LA ホールディングス(2986) 創業以来初の年間売上達成
脇田 栄一 社長 |
株式会社LAホールディングス(2986) |
企業情報
市場 |
東京証券取引所 グロース市場、福岡証券取引所 本則市場 |
業種 |
不動産業 |
代表取締役社長 |
脇田 栄一 |
所在地 |
東京都港区海岸1丁目9番18号 国際浜松町ビル7階 |
決算月 |
12月 |
HP |
https://lahd.co.jp/ |
株式情報
株価 |
発行済株式数(期末) |
時価総額 |
ROE(実) |
売買単位 |
|
4,550円 |
6,246,775株 |
28,422百万円 |
25.0% |
100株 |
|
DPS(予) |
配当利回り(予) |
EPS(予) |
PER(予) |
BPS(実) |
PBR(実) |
220.00円 |
4.8% |
560.30円 |
8.1倍 |
2,409.00円 |
1.9倍 |
*株価は2/22終値。各数値は2023年12月期決算短信より。
業績推移
決算期 |
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
当期純利益 |
EPS |
DPS |
20年12月(実) |
13,757 |
1,124 |
978 |
650 |
123.58 |
43.00 |
21年12月(実) |
14,677 |
3,216 |
2,847 |
1,959 |
410.83 |
132.00 |
22年12月(実) |
18,253 |
4,226 |
3,730 |
3,381 |
638.25 |
200.00 |
23年12月(実) |
31,499 |
5,552 |
4,941 |
3,293 |
549.10 |
211.00 |
24年12月(予) |
33,000 |
5,700 |
5,000 |
3,500 |
560.30 |
220.00 |
25年12月(計画) |
51,000 |
8,200 |
7,400 |
5,100 |
816.40 |
未定 |
*単位:百万円。予想は会社側予想。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。25/12期は中期経営計画(23/12期~25/12期)より。
株式会社LAホールディングスの会社概要、業績動向、脇田社長へのインタビューなどをお伝えします。
目次
今回のポイント
1.会社概要
2.中期経営計画
3.2023年12月期決算概要
4.2024年12月期業績予想
5.脇田社長へのインタビュー
6.今後の注目点
<参考:コーポレートガバナンスについて>
今回のポイント
- 新築不動産販売、再生不動産販売、不動産賃貸の3つのビジネスを中核事業として展開。再生不動産販売の主力シリーズ「ラ・アトレ Premium-Renovation ®」は、富裕層のニーズにマッチした「上質」を提供する企画・デザインを特徴としており、価格も1億円台~9億円台と、高価格・高付加価値を追求。他社が手掛けていない独自のポジション確立している。九州・沖縄での事業展開にも注力中。
- 「中期経営計画」(2023年12月期~2025年12月期)では、既存事業の深化を中心に、2025年12月期「売上高510億円、経常利益74億円」を目指す。
- 23年12月期の売上高は前期比72.6%増の314億円。収益不動産開発のオフィスビル及び商業ビルの販売が好調。再生不動産販売は、高価格帯物件が好調で、創業以来初の年間売上100億円を達成した。営業利益は同31.4%増の55億円。販管費も同65.3%増加したが、高付加価値戦略が奏功し大幅な増益。売上高営業利益率は同8.2ポイント上昇した。
- 24年12月期の売上高は前期比4.8%増の330億円、営業利益は同2.7%増の57億円を予想。引き続き3事業部門とも中期経営計画の方針に基づいて事業を展開する。配当は前期比9円/株増配の220.00円/株の予定。予想配当性向は39.3%。
- 脇田社長に、同社の競争優位性、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。「モノづくりの会社である当社は、販売戸数の増大を目標とするのではなく、コモディティ化することを徹底的に避け、常に高付加価値を追求しており、マーケットプライスを自分たちで形成することができる点が大きな特徴である点を、是非知っていただきたいと思います。」「まだまだ小さな会社ではありますが、常に独自性を追求して着実な成長、時価総額の拡大を目指してまいりますので、是非応援していただきたいと思います。」とのことだ。
- 再生不動産販売を行っている主な上場企業との主要指標を比較してみると、同社は、売上規模は下位ながらも、営業利益率は2位、ROEはトップで、脇田社長が目標としている収益性の高さが際立つ。PBRも唯一、1倍を大きく超えている。「モノづくり会社」として、次にどんな商品を創り出してくるのかに注目したい。
1.会社概要
新築不動産販売、再生不動産販売、不動産賃貸の3つのビジネスを中核事業として展開。再生不動産販売の主力シリーズ「ラ・アトレ Premium-Renovation ®」は、富裕層のニーズにマッチした「上質」を提供する企画・デザインを特徴としており、価格も1億円台~9億円台と、高価格・高付加価値を追求。他社が手掛けていない独自のポジション確立している。九州・沖縄での事業展開にも注力中。
【1-1沿革】
同社の前身は、1990年12月に不動産の売買、販売代理、賃貸管理及びゴルフ会員権の売買を目的として設立された株式会社ラ・アトレにじゅういち。業容拡大に伴い2006年6月には大阪証券取引所「ヘラクレス市場」に上場した。
その後の業績低迷に伴い、経営再建を託され、2012年12月、脇田栄一氏(現 株式会社LAホールディングス 代表取締役社長)が招聘される(2013年3月、株式会社ラ・アトレ代表取締役社長就任)。
20代より建築設計や不動産開発で実績を積み上げていた脇田氏のリーダーシップの下、資本増強、経営戦略の転換を進め、経営再建は順調に進捗。
2020年7月、株式会社ラ・アトレが単独株式移転により株式会社LAホールディングスを設立し、東京証券取引所JASDAQ(グロース)に株式を上場(株式会社ラ・アトレは2020年6月に上場廃止)、同月、脇田氏が株式会社LAホールディングス 代表取締役社長に就任。
