと思っています。こうした社員の「自己実現」や「チャレンジ」をサポートするために、様々な制度を設けており、社員が持つ能力を最大限発揮できる企業風土づくりを通じて、競争力をさらに高めていこうと考えています。
私は国内外の企業を経験し、当社が4社目となりますが、当社の多様性を尊重する文化、オープンでフラットな組織風土は素晴らしいと感じています。高収入・好待遇もモチベーションを上げますが、最も成果が上がるのは自分のやりがいが強く感じられる環境を得たときであると私も経験しています。ですので、こうした文化、風土を大切にしながら、当社社員の自己実現、成長、働きがい醸成に向けて、今まで以上に人的資本強化に取り組んでいきたいと考えています。
具体的な取り組みとして、働きやすい環境づくりのための健康経営の推進が挙げられます。当社グループでは、オプテックス㈱が3年連続、オプテックス・エフエー㈱が5年連続で健康経営優良法人に認定されました。今後は、大規模法人部門認定法人の中で上位500法人にあたるホワイト500を目指します。また、両社以外の事業会社においても、社員の健康に十分配慮した職場環境づくりに取り組んで参ります。
さらに、社員の成長・育成のための「OFF-JT」の導入も効果的と考えています。現在、多くの日本企業では社員教育の柱をOJTとしています。OJTは阿吽の呼吸やノウハウを共有するには最適でコストも安いというメリットがあります。ただし、リーダーシップの醸成、マネジメント能力の育成といった観点からはOJTのみでなく、外部講師を招いたり、集中して課題解決に取り組んだりといった専門のプログラムを実施する「OFF-JT」や、「人財」としての成長と社員のリスキリングをサポートする教育プランの充実が必要になってきます。OJTとOFF-JTのそれぞれの良い面を有機的に結びつけた、効果的な人財育成を今後の課題に据えていきたいですね。
Q:「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す!」とのビジョンの実践について具体的な取り組みをお話しください。
社内ベンチャーの立ち上げに向け、若手・中堅社員によるアイデア提案のプログラムを定期的に実施しています。
提案に対し経営層で協議を行い、有望なものに対しては予算を付けて、提案者を新規ビジネスの責任者として事業化に着手しています。新規ビジネスに関してはここ10年種を蒔いているものの、小粒な案件が多い点は課題ですが、これからも社内ベンチャー制度を利用し、水撒きを続けて花を咲かせていきたいと考えています。
Q:環境課題における取り組み、GHG(温室効果ガス)削減、安全な水の確保についてはどうお考えですか。
持続可能な社会を目指すうえで、地球環境保全に向けた気候変動問題の解決は国際的な重要課題です。
「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える」「世界の温室効果ガス(GHG)排出量をピークアウトさせ、21世紀後半には、GHG排出量と吸収量のバランスをとる」の2つを 世界共通の長期目標とした2015年のパリ協定を批准した日本政府も「2030年 GHG排出量 2013年比46%削減」「2050年 カーボンニュートラル実現」を宣言しています。
脱炭素社会への移行は、地球環境の保護を企業の社会的責任の一つと認識している当社にとっても責任をもって取り組むべき重要な課題であると考えています。
GHG削減については、当社グループでは、主に小型のセンサー、及びソフトウェアの開発・販売を行っているため、一般的なメーカーに比べて環境負荷は低いと言えますが、当社の事業活動におけるCO2排出量を削減していくことに加え、センサーで人や物を検知し必要なときだけ機械やシステムを動かしたり、センサーを利用して工場ラインの効率化・高品質化に貢献したりするなど、GHG排出量削減につながる製品を使用いただくことでお客様におけるGHG削減にも貢献しています。
現在、多くのお客様にご活用いただけているのは、経済性と環境性能が両立するためと認識しており、当社グループの製品による温室効果ガス排出削減は、今後も拡大することとなるでしょう。
また、当社グループではセンサーを利用した水質測定器を以前から手掛けてきましたが、これを発展させた簡易水質測定機器・システム「WATER it」は、水質測定にかかる手間や時間、コストを大幅に削減することができるもので、今後は世界的な課題である「安全な水の確保」へも製品供給を通じて貢献していきたいと考えています。
なお、プライム市場の上場企業である当社は、地球温暖化をはじめとする気候変動に関するリスクと機会を重要な経営課題と認識しており、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」のフレームワークに基づいた、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標・目標」を含む項目についての情報開示を開始しました。TCFDは2024年度中に解散することとなっていますが、引き続き今後のサステナビリティ開示基準の中心となるISSB基準に対応した開示を実施し、事業活動を通じた持続可能な社会の実現への貢献と新しい価値の提供を進めてまいります。
また、当社および主要事業会社のオプテックス㈱は、2022年度から環境情報開示を推進するNGO「CDP※」からの質問書に回答しています。
※ CDP:Carbon Disclosure Project。英国のロンドンに本部を置く 2000 年に設立された非営利団体)。環境問題に高い関心を持つ世界の機関投資家や主要購買企業の要請に基づき、主要国の民間企業や自治体 に対し気候変動対策、水資源保護、森林保全などの環境問題対策に関する情報開示を求め、分析・評価すること で、グローバルな環境課題に関する働きかけを主たる活動としている。2023 年は、世界の時価総額の 3 分の 2 を超える約 23,000 社が CDP を通じてデータを開示している。
Q:コーポレートガバナンスについてのお考え、取り組みをお聞かせください。
当社グループが創業時から大事にしてきたこととして、「どんなことでも自由にディスカッションをしていこう」という点が挙げられます。
物事を隠さず、本質的に正しいかどうかというディスカッションを常に行うことのできる風通しの良い会社にしたいという想いは今も変わりません。
オープンでフラット、多様性を尊重する当社グループは、国内外で子会社の数が増加し、事業規模も拡大する中、経営の透明性向上と、公正かつ迅速な意思決定を伴う経営システムの維持及び経営監視の強化を目指し、2016年に監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行しました。
現在、取締役・監査等委員8名中、3分の1以上の4名が独立社外取締役で、2名が女性の社外取締役。女性比率は25%となっています。東京証券取引所が示している「2030年までに、女性役員の比率を30%以上とすることを目指す」という数値目標を念頭に、今後も、より一層多様性を重視したコーポレートガバナンス体制の構築を進めていきたいと思います。
●「3ヵ年(2024-26年)の経営計画
」※について
Q:次に、「3ヵ年(2024-26年)の経営計画」のポイントについてお聞かせください。
当社は、「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す!」とのグループ企業理念の下、2026年「営業利益100億円以上、営業利益率15%」を目指しています。
計画達成に向けた戦略として、「既存事業の成長」「M&A先の成長」「M&A先とのシナジー」の3点を掲げています。
「既存事業の成長」では、SS事業(防犯関連)、SS事業(自動ドア関連)、IA事業(FA関連)、IA事業(MVL関連)とも、「センサー販売主体の「モノ売り」から、お客様課題を解決する「ソリューション提供型事業(=コト売り)」への転換、システムソリューションの提供に注力して参ります。
「M&A先の成長」では、直近で子会社化したサンリツオートメイション㈱、ミツテック㈱ともその優位性や特徴を活かし、良好な市場環境の下での本業拡大を目指します。
「M&A先とのシナジー」においては、この2社及びシーシーエス㈱も含めたグループ全体で大きなシナジーを産み出してまいります。2018年に完全子会社化したシーシーエス㈱とは顧客基盤の共有などシナジーが拡大しつつあり、収益拡大に向け今後も更に大きく寄与するものと考えています。
※.詳細は「4.3ヵ年(2024-26年)の経営計画」参照
●今後の課題
Q:ニッチナンバーワンを掲げ、製品開発に取り組んでおられますが、今後さらに競争力を強化するために何が必要でしょうか。
SS事業のオプテックス㈱においては、お客様の視点に立った発想でのモノづくりを徹底しています。また、すべての製品に絶対的な価値を与える「信頼性」とお客様の要求を満たす「性能」を実現するために、さまざまな製品評価テストを実施しています。一つ一つが地道な取り組みの積み重ねですが、これらかもお客様視点を一層重視して開発・評価を重ねていくことが、競争力の強化に繋がると考えています。
IA事業(FA関連)のオプテックス・エフエー㈱では、大手企業が先行して開拓してきた工場の自動化・省人化センサー市場において、こちらもオプテックス㈱同様、お客様視点で物足りないものや、もっと改善できる余地のあるものを注意深く見つけ出し、製品化するという開発パターンが確立しています。
大手企業が取り扱わない、あるいは参入できないエリアで、ノイズ対策技術やセンシングアルゴリズムといった当社の技術を活かして付加価値の高い製品を生み出しており、お客様にとって当社は「替えのきかない会社」として重宝されています。
お客様の声を丹念に拾い続けるため、ダイレクトマーケティングを徹底して行っており、営業のみでなく開発スタッフも営業同行の件数をターゲットとして設定しています。
近年急速に売上が拡大している「変位センサー」「温度センサー」はそうしたプロセスで生み出した製品カテゴリーです。
また、オプテックス・エフエー㈱はまだまだ小さな会社ですが、我々にはドイツのSICK社という大変心強いパートナーがいます。
ヨーロッパやアメリカの市場情報の入手やそれを基にした共同開発など、日本の大手企業がアプローチできない分野での製品開発が可能な点も、我々の大きな優位性であると考えています。
Q:ここ数年、M&Aを積極的に展開していますが、どのようにしてシナジーを発現させていきますか。
インダストリアル・オートメーション(IA事業)の分野では、オプテックス・エフエー㈱とシーシーエス㈱は緊密に連携しており、その結果、お客様は多くの選択肢の中からベストのソリューションを選ぶことができます。
また、ミツテック㈱は自動化装置を手掛けていますので、その装置に付けるセンサーや照明を自社グループから調達できるのは大きなメリットです。更に同社では外観検査装置も手掛けていますので、我々の今までの研究を活かした提案も可能です。
さらに、IA事業ではクロスプロモーションを強化しています。
サンリツオートメイション㈱、ミツテック㈱とも世界的な大企業との太いパイプを持っていますので、このパイプを活かした案件が大きく増加しています。
加えて、IA事業とSS事業のシナジーは、サンリツオートメイション㈱とオプテックス㈱でAIを利用した重要施設向け遠隔監視カメラのシステムの共同開発を進めています。
Q:海外市場でのシェア拡大が課題であるとのことですが、現状及び今後の取り組みについてお聞かせください。
現在の稼ぎ頭であるインダストリアル・オートメーション一つをとっても、オプテックス・エフエー㈱の米国市場でのシェアはまだ低く、国内市場でトップシェアを有するシーシーエス㈱も中国でのシェア拡大余地は大きいと考えます。
伸びしろの大きい海外市場をいかに開拓していくかも、海外経験の長い私に課せられた社長としてのミッションです。
防犯機器も、FA用機器も代理店経由での販売拡大は難しい商材ですので、数年前から各々ダイレクトマーケティング、ダイレクトセールスを開始しています。
防犯関連については、これらの戦略が奏功し、インフラなど大型重要施設向けで高収益製品である「レーザースキャンセンサー」の売上が大幅に伸長しています。
自動ドア関連では、ドアの無駄な開閉を制御し、「空気流出」による建物のエネルギーロスを削減し、環境貢献に繋がる高機能自動ドアセンサーの普及に努めます。近年、世界的に省エネや自然エネルギーの活用を積極的に行うZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を目指した環境設計が求められており、日本の経済産業省も「2030年までに新築建築物の平均でZEBの実現を目指す」とする政策目標が掲げられています。
インダストリアル・オートメーションでは、2018年に設立した現地法人OPTEX FA INC.による直販体制が徐々にではありますが実を結びつつあります。
こちらについては、今後も徹底してダイレクトセールスによる売上拡大と収益性向上を追求していきます。
ダイレクトセールスを強化・拡大するためには、日本からの人員派遣も行いますが、やはりローカルのマネージャーの育成と彼らの活躍が欠かせません。そうした意味でも、当社の企業理念を海外でも浸透させることが重要であり、ミッション、ビジョンの発信を一層強化していく考えです。
Q:中国の自社工場やベトナムの生産委託先での労使関係や管理体制はどのようになっていますか?
