インテリジェント ウェイブ(4847) 大幅な増収増益 中期事業計画を発表予定
佐藤 邦光 社長 |
株式会社インテリジェント ウェイブ(4847) |
企業情報
市場 |
東証プライム市場 |
業種 |
情報・通信 |
代表者 |
佐藤 邦光 |
所在地 |
東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー |
決算月 |
6月 |
HP |
株式情報
株価 |
発行済株式数(期末) |
時価総額 |
ROE(実) |
売買単位 |
|
1,207円 |
26,340,000株 |
31,792百万円 |
13.8% |
100株 |
|
DPS(予) |
配当利回り(予) |
EPS(予) |
PER(予) |
BPS(実) |
PBR(実) |
40.00円 |
3.3% |
60.50円 |
20.0倍 |
334.84円 |
3.6倍 |
*株価は3/4終値。発行済株式数、DPS、EPSは2024年6月上期決算短信より。ROE、BPSは前期末実績。
非連結業績推移
決算期 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期純利益 |
EPS |
DPS |
2019年6月(実) |
10,443 |
921 |
953 |
683 |
25.99 |
9.00 |
2020年6月(実) |
10,920 |
1,036 |
1,074 |
762 |
29.00 |
10.00 |
2021年6月(実) |
11,187 |
1,130 |
1,171 |
840 |
31.98 |
13.00 |
2022年6月(実) |
11,493 |
1,519 |
1,556 |
1,055 |
40.16 |
17.00 |
2023年6月(実) |
13,374 |
1,556 |
1,603 |
1,165 |
44.34 |
20.00 |
2024年6月(予) |
15,000 |
2,250 |
2,290 |
1,590 |
60.50 |
40.00 |
* 予想は会社予想。単位:百万円。
(株)インテリジェント ウェイブの2024年6月期上期決算概要などについてご報告致します。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.2024年6月期上期決算概要
3.2024年6月期業績予想
4.今後の注目点
<参考1:中期事業計画の進捗>
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>
今回のポイント
- 24/6期上期の売上高は前年同期比2.3%増の69億46百万円。システム開発、クラウドサービス、セキュリティの主要3分野が伸長した。他社製品については、前年同期に大型ハードウェア販売があった反動で減収。顧客別では、システム開発会社やカード会社が大幅な増収。最大手DNPは増収基調に反転している中で今上期については小幅な減収。営業利益は同6.1%増の8億52百万円。売上総利益はシステム開発やクラウドサービスの売上増加に加え、大型案件等のシステム開発の利益率が好調に推移して増加した。コストの最適化を図り販管費率は前年同期と同水準になった。売上高・各利益とも概ね計画通り。初めて、15.00円/株の中間配当を実施する。四半期ベースでは、2Qは前年同期比、前四半期比とも大幅な増収増益。
- 通期予想に修正はなく、売上高が前期比12.2%増の150億円、営業利益は同44.5%増の22億50百万円の予想。24/6期も構造改革を推進するが、経営資源を積極的に投入しながら、中期事業計画最終年度の経営目標達成を目指す。下期は自社製品や、FEP更改によるハードウェアの売上増加が見込まれる。加えて大型案件を中心としたシステム開発、セキュリティ等の売上が増加する見通し。利益面では、増収効果とシステム開発の生産性向上等により大幅増益を見込む。配当についても修正なく、期末配当は25.00円、年間で前期比20.00円/株増配の40.00円/株を予定。
- 1Qの減収減益から上期では増収増益となり会社予想の水準で着地した。同社が成長の主軸としているシステム開発、クラウドサービス、セキュリティといった売上はいずれも大幅増収。これら事業領域では売上の拡大もさることながら目を引くのは受注の増加である。上期の受注は前年同期比51%、受注残は同49%増加している。なお、通期予想に対する進捗率が売上高で46%、営業利益で38%にとどまっているが、これは下期に自社製品やFEP更改によるハードウェアの売上が見込まれるためである。25/6期を初年度とする新たな中期事業計画を発表予定であり、注目したい。
1.会社概要
クレジットカード決済等のオンラインシステムに利用される金融フロントシステムで国内シェアNo.1のソフトウェア開発会社。