2022年4月、東証の市場再編により、JASDAQ(グロース)からグロース市場に移行した。
【1-2 企業理念】
以下のようなグループ企業理念、グループ経営理念を掲げている。
グループ企業理念 | “魅力ある商品・サービス”を創作し、多くの人々の“豊かな魅力ある社会”の実現に貢献します。 |
グループ経営理念
1 | 既成のビジネスモデルにとらわれず、新しい時代の新しい経済環境に即応し斬新で革新的な経営を考えることにより社員の叡智と創造力を高めもって自由闊達な社風作りと安定した成長を図るとともに社会との共存共栄を目指す。 |
2 | “住まいは人の心を創り人の生活を創る”ことを常に認識し、住まい本来の機能性や居住性の追求はもちろんのこと、地域社会や環境と調和し、時代や流行の変化を先取りする洗練された魅力的な商品を提供することにより、お客様のご要望に的確にお応えする経営を目指す。 |
3 | 地域社会の生活を尊重したクリーンでフェアーな企業活動を通じて、“心豊かになるような住まい”を提供することにより、地域の住環境創りに寄与する経営を目指す。 |
4 | 共に働く人々が、努力と研鑽を重ねることによって自分の能力を最大限に発揮することができ、生き生きと輝き夢のある楽しい人生を送れるような職場環境作りを目指す。 |
5 | “お客様の満足度と社員の意欲が企業を支えるものである”ことを念頭に、利益の適切な還元を図ることによって社会との調和のある経営を目指す。 |
【1-3 事業環境】
同社を取り巻く主要な事業環境は以下のとおりである。
◎不動産投資市場
2023年のJ-REITの物件取得額は、前年比で26%増加し1兆1,043億円となり、2年ぶりに1兆円を上回った。
不動産投資の需要は堅調に推移している。
(同社資料より)
◎首都圏中古マンション市場
2023年の首都圏中古マンションの成約件数は前年比1.6%増の35,987件と、2年ぶりに前年を上回った。
成約物件を価格帯別に見ると、5,000万円超の各価格帯が成約件数、比率とも拡大している。
(同社資料より)
◎高齢化の推移と将来推計
2010年をピークに総人口は減少に転じる一方、65歳以上の人口比率は2045年まで上昇傾向にあり、同社の取り扱う高付加価値・高価格マンションの需要は、堅調に推移すると思われる。
(同社資料より)
【1-4 事業内容】
報告セグメントは「新築不動産販売部門」「再生不動産販売部門」「不動産賃貸事業部門」の3セグメント。報告セグメントに含まれない事業セグメント「その他」には不動産売買仲介業務、他の事業から派生する事業等が含まれる。
また、「新築不動産販売部門」における「土地企画販売」「新築不動産販売」の、「再生不動産販売部門」における「リノベーションマンション」「インベストメント事業」のそれぞれ売上高、売上総利益を、決算説明資料等で開示している。
※セグメント利益は、各セグメントの売上総利益から販売費用及び営業外費用を差し引いたもの。
(1)新築不動産販売事業
①デベロップメント業務 | <概要>
◎収益不動産開発(株式会社ラ・アトレ) 居住用マンションなどの賃貸レジデンス及び店舗ビル、オフィスビルなどの都市型商業ビルの開発業務を行い、投資法人及び一般法人等へ販売する。
◎新築分譲マンション開発(株式会社LAホールディングス、株式会社ファンスタイル) 開発業務を行い、一般顧客等へ販売する。
<特徴> 土地の仕入れ及び商品開発に関与することにより、建物のトータルデザインからディテールに至るまでの意匠にこだわり、また、構造、耐震、耐火、省エネ、エコ、空気環境、遮音などの面にも配慮することができる。 仕入れ及び企画の立案を含めた商品開発から販売までの業務を行うことで、社会のニーズを先取りした”魅力ある商品・サービス”を創作している。
・賃貸レジデンス 既存と異なる価値観や非日常のエモーショナルな体験価値を提供する高級賃貸レジデンス「THE DOORS」などのブランド創出・確立を行っている。
・都市型商業ビル 未来の1等地というポテンシャルの高いエリアに注力し”小粒ながらキラリと輝く”をコンセプトにした「A*G(エ-ジ-)」シリーズ及び、コアな層の潜在的なニーズを掘り起こしたオフィスブランドとして”一般的なオフィスとは異なる住宅のようなオフィス”をコンセプトにした「THE EDGE」シリーズの継続的なブランド力の向上を図っている。
・新築分譲マンション 株式会社ラ・アトレの「ラ・アトレレジデンス」及び株式会社ファンスタイルの「レーヴグランディ」としてシリーズ化し、ライフスタイル重視のターゲットに対し、”先鋭的なデザイン”、”独自の世界観”、”エッジのきいた”をキーワードに新しい価値を提供している。
これらの商品開発で土地情報を有効に活用して仕入れ機会を増大できるという点が強みである。 |
②土地企画販売業務
|
株式会社ラ・アトレがデベロップメント業務において用地として検討している土地の中で、最終的に商品開発の基準に達しなかったものの、比較的優良なものについて、同業他社に開発企画プランや一定の手続きを行ったうえで、土地と事業企画とをセットとして売却する。
買手にとっては、開発に要する時間を短縮することができるというメリットがある。 |
③新築マンション買取再販業務 | 株式会社ラ・アトレが他のデベロッパーが開発した物件について、立地、開発コンセプト、安全性、デザイン性、居住性、収益性などを検討したうえで、新築のまま買い取り販売する。
これまで培ってきたノウハウを生かして、物件に合わせたライフグッズ、ファニチャー、インテリア等をコーディネートし、住宅ローンのアドバイス及び紹介等も行うことによって付加価値をつけて販売する。 |
(2)再生不動産販売事業
①戸別リノベーションマンション販売業務 | <概要>
株式会社ラ・アトレ及び株式会社ラ・アトレレジデンシャルが中古マンションを戸別に仕入れ、リニューアル(戸別リノベーション※1)内容の企画・立案などにより洗練された住居として再生を図り、株式会社ラ・アトレレジデンシャルが一般顧客等へ販売する。
物件の仕入れは、立地、価格、規模等を吟味・厳選して、仲介・流通不動産業者、サービサー、金融機関を通じた債権処理の情報等を活用して戸別に買い取る。
<特徴> 中古マンションに対して新築同様の内装・設備等を施し、機能性の高い戸別リノベーションマンションを顧客に対して、同じ条件の新築物件よりもリーズナブルな価格で販売することが可能。 高価格帯のプレミアム領域に注力し、1戸当たり1億円以上の「「ラ・アトレ Premium-Renovation®」と、1戸当たり7,000万円以上1億円未満の「Hi▶La▶Re(ひらり)」の、コンセプトが異なる2つのマンションをシリーズ化し、他にはない立地の希少性と洗練された居住空間に仕上げ、魅力的な商品を提供している。