中国、ベトナム工場における現在の労使関係は良好です。特に、中国工場では福利厚生の充実に力を入れています。勤続年数に応じた表彰、社員旅行、季節ごとの行事開催(運動会・新年会・誕生会)、社員寮、学童保育の充実、休暇制度などを準備しており、社員には非常に好意的に受け止められています。
なお、近年、海外生産拠点での強制労働や児童労働などが問題となっていますが、中国工場や、ベトナムの生産委託先においては労働法や未成年者保護法によって児童労働や強制労働が法的に禁止されています。当社ではこれらの法に従い、採用時の面接で身分証の提示を求めており、16歳未満の採用は行っておりません。また、各国の法律の遵守により、強制労働などの不法労働はありません。
当社グループは、「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す」ことを企業理念とし、創業以来、法令遵守はもとより、「オプテックスグループ行動規範」に基づき、企業として人権を尊重する重要性を認識し、高い倫理観に基づき行動するよう努めています。持続的な事業活動の前提であるすべての人々に対する人権尊重の姿勢は、当社の社会的責任の一環であると認識しています。そして、「国際人権章典」および国際労働機関の「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」等に挙げられる国際的に承認された人権を支持しています。
グループ人権方針の詳細については以下のwebサイトに掲載しております。
・グループ人権方針 → https://www.optexgroup.co.jp/esg/human-rights.html
●資本コストや株価を意識した経営の
実現について
Q:東京証券取引所が要請している「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」については、どのようにお考えですか。
当社は、持続的な成長に向けて、損益計算書上の売上や利益だけではなく、バランスシートを基にした資本コストや資本収益性の改善を重要な経営課題の一つと認識しており、目標とする経営指標として「自己資本当期純利益率(ROE) 10%以上」を掲げております。現在、当社は自社の株主資本コストを7%前後(6~8%)と推計しており、株主・投資家が求める期待リターンを上回る資本収益性を実現できていると認識しておりますが、今後さらなる収益性の改善が必要であると考えております。
なお、東京証券取引所が推進する「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」については、取締役会で具体的な取組み等を充分に検討したうえで、2025年スタートの3ヵ年経営計画策定に整合させた内容で、2025年2月頃の開示を予定しております。
●ステークホルダーへのメッセージ
Q:様々なポイントについてお話しいただきありがとうございました。最後にステークホルダーへのメッセージをお願いいたします。
当社グループは1979年の創業時から「ベンチャースピリットの発揮」「オプテックス流三方よし」「ふとるビジネスの拡大」を基本理念に事業拡大に努めてまいりましたが、これらはまさに持続可能な社会を構築するために企業が取り組むべき「ESG経営」そのものではないかと考えています。
これら基本理念をベースに各事業で生み出す製品やサービスが世の中やお客様に「安全・安心・快適・効率」を提供する、これこそが当社グループの果たす役割であり、社会的な存在意義です。
私は途中からの入社ではありますが、これまでの知識・経験・ノウハウを活かして事業を拡大することを通じて環境と社会に大きく貢献できることに大きなやりがいと喜びを感じています。
新しいビジネスの創出、海外市場の本格的な開拓などによる成長を実現して企業価値の最大化と社会課題解決を追求して参りますので、ステークホルダーの皆様におかれましては引き続き温かいご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
3.課題・マテリアリティと取り組み
サステナビリティ実現に向け、オプテックスグループが現状認識している課題・マテリアリティは以下のとおりである。
マテリアリティの選定に際しては、社外へのヒアリングも行っている。
課題 |
マテリアリティ |
環境 | 温室効果ガス排出抑制 |
安全な水の確保 | |
再生可能エネルギーの利用 | |
社会資本 | 製品の品質・安全性の担保 |
安全なデータ管理 | |
地理的資本の活用/地域社会との連携 | |
人的資本 | 従業員の働き甲斐醸成 |
教育・育成制度 | |
多様性を尊重する企業文化 | |
従業員の健康・安全 | |
ビジネスモデル&イノベーション | ビジネスモデルの変革 |
適切なサプライチェーン管理 | |
原材料・部品調達 | |
競争力・ガバナンス | 競争力強化に向けた研究/製品開発体制 |
コーポレートガバナンス体制の拡充 | |
リスク管理 |
*SASB Materiality Mapなどを参考に作成。
【サステナビリティについて】
同社グループは、創業時より得意のセンシング技術を駆使して「安全・安心・快適」な社会や産業に貢献していくことを目標に事業を展開してきた。世の中に存在するさまざまな不安や不快、不便から「不」を取り除く仕事(=ふとるビジネス)を拡大させることで、「グローバルニッチNo.1」のセンサーメーカーを目指している。
今後もこの「ふとるビジネス」を推進することにより、環境問題や社会問題の解決に貢献すると同時に、各事業の拡大、企業価値の向上に繋げていくことができるものと確信している。
その上で、同社グループでは以下のサステナビリティ基本方針を策定し、この方針に基づく活動を推進することで、社会の持続的な発展への貢献と企業価値の向上を目指していく。
<サステナビリティ基本方針>
・あらゆるステークホルダーとの関係を強化し、社会の持続可能な成長に貢献します。
・環境に配慮した製品の供給を通じて、循環型事業経営を実現することを目指します。
・社員のエンゲージメント向上を通して、グループ各社の持続的な成長と発展を目指します。
同社グループでは、代表取締役社長を委員長とする「グループコンプライアンス推進委員会(1年に2回以上開催)」を取締役会の直轄組織として設置し、気候変動リスクを含めたサステナビリティに関する重要課題を審議している。
また、同委員会は審議内容を取締役会へ上程し、取締役会での審議を経てグループ各社へ展開している。
気候変動対応に関する具体的な取り組みとしては、TCFDへの賛同を表明したほか、2023年からは、グループコンプライアンス推進委員会の下部組織として、「気候変動対応分科会」を組成した。
同分科会では、温室効果ガスの測定、再生可能エネルギーの活用などによる削減策の検討、実施およびTCFDのフレームワークに基づいた情報開示を行うことで、企業の社会的責任を果たしていくことを方針としている。
また、2024年からはサステナビリティ推進部門を設置し、モニタリング機能を強化することで、さらに気候変動対応を含めたサステナビリティ活動の実効性を高めていく。
(同社ウェブサイトより)
【3‐1 「環境」課題における
マテリアリティ】
(1)基本的な認識
同社グループはセンサー(防犯用、自動ドア用、産業機器用)や工場での検査用LED照明、およびソフトウェアの開発・製造・販売を行っている。
また、地球環境の保護を企業の社会的責任の一つと認識し、全従業員に「オプテックスグループ行動規範」の周知を図り、環境関連の各種法令や規格などを遵守し、環境に配慮した事業運営を行っている。
気候変動は世界各地域で進行しており、今後さらに深刻化することが予測されている。
同社では、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)ガイダンスを踏まえた上で、様々な外部シナリオを使用して分析を行い、事業における気候関連のリスクと機会から戦略面での重大な影響を特定している。
– 炭素税、市場規制の強化による財務的コストの増大
– 異常気象の増加によって製造工場が洪水の危険にさらされた場合の事業に対する影響
– CO2削減活動及び気候関連情報開示が不十分と判断された場合の事業に対する影響
– 低炭素や物理リスク対策に寄与する製品や技術の貢献の影響
これらの影響を踏まえ、気候変動対応として「2030年までに2019年度比CO2排出量(スコープ1・2)を30%以上削減する」という中期目標を設定し、中長期の経営計画に反映している。
目標実現に向けた確実な推進を図るため、最高経営責任者直轄のプロジェクト発足を含め、低炭素で持続可能な未来に必要な行動と投資を活発化させている。
同社は、顧客先での低炭素化やエネルギー効率改善につながる製品(他者貢献製品)を数多く提供しており、これら製品により「削減貢献量を増やすこと」と「事業運営で排出するCO2を減らすこと」の両立を図ることが企業価値向上につながると考えている。
(2)気候変動に関する情報開示についての取組
地球温暖化をはじめとする気候変動に関するリスクと機会を重要な経営課題と認識しており、2023年1月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」への賛同を表明した。
TCFDは2024年度中に解散することとなっているが、引き続き今後のサステナビリティ開示基準の中心となるISSB基準に対応し、「ガバナンス」「戦略」「リスクマネジメント」「指標と目標」を含む項目について情報開示を進めるとともに、事業活動を通じた持続可能な社会の実現への貢献と新しい価値の提供を進めていく。
◎ガバナンス
前述のように、代表取締役社長を委員長とする「グループコンプライアンス推進委員会(1年に2回以上開催)」を取締役会の直轄組織として設置し、気候変動リスクを含めたサステナビリティに関する重要課題を審議している。
また、同委員会は審議内容を取締役会へ上程し、取締役会での審議を経てグループ各社へ展開している。
気候変動対応に関する具体的な取り組みとしては、2023年からは、グループコンプライアンス推進委員会の下部組織として、「気候変動対応分科会」を組成した。
同分科会では、温室効果ガスの測定、再生可能エネルギーの活用などによる削減策の検討、実施および国際基準のフレームワークに基づいた情報開示を行うことで、企業の社会的責任を果たしていく。
2024年からはサステナビリティ推進部門を設置し、モニタリング機能を強化することで、さらに気候変動対応を含めたサステナビリティ活動の実効性を高めていく。
◎戦略