金融フロントシステムは、店舗の端末や銀行の店外CD/ATM・海外ATM等をクレジットカード会社や銀行等のネットワークに接続して取引データの受渡しを行う。“リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術”、“システムを止めないためのノンストップ技術”、及び“高度なセキュリティ技術”を技術基盤とし、カード不正利用検知システムや証券関連の情報集配信システムでも豊富な実績を有する。
地銀やノンバンク等向けに金融フロントシステムやカード不正利用検知システムのクラウドサービスも伸びている。営業面では、筆頭株主として議決権の50.73%を保有する大日本印刷(株)及びそのグループ企業との連携が強みとなっている。
【経営理念 :
次代の情報化社会の安全性と
利便性を創出する】
ネットワークゲートウェイ専門会社として、社員一人ひとりが、進取の気性を持った技術者集団としてあり続ける事で、次世代の新たなキラーシステムを創出し、次の30年を見据えた成長の軌跡を描いていく。そのためには、性別や国境にとらわれない多様な価値観が生み出すエネルギーが必要不可欠というのが同社の考え。また、常に新しい事に挑戦し、働きがいのある企業風土を作りあげる事で、社会における同社の企業価値も高めていく。
カード決済に不可欠な機能を提供するシステムの開発や運用を担う同社は、どのような事業環境になっても業務の継続が求められる。同社に受け継がれている「止まらないシステム」を追求する思想は、IT基盤の構築やセキュリティ機能の向上を支える技術と深く結びついており、今後、あらゆる業界に幅広く浸透していく、というのが同社の考え。
企業は、社会に貢献する事がなければ存在価値がない。同社は、これまでに培ってきた技術力を進化させ、安全でストレスなく情報を取得できる仕組みを築きあげる事で、ユーザーを通じて社会全体から信頼される会社を目指している。
【事業内容】
金融業界を中心とした全業種の企業を主要顧客として、決済を中心に、様々なデータの受渡しに必要なシステム(ITインフラ)を開発するほか、保守、クラウドサービスなどのサービス提供、製品およびハードウェアの販売、データの利活用に係る情報セキュリティ対策、サイバーセキュリティ対策の製品の開発・販売などを手掛けている。
システム開発は、クレジットカードの決済処理を完遂するために必要なネットワーク接続やカードの使用認証等の機能をもつFEP(Front End Processing)システムの開発業務などが中心。
なお、これまではクレジットカード会社を主な顧客として、カード決済に不可欠なシステムの開発や関連するサービスを提供する金融システムソリューション事業と一般の事業会社を主な顧客として、情報セキュリティ対策、サイバーセキュリティ対策の製品を販売するプロダクトソリューション事業の二つを報告セグメントとしてきたが、両事業で個別に管理していた顧客の情報を共有し営業活動を強化すると共に、セキュリティ対策技術の開発体制を強化し、新製品、新サービスの開発を促進するために、23/6期より金融業界を中心とした全業種の企業を顧客とする単一セグメントに変更した。
また、22/6期より、ストック/フローの類型による売上高の分類をより詳細に表示するために、売上カテゴリを見直し、契約の形態や業務の実態等から判断して、定常的に一定規模の売上高を計上できる案件をストック、そうではないものをフローとして分類して開示することとした。
ストック型売上として典型的なものは、クラウドサービス事業に係るシステムの利用料やシステム運用の対価、または、自社製品や他社製品の保守業務の対価。クラウドサービスの利用料は、「サービス自社」に分類される。
フロー型売上として典型的なものは、受託開発業務の対価や、自社製品、他社製品の販売対価。
23/6期はフロー、ストックがほぼ半々だが、今後はクラウドの伸長など、ビジネスモデルの変革に伴いストックが上回っていくと会社側は見ている。
◎主要製品およびサービス
*「NET+1」
店舗の端末や銀行の店外CD/ATM・海外ATM等をクレジットカード会社や銀行等のネットワークに接続して取引データの受渡しを行うためのソフトであり(ネットワーク接続機能、決済の前提となるカード認証機能、加盟店の業務を管理する機能等を有する)、専用ハードと共に提供される。この分野で圧倒的なNo.1ブランドであり、大手クレジットカード会社のネットワークへの接続で7割のシェアを有する。
*「ACEPlus」
偽造カード・盗難カード利用などクレジットカードや銀行口座の不正利用の検知を目的とした自社開発の不正検知システム。シェア6~7割と、豊富な実績を有する。
*クラウドサービス
23/6期は前期比59.2%増収と、近年大幅に伸びているサービス。サービス毎の概要は以下の通り。
■IOASIS(アイオアシス)
加盟店契約(アクワイアリング)業務に必要なすべての機能を提供するASP型サービス。24時間365日の運用を提供。主な導入企業:地銀、ネット銀行、中小カード会社、大手事業会社(通信、小売など)
■IPRETS(アイプレッツ)
決済におけるポイント管理システム。ポイント付与、利用、キャンペーン等に対応したASP型サービス。
■IGATES(アイゲイツ)
国内外の各種決済ネットワークの24時間365日接続システムを提供。国内で高いシェアをもつ「NET+1」の機能を継承したASP型サービス。