さらに、新たな価値創造を目指し、10億円以上のハイグレードな邸宅「Billion-Residence」の展開を開始した。 |
②1棟リノベーション分譲業務 | <概要>
株式会社ラ・アトレが企業所有の社員寮・社宅、首都圏の賃貸マンション等を対象として、建物1棟を取得後、全面的にリノベーションし、株式会社ラ・アトレレジデンシャルが一般顧客等へ戸別に販売する。
<特徴> 株式会社ラ・アトレの再生ノウハウを活用して建物全体に対してデューデリジェンスを実施。それに基づき専有部分だけでなく共用部分も含めて全面的に改装(1棟リノベーション※2、コンバージョン※3)することによって、建物の機能を大幅に刷新し、魅力的な分譲物件に仕立てている。 建物の管理計画、修繕計画、資金予算等を作成し、管理組合の組成、管理専門業者の選定など、入居後も安心して暮らせるように住環境の整備にも注力している。 |
③インベストメントプロジェクト業務
|
<概要>
株式会社ラ・アトレが、首都圏のレンタルオフィスビル、企業所有の社宅、賃貸レジデンス等を対象として、建物1棟を購入し、その後同社の再生ノウハウを活用して、建物全体に対して、より収益性を高めるための詳細なデューデリジェンスを施実施する。
このデューデリジェンスに基づき建物管理等に関するコストマネジメントを行い、同時にコンバージョンや建物をリノベーションすることによって建物を刷新し、テナント・入居者の誘致能力を高めて収益力のアップ及びキャッシュ・フローの改善を図り、その後に売却(法人・個人投資家等)する。 |
(3)不動産賃貸事業
株式会社LAアセット及び株式会社ラ・アトレが固定資産として保有する不動産の賃貸管理、販売用不動産として所有する転売前物件のテナント等の賃貸管理を行う。
自社で保有する不動産の賃貸については、ヘルスケア施設、レジデンシャルホテル、商業施設等を建設又は取得し、運用事業者等へ1棟ごと賃貸するものと、オフィスビル、賃貸レジデンスを建設又は取得し、個別に賃貸をするものなどがある。
※1:戸別リノベーション
建築後一定の時間が経過した中古マンションに対して、内装・間取り・住設機器等を見直すことによって機能性を高め、また新築同様の洗練された住居として再生すること。
※2:1棟リノベーション
価値の低下した建物を、建物の修繕履歴(トラックレコード)を含めて全面的に精査し、老朽化した設備を刷新したり建物に新たな機能を追加したりすることによって建物全体の価値を向上(バリューアップ)させること。
※3:コンバージョン
オフィスビルをマンションに変更したり、寮や社宅を商業系施設に変更したりするなどの、建物の用途変更を伴う改修を行うこと。
【1-5 特長・強み・競争優位性】
同社最大の競争優位性は、新築不動産販売および再生不動産販売それぞれにおいて、独自のポジショニングを確立している点である。
(1)新築不動産販売
開発規模に関しては、10-40億円の中規模開発に絞っている。、
開発エリアについても、「未来の一等地」となるポテンシャルの高いエリアを発掘することに注力しており、それを可能にする情報収集力や目利き力に大きなアドバンテージを有している。
また、開発期間に関しては長期間ではなく、2-3年程度のプロジェクトに絞り、効率を重視している。
このように、特定のマーケットと特定のエリアに絞ることで、競争優位性を見いだしており、他社が手掛けにくいホワイトスペースを見つけ出すことで、独自のポジションを確立している。
(同社資料より)
(2)再生不動産販売
主力シリーズの「ラ・アトレ Premium-Renovation ®」は、富裕層のニーズにマッチした「上質」を提供する企画・デザインを特徴としており、価格も1億円台~9億円台と、高価格・高付加価値を追求している。
また、広さに関しては「100㎡以上」、エリアに関しては「都心3区」をターゲットとしており、他社が手掛けていない独自のポジション確立している。
(同社資料より)
2.中期経営計画
2023年2月に公表した「中期経営計画」(2023年12月期~2025年12月期)が進行中である。
【2-1 基本方針】
自社の目指す姿を、「社会のニーズや時代の変化に対応した「魅力ある」まちづくりの創造」「 事業活動を通じた環境・社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献」「中長期での企業価値向上に向けた新たなビジネスモデルの構築」と認識し、事業課題として以下の3つを掲げている。
①既存事業の深化
②新規事業の創出
③M&A推進
(同社資料より)
【2-2 事業課題】
(1)既存事業の深化
コア事業の拡充を図る。
*新築不動産販売事業
首都圏において住居系・商業系の収益不動産開発のプロジェクトが複数進行中である。
2023年6月に竣工した新しいオフィスビル「THE EDGE」(下目黒)は、奥行き約24m、幅約3mに分割した「ウナギの寝床」と言われる京町屋のようなオフィス空間。物理的距離によって生まれる他者とのコミュニケーションの多様性がこれからのオフィスに求められる重要なキーワードと考え企画した。
京都、沖縄では、「ラ・アトレレジデンス」「「レーヴグランディ」「レーヴレアリゼ」といった分譲マンション開発を進めている。
*再生不動産販売事業
1億円から9億円台の「ラ・アトレ Premium-Renovation®」シリーズの販売が好調に推移しており、同シリーズを中心に高価格帯物件に注力し、プレミアム領域での継続的な利益成長を目指す。7,000 万円から1億円以下をターゲット領域とする「Hi‣La‣Re」の販売にも注力している。
(同社資料より)
さらに、新たな価値創造を目指し、10億円以上のハイグレードな邸宅「Billion-Residence」の展開を開始した。
「ラ・アトレ Premium-Renovation® 」事業において長年をかけて培った実績・ノウハウと幅広い情報ネットワークにより厳選して供給する。
(同社資料より)
*不動産賃貸事業
優良な賃貸資産取得による安定的な収益の確保と賃貸ポートフォリオの最適化を進めていく。