年々深刻化する気候変動を受けた世界的なカーボンプライシングの加速や再生エネルギーへの関心の高まり、EV(電気自動車)へのシフトなど、同社グループの事業を取り巻く状況は著しく変化しており、これらへの対応は喫緊の課題となっている。
同社グループは、こうした外的変化が事業に与える影響を多角的に予測するべく、国際基準のリスクシナリオを参考に、各シナリオの前提において想定される事業リスクや機会、対応策を検討した。
具体的には1.5℃シナリオ、2℃シナリオ、4℃シナリオの3つを選定している。
シナリオ |
詳細 |
国際基準 |
1.5℃シナリオ | 産業革命以前と比較して気温上昇を1.5℃未満に抑え、2050年にネットゼロCO2排出を達成 | IEA NZE2050 |
2℃シナリオ | 早急に世界が対策を講じ、気温上昇を2℃未満に抑えた場合 | RCP2.6 |
4℃シナリオ | このまま温室効果ガス排出が増え続け、気温変動が激しくなる場合 | RCP8.5 |
(同社ウェブサイトより)
*リスクと機会
環境情報開示の国際基準の1つであるCDP気候変動質問書の「リスクと機会」の項目に沿って、国内外のグループ各社で想定されるリスクと機会を特定した。
同社および主要事業会社のオプテックス㈱は、2022年度から環境分野に取り組む国際的なNGOである「CDP」からの調査に回答している。2022年度、2023年度とも、気候変動質問書へ回答した。CDPは企業への環境に係る質問書送付及びその結果を取りまとめ、共通の尺度で分析・評価している。
主な内容として、財務上の潜在的影響額、リスク対応や機会の実現にかかる費用などを算出し、時間軸は短期(1~3年)、中期(3~9年)、長期(9年以上)で分類した。
また、事象の発生確率と影響度をそれぞれ3段階で評価し、この2つのスコアを掛け合わせ、重要性を大・中・小の3段階で算定した。各事象の重要性を踏まえ、それぞれのリスクと機会への対応策を同社グループで検討した。
主なリスク |
対応 |
重要性 |
|
① | 再生可能エネルギーへの切り替え加速による、間接費の増加 | ・温室効果ガス排出量算定と削減活動の推進
・一部社用車をHV/PHEV/BEVへ切替 ・オフィス照明の省エネ化 |
小 |
② | 炭素税導入による部品および原材料のコスト増加 | ・サプライヤー、顧客との相互協調によるサプライチェーン全体の再エネ活用比率拡大
・原材料費高騰に備え、製造コスト低減、計画的な設計変更による原価低減 |
中 |
③ | 環境取り組みと訴求の不足によるステークホルダー・消費者からの不支持 | ・気候変動対応の積極的な推進と外部への発信(TCFD提言に基づく情報開示、CDP気候変動質問書への実施内容反映等)
・CO2削減目標の策定および取り組みの推進 |
大 |
④ | 猛暑日の増加による熱中症リスク増加 | ・オフィス、生産拠点の空調設備改善
・環境体験学習施設への給水器設置 |
中 |
⑤ | 自然災害による自社工場の稼働停止、従業員のアクセスの寸断 | ・BCP対策の強化、防水工事
・生産拠点の分散化 |
小 |
主な機会 |
対応 |
重要性 |
|
① | 低炭素排出量製品の需要拡大 | ・環境配慮型製品の開発・販売・サービスの推進
(空調効率に配慮した自動ドアセンサー、AIを活用した外観検査ソリューション、自動化に貢献する産業用センサー) |
大 |
② | 省エネ製品の要求加速 | ・軽量化、消費電力削減製品の開発、販売強化
・生産性向上に繋がる高性能製品の拡販 |
中 |
③ | EV電池の需要拡大による新市場への参入 | ・EV市場への新製品投入
・EV電池製造装置の拡販 |
大 |
④ | 再エネ製品(太陽光パネル、EV電池等)の需要拡大による高精度な検査の需要拡大 | ・工場自動化用センサー・画像検査用LED照明の拡販 |
中 |
⑤ | 豪雨の慢性化による防災対策関連の需要拡大 | ・冠水モニタリングシステム、災害予知保全システム、災害時点検用ロボットなどの開発、拡販 |
中 |
(同社ウェブサイトより)
※事象の発生確率と影響度を基に、重要性を大・中・小の3段階で評価し、マップに反映。 |
(同社ウェブサイトより)
◎リスクマネジメント
取締役会の管理・監督の下、グループの横断的なリスク管理体制として、代表取締役社長が委員長を務める「グループコンプライアンス推進委員会」を設置し、気候関連を含めた事業に関わるリスクマネジメントを推進および統括している。
グループコンプライアンス推進委員会は、1年に2回以上、リスクの特定と評価を実施したうえ、必要に応じてリスクマネジメントの包括的な見直しを行っている。また、特定したリスクと評価の結果は「リスクマップ」に明記し、対応方針と合わせて取締役会に諮った上で全グループに展開している。
◎指標と目標
中長期目標として2030年度までにCO2排出量(スコープ1・2)を30%以上削減(2019年度比)することを定めている。この目標達成のために、従業員の理解と意識向上に向けた取り組みをはじめ、自社の設備や運用の見直しによる排出量の削減に取り組んでいる。
また、政府発表の2050年カーボンニュートラルの方針を受け、グループ全体での温室効果ガス排出量実質ゼロの達成に向けた削減計画の検討も進めている。
(同社ウェブサイトより)
なお、スコープ3への取り組みとしては、環境配慮型製品を提供し、採用した顧客の企業活動を通じて温室効果ガス削減に大きく貢献できると考えている。
詳細は、以下の「(3)温室効果ガス排出削減 ②製品を通じた環境課題への貢献」を参照。
(3)温室効果ガス排出削減
①同社グループのCO2排出量
主に小型のセンサー及びソフトウェアの開発・販売を行っているため、一般的なメーカーに比べてCO2排出など、環境負荷は低いと言える。自社の事業活動におけるCO2排出削減と、製品・サービスの使用による顧客のCO2排出削減の両面に貢献している。なお、同社のCO2排出量は、以下の通り。
(同社ウェブサイトより)
②製品を通じた環境課題への貢献
オプテックス㈱では、「オプテックス製品の使用時」のCO2低減を積極的に図っていくため、すべての新たな製品企画において「環境アセスメント評価」を継続して実施している。
2019年度からは、オプテックス製品を使用することで、顧客のCO2削減に貢献する活動をスタートさせ、2021年に“顧客のCO2削減につながる貢献量の総和”を“オプテックス事業活動で排出する全CO2“の4倍以上にするという目標を達成した。
また、自社排出や他社貢献活動などを総合的に管理するだけでなく、削減目標を設定し、積極的に削減活動を実施している。
具体的には、CO2削減貢献ができる製品・ソリューションの売上高比率について、2025年目標を、2022年目標設定時の22.5%から25%に上方修正し、活動を展開している(2018年実績17.5%)。
(同社ウェブサイトより)
オプテックスはオプテックスグループが賛同表明している気候関連財務情報開示タスクフォースが推奨する、気候変動関連リスク、および機会に関する項目を自社Webサイトにて開示している。
オプテックス・エフエー㈱、シーシーエス㈱においても環境配慮型産業用センサー、環境配慮型LED照明の販売に注力しており、着実に実績を積み上げている。
*オプテックス・エフエー㈱
自社製品の産業用センサーで、特に環境負荷の低減につながる製品を「環境配慮製品」と定め、その販売個数に目標を定めている。環境配慮型産業用センサーは、コンパクトな筐体とオリジナル回路により省エネを実現している。
(同社ウェブサイトより)
*シーシーエス㈱
画像検査用LED照明の拡販によって達成されるCO2削減効果を推計している。2023年度のCO2削減効果は、年間7,651t-CO2で、削減効果は2014年度比、50%拡大した。
(同社ウェブサイトより)
(4)安全な水の確保
SDGs(持続可能な開発目標)が目標6に「安全な水とトイレを世界中に」を掲げているように、「安全な水の確保」は世界的な課題である。
同社が開発した簡易水質測定機器・システム「WATER it」は、採取した水を専用試薬(テストキット)で反応させ、持ち運び可能な測定器(マルチメーター)にセットするだけで、採取した水に含まれている物質の含有量をその場で測定することができる。
測定データはブルートゥースを使ってスマートフォンに転送し、さらにスマートフォンの専用アプリからクラウドに自動的にアップロードされる。
水質測定にかかる手間や時間、コストを大幅に削減し、管理者は、測定結果をすぐに閲覧・管理することができる。
「安全な水の確保」が重要な課題となっているアジア各国への供給を目指し、2019年10月から国際協力機構(JICA)の委託を受け、ベトナムの流域水環境調査として実証実験を行ってきた。2021年10月に実証事業を終了し、現在はJICA事業「全世界 DX主流化のための情報収集・確認調査 (第 2期)」にて資源環境省でのWATER itパイロット活動を継続実施している。
(同社ウェブサイトより)
(5)再生可能エネルギーの利用
現在、オプテックス㈱の本社建屋西館の屋上にソーラーパネルを設置している。2023年は機器の修繕期間にあたり、2024年4月から再稼働しているが、修繕期間前の2022年の発電量は約1.9万kWhで、西館の総電力消費量約66.4万kWhのうち2.9%をカバーしていた。また、同社のグループ会社である技研トラステムでも、2023年11月からソーラーパネルの稼働を開始し、2024年の年間発電量は1.5万kWhを見込んでいる。さらに、オプテックス㈱の一部海外拠点でも、2019年からソーラーパネルを導入している。
なお、オプテックス㈱を含む5事業会社が入居している同社グループの東京オフィスでは、2022年5月から再生可能エネルギー由来の電力プランに切り替えており、今後も国内外の関連会社や生産拠点での再生可能エネルギーの利用を推進する方針である。
また、製品開発においても再生可能エネルギーの利用を取り入れており、東日本大震災以降、ソーラータイプのセンサー照明を開発している。この製品は、センサーによって人がいない時は消灯し、検知すると点灯する仕組みである。ソーラーパネル(太陽電池)によって、日中に太陽エネルギーを電気に変換し、バッテリーに充電する。夜間には、そのバッテリーに蓄えられたエネルギーで点灯する。商用電源を必要としないため配線工事が不要で、送電が難しい場所や停電時でも明かりを確保できるため、災害時の防災対策や病院での医療救護活動に貢献している。
さらに、サンリツオートメイション㈱の新社屋でも、屋上に設置したソーラーパネルにより、2023年は年間約1.9万kWhを発電し、同社の本社事業所の総電力消費量約34.6万kWhの5.5%をカバーしている。
【3‐2 「社会資本」課題における
マテリアリティ】