主な導入企業:大手カード会社、中小カード会社、フィンテックベンチャー(スマートバンクほか)
■IFINDS(アイファインズ)
クレジット決済不正検知システム。国内で高いシェアをもつ「ACEPlus」の機能を継承したASP型サービス。
■FARIS(ファリス)
ACEPlus、IFINDSに機能追加。AIを駆使した高度なアルゴリズムを搭載。
インテリジェントウェイブの決済事業領域
既存領域で培った開発力や業務ノウハウをもとに、決済事業の事業領域を拡大
(同社資料より)
*「CWAT(シーワット)」
「NET+1」や「ACEPlus」等で培ったネットワーク技術やセキュリティ技術をベースとした情報漏洩対策システム。
顧客の業務に使用されるPC 端末(エンドポイント)から、コピー、印刷、ネットワーク経由等による情報の内部からの持ち出しを監視する。
「CWAT(シーワット)」を中心に、内部情報漏洩対策、脆弱性対策、及び外部攻撃対策について、監視・検出・診断・認証と防止・阻止の切り口から各種ソリューションも提供している。
2.2024年6月期上期決算概要
2-1業績概要(非連結)
23/6期 上期 |
構成比 |
24/6期 上期 |
構成比 |
前年同期比 |
会社予想 |
予想比 |
|
売上高 |
6,789 |
100.0% |
6,946 |
100.0% |
+2.3% |
7,000 |
-0.8% |
売上総利益 |
2,120 |
31.2% |
2,200 |
31.7% |
+3.8% |
– |
– |
販管費 |
1,317 |
19.4% |
1,348 |
19.4% |
+2.4% |
– |
– |
営業利益 |
803 |
11.8% |
852 |
12.3% |
+6.1% |
850 |
+0.3% |
経常利益 |
824 |
12.1% |
859 |
12.4% |
+4.3% |
870 |
-1.1% |
四半期純利益 |
558 |
8.2% |
584 |
8.4% |
+4.8% |
600 |
-2.5% |
* 単位:百万円
*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。
*費用項目の▲は費用の増加を示す。
増収増益、営業利益率は向上
売上高は前年同期比2.3%増の69億46百万円。1Qは前年同期の大型ハードウェア販売の影響により減収減益となったが、上期はシステム開発、クラウドサービス、セキュリティの主要3分野が伸長し増収となった。他社製品については、前年同期にFEPシステム更改の大型ハードウェア販売があった反動で減収。
顧客別では、システム開発会社やカード会社が大幅な増収。最大手DNPは、これまで減収傾向にあったが基調は増収にある中で今上期については小幅な減収。
営業利益は同6.1%増の8億52百万円。売上総利益はシステム開発やクラウドサービスの売上増加に加え、大型案件等のシステム開発の利益率が好調に推移して増加した。販管費は、前期下期から人的資本投資やオフィス環境整備等で増加しているものの、コストの最適化を図り販管費率は前年同期と同水準になった。
会社予想に対しては、売上高・各利益とも概ね計画通りとなった。
初めて、15.00円/株の中間配当を実施する。
四半期ベースでは、2Q(10-12月)は前年同期比、前四半期(24/6期1Q)比とも大幅な増収増益だった。大型のFEPシステム更改の売上計上がない中で高いレベルの売上高と利益を確保した。
◎ストック/フロー別売上高
23/6期 上期 |
構成比 |
24/6期 上期 |
構成比 |
前年同期比 |
|
ソフトウェア開発 |
2,346 |
34.6% |
2,701 |
38.9% |
+15.1% |
当社製品 |
110 |
1.6% |
70 |
1.0% |
-36.3% |
システムサービス |
15 |
0.2% |
1 |
0.0% |
-90.3% |
他社製品 |
1,220 |
18.0% |
497 |
7.2% |
-59.2% |
フロー売上計 |
3,693 |
54.4% |
3,270 |
47.1% |
-11.4% |
保守 |
1,496 |
22.0% |
1,743 |
25.1% |
+16.5% |
他社製品保守 |
351 |
5.2% |
375 |
5.4% |
+6.9% |
サービス自社 |
997 |
14.7% |
1,293 |
18.6% |
+29.7% |
サービス他社 |
250 |
3.7% |
262 |
3.8% |
+5.1% |
ストック売上計 |
3,096 |
45.6% |
3,675 |
52.9% |
+18.7% |
合 計 |
6,789 |
100.0% |
6,946 |
100.0% |
+2.3% |
* 単位:百万円
22年6月期よりストック/フローの類型による売上高の分類をより詳細に表示するために、売上カテゴリを細分化して開示することとした。契約の形態や業務の実態等から判断し、定常的に一定規模の売上高を計上できる案件をストック、そうではないものをフローと分類している。