特に社会的ニーズの高いヘルスケア施設へは、毎期20億円を目標に積極的な投資を実施する。事業規模を拡大していく上でフロービジネスだけでなく、安定的な収益の確保が見込めるストックビジネスによる収益基盤の強化が不可欠であり、特に利益率の高いヘルスケア施設に経営資源を集中する。
(同社資料より)
(2)新規事業の創出
再生可能エネルギー事業、投資事業、DX事業に取り組んでいる。
再生可能エネルギー事業 | 子会社LAアセットが保有している未利用間伐材を燃料とする木質バイオマス発電設備が竣工した。
循環型エネルギー社会の実現に向けた脱炭素の取り組みを推進する。 |
投資事業 | ミドル、レイターのベンチャー企業を投資対象とするベンチャーファンドを設立したほか、九州エリアのベンチャー事業再生・事業承継ファンド及びベンチャーファンドへの出資を行っている。 |
DX事業 | 建設現場のDXを推進するスタートアップ企業へ出資した。
DXを展開する企業へのM&Aを引き続き検討する。 |
(3)M&A推進
2022年12月30日に沖縄の不動産開発会社株式会社ファンスタイルを完全子会社とした。
今後も継続的な事業成長を実現する上で地方の有力中堅企業との連携を進め、更なる企業価値増大及び事業規模の拡大に取り組んでいく。
M&A候補先としては、「特定のマーケットにおいて高いシェアを有する地方の中堅企業」「後継者不足など事業承継の課題を抱えている企業」「独自の商品・サービスを有し、且つ参入障壁の高い市場で優位性を持つ企業」を想定している。
【2-3 今後の見通し】
2024年1月18日、「中期経営計画」(2023年12月期~2025年12月期)の計画数値を上方修正した。
(上方修正の背景)
信用力向上に伴う金融機関からの資金調達枠の拡大を背景に大型案件の仕入れが順調に進捗しており、さらに商品の高付加価値化を追求することにより毎期増収・増益、最高益更新を達成する計画であるが、世界各地で繰り広げられている戦争による物資供給の遅れや世界的な経済情勢に起因する物価高に伴う建設資材の高騰、また建設業界に従事する建設職人の慢性的な人手不足に加え、2024 年度から予定されている建設業に対する時間外労働の上限規制や週休2日制への移行により建設工期が長期化し、建物の竣工時期の遅れなどの発生が予想される。
こうした環境下において、各期の計画値の算定については保守的に捉えているが、「中期経営計画」の最終年度2025 年12 月期は、新築不動産販売部門において大型開発案件の完成・販売を予定しており、また再生不動産販売事業においても売上高100 億円超が見込まれ、さらに、ヘルスケア施設投資に注力する不動産賃貸事業及び子会社ファンスタイルの沖縄エリアでの事業の更なる拡大、その他M&Aの積極的推進等により、グループ売上高は500億円を超え利益共に大きく伸長する見込みであることから、25年12月期の計画数値を上方修正した。
2025 年12月期は同社グループ創業35 周年に当たる節目の年度であり、役職員一同、さらなる事業発展・企業価値の向上に邁進する考えだ。
20/12期 |
21/12期 |
22/12期 |
23/12期 |
24/12期 (予) |
25/12期 (予1) |
25/12期 (予2) |
|
売上高 |
13,757 |
14,677 |
18,253 |
31,499 |
33,000 |
40,000 |
51,000 |
営業利益 |
1,124 |
3,216 |
4,226 |
5,552 |
5,700 |
6,400 |
8,200 |
経常利益 |
978 |
2,847 |
3,730 |
4,941 |
5,000 |
5,700 |
7,400 |
当期純利益 |
650 |
1,959 |
3,381 |
3,293 |
3,500 |
4,000 |
5,100 |
EPS(円) |
123.58 |
410.83 |
638.25 |
549.10 |
560.3 |
640.3 |
816.4 |
*単位:百万円。25/12期(予1)を(予2)へ上方修正。
【2-4 総資産の成長イメージ】
戦略的な成長投資と安定的な株主還元の両立を図りつつ、資本効率の向上に努め、総資産700億円を目指しながら、毎期高い利益成長を重ね自己資本比率20%以上を維持する(23年12月期の自己資本比率は24.6%)。
内部成長としては、フロー型ビジネスの不動産開発事業とストック型ビジネスの不動産賃貸事業の安定的な成長を追求する。
外部成長としては、シナジーが期待できる企業へのM&A又は戦略的提携のための成長投資を実施する。
(同社資料より)
【2-5 株主還元】
株主への利益還元を経営の重要課題の一つと考えており、企業体質の強化と将来の事業展開、業績見通し等を総合的に勘案し、配当性向「30%以上」を目標とする利益還元を目指すことを基本方針としており、毎期連続増配を目指している。
3.2023年12月期決算概要
【3-1業績概要】
22/12期 |
構成比 |
23/12期 |
構成比 |
前期比 |
予想比 |
|
売上高 |
18,253 |
100.0% |
31,499 |
100.0% |
+72.6% |
+5.0% |
売上総利益 |
6,015 |
33.0% |
8,509 |
27.0% |
+41.5% |
– |
販管費 |
1,788 |
9.8% |
2,957 |
9.4% |
+65.3% |
– |
営業利益 |
4,226 |
23.2% |
5,552 |
17.6% |
+31.4% |
+1.0% |
経常利益 |
3,730 |
20.4% |
4,941 |
15.7% |
+32.5% |
+2.9% |
当期純利益 |
3,381 |
18.5% |
3,293 |
10.5% |
-2.6% |
-3.1% |
*単位:百万円
大幅な増収増益。売上高・営業利益・経常利益は3期連続で過去最高を更新
売上高は前期比72.6%増の314億円。新築不動産販売の土地企画販売は7件。収益不動産開発のオフィスビル及び商業ビルの販売が好調。再生不動産販売は、高価格帯物件が好調で、創業以来初の年間売上100億円を達成した。
営業利益は同31.4%増の55億円。販管費も同65.3%増加したが、高付加価値戦略が奏功し大幅な増益。売上高営業利益率は同8.2ポイント上昇した。
当期純利益は同2.6%減の32億円。投資先ポートフォリオの再構築に伴う投資有価証券売却損、関係会社株式売却損などによる特別損失1億円を計上したことで、微減益。
配当を210.00円/株の予想から211.00円/株に修正した。