「安全・安心・快適」な社会や産業に貢献していくことを目標に、事業を展開してきた同社は、顧客・取引先・従業員・社会・株主など全てのステークホルダーとの信頼関係構築が持続的成長及び企業価値向上のためには不可欠であると考えている。同社製品の使用を通じて、環境課題のみでなく、世の中に存在するさまざまな不安や不快、不便から「不」を取り除き、幅広い社会課題の解決に貢献している。
(1)製品の品質・安全性の担保
すべての製品に絶対的な価値を与える信頼を提供するため、最高水準の国際規格をクリアするなど、長期間にわたり安心して使用できる安全性を備えている。また、製品化に際しては顧客の要求を満たす性能を考え、高機能のみでなく、設置環境、使用目的、コストバランスなどを考慮している。
(主な取り組み)
ノイズ対策技術 | 数々のノイズを極小化するハードウェア設計、独自に定めた幾多の環境評価を行ない、クリアしたもののみ製品化している。 |
光学設計 | 光学シミュレーションを駆使し、抜けの無い高密度センサー検知エリアを実現、小型化を追求するためのパッケージング化技術を有している。 |
公的規格の遵守 | あらゆるグローバルスタンダードに適合、及び準拠し、各業界で定めた規格、ガイドラインへ適合、及び準拠している。(CEマーキング、EN規格[TUV認定]、ANSI規格、JIS規格など) |
環境配慮設計 | 使用制限物質15種、自主管理物質10種を定め、全構成部品の無害化を実現しているほか、RoHS指令適合、無鉛はんだ化、使用時のCO2の影響を最小化する設計を行っている。 |
安心、安全制御 | システムの機能をダウンさせない為のセンサーの異常時や故障時の自己診断、及びフェールセーフ機能を採用している。機能を維持する為の、予防保全策を提案している。 |
(同社ウェブサイトより)
(2)安全なデータ管理
事業経営に関わる多岐にわたる重要機密情報の管理を徹底するため、「情報セキュリティ管理規程」において情報セキュリティ環境を実現するための管理方針、対策標準、実施手順に関する要件を規定し、従業員に対する教育を徹底している。
(3)地理的資本の活用/地域社会との連携
~琵琶湖を活かした貢献活動~
主要事業子会社オプテックス㈱が滋賀県・琵琶湖畔に位置するという同社ならではの地理的条件を活かし、琵琶湖に関連する各種イベントへの協賛をはじめ、地域のスポーツや文化振興への支援活動など、地域社会と交流を図り、様々な社会貢献活動に取り組んでいる。
その中心的な活動が琵琶湖畔のオプテックス㈱社屋及びオーパルオプテックス㈱の施設を拠点に2002年より本格的に展開している「琵琶湖体験学習」である。
子どもたちに、琵琶湖畔での体験学習の機会の提供と活動支援を目的に実施しているもので、活動内容は、スポーツ体験学習(カヌー、ドラゴンボート、いかだづくりなど)、水環境体験学習(湖畔の生き物しらべ、ヨシ紙を使った笛づくり、湖畔の水環境しらべ、外来魚しらべ、プランクトン観察)など。
特に、学校の教科学習(理科・社会・体育など)、修学旅行、校外学習などに向けて、こうした活動支援を行い、子どもたちに貴重な感動体験を提供している。同活動は有料であるが、滋賀県に限らず近畿圏を中心に他府県からの参加もあり、年々参加人数は増加している。
カヌー体験学習 |
生き物しらべ体験学習
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琵琶湖環境体験学習参加人数の推移(累計)
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(同社ウェブサイトより)
この他、オーパルオプテックスカヌーチームへの協賛、ペーロン大会、ドラゴンボート大会への協賛なども行っている。
~大学で協定講座を実施~
京都の大学において同社経営陣が協定講座を実施している。
2018年より、立命館大学経営学部及び龍谷大学経済学部において、「マネジメント」というテーマで同社の企業経営の実績を
事例とした講座を実施。2018-23年にかけては、両大学にて140回の講座を実施し、延べ27,800名が受講した。
龍谷大学でのオンライン講義の様子 |
立命館大学キャンパス内の教室での講義の様子 |
ステークホルダーとなりうる学生や大学関係者に対する認知度向上を通じて、企業価値向上やリクルーティングに繋がるものと期待している。
~地域協会への参加~
*滋賀県防犯設備士協会
滋賀県が全国一安全な県と言われるように、滋賀県警察、滋賀県防犯協会と連携し、滋賀で防犯関連事業を行っている企業の防犯CSR活動として、防犯診断や防犯講演を行い、安全な地域社会の実現に取り組んでいる。オプテックス㈱が会長および事務局として参加している。
・淡海フィランソロピーネット
滋賀県内を中心とする企業および関係機関・団体との連携を図りながら、社会貢献活動に関する調査・研究・情報交換等を行い、企業や地域社会にとってより魅力的かつ効果的な活動を推進する事を目的とする淡海フィランソロピーネットで、オプテックスグループ㈱が運営委員として参加している。
【3‐3 「人的資本」課題における
マテリアリティ】
環境課題への対応、テクノロジーの急速な進化など、企業を取り巻く環境は大きな変化を迎えている。
企業がこうした変化に対応しながら、持続的に企業価値を高めていくためには、イノベーションや付加価値を生み出す人材の確保・育成、組織の構築など、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことが求められている。
同社グループは創業以来、従業員が働き甲斐を感じることのできる環境創りに力を入れてきたが、今後はより一層、環境整備と人的資本強化に注力していく考えである。
(1)従業員の意識・働き甲斐醸成
同社は創業以来、「世界一、自己実現ができる会社でありたい」という気持ちを抱き続けている。
会社とは、従業員にとっての「舞台」であり、その舞台でどう演じるか、どう踊るかは、その従業員次第。
「主役」である従業員一人ひとりが会社という舞台をうまく活用して、各自のステージを変化に富んだ感動的なものにしてほしいと考えており、そのための環境作りに注力している。
(同社資料より)
(2)教育・育成制度
創業以来重視してきた、オプテックスグループの経営哲学の一つが「チャレンジ」の尊重である。
一番評価される人は『チャレンジをして成功した人』、二番目は『チャレンジをして失敗した人』、三番目は『チャレンジをサポートした人』で、評価が一番低い人は『チャレンジをしない人』というもの。
目指す姿は、社員一人ひとりの多様性を尊重し、同時に一人ひとりが主体性を発揮する会社である。
「中島社長」ではなく「中島さん」と役職名を付けずに呼ぶ「さん付け文化」や、携わる社員全員で協力して進む「電車型経営」は、その象徴である。
一方、オープンでフラットであるがゆえ働きやすいと同時に、「ぶら下がりを許さない」という厳しさを併せ持っている。
主体的に能力を発揮することが求められることに加えて、常に「挑戦する姿勢」が要求される。
何かに挑戦し、たとえ失敗したとしても、それは前述のように評価としては二番目にあたり、その敗北感を跳ね返してさらなる挑戦を続けることが求められている。
|
(同社資料より)
「世界一、自己実現ができる会社」を目指し、従業員一人ひとりが自主性・創造性を発揮し、仕事への誇りとやりがいを持って働くために、さまざまな制度を運営している。
教育研修制度 | 入社時研修、若手社員研修、中堅社員研修、マネージャー基礎研修、新任管理職研修。 |
ドリームデザインシート | 全ての社員が年に1度自分のありたい姿や夢を考え、上司や会社と共有し、キャリアパスの実現を目指す。 |
目標管理制度 | 会社の方針や方向性を元に各個人の業務目標を設定。上司と定期的に目標に対する振り返りを行い、目標達成を目指す。 |
社内公募制度 | 各部署で新たに人材が必要なポジションにおいて、必要なスキルを保有している社員を公募する。応募社員と募集部署が面談を行い、異動を決定する。 |
社内異動宣言(FA)制度 | 自身が挑戦したい職種・部署に対して応募する。応募社員と受入部署が面談を行い、異動を決定する。 |
発明報奨金 | 発明者の事業貢献を評価しその貢献度に応じた褒賞金を支給する。 |
(3)多様性を尊重する企業文化
オプテックスグループが大切にしている価値観が「多様性への理解」である。
「多様な選択肢こそが豊かな社会の証し」との考え方の下、まだ世の中にない新しい製品、差別化した製品を開発し、社会の多様性に貢献することがオプテックスグループの役割であると考えている。
「オプテックス流三方良し」の相手に「競合他社」を含むのも、「競合他社の製品に追随し、不毛な価格競争をすることは新しいものを産み出さないだけでなく、自社も競合他社も疲弊してしまうだけ」との考えからである。
多様性の理解・尊重は、製品開発だけでなく、グローバルな事業展開やPMI(Post Merger Integration)においても活かされており、社員一人ひとりが持つ能力を最大限発揮できる企業風土創りを通じて、競争力を高めている。
(4)従業員の健康・安全
オプテックス㈱、オプテックス・エフエー㈱は、経済産業省が日本健康会議と共同で実施している健康経営優良法人制度の「大規模法人部門」にて、『健康経営優良法人2024』の認定を受けた。
◎オプテックス㈱
2024年、3年連続の認定
健康宣言 | オプテックス㈱は、経営理念である「未来への創造集団としてI.F.C.S.の快適生活に挑む」の実現、また当社が成長していくための重要な経営基盤となるのは社員一人一人の健康であると考えています。
当社では、社員が安心して健康で活き活きと働ける職場づくりに取り組んでまいります。 ※I.F.C.S. : Individual(個人),Family(家族),Company(会社),Society(社会) オプテックス㈱ 代表取締役社長 上村 透 健康づくり責任者 今井 貴之 |
行動目標 | 1.社員全員が定期健康診断を期間内に受診します。(一般定期健康診断受診率100%)
2.健康診断後の二次健診受診を積極的に勧奨します。 3.社員の健康意識の向上のため、健康をテーマとした研修を実施します。 4.感染症予防の徹底(インフルエンザ予防の集団接種等) 5.年次有給休暇5日以上の取得を徹底します。 6.長時間労働を削減していきます。 7.喫煙率を低下していきます。 |
推進体制 | 同社では、労務担当役員を「健康づくり責任者」とする推進体制を整備している。また、社内・外部と連携し、取り組みを実施し、効果検証と課題の改善を継続的に行っている。 |
◎オプテックス・エフエー㈱
2024年、5年連続の認定