クラウドサービスの売上高増加により、ストック売上高は着実に増加。今後はシステム開発等のフロー売上高の拡大と合わせ、規模拡大を目指す。
(同社資料より)
◎製品カテゴリ別売上高
23/6期 上期 |
構成比 |
24/6期 上期 |
構成比 |
前年同期比 |
|
売上高 |
6,789 |
100.0% |
6,946 |
100.0% |
+2.3% |
決済・金融 |
5,393 |
79.4% |
5,007 |
72.1% |
-7.2% |
システム開発 |
2,840 |
41.8% |
3,457 |
49.8% |
+21.7% |
保守 |
816 |
12.0% |
798 |
11.5% |
-2.2% |
自社製品・サービス |
218 |
3.2% |
173 |
2.5% |
-20.6% |
他社製品(ハードウェア等) |
1,517 |
22.3% |
578 |
8.3% |
-61.9% |
クラウドサービス |
881 |
13.0% |
1,180 |
17.0% |
+33.9% |
セキュリティ |
514 |
7.6% |
757 |
10.9% |
+47.3% |
* 単位:百万円
決済・金融におけるシステム開発、クラウドサービス、セキュリティの主要3分野の売上高は大きく伸長した。他社製品は、前年同期にFEPシステム更改の大型ハードウェア販売があったため減収。
◎事業領域別売上高
23/6期 上期 |
構成比 |
24/6期 上期 |
構成比 |
前年同期比 |
|
売上高 |
6,789 |
100.0% |
6,946 |
100.0% |
+2.3% |
決済・金融 |
5,393 |
79.4% |
5,007 |
72.1% |
-7.2% |
FEP・不正検知 |
3,625 |
53.4% |
2,598 |
37.4% |
-28.3% |
決済システム等 |
1,377 |
20.3% |
2,005 |
28.9% |
+45.6% |
金融・その他 |
389 |
5.7% |
403 |
5.8% |
+3.6% |
クラウドサービス |
881 |
13.0% |
1,180 |
17.0% |
+33.9% |
セキュリティ |
514 |
7.6% |
757 |
10.9% |
+47.3% |
* 単位:百万円
決済分野の拡大領域である「決済システム等」は、クレジットカード会社向け大型案件により大きく伸長。FEPは、前年同期にFEPシステム更改の大型ハードウェア販売があったため減少。クラウドサービスは、ユーザー数が増加し伸長。セキュリティについても、既存製品の絞り込みと販売強化の製品範囲を拡げ大幅に増加した。
2-2 受注動向
23/6 1Q |
2Q |
3Q |
4Q |
23/6 1Q |
2Q |
3Q |
4Q |
|
受注残高 |
9,047 |
9,233 |
11,548 |
10,974 |
12,073 |
13,800 |
||
うち、クラウド |
4,214 |
4,589 |
6,913 |
6,695 |
6,717 |
7,098 |
||
受注高 |
3,130 |
3,329 |
5,421 |
2,904 |
4,257 |
5,515 |
* 単位:百万円
受注高・・・「決済・金融」は、クレジットカード会社向け大型案件や、インフラ保守・運用の大型案件、FEP更改等により増加。セキュリティは、既存注力領域と販売拡大領域の受注が増加した。
(同社資料より)
受注残高・・・クレジットカード会社向け大型案件および、インフラ保守・運用の大型案件、クラウドサービス、セキュリティの複数年契約の案件が増加し大幅に増加した。
(同社資料より)
2-3 クラウドサービスの動向
実績
売上高は不正検知の「IFINDS」を中心にユーザー数が前年同期比7社増加。売上総利益は、サービス構成比率の変化や運用体制の安定化により増加した。また、受注・受注残高についても大幅に増加している。
(同社資料より)
2-4 財政状態及び
キャッシュ・フロー(CF)
◎要約BS
23年6月 |
23年12月 |
増減 |
|
23年6月 |
23年12月 |
増減 |
|
流動資産 |
7,863 |
7,532 |
-331 |
流動負債 |
4,165 |
4,658 |
+492 |
現預金 |
4,694 |
3,625 |
-1,068 |
買入債務 |
473 |
725 |
+252 |
売上債権 |
1,982 |
2,282 |
+299 |
前受金 |
2,324 |
2,566 |
+242 |
固定資産 |
5,820 |
6,647 |
+827 |
固定負債 |
718 |
740 |
+22 |
有形固定資産 |
1,025 |
1,160 |
+134 |
退職関連引当金 |
618 |
621 |
+2 |
無形固定資産 |
2,738 |
3,331 |
+592 |
負債合計 |
4,883 |
5,398 |
+514 |
ソフトウェア |