【3-2 セグメント別動向】
22/12期 |
構成比 |
23/12期 |
構成比 |
前期比 |
|
売上高 |
|||||
不動産販売事業 |
17,227 |
94.4% |
30,444 |
96.7% |
+76.7% |
新築不動産販売部門 |
11,159 |
61.1% |
15,301 |
48.6% |
+37.1% |
土地企画販売 |
2,557 |
14.0% |
1,550 |
4.9% |
-39.4% |
新築不動産販売 |
8,601 |
47.1% |
13,750 |
43.7% |
+59.9% |
再生不動産販売部門 |
6,067 |
33.2% |
15,142 |
48.1% |
+149.6% |
リノベーションマンション |
6,067 |
33.2% |
10,862 |
34.5% |
+79.0% |
インベストメント事業 |
0 |
0.0% |
4,279 |
13.6% |
– |
不動産賃貸事業部門 |
897 |
4.9% |
1,014 |
3.2% |
+13.1% |
売上高合計 |
18,253 |
100.0% |
31,499 |
100.0% |
+72.6% |
売上総利益 |
|||||
不動産販売事業 |
5,415 |
31.4% |
7,896 |
25.9% |
+45.8% |
新築不動産販売部門 |
4,390 |
39.3% |
5,262 |
34.4% |
+19.9% |
土地企画販売 |
579 |
22.7% |
221 |
14.3% |
-61.8% |
新築不動産販売 |
3,810 |
44.3% |
5,040 |
36.7% |
+32.3% |
再生不動産販売部門 |
1,025 |
16.9% |
2,634 |
17.4% |
+157.0% |
リノベーションマンション |
1,025 |
16.9% |
1,825 |
16.8% |
+78.0% |
インベストメント事業 |
– |
– |
808 |
18.9% |
– |
不動産賃貸事業部門 |
470 |
52.4% |
571 |
56.4% |
+21.5% |
売上総利益合計 |
6,015 |
33.0% |
8,509 |
27.0% |
+41.5% |
*単位:百万円。売上高は外部顧客への売上高。利益の構成比は売上総利益率。決算短信等におけるセグメント情報のセグメント利益は、各セグメントの売上総利益から販売費用及び営業外費用を差し引いたもの。
(1)不動産販売事業
売上高は前期比76.7%増、売上総利益は同45.8%増。
①新築不動産販売部門
売上高は前期比37.1%増、売上総利益は同19.9%増。
高付加価値化が奏功し、主力とする収益不動産開発の販売が利益に貢献した。
土地企画販売では7件の売却を行った。
収益不動産開発のオフィスビル「THE EDGE」(東京都 渋谷区)、商業ビル「A*G二子玉川」(東京都 世田谷区)、「A*G SAKAE」(愛知県 名古屋市)、「A*G西中洲」(福岡県 福岡市)を販売したほか、新築分譲マンション「ラ・アトレレジデンス姪浜」(福岡県 福岡市)及び「レーヴグランディ八重瀬」(沖縄県)が竣工し、全戸引渡しが完了した。
②再生不動産販売部門
売上高は前期比149.6%増、売上総利益は同157.0%増。
主力である戸別リノベーションマンション販売において、価格上昇を背景に「都心3区」「100㎡」「上質」をキーワードとした1戸当たり1億円以上のの「ラ・アトレ Premium-Renovation®」シリーズの販売が好調だった。
インベストメントプロジェクト業務において土地建物(東京都 渋谷区)などの販売が利益に貢献した。
(2)不動産賃貸事業部門
売上高は前期比13.1%増、売上総利益は同21.5%増。
札幌にヘルスケア施設5棟を保有し、新たに1棟を着工予定。
熊本県に第1号案件としてサービス付き高齢者向け住宅、居宅介護支援事業所、デイサービスセンター、クリニックで構成する旧「クイーンズヒル古閑中」(熊本県八代市)の土地・建物を取得した。
アーバンライクとの資本業務提携による熊本県の第2号案件として、ヘルスケア施設を計画中である。
【3-3】
財務状態とキャッシュ・フロー
◎主要BS
22年12月末 |
23年12月末 |
増減 |
22年12月末 |
23年12月末 |
増減 |
||
流動資産 |
39,316 |
49,880 |
+10,563 |
流動負債 |
16,068 |
19,859 |
+3,790 |
現預金 |
9,482 |
12,783 |
+3,300 |
短期有利子負債 |
13,155 |
17,321 |
+4,165 |
販売用不動産 |
12,495 |
15,693 |
+3,197 |
固定負債 |
23,183 |
26,137 |
+2,954 |
仕掛販売用不動産 |
16,343 |
20,463 |
+4,120 |
長期有利子負債 |
22,241 |
25,438 |
+3,196 |
固定資産 |
11,343 |
11,323 |
-19 |
負債合計 |
39,251 |
45,997 |
+6,745 |
有形固定資産 |
10,368 |
10,190 |
-177 |
純資産 |
11,417 |
15,212 |
+3,795 |
投資その他の資産 |
935 |
1,094 |
+158 |
利益剰余金 |
9,043 |
11,948 |
+2,905 |
資産合計 |
50,669 |
61,209 |
+10,540 |
負債純資産合計 |
50,669 |
61,209 |
+10,540 |
*単位:百万円
棚卸資産が前期末比73億円増加し、資産合計は同105億円増加の612億円。
長短有利子負債は同73億円増加し、負債合計は同67億円増加の459億円。
利益剰余金の増加などで純資産は同37億円増加の152億円。
自己資本比率は前期末比2.3ポイント上昇し24.6%となった。
◎キャッシュ・フロー
22/12期 |
23/12期 |
増減 |
|
営業CF |
-3,061 |
-3,202 |
-140 |
投資CF |
-1,479 |
-1,403 |
+75 |
フリーCF |
-4,541 |
-4,605 |
-64 |
財務CF |
6,932 |
7,773 |
+841 |
現金同等物残高 |
9,482 |
12,689 |
+3,206 |
*単位:百万円