健康宣言 | 〝より健康で、より活気ある〟会社づくりを目指します。
<基本的な考え方> わたしたちオプテックス・エフエーは、企業理念に掲げる「お客様の満足、会社の成長、社員の幸福」を実現するために、その土台となる社員の健康と働きやすい職場環境づくりに対して積極的にサポートします。 社員一人ひとりが心身ともに健康で、いきいきと働ける職場環境を整えることが、会社や組織に高い生産性と活気をもたらし、お客様により満足いただける価値をお届けできると考え、全社一体となって健康保持・増進活動に取り組んでまいります。
<具体的な取り組み> まずは、これら「当たり前のこと」「やればできること」にしっかり継続して取り組み、ひとつひとつ着実に実践を積み上げながら、見えてくる「やるべきこと」に向けて積極的に投資、注力していきます。
・健康診断受診率100%の達成と再検査・精密検査の受診率向上(目標100%) ・健康増進にかかる情報発信と啓蒙活動 ・働き方の工夫による生産性向上(時間外労働の削減、有給休暇の取得しやすい環境) ・感染症予防(インフルエンザ予防の集団接種) ・健康相談窓口の設置 オプテックス・エフエー㈱ 代表取締役社長 健康増進統括責任者 湯口 翼 |
推進体制 | 役員、衛生委員会、産業医及び健康保険組合が有効に連携、機能し、社員の健康増進にむけたさまざまな取り組みや施策を展開、推進できる体制を整備している。 |
【3‐4 「ビジネスモデル&イノベー
ション」課題におけるマテリアリテ
ィ】
持続的成長のためには、強靭なビジネスモデルと強固なバリューチェーンの構築が必要と考えている。またメーカーとして原材料や部品調達における社会的な責任を強く認識している。
(1)ビジネスモデルの変革
防犯用センサー、自動ドア用センサー、画像処理用LED照明などで高いシェアを有する同社グループだが、更なる成長のためには、ビジネスモデルの変革やソリューション提案力強化が必要と考えている。
現在推進中の「3ヵ年(2024-26年)の経営計画」で、SS事業においては、従来のセンサー販売主体の「モノ売り」から、顧客の課題を解決する「ソリューション提供型事業(=コト売り)」への転換、FA関連においては高付加価値製品の強化による成長、MVL関連では「トータルソリューションベンダー」への変革をそれぞれ目指す。
(2)適切なサプライチェーンの構築
オプテックスグループのサプライチェーンは、全世界に広がっている。
世界80か国以上の顧客へ、高品質の製品を迅速に届けるために、安心できる原材料を安定的に調達し、計画的な生産、迅速に届けるロジスティクスの一連の活動を一体的に構築している。
◎生産
オプテックスグループの生産機能の多くは、オプテックス㈱とオプテックス・エフエー㈱の生産機能を分離・集約し、グループ全体の製造力の強化を目的として設立されたオプテックス・エムエフジー㈱が担っている。2021年3月には、オプテックス・エムエフジー㈱とシーシーエス㈱の生産部門が同拠点に移転し、生産及び調達戦略を一元的に管理できる体制への変更を進め、グループ全体でのシナジー効果を追求していく方針である。
オプテックス・エムエフジー㈱は、製品QCDの目標を早期に達成するためには、開発・設計段階からの取り組みが必要だと考えており、国内生産拠点にマザー工場機能を持ち、企画開発から製品の機能や特徴、生産数量、物流コストなどの条件を考慮し、最適な生産拠点を決定することにより、一貫したモノづくりを提供している。
マザー工場では、量産技術の研究、管理技術のシステム化、生産現場の見える化などを推進し、グローバルに展開する生産拠点を「生んで育てる」役割を担っている。
さらに、中国に生産拠点を構え、コストを考慮したモノづくりを実現する一方で、カントリーリスクを考慮し、ベトナムでのモノづくりも開始している。中長期的には生産比率を日本(協力工場:オフロム㈱、サンオクト㈱)40%、中国(自社工場:OPTEX DONGGUAN)40%、ベトナム(生産委託:リズムプレシジョンベトナム㈱)20%にすることを目指し、分散化を進めている。
(同社ウェブサイトより)
また、開発された製品の品質を設計どおりに生産し、安定した品質を守るために工場内の環境整備、専門スキルや高いモラルを培う人材教育・訓練のシステムを設け、安全かつ効率的な生産体制を整えている。
加えて、生産技術力をEMS事業としても展開し、開発・設計・調達から量産まで、顧客のモノづくりをトータルでサポートしている。
◎物流
海外売上高比率が50%を超える同社は、世界中の顧客へ製品供給を迅速かつスムーズに行うために、世界4極にハブ倉庫(欧州・香港・日本・北米)を設置し、柔軟性と拡張性の高い独自のサプライチェーンを構築している。
リードタイムの短縮、物流コストの削減による信頼性の向上を実現し、グローバルなビジネスフィールドで、顧客に高い付加価値を提供している。
◎原材料・部品調達
部品調達にあたっては、持続可能な調達を推進するため、同社グループの基本理念である「三方よし」を土台とし、以下の方針の下、購買活動を行っている。
化学物質の管理
化学物質規制への対応 |
化学物質による環境や生態系への影響懸念から、化学物質の使用を規制する法令の制定が世界的に強化されている。
同社グループでは、販売国や地域の法令・規格に適合した製品を提供するため、製品設計の段階から該当する部品や材料を使用しない体制を整備している。 同社グループは、化学物質を確実に把握し、かつ情報伝達・開示の円滑化を図るため、業界標準のフォーマットを採用し、 情報収集に取り組んでいる。また、その情報を必要とされる利害関係者に対し、必要なタイミングで提供する体制を整備している。さらに、環境負荷の少ない部品・原材料を調達することを目的に、「グリーン調達基準」を定めて、すべてのサプライヤーに共有している。
オプテックス㈱、オプテックス・エフエー㈱では新規部品の選定について、設計段階でRoHS対応部品を選定し、量産までに全ての化学物質情報を仕入先から入手し、化学物質情報管理システムに保管している。適宜、独自基準(グリーン基準)で規制に対して問題ないかを判定し、製品での化学物質保証を行っている。 また、オプテックス㈱、オプテックス・エフエー㈱、オプテックス・エムエフジー㈱共通で「含有化学物質管理ガイドライン」を作成し、社内及び仕入先への周知徹底を行っている。 シーシーエス㈱では、「CCS製品 環境規制対応方針」を作成し、新たな規制への対応を社内に徹底するとともに、「グリーン調達ガイドライン」を作成し、仕入先に対して環境負荷物質の低減や紛争鉱物の調達に関する方針の周知徹底を図っている。 |
信頼関係の構築 | サプライヤー含め関係する取引先との信頼関係を構築、相互発展(WIN-WIN)をめざしている。
全役職員が遵守すべき行動基準を明示するとともに、これに基づきコンプライアンス推進活動を実践するために制定した「オプテックスグループ行動規範」では、「公正な競争」「公正な営業活動」「公正な調達活動」を謳っている。 |
グローバル調達の推進 | QCDを考慮した世界レベルでの最適調達を目指している。 現地調達も含め、部品供給全体のサプライチェーンを最適化しトータルコストの低減を図っている。 |
環境負荷の低減 | 製品・サービスのライフサイクル全般を通じて、サプライヤーや製造委託先とともに環境負荷低減に取り組んでいる。 |
サプライヤーとの連携強化 | 基本性能を左右する光学部品やセンサー部品類は特注品が多く、技術面などでサプライヤーとの連携が欠かせない。
技術動向などを話し合うミーティングやエンジニア同士が集まる技術交流会を実施するなど、製品性能や品質向上に向けた取り組みを通じ「WIN-WIN」の関係を構築している。
(同社ウェブサイトより) |
責任ある鉱物調達について
コンゴ民主共和国及びその周辺国(DRC周辺諸国)等で採掘される鉱物は、児童労働などの人権侵害や環境破壊が懸念されているのみならず、武装集団の資金源となり、紛争そのものを助長している可能性があると懸念されている。
責任ある調達とは、これらに関連している鉱物を調達しない取り組みを指し、2010年に成立した米国金融規制改革法(ドッド・フランク法)の取り組みも含んでいる。同社では、当件に対する取り組みを企業の社会的責任を果たす上での重要な課題としてとらえ、より責任ある調達を行うべく、以下のような取り組みを推進している。
* | 調達部材・部品への紛争鉱物の含有有無調査 |
* | 紛争鉱物を調達しない旨の取引先との取交し |
* | 仕入れ先への同社方針の説明およびサプライチェーン調査の実施
調査においてはRMI(Responsible Minerals Initiative)が提供するツールCMRT(Conflict Minerals Reporting Template)などの標準化されたテンプレートを用い、サプライチェーンの把握に努めている。 |
* | RMIなど第三者機関が認証した製錬業者からの調達、また高リスクの疑いが生じた場合の仕入先変更・リスクの低い調達先への移行を、仕入先に推奨。
2023年度の調査の結果、同社サプライチェーンにおいて特定された252社の製錬業者がRMIの標準製錬業者リストに該当し、その中でRMIの監査に合格しているConformant Smelterは87%にあたる219社であった。 |
【3‐5 「競争力・ガバナンス」
課題におけるマテリアリティ】
センシング技術に関する技術・ノウハウと独自のセンシングアルゴリズムを競争優位性として各製品分野で高いシェアを実現し、高いブランド力を有する同社グループは、更なる競争力強化に向けた取り組みを進めている。
また、競争力強化を通じた企業価値向上のためにコーポレートガバナンスの充実にも注力している。
(1)競争力強化に向けた研究/製品開発体制
①顧客の視点に立った発想(人間中心設計)でのモノづくり
~開発のフィロソフィー「オプテックスのかたち」~
主要事業会社の一つオプテックス㈱では、信頼される製品をぶれることなく生みだしていくために、『オプテックスのかたち』として、モノづくりへの想い・考え方を共通の軸となる言葉で明確に表現している。
「使うひとになりきる」「0.1mmの気配り」「ムダがない」「粋なはからい」「変わるけど、変わらない」の5つで構成される「オプテックスのかたち」は、実際の現場状況の把握と顧客も気づかない課題の把握、隅々までこだわった品質感、洗練された形状、顧客に感動を与える工夫、ニーズや市場の変化に対応しつつセンサーメーカーとしての変わらない技術力の追求など、過去から継承されてきた同社のモノづくりに対するフィロソフィーであり、開発・企画・営業・生産・品質管理・管理部門など、全社員での共有を図っている。
~人間中心設計によるモノづくり~