2,340 |
2,470 |
+129 |
純資産 |
8,799 |
8,780 |
-18 |
投資その他の資産 |
2,055 |
2,155 |
+99 |
利益剰余金 |
6,918 |
6,977 |
+59 |
資産合計 |
13,683 |
14,179 |
+496 |
負債・純資産合計 |
13,683 |
14,179 |
+496 |
* 単位:百万円
*株式会社インベストメントブリッジが開示資料を基に作成。
現預金が減少したものの、固定資産が増加したことにより総資産は前期末比4億96百万円増加。
買入債務の増加等で負債合計は同5億14百万円増加。
自己株式(マイナス項目)の増加などで純資産は同18百万円減少。
自己資本比率は前期末より2.4ポイント低下し、61.9%となった。
◎CF
23/6期 上期 |
24/6期 上期 |
増減 |
|
営業CF |
1,717 |
764 |
-952 |
投資CF |
-864 |
-1,213 |
-349 |
フリーCF |
852 |
-449 |
-1,302 |
財務CF |
-447 |
-624 |
-176 |
現金・同等物残高 |
4,336 |
3,619 |
-716 |
* 単位:百万円
売上債権の増加等で営業CFのプラス幅は縮小、投資CFのマイナス幅が拡大したことによりフリーCFはマイナスに転じた。
キャッシュ・ポジションは減少した。
3.2024年6月期業績予想
3-1 業績予想
23/6期 |
構成比 |
24/6期(予) |
構成比 |
前期比 |
|
売上高 |
13,374 |
100.0% |
15,000 |
100.0% |
+12.2% |
営業利益 |
1,556 |
11.6% |
2,250 |
15.0% |
+44.5% |
経常利益 |
1,603 |
12.0% |
2,290 |
15.3% |
+42.8% |
当期純利益 |
1,165 |
8.7% |
1,590 |
10.6% |
+36.5% |
* 単位:百万円
24/6期は2桁増収、利益率も大幅に改善見込み
通期予想に修正はなく、24/6期は売上高が前期比12.2%増の150億円、営業利益は同44.5%増の22億50百万円の予想。
決済事業では不正検知を加速させるほか、事業領域の拡大を図る。クラウドサービス事業は、22/6期以降受注の拡大が続いており、大幅増収の見込み。利用ユーザー増加を見据えたインフラ環境と運用体制の整備を進めながら、規模拡大を図る。 セキュリティ事業においても CWAT などの主力製品のクラウド化を加速するほか、アジアでの事業展開を推進する。また新規事業では AI を活用した省人店舗向けソリューション、AI による日本語校正ツール等が具体化しており、拡大を目指す。24/6期も構造改革を推進するが、品質強化、人的資本、ESG課題等に向けて経営資源を積極的に投入しながら、中期事業計画最終年度の経営目標達成を目指す。
下期は自社製品や、FEP更改によるハードウェアの売上増加が見込まれる。加えて大型案件を中心としたシステム開発、セキュリティ等の売上が増加する見通し。利益面では、増収効果とシステム開発の生産性向上等により大幅増益を見込む。
配当についても修正なく、期末配当は25.00円、年間で前期比20.00円/株増配の40.00円/株を予定。予想配当性向は66.1%。なお、24/6期から配当性向を4割から5割程度に方針変更しているが、24/6期については創立40周年の記念配当10.00円が加わる。
3-2 カテゴリー別売上高予想
23/6期 |
24/6期(予) |
前期比 |
|
売上高 |
13,374 |
15,000 |
+12.2% |
決済・金融 |
10,408 |
11,000 |
+5.7% |
クラウドサービス |
1,867 |
2,500 |
+33.9% |
セキュリティ |
1,098 |
1,500 |
+36.6% |
* 単位:百万円
3-3 注力施策
(1)事業別戦略の進捗状況
• インフラ保守・運用の大型案件を受注
• 主要顧客の大手カード会社2社において領域拡大を推進
• DNPと新たな決済サービス創出
• カード不正利用被害拡大に伴い、不正利用検知サービスの引き合い増加
• JCBの不正取引情報WEB連携サービス「MATTE」の機能拡張を開発中
• 全サービスのパブリッククラウド移行計画を見直し、順次移行開始
• 既存製品の絞り込みにより販促活動を効率化
(「CWAT」「Morphisec」「Cortex」「Recorded Future」)
• DNPのCWATクラウド採用により、両社で販売強化
• 「鍵管理システム(HSM)」「ID管理ソリューション」等の販売強化
• 放送業界向けソリューション「EoM」が、国内特許を取得(22年に米国特許取得済)、
海外展開では、欧州複数社にてPoC開始
• メディアデータ分析ソリューション「AIMD」が複数の工場でPoC開始
(2)カード不正検知サービス/最先端の取り組み