新株予約権の行使による株式の発行による収入の増加、自己株式の取得による支出の減少などで、財務CFのプラス幅は拡大。
キャッシュ・ポジションは上昇した。
【3-4 トピックス】
①福岡証券取引所本則市場へ上場
2023年6月、福岡証券取引所本則市場へ上場した。
この上場により東京証券取引所グロース市場との重複上場となった。
(上場の目的)
同社では九州・沖縄エリアでの積極的な事業展開を目指しており、そのための、さらなる社会的信用及び知名度の向上並びに地域経済への貢献を目的としている。
②株式会社アーバンライクと資本業務提携契約を締結
2023年12月、株式会社アーバンライク(熊本県荒尾市、TOKYO PRO Market 上場・証券コード:2992)と資本業務提携契約を締結した。
(株式会社アーバンライクの概要)
2008年2月設立。
熊本県内を始め、周辺エリアでの注文住宅・建売住宅の販売を主力事業とし、「高品質な日本の材料で外国のような家を造る」というコンセプトのもとエリア拡大を続け、今では年間100 棟を超える受注を獲得。その内半分以上は紹介案件という、圧倒的に顧客満足度の高い住宅会社として順調に成長を続けている。
現在では、20〜30 代の若いファミリー層を中心に高い支持を得て、福岡県南部、熊本県北部エリアで商圏販売棟数ナンバーワンの住宅会社となり、九州地区の有力企業としてその地位を築いている。
2021 年7 月には、TOKYO PRO Market へ上場し、住宅事業、不動産事業、福祉関連施設事業を柱に順調に業績を伸ばしている。
特に、福祉関連施設事業においては、熊本県、福岡県、佐賀県、宮崎県各県内の福祉事業者との連携を深め、九州地区での障がい者向けグループホームの建築、販売に注力をしている。
(資本業務提携の目的)
LA ホールディングスは「2023 年~2025 年中期経営計画」の方針に基づき、地方創生、地域経済の活性化を主眼に地元の有力企業を候補先として共同事業の展開を検討している。また、持続可能な社会の実現に向けて地域・社会の課題解決をマテリアリティとして認識し、事業を通じた地域経済への貢献はSDGs の達成に向けた取り組みを推進するうえで大変重要であると考えている。
熊本県においては、半導体受託製造の世界最大手企業である台湾積体電路製造(TSMC)が、日本企業と共同出資にて子会社「JASM」を設立。熊本県菊陽町の第1工場が2024年2月に完成し(2024 年12 月、本格稼働の予定)、第2工場の建設も決定している。
新工場では大規模な雇用が予定されているほか、TSMCの進出が呼び水となって付近に関連企業の立地も進み、近隣・周辺地域では、建設関係者やTSMCの駐在員、関連企業従業員等による居住需要の高まりも見込まれている。
こうした背景から、新工場建設地の菊陽町や関連企業の立地が進む大津町、合志市など周辺地域の地価の大幅上昇、賃貸需要の増加に伴う賃料の上昇とともに賃貸物件の供給が大幅に不足する現象が浮き彫りとなっており、熊本県全域にこの影響が出始めている。
以上のような状況を踏まえ、LA ホールディングスでは、アーバンライクとの資本業務提携は、熊本県を中心とした新たなビジネス展開を図る好機と捉え、同社グループの不動産企画開発・運営・管理に関するノウハウとアーバンライクの営業網(熊本県内7拠点、福岡県内7 拠点、佐賀県内1 拠点)を積極的に活用することで、不動産開発に関するタイムリーかつ有益な情報を取得し、新たなビジネスの創造、相互の業務推進、成長スピードの加速化を図りつつ、更なる事業の発展と地方創生、地域経済の活性化に貢献することを目指す考えだ。
また、LA ホールディングスは、超高齢社会の進展が著しい我が国において、社会的ニーズの高いヘルスケア施設への積極的な投資を成長戦略の一つとして掲げている。
ヘルスケア施設供給の整備・拡充は大きな社会課題の一つであると認識し、現在では、北海道に5棟、愛知県に4棟、首都圏に2棟、合計11 棟のヘルスケア施設を保有しているが、今回の資本業務提携によって、九州地区においても、障がい者向けグループホームのほか新たに有料老人ホーム等ヘルスケア施設を含めた幅広い福祉関連施設事業の展開も進めていく。
※前述のように、熊本県に第1号案件としてサービス付き高齢者向け住宅、居宅介護支援事業所、デイサービスセンター、クリニックで構成する旧「クイーンズヒル古閑中」(熊本県八代市)の土地・建物を取得した。アーバンライクとの資本業務提携による熊本県の第2号案件として、ヘルスケア施設も計画中である。
(資本業務提携の内容)
◎業務提携の内容
*不動産企画開発事業の推進
*九州地区における幅広い福祉関連施設事業の展開・推進
*両社協働による業務推進、成長スピードの加速化
*両社による経営資源の補填
◎資本提携の内容
LA ホールディングスは、アーバンライクの普通株式32,500 株(発行済株式総数の15.06%)を、同社大株主(代表取締役)より2023年12 月18 日付で譲受した。
また、アーバンライクの代表取締役は、今後LA ホールディングス株式を取得する予定。
◎取締役の派遣
2024年1月に開催されたアーバンライクの定時株主総会において、LA ホールディングス執行役員 中野茂氏がアーバンライクの社外取締役に選任された。
③子会社ファンスタイルが再生不動産事業を開始
2022年12月30日に完全子会社とした株式会社ファンスタイルが、2024年2月より、新たに再生不動産事業を開始した。
(ファンスタイル社概要)
2002年11月設立。沖縄県で自社ブランドマンション『レーヴシリーズ』の開発・分譲を中心に、不動産仲介など幅広く不動産事業を展開。
沖縄県内でのマンション供給戸数No.1 を目指している。
(再生不動産事業を開始した背景)
近年の首都圏におけるマンション供給市場の状況を見ると、中古マンションの成約件数が新築マンションのそれを上回っていることから、中古マンション供給サイドにおける新たな価値の創造となるリノベーション需要は年々高まっており、この状況は近い将来地方にも波及していくものと、同社では考えている。
今後沖縄県においても中古マンション需要の高まりが見込めるため、同社グループが首都圏における事業の柱の一つとして取り組んできた再生不動産事業のノウハウを活かし、ファンスタイルが再生不動産事業に参入する。
(具体的な案件)
第1 号案件として、沖縄県中頭郡読谷村の共同住宅『TORII MANSION』を取得し、1 棟をリノベーションした上で24年2 月に販売をスタートした。