オプテックス㈱ではユニークでありながら長く愛される製品を生み出すために、製品に関わるさまざまな顧客の視点に立った発想(人間中心設計)でモノづくりに取り組んでいる。
製品化に向け、具体的には以下のようなプロセスを踏んでいる。
1:(調査)利用状況の理解と共感 | 開発や営業が一体となって世界中の設置現場を訪問し、どのような人が、どんな状況で、どのように使われているかを確認したり、顧客からの生の声をヒアリングしたりしている。
これらのプロセスを通じて、顧客や現場の状況を正しく認識し、「本当のニーズを満たすもの」は何かを探り出している。 |
2:(分析)顧客の課題やニーズの明確化 | 顧客が同社の製品を知り、選択、利用されるまでの各フェーズでどのような感情をもち、どのような行動を取るかなどを理解・可視化することで、課題発見や、メンバーでの認識の共有を行っている。
また、顧客への提供価値、要求品質の明確化・整理を行い、製品開発に展開している。 |
3:(設計)プロトタイピングによる解決案の具現化 | デザインを具現化した試作品を繰り返し作成することで、客観視し「思考」を深め、仮説と検証のサイクルを回して、より良いモノづくりへ繋げていく。 |
4:(評価)要求事項に対する設計の評価 | 社内で被験者(顧客になりきる)を設定し、実際にその製品を設置した時の操作の様子や発した言葉から、製品の“使いにくい・わかりにくい”や“要求を満たしているか”を見つけ出すための評価を行っている。
開発者や営業をはじめとした関係者で実施し、定量・定性的な評価結果を分析し、製品開発にフィードバックしている。 |
≪主要な技術≫
ノイズ対策技術 | ・数々のノイズを極小化するハードウェア設計
・独自に定めた幾多の環境評価を行ない、クリアしたもののみ製品化 |
緻密な光学設計 | ・光学シミュレーションを駆使し、抜けの無い高密度エリアを実現
・小型化を追求するためのパッケージング化技術 |
信頼性公的規格遵守 | ・あらゆるグローバルスタンダードに適合、及び準拠
・各業界で定めた規格、ガイドラインへの適合、及び準拠 (CEマーキング、EN規格[TUV認定]、ANSI規格、JIS規格等) |
環境配慮設計 | ・使用制限物質15種、自主管理物質10種を定め、全構成部品の無害化を実現
・RoHS指令適合、無鉛はんだ化 ・使用時のCO2の影響を最小化する設計 |
安心、安全制御 | ・システムの機能をダウンさせない為のセンサーの異常時や故障時の自己診断、
及びフェールセーフ機能の採用 ・機能を維持する為の、予防保全策の提案 |
独自のセンシングアルゴリズム | ・ハードウェアで抑えきれないノイズの影響をカット、意図した事象のみの検出、
精査、解析を図る為の独自のアルゴリズム ・フィールドでの性能を維持する為の各種自動補正機能 |
②「信頼性」と「性能」を実現するための製品評価テスト
オプテックス㈱は、すべての製品に絶対的な価値を与える「信頼性」と顧客の要求を満たす「性能」を実現するために、さまざまな製品評価テストを実施している。
同社のセンサーが利用される屋外環境では、雨や風、気温の変化、雷、小動物など、日々想定外の現象が多くの影響を与えることになる。
信頼感の高いセンサーを作り上げるには、そうした現象を一つ一つクリアすることが不可欠であり、用途に応じて、150を超える製品評価テストを実施している。
また、世界各国に広く販売しているため、各国の法令や公的規格に準拠したグローバルスタンダードをとり入れ、世界中の顧客が安心して利用することのできる製品づくりを目指している。
さまざまな環境やシーンにおいて、センシング性能が発揮できるかを、実際に現地に出向いて実験を行ったり、同様の環境をつくって評価テストを実施したりしている。こうした地道な活動ではあるが、的確な性能評価を行うことができることがオプテックス㈱の競争力となっている。
(主な評価テスト)
豪雪テスト | 降雪、吹雪、路面の雪が巻き上げられる地吹雪のように雪の降り方も異なる。実際に製品が設置される屋外の厳しい自然環境の中での実験を行っている。 |
霧テスト | 視界の悪い霧の中でも確実に人を検知するために、山間部でのフィールドテストや人工的に特異環境をつくり、評価を行っている。 |
長雨テスト | 自然環境試験は、屋外に設置されるセンサーでは必須項目として、さまざまな条件下で実施している。一日あたりの降雨量の観測記録を超える長雨テストやレンズに付着する水滴など、悪環境での試験を実施している。 |
人検知テスト | さまざまな人の動きや特性でも確実に人を検知するために、地面を這ったり、回転したり、背丈や髪型、歩くスピードの違いなどあらゆる条件を想定したテストを行っている。 |
耐久テスト | 長く安心して利用してもらうために限界テスト、耐久テスト、衝撃テストなどを実施している。
例えば、スイッチ類のON/OFFの連続試験や破壊行為による負荷を容赦なく加える過酷な 「衝撃テスト」を実施している。 |
ボールテスト | 自然環境による評価だけではなく、物体に対してもテストを行っている。
たとえば自動ドアの前で、ボールが転がってもドアが開かないようにするための性能テストを 実施している。 |
③特許・知的財産
オプテックスグループでは、様々な研究開発活動により創出した特許・知的財産を重要な経営資源の一つとして位置付けており、特許・意匠権を含む知的財産権の積極的な取得を進めている。
オプテックスグループのYK値(※)は、267.78で、東証プライム市場の「電気機器」業種において3年間のYK値成長率は354.79%と第5位であった。(出典:特許価値評価ウェブサービス「PATWARE」(https://www.patware.net/)より。YK値は2023年3月末時点。市場区分「東証プライム」は2023年4月時点)
※YK値
YK値とは工藤一郎国際特許事務所が開発した特許が持つ経済的な競争力(=経済的価値)を示す企業技術競争力指標。YK値は企業成長性などの先行指標として評価されており、日銀レポート、金融アナリストによる分析レポート、企業の統合報告書などでの多数の採用実績がある。
(2)コーポレートガバナンス
株主、投資家をはじめ、顧客、社会からの信頼を獲得しつつ、継続的に企業価値を向上させることが最大の使命であると認識している。その実践のためにコーポレートガバナンスの充実を重要な経営課題の一つと位置付けて、経営の透明性向上と、公正かつ迅速な意思決定を伴う経営システムの維持及び経営監視の強化を目指している。
監査・監督機能の強化とコーポレートガバナンスのさらなる充実を図ることを目的として、2016年に監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。
現在、取締役・監査等委員8名中、3分の1以上の4名に独立社外取締役(国内大手電機メーカー技術者・役員経験者1名、学者1名、公認会計士1名、弁護士1名)を選任し、取締役会での活発な議論を通じた意思決定で、戦略の質を高め、更なる企業価値の向上を目指している。
◎コーポレートガバナンス報告書:2024年3月27日更新
<基本的な考え方>
当社グループは、株主、投資家をはじめ、顧客、社会からの信頼を獲得しつつ、継続的に企業価値を向上させることが最大の使命であると認識しております。その実践のために、コーポレートガバナンスの充実を重要な経営課題の一つと位置づけ、経営の透明性向上と、公正かつ迅速な意思決定を伴う経営システムの維持及び経営監視機能の強化を目指しております。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、ガバナンス・コードの各原則を全て実施しております。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
【原則1-4.政策保有株式】
当社は、当社グループの事業戦略上において、取引関係の強化と企業価値向上に資すると判断した場合に限り、取締役会での審議・決議を経て取得し、保有いたします。また、保有する株式につきましては、毎年取締役会においてその意義について検証を行い、目的とする合理的価値が乏しいと判断した場合には、市場動向等を勘案して売却し、縮減に努めております。
現在当社が保有する政策保有上場株式 : 1銘柄 55百万円 (2023年12月31日 貸借対照表計上額)
なお、保有する株式の議決権行使については、当該企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に寄与するか、株主価値が大きく毀損されないかを判断基準として個別に精査し、総合的に判断して賛否を決定します。
【補充原則2-4-1.中核人材の登用等における多様性確保】
当社グループは創業来、「従業員にとっては自己実現ができる会社でありたい 会社はその舞台である」との考えから、男女の別、国籍、新卒・中途採用の別などを区別することなく、従業員自らが各自のステージを変化に富んだ感動的なものにできるよう、その環境作りに注力してまいりました。
当社国内グループ会社(当社含む12社)の従業員の状況は以下のとおりであります。
・男女比率 : 男性:女性=77%:23%
・中途採用者比率 : 60%
・外国籍従業員比率 : 1%
・管理職の男女比率 : 男性:女性=96%:4%
・管理職の内、中途採用者比率 : 71%
上記のとおり、当社グループの事業領域と事業内容の特性により、潜在的に女性、外国籍社員が少なく、これに伴って管理職における同比率も現状では高くはありません。
一方で、中途採用者の管理職への登用は 70%を超えており、様々な経験、スキルを持った多様性ある人材が経営の中核を占めていると認識しております。
また、当社グループは、世界各地に連結子会社を有しており、これらを含めたグループ全体でみると、 その多様性は十分に確保していると考えております。
当社は引き続き、各事業会社が持つそれぞれの事業領域での特性を勘案しつつ、現在以上に従業員の多様性を確保できるよう、それぞれの能力を存分に発揮するための環境整備を積極的に推進・検討してまいります。
【補充原則3-1-3.サステナビリティについての取り組み】
当社グループは、
・あらゆるステークホルダーとの関係を強化し、社会の持続可能な成長に貢献します。
・環境に配慮した製品の供給を通じて、循環型事業経営を実現することを目指します。
・社員のエンゲージメント向上を通して、グループ各社の持続的な成長と発展を目指します。
を、サステナビリティ基本方針とし、創業時より得意のセンシング技術を駆使して「安全・安心・快適」な社会や産業に貢献していくことを目標に事業を展開し、世の中に存在するさまざまな不安や不快、不便から「不」を取り除く仕事(=ふとるビジネス)を拡大させることで、「グローバルニッチNo1」のセンサーメーカーを目指してまいりました。