JCBと共同で推進する「セキュリティコンソーシアム」の一環として、JCBが展開する不正取引情報WEB連携サービス「MATTE」を機能拡張。JCBブランド以外の国際カードブランドの取引情報も連携可能にすることで、カード不正利用額の削減を目指す。
「MATTE」とは、カード発行会社および加盟店にて不審なカード利用がされた際に、配送停止や不正利用確認のため、WEB上でリアルタイムに情報連携を行うサービス。
⇓ 機能拡張により、JCBブランド以外の国際ブランドの取引に関しても対応が可能に。 技術提供は同社が担当し、24年秋頃の実用化を予定。 |
(同社資料より)
■ 「セキュリティコンソーシアム」について
23年7月に業界全体の不正利用対策を推進する仕組みの構築に向け、同社とJCBは業務提携基本契約書を締結。
両社既存のソリューション提供に留まらず、今までにない業界横断的なノウハウやデータの共有により不正検知を高度化。さらに、JCBブランドだけではなく、他の国際カードブランドへの仕組みの提供を目指す。
(3)セキュリティ領域の拡大
これまで注力していたサイバーセキュリティ領域の取扱製品を絞り込み、不正利用検知システムや認証システムなどの技術等を活かした分野への領域拡大を進め、規模拡大を目指す。
(同社資料より)
(4)サステナビリティ活動に向けた取組み
同社が特定した4つのマテリアリティの実現に向けて、多様な取組みを推進
インテリジェントウェイブのマテリアリティ
(同社資料より)
(同社資料より)
(5)ビジネスリライアビリティの実現
(同社資料より)
4.今後の注目点
1Qの減収減益から上期では増収増益となり会社予想の水準で着地した。これは前年同期にあった大型ハードウェア更改の反動はあったものの、同社が成長の主軸としているシステム開発、クラウドサービス、セキュリティといった売上はいずれも大幅増収。これら事業領域では売上の拡大もさることながら目を引くのは受注の増加である。上期の受注は前年同期比51%、受注残は同49%増加している。佐藤社長は、「これまで土台つくりをしてきたが、何とか成長が見えてきた」とやや控え目なコメントだったが、今後の自信の現れと受け止めている。特にセキュリティにおいて、23/6期にやや苦戦し構造改革を進めていたが軌道に乗ってきた。なお、通期予想に対する進捗率が売上高で46%、営業利益で38%にとどまっているが、これは下期に自社製品やFEP更改によるハードウェアの売上が見込まれるためである。
上期決算を好感し、株価は上昇した。PERは20倍を超え今期業績についてはかなり織り込んだ水準には達した。ただし、急増している受注の増加から、来期以降に考えられる成長を考慮すると評価不足の印象を持っている。25/6期を初年度とする新たな中期事業計画を発表予定であり、注目したい。
<参考1:中期事業計画の進捗>
1-1 基本方針
次なる成長を目指すためのミッションは以下のとおり。
ミッション |
ビジネスリライアビリティの実現 |
ビジネスリライアビリティとは、顧客事業の信頼性および同社事業の信頼性を高め続けること(同社の造語)。
3年目の今期、改めてビジネスリライアビリティの実現に取り組んで行く。
クレジット決済システムの開発により成長してきたが、今後の成長を見据え、従来の決済、金融、セキュリティ分野にとどまらず、企業のビジネスリライアビリティを支える IT サービス会社になることを目指す。
クラウドを積極活用した高速・安全・高品質で利便性の高いIT基盤の提供により、「企業のビジネスリライアビリティを支えるITサービス会社」として同社事業の信頼性と顧客事業の信頼性を高め続けることで、持続可能な社会への貢献を目指す。
ビジネスライアビリティを支える「プロダクト開発」を強みとして、さまざまな顧客のニーズに寄り添い、システム開発、クラウドサービス、インフラ構築・サービス運用、コンサルティング・IT戦略支援など価値あるソリューション、サービスを提供する。
開発は強みではあるものの、保守や運用を含め全方位でソリューションを提供していくという意識改革を明確にするために、従来の「第一システム開発本部」を「第一システム本部」に名称変更した。
1-2 数値計画
22/6期 実績 |
23/6期 実績 |
24/6期 予想 |
25/6期 計画 |
CAGR |
|
売上高 |
11,493 |
13,374 |
15,000 |
16,500 |
+12.8% |
決済・金融 |
9,321 |
10,408 |
11,000 |
11,800 |
+8.2% |
クラウドサービス |
1,174 |
1,867 |
2,500 |
3,000 |
+36.7% |
セキュリティ |
998 |
1,098 |
1,500 |
1,700 |
+19.4% |
営業利益 |
1,519 |
1,556 |
2,250 |
2,500 |
+18.1% |
営業利益率 |
13.2% |
11.6% |
15.0% |
15.2% |
– |
ストック比率 |
45.3% |
49.0% |
52.0% |
53.9% |
– |
* 単位:百万円