*第1 号案件『TORII MANSION』概要
沖縄県中部の中頭郡読谷村に位置する大型外国人向け住宅。
全16 戸全てが150 ㎡以上の4LDK、角部屋、3 面バルコニー付きのゆとりの空間を有しており、購入者の様々なライフスタイルに対応することが可能である。
日本一人口の多い村として有名な読谷村は、昨今の沖縄ブームもあり年々人口が増加し、地価公示価格も大幅に上昇しており、今後も同地区における住宅需要はさらに高まっていくものと同社では考えている。
米軍嘉手納基地が近接しており、実需以外にも軍雇用の外国人を賃借人とした投資目的の購入者層も見込んでいる。
4.2024年12月期業績予想
【4-1 業績予想】
23/12期 |
構成比 |
24/12期(予) |
構成比 |
前期比 |
|
売上高 |
31,499 |
100.0% |
33,000 |
100.0% |
+4.8% |
営業利益 |
5,552 |
17.6% |
5,700 |
17.3% |
+2.7% |
経常利益 |
4,941 |
15.7% |
5,000 |
15.2% |
+1.2% |
当期純利益 |
3,293 |
10.5% |
3,500 |
10.6% |
+6.3% |
*単位:百万円。予想は会社側予想。
増収増益を予想
売上高は前期比4.8%増の330億円、営業利益は同2.7%増の57億円を予想。
引き続き3事業部門とも中期経営計画の方針に基づいて事業を展開する。1ケタ台の増収率・増益率ではあるが、持続的・安定的な売上・利益拡大のための足固めの期と考えている。
配当は前期比9円/株増配の220.00円/株の予定。予想配当性向は39.3%。
【4-2 各事業の取組】
①新築不動産販売部門
成長ドライバーとなる収益不動産開発事業の住居系開発と商業系開発を積極的に展開し、競争優位性のある商品企画により、更なる高付加価値化を追求するとともに、ブランド力向上と地方主要都市へのエリア拡大を図る。
分譲マンション事業においては、「ラ・アトレレジデンス」ブランドを地方主要都市に展開する。沖縄地区においては「レーヴグランディ」ブランドの事業拡大を図り、事業基盤の強化と競争優位性が発揮できる独自のポジションを確立する。
②再生不動産販売部門
主力である戸別リノベーションマンション販売に注力し、1戸当たり1億円以上の「「ラ・アトレ Premium-Renovation®」シリーズを中心として、「Hi▶La▶Re」シリーズ、1戸当たり10億円以上のハイグレードな邸宅「BILLION-RESIDENCE」を展開。
幅広い顧客層のニーズに対応した商品に加え企画・デザイン力により、価格競争に巻き込まれることのない競争優位性の高い高付加価値の商品を提供し独自のポジションを確立する。
③不動産賃貸事業部門
既存オペレーターとのリレーション構築及び優秀な新規オペレーターの発掘に注力するとともに、社会的ニーズの高いヘルスケア施設への積極的な投資を進め、賃貸ポートフォリオの最適化を図り安定的な収益を確保する。
2023年12月に締結した株式会社アーバンライクとの資本業務提携によって、九州地区における障がい者向けグループホームや有料老人ホーム等ヘルスケア施設を含め幅広く福祉関連施設事業の展開を進める。
5.脇田社長へのインタビュー
脇田社長に、同社の競争優位性、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。
Q:まず始めに、御社の競争優位性についてお聞かせください。
当社は、新築不動産販売および再生不動産販売それぞれにおいて、他社の手掛けない独自のポジショニングを確立することで、競争優位性を発揮しています。
2012年に当社の経営携わった際、規模も小さく、資金も豊富ではない中、他社がやらないことに集中することが重要だと考えたわけです。
新築不動産販売においては、開発規模を10-40億円の中規模開発に絞るとともに、開発エリアについても、「未来の一等地」となるポテンシャルの高いエリアを発掘することに注力しており、それを可能にする情報収集力や目利き力は大きなアドバンテージであると考えています。
特定のマーケットと特定のエリアに絞ることで、他社が手掛けにくいホワイトスペースを見つけ出し、独自のポジションを構築しています。
再生不動産販売においては、主力シリーズ「ラ・アトレ Premium-Renovation ®」では、富裕層のニーズにマッチした「上質」を提供する企画・デザインを特徴としており、価格も1億円台~9億円台と、高価格・高付加価値を追求しています。
広さに関しては「100㎡以上」、エリアに関しては「都心3区」をターゲットとしており、こちらも、他社が手掛けない独自のポジションで事業を展開しています。
中古のリノベーションに関しては、事業開始当時、一般的に2,000万円、3,000万円の物件が中心であった中、効率と差別化を重視して、5,000万円の物件を手掛けていったのですが、それを聞いた人間、ほぼ全員が「売れるわけがない」という意見でしたので、逆に成功を確信しました。
新築分譲はマス・マーケットに供給するのに対し、中古リノベーション物件は高額でも、「十分な広さ」「一等地のロケーション」「上質」な物件が、極端な話一人の富裕層のお客様に気に入っていただければビジネスになります。
こうした点に他社に先駆けて集中、特化したことが競争優位性を獲得できた大きな要因です。
Q:社長は自社のことを「モノづくりの会社」と呼んでいますね。
不動産会社というと、「営業力」「販売戸数」が競争力の表れというイメージが強いかもしれませんが、当社は、販売戸数の増大を目標とするのではなく、コモディティ化することを徹底的に避け、常に高付加価値を追求しています。
私が当社の経営に携わる前から建築設計や不動産開発を行ってきた人間であることもあり、当社は、「ビルを買って、リノベーションをして、販売戸数の最大化を目指す」のではなく、常に、「従来にはないものを創り出す」「自分たちで新たな価値を産み出す」「マーケットプライスを自分たちで形成できる事業を探索する」という姿勢で事業を展開する、まさに「モノづくりの会社」なのです。
そして、社員には「モノづくり」については、自由にやってもらう、どんどんチャレンジしてもらう、そうした風土が確立されており、ここが当社の競争優位性の本質的な源泉であると考えています。
Q:そうした競争優位性を更に磨き上げるためにはどんなことが必要でしょうか?