今後もこの「ふとるビジネス」を推進することにより、環境問題や社会問題の解決に貢献すると同時に、各事業の拡大、企業価値の向上に繋げていくことができるものと確信しており、社会の持続的な発展への貢献と企業価値の向上を目指してまいります。
当社グループの取組みについては、下記の当社webサイトに掲載しております。
・サステナビリティ全般 → https://www.optexgroup.co.jp/esg/
において、ガバナンスの在り方と社会との関わりについての取り組みを掲載し、環境、人的資本に関する詳細な取り組みを以下のwebサイトに掲載しております。
・サステナビリティ基本方針 → https://www.optexgroup.co.jp/esg/policy.html
・環境負荷の低減 → https://www.optexgroup.co.jp/esg/environment-impact.html
・TCFD提言への取り組み → https://www.optexgroup.co.jp/esg/tcfd.html
※当社グループは、2023年1月、TCFDへの賛同を表明しており、当社グループのCO2削減目標を「2030年までに30%削減(2019年比:Scope1,2)」と設定いたしました。
今後とも、当社グループのサステナビリティに対する取り組みの情報開示について、質と量の充実に注力してまいります。
・ESGレポート → https://www.optexgroup.co.jp/shareholder/library/index.html#esgreport
・人的資本に関する戦略、指標と目標 → https://www.optexgroup.co.jp/esg/human-resources.html
【補充原則4-11-1.取締役会の全体としてのバランス、多様性及び規模】
当社の取締役会は、企業経営・経営管理、技術開発、生産、営業販売、海外での勤務経験、会計の専門性等をそれぞれ有効に活用する取締役5名(男性4名、女性1名)(その員数を9名以内としております。)と、豊富な監査経験、弁護士、公認会計士・税理士の資格を有する等、高い見識と知見を有する監査等委員である取締役3名(男性2名、女性1名)(その員数は4名以内としております。)で構成されており、中長期的な当社の経営戦略を推し進めるうえで、現状、当社及び当社グループの規模等を勘案し、適切な構成バランスであると考えております。
なお、多様性や専門性のバランスについては今後とも引き続き最適化に向けて検討を進めてまいります。
現在の経営陣のスキルマトリックスにつきましては、当報告書の最終項をご覧ください。
【補充原則4-11-3.取締役会の実効性の分析・評価】
当社では、取締役会のさらなる実効性の向上を目的に、全ての取締役を対象としたアンケートを年1回実施し、その集計結果をもとに取締役会において建設的な議論を行い分析・評価を実施しております。
本年3月に実施しましたアンケート(取締役9名 100%回答)の結果、当社の取締役会はその役割・責務に照らし、実効性をもって概ね機能していると評価しております。一方で、経営戦略の方向性の検討といった中長期を見据えた重要事項については、より時間をかけた議論を充実させることで、一層の機能性の向上を図ることができるとの認識を共有しております。今後はこれら事項の改善に努め、取締役会全体の継続的な実効性確保・強化を図ってまいります。
【原則5-1.株主との建設的な対話に関する方針】
当社は、広報・IR部門を設置しており、株主の皆様との積極的かつ建設的な対話をなし得るよう、当社の経営方針や経営状況について判りやすい説明をするよう努めております。また、代表取締役社長、担当役員、IR担当者は、機関投資家向け説明会、個人投資家向け説明会を計画的に実施しており、機関投資家からの面談には随時対応しております。
定時株主総会においては、多様な株主様のご出席を賜われるよう会場を設定して、その終了後には、今後の当社方針をご理解いただけるように「株主説明会」を実施しております。
(3)リスク管理
オプテックスグループ㈱では、同社とグループ各社の役職員に対し、遵法精神に基づく企業活動と役職員の行動の徹底を図るため、「グループコンプライアンス推進委員会」を組成している。グループコンプライアンス推進委員会は、代表取締役社長が委員長を務め、事業会社からも委員を選任し、コンプライアンスに関する取り組みへの理解や意識の向上を図るとともに、コンプライアンスに関する事項を効果的に各社へ展開する体制を構築している。
委員会では、同社グループにおける法令等の遵守状況の確認、コンプライアンスに関する事項の共有や検討、リスク管理などの活動を行っている。また、「オプテックスグループ行動規範」を制定しており、委員会がこれを主管することで、同社グループの全役職員のコンプライアンスに関する意識と行動の維持向上に努めている。
さらに、リスク情報を早期に収集し適正に対処することを目的とした内部通報制度を整備するとともに、通報者が不利益な扱いを受けないことを「コンプライアンス規程」に明記し、同社とグループ各社に周知徹底している。
(同社ウェブサイトより)
4.3ヵ年(2024-26年)の経営計画
【4-1 概要・目標】
2023年12月期は、中国景気の低迷を受けたIA事業の一時的な減速により、売上高・営業利益共に修正計画を下回り着地した。
2024年12月期は、高収益製品の販売を再強化し、営業利益の拡大を目指す。
経営目標として「売上高成長率 10%伸長、売上高営業利益率 15%以上、ROE 10%以上」を掲げ、2026年12月期は「売上高750億円、営業利益100億円、売上高営業利益率13.3%」を目指し、ソリューション提案ビジネスへの移行を加速する。
(同社資料より)
【4-2 主力事業の取組】
(1)SS事業
①防犯関連
強みを持つ画像確認ソリューションの更なる強化や、事業所・施設向けに積極投資を行う。
引き続きダイレクトマーケティングに注力し、既存市場の深耕と新市場の開拓に取り組む。
②自動ドア関連
新製品拡充と積極投資により欧米市場でのシェア拡大を図る。
遠隔モニタリングサービスや、エントランスの自動ドアを有効活用した新たな顧客体験の創出サービス「オムニシティ」による市場開拓を更に進める。
(2)IA事業
①FA関連SS事業同様、現場ニーズをキャッチし、製品企画に反映させるため、直接コンサルティング・マーケティングを展開し、顧客数の拡大を図る。
製品単体売りからソリューションの販売への転換として、センサーと上位の制御システムとの間で各種データ交換を双方向に行える通信技術である「IO-Linkマスタ」を中心としたソリューション提供に注力する。
②MVL関連
MV照明に加え、電源・カメラ・レンズなどを協業メーカーから調達し、テスティングルームで顧客のニーズにきめ細かく対応してシステムとして提供してきたが、近年はAIやロボットにもフィールドを広げ、同じく外部のメーカーやベンダーと協業しAIラボ、ロボティクスルームを設置して「検査プロセスにおけるトータルソリューションベンダーへの進化」を目指す。
世界に「見える!」×「出来る!」を実現するソリューションを提供する。
③IPC関連
堅調な半導体製造装置向け産業用PCの安定供給体制を確立させる。
監視システム、無線見える化システム等、新事業の開拓を目指す。
④MECT関連
順調に拡大している二次電池製造装置の安定供給体制を確立させる。
外観検査ソリューション等、新事業の開拓を図る。
【4-3 成長イメージ】
「ベンチャースピリット溢れる企業集団を目指す!」とのグループ企業理念の下、成長戦略の中核として「ビジネスモデルの変革」を位置付け、各事業において従来の製品単体売りからソリューション販売へのシフトを進めている。
(同社資料より)
5.財務・非財務データ
①財務データ
◎BS/PL
2019/12期 |
2020/12期 |
2021/12期 |
2022/12期 |
2023/12期 |
|
売上高 |
37,517 |
34,846 |
45,866 |
54,811 |
56,372 |
営業利益 |
2,856 |
2,098 |
4,630 |
6,303 |
5,899 |
経常利益 |
2,876 |
2,176 |
5,130 |
7,042 |
6,258 |
当期純利益 |
2,197 |
1,395 |
3,762 |
4,752 |
4,608 |
EPS(円) |
60.02 |
38.59 |
104.18 |
133.79 |
129.73 |
ROE(%) |
6.8 |
4.3 |
11.2 |
12.8 |
11.1 |
ROA(%) |
6.6 |
4.8 |
9.8 |
11.6 |
9.6 |
総資産 |
43,967 |
47,390 |
57,769 |
63,302 |
67,127 |
純資産 |
32,372 |
32,625 |
35,360 |
39,735 |
44,271 |
自己資本比率(%) |
73.2 |
68.4 |
60.7 |
62.2 |
65.3 |
*単位:百万円
◎CF
2019/12期 |
2020/12期 |
2021/12期 |
2022/12期 |
2023/12期 |
|
営業CF |
3,621 |
3,894 |
3,102 |
1,669 |
2,113 |
投資CF |
-992 |
-3,228 |
-2,845 |
-310 |
-782 |
フリーCF |
2,629 |
666 |
257 |
1,359 |
1.331 |
財務CF |
-1,721 |
1,578 |
1,793 |
-1,627 |
-2,259 |
現金・現金同等物 |
12,396 |
14,583 |
17,120 |
17,287 |
17,119 |
*単位:百万円
②非財務データ
①環境関連
◎環境配慮型製品の販売推移(オプテックス・エフエー㈱)
2015 |
2016 |
2017 |
2018 |
2019 |
2020 |
2021 |
2022 |
2023 |
|
環境配慮型産業用センサー |
101 |
146 |
233 |
272 |
228 |
255 |
367 |
373 |
321 |
*2014年の販売個数=100
◎LED照明によるCO2削減貢献量(シーシーエス㈱)
2015 |
2016 |
2017 |
2018 |
2019 |
2020 |
2021 |
2022 |
2023 |
|
CO2削減貢献量 |
5,122 |
6,238 |
7,337 |
7,431 |
6,933 |