クラウドサービスが強力な牽引役となる。23/6期に続き、24/6期も大幅な増収となる見通し。25/6期についても、クラウドサービス売上高30億円超も可能との考え。
ストック比率の上昇により、より安定した成長を目指す。
1-3 25/6期を初年度とする
新たな中期事業計画を発表へ
中期事業計画は例年ローリングされてきたが、24/6期の目標達成を目指すとともに、25/6期を初年度とする新たな中期事業計画を発表の見通し。
<参考2:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態及び取締役、監査役の構成
組織形態 |
監査役設置会社 |
取締役 |
6名、うち社外2名 |
監査役 |
5名、うち社外3名 |
◎コーポレート・ガバナンス報告書(更新日:2023年9月28日)
基本的な考え方
当社は、「次代の情報化社会の安全性と利便性を創出する」ことを経営理念に掲げており、それに則って、「高速、安全、高品質で利便性の高いIT基盤を提供する」事業を推進することによって企業価値を高め、社会に貢献することを経営方針に掲げています。
当社が開発するシステムは、社会にとって必要不可欠なインフラストラクチャー(IT基盤)であり、システムの安定性を必須の条件として、高速かつ安全に取引を完遂するために、高い水準の品質が求められています。当社は、多くの開発実績と安定的な運用実績を有しており、この実績によって顧客から得られる信頼が、当社の事業を支え、発展させる基盤になるものと考えています。
当社は、今後ともより多くの顧客に信頼されるIT基盤の提供を通じて、当社の事業基盤を拡大、発展させていくことで、当社のステークホルダーの期待に応えることを事業の方針にしています。
当社は、独立社外取締役、独立社外監査役を選任し、これら独立役員を主要な構成員とする指名・報酬委員会を取締役会の下に設置し、経営監督機能の強化を進めています。
また、当社の経営と事業の状況を理解するうえで有益な情報を公正かつ速やかに開示し、市場との対話を促進することで、経営の透明性を確保することを基本方針にしています。併せて、社員のコンプライアンス意識を高めるための教育を徹底し、総合的にコーポレート・ガバナンスの充実に努めています。
当社は、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の主旨に則り、環境、社会、ガバナンスに関する課題解決に自律的に取組むことで、当社事業の持続的な成長と、社会の持続可能な発展に貢献します。
当社は、これまでESG課題のうち、当社の従業員を対象にした人的資本の向上に係る取組みを中心に進めており、こうした活動を推進する体制の中心となる機関として、2021年4月にサステナビリティ委員会を設置しました。
サステナビリティ委員会は、代表取締役社長である佐藤邦光を委員長とし、常勤取締役及び執行役員を主な委員として構成しています。当社の企業行動基準が掲げる「社会への貢献」「良い企業風土の構築」「人権の尊重」「多様性の尊重」「地球環境への配慮」その他の実践に係る方針を定め、全社的な活動推進の継続性を確保するための基幹的な組織として活動しています。クレジットカード決済という、重要な社会インフラを担うシステム開発会社である当社にとって、人的資本である従業員等は最も重要な経営資源であり、その健康増進を進めることは、当社の中期的経営目標や経営理念の実現に極めて有益です。当社は、この基本的な考え方を、従業員等及びすべてのステークホルダーと共有することを目的に、健康経営宣言を策定し、健康増進に対する施策等を進め、2023年3月8日、経済産業省指定の「健康経営優良法人2023(大規模法人部門(ホワイト500))」に認定されました。また、当社は、事業の信頼性を高め、持続可能な社会に貢献するために、マテリアリティ(重要課題)について討議を重ね、「環境にやさしい持続可能な未来社会を創る」「自分らしく輝ける未来社会を創る」「イノベーションを通じ、安全で豊かな未来社会を創る」「社会からの信頼を高めるリスク管理とガバナンス」の4つを特定し、それぞれの重要テーマ、目標、及び行動計画を2023年4月に定めました。
今後は、推進体制をさらに強化し、サステナビリティ活動を社内に浸透させることで、社員とともに経営課題、社会課題を解決し、当社の強みを生かした新たなソリューション創出を目指します。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しています。
<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示(抜粋)>
【原則1-4 政策保有株式】
<政策保有株式の縮減に関する方針・考え方>
当社は、当社の事業の拡大や関係強化を目的に政策保有株式として上場株式を保有していますが、随時に保有の適否を検証し、保有を継続することが当社及び発行会社の価値向上に貢献しないものと判断される株式については、保有を継続せず順次縮減する方針です。
< 政策保有株式の保有の適否の検証内容>