不動産業として、会社のクレジットをさらに引き上げて資金調達力を強化することです。
「モノづくり」においては、例えば10億円の開発を成功させれば、次はより大きな開発に挑戦したくなるのが当然です。
ただし、現状での開発規模は最大で40億円程度であり、100億円、200億円というわけにはいきません。
ですので、そうしたチャレンジができるよう、体力を更に強化していくことが、最も重要なポイントとなります。
現在でも当社の「モノづくり」の様子を外部から見ていた他社の社員が、当社でやってみたいと入社してくれていますが、資金調達力を増強するとともに、良い商品を継続的に創り出すことで、より多くの人間が当社に魅力を感じてもらえるようにしていきたいと考えています。
Q:続いて、九州・沖縄への進出について目的、取り組みをお話しください。
福岡に関してはたまたまある情報をいただいたということもあるのですが、東京は競争が激しいということもあり、先手を打って事業ポートフォリオの多様化を進めていく必要があると考えていましたので、福岡を起点に九州で事業を展開していくこととしました。
そのためには当社が単独で出ていくというよりは、地域社会や地元企業との連携が重要ですので、福岡証券取引所本則市場に上場したほか、熊本県の株式会社アーバンライクと資本業務提携契約を締結しました。
熊本県においては、半導体受託製造の世界最大手企業であるTSMCの第1工場が先日完成し、第2工場の建設も決定しています。TSMCの進出が呼び水となって付近に関連企業の立地も進み、近隣・周辺地域では、建設関係者やTSMCの駐在員、関連企業従業員等による居住需要も増大しており、地元経済への貢献と事業の着実な拡大を目指します。
沖縄に関しては、2022年12月30日に沖縄の不動産開発会社である株式会社ファンスタイルを完全子会社としました。
同社は協力会社との強固な関係性を構築しているほか、沖縄県における開発・分譲事業に関するノウハウが豊富で沖縄での事業展開に大きく貢献してくれると期待しています。
今後も、同社のような地方ナンバーワン企業にグループ入りしていただき、その地方における優位性を獲得していきたいと考えています。
Q:ありがとうございます。では最後に、株主・投資家に対するメッセージをお願いします。
上場企業の責務として、しっかりと利益を上げ、株主の皆様に還元することが重要と認識しています。
株主還元に関しては、インカムゲインとキャピタルゲインの双方をバランスよく実施することが、不動産業界の評価向上にもつながると考えていますので、収益拡大をベースに、株価上昇と配当性向30%以上を目標として、毎期連続増配を目指していきます。
不動産業界においては、間接金融でいかにして資金調達力を強化していくかが重要ですが、そのためには、毎期毎期数字を大きく伸ばすのではなく、3年程度のサイクルで、大きな無理をせず実績を積み上げていく方が、金融機関のクレジット評価が上昇していくことがわかっています。
今期は1ケタ台の増収増益予想ではありますが、棚卸資産は73億円積み増すことができており、来期以降の着実な成長のための準備はしっかりと進んでいます。
また、先ほど申し上げましたように、「モノづくりの会社」である当社は、販売戸数の増大を目標とするのではなく、コモディティ化することを徹底的に避け、常に高付加価値を追求しており、「マーケットプライスを自分たちで形成することができる」点が大きな特徴である点も、是非知っていただきたいと思います。
また、会社としての成長に加え、中小の不動産会社であるからこそ可能な、地方創生、地域活性化にも注力してまいります。
地域の活性化、雇用創出により、結果的に日本全体の生産性向上、GDP拡大につなげていくことも当社の目標としています。
まだまだ小さな会社ではありますが、常に独自性を追求して着実な成長、時価総額の拡大を目指してまいりますので、是非応援していただきたいと思います。
6.今後の注目点
再生不動産販売を行っている主な上場企業との主要指標を比較した。
LAホールディングスは、売上規模は下位ながらも、営業利益率は2位、ROEはトップで、脇田社長が目標としている収益性の高さが際立つ。
PBRも唯一、1倍を大きく超えている。
「モノづくり会社」として、次にどんな商品を創り出してくるのかに注目したい。
コード |
企業名 |
売上高 |
増収率 |
営業利益 |
増益率 |
営業利益率 |
ROE |
時価総額 |
PER |
PBR |
2975 |
スター・マイカ・ホールディングス |
54,157 |
+10.8% |
5,028 |
+3.8% |
9.3% |
12.0% |
18,088 |
6.3 |
0.8 |
2986 |
LAホールディングス |
33,000 |
+4.8% |
5,700 |
+2.7% |
17.3% |
25.0% |
28,422 |
8.1 |
1.9 |
3294 |
イーグランド |
27,278 |
+5.8% |
2,080 |
-21.3% |
7.6% |
17.9% |
10,027 |
7.4 |
0.9 |
8934 |
サンフロンティア不動産 |
79,000 |
-4.6% |
16,700 |
+12.0% |
21.1% |
15.3% |
82,591 |
7.1 |
1.0 |
8940 |
インテリックス |
48,543 |
+17.7% |
769 |
+8.4% |
1.6% |
0.8% |
4,903 |
18.6 |
0.4 |
*単位:百万円、倍。売上高・営業利益は今期予想、各社最新決算短信より。時価総額、PER、PBRは24年2月22日終値ベース。
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
◎組織形態、取締役、監査役の構成
組織形態 | 監査役設置会社 |
取締役 | 5名、うち社外取締役2名(うち独立役員2名) |
監査役 | 3名、うち社外監査役2名(うち独立役員2名) |
◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2023年6月15日
<基本的な考え方>
当社は、コーポレート・ガバナンス(企業統治)とは、株主、顧客、従業員、取引先、地域社会などのステークホルダーに対する社会的責任を果たすための企業経営の基本的な枠組みであると理解しております。今後もより良い経営基盤の確立に注力して、コーポレート・ガバナンスに関する施策の実施に取り組んでまいります。
<コーポレート・ガバナンス・コードの各原則を実施しない理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施しております。