5,907 |
7,113 |
7,385 |
7,651 |
*単位:t-CO2
②社会資本関連
◎特許・意匠登録件数
地域 |
特許 |
意匠 |
日本 |
93 |
29 |
アメリカ |
39 |
18 |
ヨーロッパ |
105 |
44 |
アジア |
12 |
34 |
その他 |
4 |
18 |
*2023年、オプテックス㈱
③人的資本関連
◎連結従業員数の推移
2018/12期 |
2019/12期 |
2020/12期 |
2021/12期 |
2022/12期 |
2023/12期 |
|
国内従業員数 |
931 |
941 |
1,123 |
1,191 |
1,216 |
1,258 |
海外従業員数 |
890 |
834 |
758 |
807 |
890 |
878 |
うち、EMEA |
225 |
236 |
236 |
224 |
253 |
258 |
うち、アジア |
575 |
512 |
439 |
506 |
560 |
538 |
うち、AMERICAs |
90 |
86 |
83 |
77 |
77 |
82 |
従業員数合計 |
1,821 |
1,775 |
1,881 |
1,998 |
2,106 |
2,136 |
海外従業員数比率 |
48.9% |
47.0% |
40.3% |
40.4% |
42.2% |
41.1% |
*各期12月末時点。単位:人。従業員数合計には派遣・パート・アルバイトを含まない。
◎国内グループ企業従業員構成(2023年12月末時点)
全従業員数 |
男性 |
比率 |
女性 |
比率 |
|
従業員数 |
1,288 |
993 |
77% |
295 |
23% |
うち中途入社社員数 |
776 |
555 |
72% |
221 |
28% |
うち外国籍社員数 |
18 |
12 |
67% |
6 |
33% |
*単位:人
◎国内グループ企業管理職構成(2023年12月末時点)
合計 |
男性 |
比率 |
女性 |
比率 |
|
管理職人数 |
313 |
301 |
96% |
12 |
4% |
うち中途採用者登用人数 |
222 |
214 |
96% |
8 |
4% |
中途採用者登用比率 |
71% |
71% |
– |
67% |
– |
*単位:人
◎育児休業取得者
年度 |
2018/12期 |
2019/12期 |
2020/12期 |
2021/12期 |
2022/12期 |
2023/12期 |
総数 |
10 |
17 |
8 |
10 |
15 |
18 |
うち、男性 |
0 |
0 |
1 |
3 |
3 |
8 |
うち、女性 |
10 |
17 |
7 |
7 |
12 |
10 |
*単位:人
◎産前産後休暇・育児休暇後の復職者数
過去3年間の育児休業 からの復職者数(累計) |
復職率 |
34人 |
77% |
*単位:人。過去3年間(2021~2023年)実績
◎育児短時間勤務者
年度 |
2018/12期 |
2019/12期 |
2020/12期 |
2021/12期 |
2022/12期 |
2023/12期 |
総数 |
9 |
12 |
18 |
20 |
17 |
19 |
うち、男性 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
うち、女性 |
9 |
12 |
18 |
20 |
17 |
19 |
*単位:人
◎定年後再雇用者数
期間 |
対象期間の定年退職者数 (累計) |
対象期間の再雇用者数 (累計) |
再雇用者率 |
2021年~2023年 |
41 |
36 |
88% |
2020年~2022年 |
36 |
32 |
89% |
2019年~2021年 |
45 |
40 |
89% |
2018年~2020年 |
52 |
47 |
90% |
2017年~2019年 |
23 |
22 |
96% |
2016年~2018年 |
20 |
17 |
85% |
*単位:人
◎新卒入社者の定着状況
2018年 4月の 新卒入社数 |
うち、 2021年4月 時点の 在籍者数 |
2019年 4月の 新卒入社数 |
うち、 2022年4月 時点の 在籍者数 |
2020年 4月の 新卒入社数 |
うち、 2023年4月 時点の 在籍者数 |
2021年 4月の 新卒入社数 |
うち、 2024年4月 時点の 在籍者数 |
|
人数 |
40 |
33 |
32 |
29 |
26 |
21 |
25 |
25 |
定着率 |
83% |
91% |
81% |
100% |
||||
定着率 (3年平均) |
88% |
*単位:人
※従業員関連データの対象企業:オプテックスグループ㈱、オプテックス㈱、オプテックス・エフエー㈱、シーシーエス㈱、サンリツオートメイション㈱、ミツテック(株)、オプテックス・エムエフジー㈱、 ㈱スリーエース、オーパルオプテックス㈱、技研トラステム㈱、㈱ジーニック、東京光電子工業(株)
<参考>
ESG Bridge Reportの発行に際しては、柳 良平氏(京都大学経済学博士、エーザイ株式会社専務執行役CFO、早稲田大学大学院会計研究科客員教授)に多大なご協力を頂いた。
この「参考」のパートでは、ESG Bridge Report発行の趣旨についても述べさせていただくとともに、同氏の提唱する「柳モデル」の概要を同氏の著作「CFOポリシー第2版」から引用する形で紹介する。
(1)ESG Bridge Reportについて
ESG投資がメインストリーム化する中で、投資家からは日本企業に対し積極的なESG情報開示が求められ、これに呼応する形で統合報告書作成企業数は増加傾向にあります。
ただ、統合報告書の作成にあたっては経営トップの理解・関与が不可欠であることに加え、人的リソース及び予算負担から多くの企業が踏み出すことができていないのが現状です。
また、統合報告書の作成にあたっては各種データの整理、マテリアリティの特定、指標や目標値の設定など多くのステップが必要ですが、現状の準備不足のために二の足を踏んでいるケースも多いようです。
しかし、柳氏が「CFOポリシー第2版」で、「日本企業が潜在的なESGの価値を顕在化すれば、少なくとも英国並みのPBR2倍の国になれるのではないだろうか」「柳モデルの実現により日本企業の企業価値は倍増でき、それは投資や雇用、年金リターンの改善を経由して国富の最大化に資する蓋然性が高い」と述べているように、日本企業のESG情報提供は、日本全体にとっても有意で積極的に推進すべき事項であると株式会社インベストメントブリッジは考えています。
そこで、一気には統合報告書作成には踏み出せないものの、ESG情報開示の必要性を強く認識している企業向けに、現時点で保有するデータやリソースをベースに、投資家が必要とするESG情報開示に少しでも近づけるべく、弊社がご協力して作成しているのが「ESG Bridge Report」です。
日本企業のESG情報開示を積極的に後押ししている日本取引所グループが発行している「ESG情報開示実践ハンドブック」のP6には「ここで紹介している要素が全て完璧にできていないと情報開示ができないということでもない。自社の状況を踏まえてできるところから着手し、ESG情報の開示を始めることで、投資家との対話が始まり、そこから更なる取組みを進めていく際に、本ハンドブックが手がかりになることを期待している」とありますが、「ESG Bridge Report」は、まさに「できるところから着手し、ESG情報の開示を始める」ためのツールであると考えています。
柳氏によれば「柳モデル」の本格的な展開のためには、ESGと企業価値の正の相関を示唆する実証研究の積み上げ、企業の社会的貢献が長期的な経済価値に貢献する具体的事例の開示などが必要とあり、実際のハードルは高いのですが、各企業のESGへの取り組みがいかにして企業価値向上に繋がっているかをわかりやすくお伝えしたいと考えています。
お読みいただいた多くの投資家からのフィードバックを基に、よりクオリティの高いレポートへと改善してまいりますので、是非忌憚のないご意見を賜りたいと存じます。
株式会社インベストメントブリッジ
代表取締役会長 保阪 薫
k-hosaka@cyber-ir.co.jp
(2)「柳モデル」について
(拡大する非財務資本の価値、ESG投資の急増、ESGと企業価値をつなぐ概念フレーム策定)
近年、多数の実証研究において企業価値評価における非財務情報の重要性拡大が証明されており、今や、企業価値の約8割は見えない価値(無形資産)、非財務資本の価値と推察される。
加えて、非財務情報と企業価値の関係を調べた多数の実証研究の結果から、ESGと企業価値は正の相関を持つ蓋然性があると考えられる。
一方、グローバルにESG投資のメインストリーム化が進む中、潜在的なESGの価値にもかかわらず多くのケースでPBRが1倍割れもしくは低位に留まる日本企業は、PBR上昇のために「柳モデル」により、非財務資本を将来の財務資本へと転換すること、つまりESGと企業価値をつなぐ概念フレームを策定して開示する必要がある。
(「柳モデル」の概要)
株主価値のうち、「PBR1倍相当の部分」にあたる株主資本簿価は現在の財務資本・財務価値により構成される。
一方、株主価値のうち「PBR1倍超の部分」にあたる市場付加価値は、(将来の財務資本ともいえる)非財務資本により構成されると同時に、残余利益モデルにおいてはエクイティス・プレッド(ROE-株主資本コスト)の金額流列の現在価値の総和でもある。
このことから柳氏は、非財務戦略の結論として「非財務資本とエクイティ・スプレッドの同期化モデル」=「柳モデル」を、ESGと企業価値を同期化する概念フレームワークとして提案している。
「柳モデル」においては、「市場価値(MVA)」を通じて残余利益の現在価値の総和としてのエクイティ・スプレッドと非財務資本が相互補完的である、つまり、エクイティ・スプレッドによる価値創造はESGを始めとする非財務資本の価値と市場付加価値創造を経由し、遅延して長期的には整合性を持つ。
そのため、ESG経営は資本効率を求める長期投資家とは市場付加価値を経由して同期化でき、協働が可能であろう。
これを傍証するように、柳氏が実施した投資家サーベイにおいては、世界の投資家の大多数が「ESGとROEの価値関連性を説明してほしい」と要望していると同時に、「ESGの価値の100%あるいは相当部分をPBRに織り込む」と回答しており、「柳モデル」は間接的にも長期投資家の大半から支持されていると解釈できよう。
(同氏の「柳モデル」の詳細については、柳良平著「CFOポリシー第2版」中央経済社(2020)
をご参照されたい。