保有する株式については、四半期ごとに発行会社の経営状況を把握し、その将来性や当社事業との関連性を評価し、保有による中長期的な経済合理性について総合的に検証します。保有によるリスクとリターンは、資本コスト等の指標も用いてなるべく具体的に検証するよう努めます。また、保有株式を売却した場合、売却に至る検証の内容を可能な限り開示することとします。
< 政策保有株式に係る議決権行使の基準>
当社は、長期的に、当社の事業の拡大と双方の関係強化が見込まれることと、双方の企業価値の向上に資することを基本方針にして、保有株式の議決権行使を行います。また、こうした方針によって各議案についての検討を行うこととしています。
今後、政策保有の上場株式の銘柄数が著しく増加する等の事情が生じた場合は、別途議決権行使の基準を整える等の手段によって、行使の方針に沿った適切な対応をとる予定です。
【補充原則2-4① 多様性の確保について】
当社は、性別や国籍、年齢、障がいの有無などの属性の違いを活かし、付加価値を生み出していくため、多様な価値観を有する人材の採用を進めています。こうした多様化する社員に適合する職場環境や制度を構築することは、中長期的な成長のために必要不可欠です。
女性社員の活躍を推進するため、女性管理職、高度専門職の人数を2022年6月期の11名から2025年6月期には23名へ倍増することを目標に様々な施策の強化に取り組んでいます。女性社員同士で互いに相談しやすい環境が必要である、という考えのもと、女性社員同士によるメンター制度として、「Intelligent Women’sWave」の活動を継続し、女性社員同士が相談できる環境整備に努めています。女性特有のライフイベント時にも 将来のキャリア形成をイメージできるよう、先輩社員からのアドバイスや様々な社内制度の活用を促すことで、長期的なキャリア形成やスムーズな 育児休業からの職場復帰を支援しています。
また、海外事業を推進するチームには、若手社員を含め外国籍社員の積極的な登用をしています。彼ら彼女らが海外で培った経験や異なる価値観から生まれる多様性を活かし、海外ビジネスへの新たなチャレンジを開始しました。さらに、人事総務本部でも外国籍社員をチームに加え外国籍社員をサポートする仕組みづくりの検討を開始しています。
なお、管理職登用については、国籍や採用の形態を判断の基準にしていないため、外国人、中途採用者の管理職登用について、測定可能な目標を定めていません。
2023年6月末時点で、中途採用者は211名、うち管理職・高度専門職は54名で、全社員に占める割合は、それぞれ43.3%と11.3%です。
【原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針】
当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主や投資家の皆様との双方向の対話を実施しております。株主や投資家との対話においては、代表取締役社長が建設的な対話に向けた統括を行い、経営企画室が社内関係部署と連携のうえ、IR活動をサポートしています。対話を通じていただいたご意見は、適宜取締役会へ報告し、その内容を共有しています。
具体的な活動としては、四半期ごとに、アナリスト・機関投資家向けの決算説明会を開催し、決算説明会終了後には決算説明会動画や当日の質疑応答も含めた決算説明会書き起しをコーポレートサイトに掲載しています。また個人投資家の皆様にも、当社や当社事業への理解を深めてもらうため、個人投資家向け説明会をはじめ、各種イベント等を企画し、実施しています。
株主との対話に際しては、IRポリシーに則り適切な情報開示に努めるとともに、「インサイダー取引防止規程」に従い、インサイダー情報の管理、 徹底を図り、情報漏洩防止に努めています。
<株主との対話の実施状況等 >
株主や投資家との個別面談については、代表取締役社長や取締役が、可能な限り直接対話をしています。2022年7月~2023年6月までの株主との個別面談件数は40件です。個別面談においては、業績、事業環境や、今後の見通し等についての確認から、中長期的な成長戦略や人的資本を中心としたサステナビリティ活動、親会社との関係性などが話題に挙がります。個別面談でいただいたご意見等は、適宜取締役会で共有し、経営の参考にしています。
<資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応 >
当社は、継続的な収益力の向上の指標として営業利益率を主要な経営指標とし、2024年6月期には15.0%の達成を計画しています。営業利益率の向上は、当社のROE(自己資本利益率)の向上に繋がるものと考えられます。営業利益率の向上を、収益力の向上と事業の効率性の向上を示す指標と位置付け、ROEは当社の資本効率を示す指標とします。
また、当社は、当社の株主資本コストを7.7%*と推計しており、ROEを評価する際の指標にしています。エクイティスプレッド(ROEと株主資本コストとの差分)の増加を意識しつつ、収益力の強化によるROEの改善を目指します。
*CAPM(Capital Asset Pricing Model、資本資産評価モデル)による。